「POSTAL 2」が特別公開! 発売は4月14日に決定! 「GDC 2003」スペシャルレポート #23 - 03/13 21:41

Text by 奥谷海人


 禁断のバイオレンスアクションゲーム「Postal 2」(当サイトの特設サイトは「こちら」,E3のプレイムービーは「こちら」)を特別に見せてくれるとのことで,急遽ATI社のブースで開発元のRunning with Scissors社のメンバー達と待ち合わせすることになった。5年前に登場した前作は,しょぼい2Dグラフィックスだったにも関わらず,過激な暴力表現が一部のファンに大当たりし,欧米はもとより日本でもかなりの成功を収めたアクションゲームだ。その第2弾は何と「Unreal Warfare」エンジンを搭載した3Dアクションゲームとして生まれ変わり,しかも4月中旬には発売されるとあって,現バージョンもATI Radeon 9800のデモ機で見事に作動。日本語版の「ファイナルファンタジーX」の横でデモされていたのが,妙に対照的な感じだった。

日常生活の不満を,パラダイスの住人に浴びせかけろ!

 「Postal」が発売された1998年といえば,アメリカでは自分の不遇を逆恨みした学生や労働者が,直接関係のないクラスメートや元同僚らを銃で無差別殺人する事件が相次ぎ,国内では事件の防止策が叫ばれていた頃だ。アリゾナ,オレゴン,コロラド,ミシガンなど,普段は平和で犯罪とは無縁だった,ミドルクラスの住む地方の町で銃声が鳴り響き,多くの国民を不安に陥れていた。
 "Postal"とは,郵便局とは直接は関係のない隠語で,「ある日突然(手紙を郵便箱に出しにいく様な気軽さで)銃をぶっ放しにいく」という意味を持つ"Go Postal"に由来する。もともとは郵便局職員がストレスによって同僚を射殺する事件の起こった,90年代始め頃に誕生したスラングだとされている。
 イメージダウンを恐れた米国郵政公社(USPS)は,Postalの開発元であるRunning with Scissors社を相手取って裁判を起こし,今もなお訴訟中であるという。ほかにもドイツを始めアメリカの大手チェーン店でも発禁にされたり,議会やPTAで非難対象の標的になるなど,その手の話題には事欠かないイワク付きのゲームなのである。

 「Postal 2」は前作とは形状が非常に異なり,今や最もスタンダードなスタイルの一つである一人称視点の3Dアクションゲーム(FPS)となっている。Unreal Warfareエンジンを使用しているためキャラクターモデルやテクスチャが美しく,暴力表現が生々しすぎるほどに描写されている。舞台となるのは"パラダイス"という名のアリゾナの架空の町で,一つの大きな町を17区画に分けており,この中で自由な活動ができるようになったのだ。
 物語は,朝も暑いアリゾナの夏の週末から始まる。電話に叩き起こされ,狭い室内ではテーブルの角に足の指をぶつけるなど,朝から不快なことが続いている。しかも冷房装置は壊れたままで,朝には欠かせないミルクも冷蔵庫に入っていないなど,ストレスの溜まる日常が続くのだ。主人公はこの町にゲーム開発会社の求人広告を見てやってきた,実は意外とハイテク系の男。だが収入は良くないうえ,動かない妻にキレ切れかかっている状態で,それでもなお自分を抑制しながら,ミルクと妻の好みのアイスクリームを買いに行かされるのである。

不満が溜まりそうなミッションに,プレイヤーはどこまで耐えられるか?

 Postal 2は実のところ,FPSではなく3Dアクションアドベンチャーであると謳っている。前作では,突然銃を構えた無法者たちが襲いかかってくるという被害妄想を抱えた主人公が,迫り来る敵(というか警察や善良な一般人)に発砲するという設定だったが,Postal 2ではゲームに対して批判が集まらないようにするためか,一度も発砲することなくゲームを終了させることができるという。かなり挑発的な仕様になっているようだ。
 このゲームはミッション制になっており,主人公は「ミルクを買って来い」だの「TVタレントのサイン会でサインをもらって来い」だの,頭の線がブチ切れるような妻のお使いに駆り出されることになる。ストーリーは20ミッションからなっており,5日間の出来事として集約されている。ゲーム構成は「Grand Theft Auto III」にも似た自由度の高いもので,与えられた数種類のミッションを1日が終わるまでにこなせば,順序やプレイヤーの行動はとくに制限されていないのである。

 ただし,例えばサイン会なら列を作るファンに従って並ばなければいけないなど,開発者にいわせれば「相当にストレスが溜まる」現実世界と同様のルールが待っている。つまり表向きは他愛もない日常生活のシミュレータであり,そんなストレスフルな境地から自分を解放するために"ゴーイング・ポスタル"するのが,このゲームの隠れた(!?)楽しみ方なのだ。それぞれのミッションをどのような手段で対処していくのかは,すべてプレイヤーの判断に委ねられているというわけである。もちろんプレイヤーがポスタルしてもゲーム内でのペナルティはなく,町の別の区画まで行って銃を引っ込めることで,再び安全に行動できるようになる。

 プレイヤーの初期装備はハサミになっている。開発チームの"Running with Scissors"という名称からきているのはいうまでもないが,これを相手に向って投げつけることが可能だ。もちろんピストルやマシンガン,アサルトライフル,手榴弾のような武器が全部で15種類用意されている。スコップやスタンガン,マッチ,ガソリン缶などといったPostal 2特有のものが必見。スコップでの攻撃は,数発で相手の首を吹っ飛ばすほどの攻撃力で,かなりグロテスクな描写になっている。火を付けるというのもPostalらしい戦法だが,これも少し酷すぎると感じられるほど,綿密なまでのアニメーションの描き方だ。
 この他にも,ネコの肛門に銃口を指し込んでネコが暴発するまで口先から発砲するという攻撃もある。暴発すると猫は銃口を向けた方向に飛んでいくのだが,この猫がヒットした場合にダメージを与えることが出きるかは不明。発砲していない時の猫の声も耳に残りそうだ。さらには,殺傷能力はないに等しいがウシの首を相手に投げつけて,ゲロを吐かせる行為も用意されている。動物系のインタラクションでは,イヌをドッグフードで手なづけ,プレイヤーに敵意を見せる相手に向っていく番犬として活用することもできるようになっていた。
 FPSとして新鮮味を感じる新機能は,キーボードのEキーで敵が投げてきた手榴弾を蹴り返すことが可能なことだ。ドアを開けるなどの行為もすべて蹴りで行うのだが,操作が上達するにつれてRPGから放たれたロケット弾さえも蹴り返せるようになるだろう。すでに知られている放尿モードは無制限に使用することが可能で,自分に火が付いた際に消火するのに役立つ。

Unrealのグラフィックスエンジンに本格的なAIや物理効果を追加

 今回確認できたPostal 2のエリアは,主人公の棲家のあるトレーラーパーク,ショッピングモール,とある研究施設,そしてゾウの飼育所の4か所だ。トレーラーパークでは数匹のイヌにエサを与えて自分に敵対する人にけしかけたり,ショートカットなのか電線の上を歩くことも可能だった。ショッピングモールは,妻に依頼されたゲーリー・コールマンのサインをもらってくるというミッションの舞台。ここではかなりスクリプト化されたインゲームムービーが用意されているらしく,手前の"Kick Me"という張り紙を背中に付けた若者がサインをもらうのにてこずり,プレイヤーがポスタルしてしまうのだ。
 銃社会のアメリカを反映しているらしく,マーケットの売り子のような一般人やコールマンのような主要キャラが,プレイヤーが銃器を取り出した途端に発砲してくるのは面白い。警察官は一般人よりも耐久力があり,手榴弾などを容赦なく投げつけてくる。ゲーリー・コールマン(実在の人)や"クラッチリー"という男性器の形をしたマスコットキャラクターは,マシンガンやRPGで攻撃してくる。ゲームには,コールマンのやクラッチリーほかにも女性警察官コンスエラやジャンクヤードの経営者パコなど,多数のボス級キャラクターが存在している。

 現実感溢れるUnrealエンジンによってキャラクターモデルは細部にまで描き込まれ,どこか廃れた町の雰囲気が出ている。このゲームエンジンは,最大で64体のキャラクターを表示できる性能を持っているらしいが,Postal 2では1体につき3000ポリゴンを使用していることから,最大でも1画面に20体程度の表示に落ち着く模様だ。今回見せてもらったデモでは,人通りの多い町の中心街では,少しカクカクするような場面も見られたのは確かである。
 自社の駐車場を火の海にしてまで炎の様子を研究したことが幸いしてか,ガソリン缶での攻撃は従来のFPSにはない凝り様だ。プレイヤーはガソリン缶のノズルを使って,好みの場所に線上に撒いたり文字を書くことができる。ガソリンは壁を伝い落ちたり,地面に跳ねたりするというシミュレーションが行われており,同じ場所に垂らし続けると大きな水溜り(ガソリン溜り)を作ることも可能だ。人通りの多い場所に水溜りや円状にガソリンを撒き,大量の敵を一度に焼却することだってできるのである。
 Karma社のMathエンジンを使用した物理効果も素晴らしい。人間の死に様はラグドール効果で表現しており,ゾウを含めた動物の倒れ込む様子も見事だ。とくに,車の下に手榴弾を投げ込んだ際に爆音や火炎と共に車体が浮き上がる描写は見応えがある。人物キャラクターは,モーションキャプチャー・アニメーションを使って再現したという。また,ゲームではシャベルで相手のキャラクターを攻撃すると首部分から上が離脱するようになっているが,これを蹴り飛ばすと立派な放物線が描かれて宙に舞う。これを使えば,サッカーのようなゲームもプレイできるようになるはずだ。
 Running with Scissors社オリジナルの,AI技術も特筆しておきたい。相手のキャラクターは,プレイヤーの手にどのような武器があるのかを理解し,それに対抗できうる武器を選んで攻撃してくる。無防備なキャラクターであれば,ガソリンを体に撒かれた途端に悲鳴を上げながら逃げ出すし,近くの警察や兵士にプレイヤーの存在を教えに行く。キャラクターが,逃げる時には一様にプレイヤーのほうを振りかえるのが不気味な仕草である。

 これだけのリアリティを実現していれば,正直なところ過激な表現だけで満腹感さえ感じてしまう。だが,銀行での預金引き出しに列を作るアクションゲームなど過去には存在するわけもなく,Postal 2の存在感は意外と大きい。どこまで暴力表現を許すかはプレイヤーに一切を任せてしまった,実に奇妙なゲームなのである。
 アメリカではWhiptail Interactive社から販売される予定で,日本のマイクロマウス社を始め,ロシア,ポーランド,韓国,カナダなどでは販売が決定している。その半面,ドイツ,オランダ,オーストラリアなどの国々では,すでに公式には販売されないことが決定している。
 Postal 2は,当面はシングルプレイヤー専用ゲームとしてリリースされるが,その後「Postal Tournament」という対戦専用のソフトも年内に発売される予定だ。なお詳しくは語らなかったが,開発者自身が「かなり気持ち悪い描写が混じっている」と言うほどなので,今後の続報を期待してほしい。

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