[E3 2002#85]アメリカ陸軍が開発した「America's Army」堂々公開! - 05/29 20:11

 入隊志願者不足に悩むアメリカ陸軍が,日本では決して想像できない驚きの宣伝手段を発表した。何億円にも及ぶ国家予算を投じて,ゲームを作ってしまおうというのだ。E3会場では,ソニー後方の比較的料金の高い場所にブースを設置し,迷彩服を着込んだ兵士たちが天井からロープを伝って下降する訓練を披露したり,会場の外にはM2A6ブラッドレーアベンジャーA2・SAM搭載車を展示するなど,男っ気のある雰囲気バリバリのノリでE3に"参戦"していたのだ。
 アメリカでは以前から,空軍がPCゲームを訓練用に改良したり,海兵隊がアメリカのゲーム雑誌に広告を出したりということは頻繁にある。しかし,「America's Army」は,「ゲームを通して兵隊の実践的な活動に興味を覚えた若者たちが,もう1歩踏み込んで陸軍に参加してくれることを期待」して製作されたのだと,ブースで待機していた開発者は語った。
 そのため,本格的なゲームに仕上げなければならず,現時点では最高峰ともいえるUnrealゲームエンジンのライセンスを取得し,20マップという本格的なFPSを作り出してしまった。さらに7月4日の独立記念日に合わせて,公式サイトで無料公開してしまうという広告キャンペーンからも熱の入れようがうかがえるというものだ。
 America's Armyは,「America's Army:Operations」という第一人称視点によるシューティングゲームと,「America's Army:Soldiers」というRPGの要素を積め込んだ二層からなっている。ゲームプレイは,役割の違う数人の兵士が協力し合うタクティカルな内容で,「Counter-Strike」や「Rainbow Six」のような,古今のミリタリー系アクションゲームを煮詰めたような感じとなっていた。
 あたりまえといえなくもないが,陸軍の最新装備を忠実に再現するなど,リアリズムの追求に関しては一級品といっても過言ではない。いかに効率良くチームで移動できるか,移動手段や援護射撃の仕方は? など,ゲームとしての面白さで対象となる若者を惹きつけつつ,陸軍兵士としての実践的な行動も学べるようになっている。
 シューティングゲームの痛快さをウリにしているのではなく,あくまでも陸軍の戦術を伝えることを根底においてあるゲームなのだから,銃器のローディングは逐一その過程を踏まなければならないし,場合によっては整備不良で故障してしまうことだってあるらしい。また,陸軍内でも実際に使用されている"手話"を使って,仲間とコミュニケーションを図るようなアニメーションも存在する。砲弾が地面に落ちたときも,表面の材質によって音が変化するなど,本格的なゲームであるのが会場内のデモから確認できた。

 マルチプレイヤーモードは32人までをサポートする予定で,オンラインゲームサイトである"HomeLAN"の対応が決まっている。もっとも,敵勢力のテロリスト側は選択できないなど,このプロジェクトの目的外であることは一切できなくなっている。さらに,マルチプレイヤーモードでは,"キャラクタークラス"をこなすために必要な訓練をパスしなければ参加できないというのが陸軍らしい。例えば,スナイパーガンを扱うにはスナイパーの訓練を,落下傘部隊で活躍したいなら,そのための訓練を行ってからでないと,対戦時に選択できないのだ。(Okutani)


友達にメールで教えよう!
←Back to Daily News
←Back to News Archive