[E3速報#43]低価格で史上制覇を狙う"バジェットソフト" - 05/26 13:33

 ここ数年アメリカでは,オリジナル販売価格が19.99ドルくらいのゲームが多く売り出され,PCゲーム市場で大きなシェアを持つに至っている。そのブームを作ったのがSunstorm Interactiveの「Deer Hunter」であるのは紛れもないが,なんと'98年にリリースされた第1作は,たった3人の開発者で(しかもそのうち1人はバイトだったらしい),9万ドル(1100万円相当)の予算を使って3か月でリリースされた。そのソフトが200万本も売れた事実を考えれば,ほかの販売会社もこぞってバジェットゲーム市場に乗り出しても不思議ではない。
 事実,ここ数年の間にDeer Hunterもどきのゲームが何十本と発売されただけでなく,DiabloやRainbow Sixのように,パッケージを変えて低価格で再販するようにもなってきている。さらには,Hasbro InteractiveのRoller Coaster Tycoonのように,アイデアもゲームプレイも一級品の低価格ソフトが出回るようになり,この分野も激しく賑わいを見せ始めている。ここでは,E3で紹介された有望バジェットソフトを紹介してみよう。

・ Rail Across America
 路線を増やしていく鉄道モノといえば「A列車で行こう」や「レイルロードタイクーン」などのシリーズを思い出すが,Strategy First(開発元はFlying Lab)が8月に発売を予定している「Rail Across America」は,実際に乗客を移動させたり輸出入によって幹線の街を豊かにするゲームではない(写真は右段上下2枚)。
 マップは北アメリカ大陸全土にまたがり,都市の人口は史実にしたがって増減する。プレイヤーは,ほかの鉄道会社との駆け引きをしながら,どこにどれだけの物資を送れば最大の収益が見込めるかを察知し,効率良い路線を築き上げていくのが目的なのである。運搬量や技術の進化に合わせて機関車を購入したり,路線のメンテナンスや信号の設置による交通整備などもプレイヤーに求められる。
 トップダウン方式のグラフィックスは非常に地味で,最近の3Dゲームと比べると随分と見劣りしてしまう。Flying Labは,手軽に遊べるゲームとしてRail Across Americaを開発しているために視覚的な面白さを削除し,ノートPCでも充分に楽しめるように設計したのだ。さらに,このゲームに用意されているシナリオのほとんどは,短いものなら1時間以内で終了することができるとのことで,旅先やランチタイムで気軽にプレイすることも念頭に置かれているようだ。
 政治家やライバル会社との交渉はカードゲームのような手法で進められるため,ランダム性のある駆け引きとなるだろう。Rail Across Americaには,最大8人までのマルチプレイヤーモードも搭載される見込みだ。

・ Pearl Harbor:Zero Hour
 なにかと物議をかもし出している今夏公開予定映画「Pearl Harbor」をゲーム化したのがこの作品で,アーケードスタイルのアクションシューティングである。本作は,オープニングが日本軍の真珠湾攻撃のシーンで始まり,その後はガダルカナルやミッドウェイの海戦,沖縄戦線へと突入していく(写真は中央上下2枚)。
 ミッション数は10種類となる見込みで,P-51ムスタングやB-25ボマーなど14種類の航空機が選択できる見込みだ。プレイヤーは,これらの戦闘機や爆撃機を駆使して,立ち向かう日本軍を蹴散らしていくのが目的である。さらに,トレーニングミッションとして"Flying Tigers"と呼ばれたボランティア師団をテーマにしたものが用意されており,中国の空域で思う存分ゼロ戦を撃ち落とすことができるのだ。
 ここしばらくトップダウン視点のアクションシューティングは少なく,ちょっと新鮮な感じがするのは確か。ただ日本軍側でプレイできないため,我々にとっては甚だ遊びづらく自虐的なゲームであるといえる。今のところ英語版しか予定されていないが,パッケージには映画の原作となったRandall Wallace氏のオーディオブック(小説の朗読テープ)が添付されることになるという。ちなみに,発売元であるSimon&Schuster Interactiveの親元Simon&Schusterがこの小説の版権を握っている。

・ Gadget Tycoon
 今年のE3は"Tycoon"と付けられたゲームが乱立していたが,中でも最も異色を放つのがMonte Cristoの「Gadget Tycoon」だ(写真は左段上下2枚)。ちなみにお膝元のフランスでは,Crazy Factoryとして発売予定。プレイヤーは,工業大学の卒業生として有望な企業への就職を試みるが,行きついた場所は薄暗い路地に存在する町工場。それでも前向きな彼は,自分の知恵を総動員して新商品を作りだし,巨万の富を得るために奮闘する,というのがこのゲームの設定だ。
 Gadget Tycoonには,家庭用ロボット,ローラーブレード,トイレの3種の項目が用意されており,この中から自分の工場で生産するための素材を選ぶ。開発できるパーツは,1品目で30種類になる予定で,健康フリークや新しもの好きたちのために画期的な商品を産み出すわけだ。
 例えばトイレ一つを取っても,音声認識機能やテレビを装着したり,会議用Webカメラを取りつけることだって可能。企業スパイの進入や売上げを横取りしようと企むマフィアの脅しをかわしながら,投資家やバイヤーたちとビジネス交渉を重ね,ライバル企業との競争に勝ち抜いていかなればならない。そのためには,飛行船を使ってのマーケティングや,月面に看板を立てるなどという壮大なプランを計画していくのである。
 キャラクターたちのアニメーションがかわいらしく,会場でも注目を集めていた作品だった。ゲームはシングルシナリオやキャンペーンのほかに,インターネットやLANを介して8人までのマルチプレイヤーモードをサポート。欧米では,8月中には発売される予定だ。


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