Macworld UKサイトが,非常に興味深いレポートを掲載した。Coderusという会社から,MacDXなる開発用ライブラリがリリースされたそうだ。MacDXは,Windowsの世界においてゲーム開発用APIとして定着したDirectXを利用したタイトルのMacへの移植を容易にするもの。実際にMacDXを利用して移植された最初のゲームが「WipeOut
2097」なのだとか。同社のサイトに記載されているMacDXの説明は次の通り。
「MacDX(Mac OS用DirectXインタフェース)により,製品を再開発することなくMacプラットフォームに移植できる。このDirectXインタフェースは,関連情報やドキュメントが豊富に用意されているので,予算をMac用ソフトの開発にあててみてはいかがだろう。
ソースコードを任意のMac OS環境でコンパイルすれば,Mac OS版の完成だ。Mac DXを使えば,Mac OSのVersionやマシン環境について何も心配する必要がない。このインタフェースは特定のMac
OSのVersionやマシン環境が備えるすべての機能を利用する。このインタフェースは,ユーザーのOSのVersionやマシン環境が何であろうとそれを活用するよう,高度にチューンされている。」
IMGはこのニュースにすばやく反応し,Macゲームポーターとしてお馴染みWestlake
InteractiveのGlenda Adams,Brad Oliverの両氏に,このライブラリについて感想を求め,レポートを掲載した。
Glenda Adams
「まだ聞いていないが,見てみる必要があるね。私たちは社内的に,ほぼ完全なDirectX→Macライブラリを利用しているので,Westlake的には大きな変化は起きないだろうが,興味がある。」
Brad Oliver
「MacでのDirectXのインプリメンテーションを自前で行うことを望んでいなかった,あるいは望んでいない小さなMacデベロッパーに対して,または,自分たちの手でMacに移植したいと考えているPCデベロッパーに対して,このようなライブラリはかなりの恩恵をもたらすだろう。」
IMGはまた,MacDXの開発元であるCoderusのCEO,Mark
Thomasにコンタクトを取り,このライブラリの詳細について聞き出すことに成功した。新たに分かったことを以下にまとめると,
・MacDXはDirectXのすべてのコンポーネント(DirectDraw,Direct3D,DirectInput,DirectSound)のライブラリである
・ライセンス料は,ライセンシーのビジネスモデルに応じて柔軟に変化する。現在のところ基本的には3種類の料金体系(全額一括支払い,一部のみ支払い+ロイヤリティー,利益のn%)を提供
・組織の大小にかかわらず,DirectXを利用したいすべてのデベロッパーがターゲット
・最新版のDirectXとの互換性を保てるよう,アップデート作業を今後も継続する。今後追加される新機能も網羅していく計画
・DirectPlayを追加することができるかどうか,すでに調査を進めている
同氏は「MacDXは,DirectXのすべてのインタフェースを提供する」と言っているのだが,実はDirectPlayというネットワーキングAPIについてはまだ実装していない。この「DirectPlay問題」は,よくMacゲーマーの間で話題になることの一つ。Windows用ゲームのデベロッパーが,Microsoftが提供する同APIを採用してマルチプレイモードを実現したと仮定しよう(実際そういうケースが大半だ)。Mac用ゲームのデベロッパーはDirectPlayのライセンスを持っていないので,これを解析してMac用ゲームに組み込むことが許されていない。つまり,ネットワーク部分のプログラムを,Mac用のネットワーキングAPIに置き換えて作り上げざるを得ない。
そのため,マルチプレイモードをクロスプラットフォームに対応させることができない(Mac-Windows間の対戦プレイを実現できない)のだ。「Age
of Empires II:Age of Kings」をはじめとする,DirectPlayを採用したゲームでは,残念ながらMac版ユーザー同士での対戦プレイしかサポートされていないのは,こういう理由からだ。
技術的にどんな手法を用いるのか分からないが,もしMacDXがDirectPlayをもサポートすることができれば,この問題をも乗り越え,多くのMacゲーマーが望んできた「完全な移植」が実現できるかもしれない。同社の動向については,これからも追っていきたい。
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