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福岡におけるゲーム開発の秘密とは。「ゲーム都市ふくおかに見る産学官連携のカタチ」セッションレポート
![]() 九州大学大学院芸術工学研究院の松隈浩之氏 |
まずは本セッションの背景について説明する。福岡市はゲーム産業に注力しており,「九州・福岡を世界が目指すゲーム産業都市にする」を合い言葉に,「福岡ゲーム産業振興機構」を,九州を拠点とするゲームメーカーの団体「GFF」,「九州大学」と連携して,発足させた。
福岡ゲーム産業振興機構は,学生やアマチュアが福岡のゲーム関連企業で現場を体験できる「FUKUOKAゲームインターンシップ」などの人材育成や,市場開拓,広報などの取り組みを行っている。
セッションは,福岡市役所 ゲーム・映像係長の中島賢一氏をファシリテーターとし,九州大学大学院芸術工学研究院の松隈浩之氏,サイバーコネクトツー代表の松山 洋氏,同社取締役/制作プロデューサーの西川裕貴氏,同社ディレクターの石橋洋平氏をパネリストとして行われた。
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同プロジェクトは2009年6月より,九州大学芸術工学研究院を中心に福岡市の委託研究事業としてスタートした。シリアスゲームの開発や普及啓発活動を通じ,福岡そして日本のゲーム産業を拡大することを目的に活動しているという。
プロジェクトでは,大学がゲームを開発,GFFがプロの観点からアドバイスをし,行政が資金面などを含めたバックアップを行うという形で連携している。
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活動成果の一つがリハビリ用の起立運動支援ゲームだ。プロジェクトは,リハビリに力を入れる長尾病院と共に「樹立の森 リハビリウム」を開発。2013年3月からはその製品版である「リハビリウム 起立くん」が医療機関向けに発売されている。
ちなみに,GFFによるアドバイスを受けたことでクオリティがアップしたという。これは産・学・官の連携によるメリットの例といえるだろう。
コンパクトにまとめられた福岡市
![]() 福岡市役所 ゲーム・映像係長の中島賢一氏 |
福岡は交通の便が良く,さまざまな施設がコンパクトにまとめられた都市である,と中島氏は語る。空港や新幹線,博多港といった施設へのアクセスが容易であるため,移動に時間を費やすことなく,ビジネスの際もギリギリまで市内に滞在できるという。
「5時に飛行機に乗らなければならない場合でも,4時30分くらいまで博多にいても大丈夫」(中島氏)というのだから,かなりのものだ。
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![]() サイバーコネクトツー取締役/制作プロデューサーの西川裕貴氏(左),同社ディレクターの石橋洋平氏(右) |
石橋氏も,自転車通勤ができるくらいに会社と近い場所で暮らしており,それが家庭生活でも利点となっているそうだ。氏は勤務中に一度帰宅し,お子さんを迎えに行ったあとに世話をし,19:00〜20:00頃に会社へ戻るというスケジュールで暮らしているという。このような形で子育てができるのも,福岡の住宅事情ならではだろう。
成功と失敗体験の共有から生まれたGFF
![]() サイバーコネクトツー代表の松山 洋氏 |
サイバーコネクトツーは1996年に福岡で設立され,1998年にレベルファイブが誕生した。ゲーム業界は職務の性質上横の繋がりが弱い傾向にあると考える松山氏は,レベルファイブの代表取締役社長である日野晃博氏と会合を持つようになったという。「お互いはライバルだが,失敗体験や成功体験を持ち寄ろう」ということで生まれた会合には,ガンバリオンの代表取締役社長である山倉千賀子氏も参加するようになった。
各地で会社説明会を行うために飛び回る松山氏を見た日野氏から“3社合同の会社説明会を行ってはどうか”という提案があり,これがGFF誕生のきっかけになったそうだ。
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翌年から「もっと凄えこと」(松山氏)をやるためにはゲーム会社のみが頑張るのではなく,行政も味方につけようというアイデアで産・学・官が連携するようになり,現在に至るというわけだ。
松山氏は「なぜ福岡にいるかというと,ゲーム開発をするには福岡が日本で一番有利だからです。ゲームメーカーとして物を売る,宣伝をするということであれば東京のほうが有利ですが,物を作る,クリエイティブということに関して,福岡は日本で一番バランスがいいです。『なんで福岡はそんなに有利なんだ』と思われる人は,GFFに連絡をください。その理由をちゃんとお教えします。これをきっかけに,GFFや福岡のことを知っていただければと思います」と挨拶し,イベントを締めくくった。
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