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Adjustが「モバイル広告不正についての調査・分析結果に関する会見」を開催。2018年1月から3月における被害総額は約49億ドル
会見では,Adjustの調査・分析に基づいたモバイル広告の不正に関する最新データが,同社のCTO兼共同創業者であるポール・ミュラー氏によって公開された。
そうしたモバイル広告不正は,どれほどの規模で発生しているのだろうか。Adjustの見積もりによれば,2018年1月から3月に広告主が被った損害総額は,約49億ドルにのぼるという。しかも,これは同社が検出できた部分だけで,全体の損害額はもっと大きくなる。
Adjust公式サイト
2018年1月〜3月,Adjustは約34億3000万件のアプリのインストールと約3500億件以上のイベントを測定し,1日あたりでは2万以上のアプリのデータを処理・分析したという。
その結果,Adjustの不正防止ツールによって検知・除外されたモバイル広告不正は,全有料インストール数の7%を超えており,2017年と比較して大幅に増加している。
モバイル広告の不正による被害を受けやすいのが,Android版のアプリだ。会場では,後述する「クリックインジェクション」による被害の66%が,Android版アプリのものであることが示された。これはAndroidがiOSよりも脆弱性が高く,それを活用されやすいからだ。
次に多く検出された手法は,Android OSの脆弱性を利用した「クリックインジェクション」だった。これは,不正なアプリでオーガニックユーザー(広告を介さずに流入したユーザー)の端末を乗っ取り,ほかのアプリがインストールされたりダウンロードを開始したりするタイミングを検出して,合法に見えるアトリビューション(ユーザーがアプリをインストールする流入経路)や広告クリックを作り出すという手法だ。
また,3番めに多く検出された「フェイクインストール」は,不正業者がエミュレーションソフトを使って偽の端末を作成し,新規ユーザーとして広告を経由した(と思わせる)インストールを発生させるというものだ。
4番めの「クリックスパム」は,バックグラウンドで偽の広告クリックを行うもので,これは2017年にもっとも多く検出されたが,現在では上記のような,より巧妙な手法に取って代わられている。
ミュラー氏は,日本を含むアジア太平洋地域では,「クリックインジェクション」を使ったモバイル広告の不正が多いことも示した。
こうしたモバイル広告の不正は,2017年にはゲームアプリでもっとも多く検出されたが,2018年初頭ではeコマース系のアプリがトップになっている。ゲーム業界が対応を進める一方,モバイル端末に慣れていないeコマース系企業が格好の標的になっている,というのがAjustの見解だった。
会場では,広告費をだまし取られる以外にも,モバイル広告の不正によって発生する被害が示された。
不正があると,利用価値のない事実とは異なるデータが残ってしまう。そのため,例えばキャンペーンやイベントの効果測定を行っても,何が効果的だったのか,対象とすべきユーザーは誰なのかといった点について,正しい結果を導き出すことができない。したがって適切なマーケティングができず,誤ったところに予算を使ってしまいかねないのだ。
最後にミュラー氏は,モバイル広告の不正はWeb広告のそれとは手法が異るため,専用の対策が必要になる。不正を検出し事後報告するのではなく,リアルタイムで不正を取り除き防止するソリューションを提供しているのは,現時点でAdjustだけだとミュラー氏は語り,会見を締めくくった。
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