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NPCもいなければ,クエストもない? 異色のモバイル向けMMORPG「野生の地:Durango」のディレクターによる講演をレポート
「マビノギ」や「マビノギ英雄伝」などのヒット作を生み出したLee氏の講演テーマは「オンラインゲームの創発プレイ(Emergence Gameplay)デザイン 野生の地:Durangoの事例」だった。やや難しいが,創発とは,本来ゲームに入れられていない要素が,突如として勝手に出現する現象をいうようだ。
Lee氏は「野生の地:Durango」の開発において,「テーマパーク」ではなく「運動場」をコンセプトにしたという。同作は,NPCがおらず,開発側が用意した村もなく,クエストもないというMMORPGだ。市場での取引はプレイヤー間でのみ可能で,村はプレイヤーが作ることになる。サーバーごとに生成される地形もすべて異なっているので,プレイヤーがその世界を実際に探索することによって情報を集め,交換しあってゲームを進行するのだ。
Lee氏は「オープンワールド内で大規模な生態系のシミュレーションを具現化するのがわれわれの開発の目標」と語る。ゲーム内に植物から,草食動物,捕食者へとつながる食物連鎖があり,この生態系の中でプレイヤーが生き残り,資源を獲得しなければならないという。
「野生の地:Durango」では,アイテムを製作する材料もプレイヤーが選択できる。例えば,斧を製作するためには刃と棒,そしてその2つを固定するアイテムが必要だが,包丁や木の棒,葦という組み合わせでも,半月形の石と恐竜の骨をテープでくっつけるというやり方でもいい。もちろん,性能や耐久性などはプレイヤーが選択した材料に応じて変わってくる。
類を見ないほど自由度が高いゲームになりそうだが,それだけに,一部の悪質なプレイヤーによってゲーム内のバランスの崩されるといった事態が想像できる。Lee氏はこの問題について「生態系があまりにも破壊されるようなら,AIを使って調節するなどして防止しようと考えている」と説明した。
Lee氏は本作を「オンラインゲームを楽しんできたプレイヤーたちのためのモバイルゲームだ」と述べた。
自動狩りシステムなど,便利な機能を搭載する最近のトレンドの中で,「野生の地:Durango」はある意味で危険な挑戦かもしれない。しかし,新しいパラダイムの創造には,先駆者が必要なのもまた確かだ。NEXONの新たな挑戦に期待したい。
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