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「Game On Marketing Summit Tokyo」レポート。9億人にリーチできるFacebookはモバイルゲーム広告の切り札となるか
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印刷2013/11/22 22:25

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「Game On Marketing Summit Tokyo」レポート。9億人にリーチできるFacebookはモバイルゲーム広告の切り札となるか

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 2013年11月12日,東京ミッドタウンホールにて「Game On Marketing Summit Tokyo」が開催された。これはFacebookを利用した,ゲームのマーケティングに関するセミナーであり,日本での開催は今回が初めてとなる。
 Facebookは,議論の余地なく世界最大のSNSであり,そのユーザー数は11億人に到達しようとしている(うちモバイルユーザーは9億人)。当然ながらこの11億人はなんらかのデジタルデバイスを所有しているわけで,コンピュータゲームの広告を打つのであれば非常に効果的であろう。
 だが,日本のゲームを欧米市場で,あるいは欧米のゲームを日本市場で売ることの困難さは,この数年,各所で指摘されている。はたして,Facebookを利用した広告宣伝は,どのような効果を持っているのだろうか?


基調講演:Mobile FirstからMobile Bestへ


ピーター・ガン氏
画像集#002のサムネイル/「Game On Marketing Summit Tokyo」レポート。9億人にリーチできるFacebookはモバイルゲーム広告の切り札となるか
 本イベントの基調講演は,Facebookのアジア環太平洋地域におけるFacebookアプリおよびゲームのマーケティングを統括するピーター・ガン氏が行った。

 そもそもガン氏は,昔からゲームが大好きだったという。最初に遊んだのはファミリーコンピューター(海外版なのでいわゆる「NES」)のドンキーコングといった,古株のゲーマーがみな通ってきた道をガン氏も歩んでおり,いまもその道を歩んでいる。氏にとって日本は優れたゲームをいくつも生み出してきたゲーム大国であり,ある意味で憧れの地であるという。

 それはさておき,まずガン氏は,テレビを例にとって「メディアの過去と現在」を示した。1970年頃,テレビはリビングの中心であり,家族全員が同じテレビで,同じ番組を見ていた。その場にいる家族全員がテレビを見ているわけで,テレビは強力なメディアとなっていた。当然,広告媒体としてもテレビは非常に強く,訴求力も拡散力も比類なきものだった。

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 だが,2010年代に同じ「家族でリビングのテレビを見る」場合,もはや1970年の頃のような状況は起こりえない。家族はみな手にスマートフォンやタブレットなどモバイル端末を持ち,テレビを見ながらFacebookを見たり,インターネットサイトを巡回したり,メールのチェックをしたりしている。生活の隅々にまで,モバイル端末が行き渡っているのだ。

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 このことは,数字にも顕著に表れている。スマートフォン・タブレット・PCの出荷台数を比較すると,スマートフォンのシェアと伸び率が圧倒的であり,これは今後も拡大し続けると見られている。また,実に79%の人が事実上スマートフォンを「肌身離さず」利用しているという数字も出ている。
 Facebookの利用においてもこの傾向は明白だ。Facebookをモバイル端末から「通勤時間に利用する」「就寝時に利用する」ユーザーは50%弱と,モバイル端末は完全に生活の一部になりつつある。

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 つまり,モバイル端末は,企業から見れば顧客および顧客候補生にとって,最も近くにあるメディアということになる。
 Facebookは世界最大のSNS(月間アクティブユーザーが12億人弱)であり,またアジア圏における最大のSNSでもある。そしてFacebookは「Mobile FirstからMobile Bestへ(モバイルを再優先からモバイル最適化に)」と方針を転換しており,モバイル化されたインターネット社会においても中心的な存在となっている。

 さて,一方でゲーム市場はどうか。ゲーム市場は,2016年には世界全体で8兆6千億円の規模に発展すると見られている。そのうちモバイルベースのゲームは2兆4千億円と,大きなプレゼンスを示すとされている。
 また2012年の状況を国別で見た場合,日本のゲーム市場は全体で9千億円。これに対し,世界全体では6兆6千億円の市場となる。ガン氏は「日本が世界最高のゲーム開発力を持っていることは,誰もが知っている」と指摘,「この6兆6千億円の市場に乗り出すべきだ」と語った。

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 が,一方でこの「ゲームの世界展開」が容易でないというのは,ガン氏も認めるところだ。文化によるゲームの違いを論ずる以前の段階として,ゲームのあり方そのものが大きく変化している昨今,ただ「良いゲーム」を作って,それを従来どおりの方法で広告宣伝していただけではうまくいかないというのは,多くの実例が示している。

 この困難の実例として,まず,モバイル端末では一般的なバナー広告が挙げられる。「ゲームが高度化しているなか,小さなバナー広告でその魅力を伝えるのは難しい」のだ。
 またモバイル・アプリにおいては,日々膨大な数の新作が発表され続けているため,まずユーザーにアプリを見つけてもらうことが難しい。加えて,たとえ発見されたとしても,購入(ないしゲーム内課金)に至る道筋をつけるのがさらに難しい。

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 こういった問題を解決するために考えられたのが,いわゆる「行動ターゲティング広告」だ。これは個々のユーザーのネット上での行動をもとに,そのユーザーに最も有用となるであろう広告を表示する,というシステムである。例えば「旅行について検索した」「格安航空券のバナーをクリックした」「タヒチやハワイといった地名を検索した」といった履歴があれば,これをもとに「南洋諸島行き格安旅行パック」の宣伝が出現する,という仕組みである。
 だが,モバイル時代において,行動ターゲティング広告には一つの罠がある。モバイル端末を使う人(とくにゲーマー)は,しばしば複数の端末を利用する。外出先ではスマートフォンを,職場では仕事用のPCを,家に帰ってゲームPCを,そして寝る前にベッドでタブレットといった具合に,一人が複数の端末を渡り歩くのは決して珍しくない。
 こうなると,Cookieを利用した行動ターゲティング広告はうまく機能しないことがある。Cookieは端末から端末に持ち越せないので,参照すべき行動データが分散してしまうのだ。

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 この点,Facebookを経由した行動ターゲティング広告は,「Facebook」というプラットフォームでユーザーデータを共有するため,より精度の高いターゲティングが可能となるわけだ。
 これを数字で見ると,平均的なオンラインメディアのターゲティング広告がユーザーに「刺さる」確率は27%。これに対しFacebookのターゲティング広告は91%の精度を有するという。これは広告宣伝費に投じる予算との費用対効果という面で考えれば,普通は70%近くの予算を無駄遣いする(73%は「刺さらない」)のに対し,Facebookは10%弱の無駄しか生じないということになる。

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 また,最初に問題として提示された「バナー広告では不十分」という点についても,Facebookは全画面広告を出稿できる。AAA級コンシューマゲームはもちろん,モバイルゲームもより凝ったゲームが増えている昨今,ユーザーに訴求する画面を見せられるというのは大きなメリットとなる。
 実際,月間2.6億本のモバイルアプリ(app storeないしGoogle Play市場にあるアプリ)がFacebook経由でアクセスされ,ダウンロードされているという。
 Facebookは「Mobile Best」に舵を切ったとはいえ,PC・スマートフォン・タブレットなど多くの端末で利用可能な「本当の意味でのクロス・プラットフォーム」であるとガン氏は語る。そして実のところ,45%のゲームユーザーが,複数のプラットフォームでゲームを楽しんでいるという。Facebookはそういったユーザーに最適な広告を提供できると語り,ガン氏は基調講演を終えた。

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ピーター・ガン氏合同インタビュー


 さて,景気のよい話はさておき,Facebookはゲームの国際展開において,実際に何をしてくれるのだろうか。囲み取材ではあるが,ピーター・ガン氏に直接,インタビューする機会を得たので,いろいろと聞いてみた。

――あなたのチームの規模はどれくらいなんでしょうか?

ガン氏:
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 ゲーム業界とのやり取りはずっとありましたが,アジア市場におけるプロモーションもアメリカやヨーロッパオフィスが行ってきました。これに対し,2010年にアジアオフィスを設立し,これには大きな投資を行っています。
 私がFacebookに入社したのが,2013年になります。それ以降最優先課題の一つとして取り組んでいるのが,我が社が持っているゲーム関係の戦略や製品,その特色について,アジア(とくに日本)のゲーム開発者にきちんと知ってもらうということです。
 私自身も日本のゲーム開発者の方々が国際競争に参加できる,そんな環境を作ることに情熱を感じています。
 また,Facebookの中でも,ゲーム業界を担当している部署は,鍵となる部署と考えられています。そのため雇用も積極的に進めています。

――Facebookのゲームと言いますと,かつてはHTMLベースで,たくさんのヘルプがウォールに流れてくるようなものが多かったですが,最近はその傾向に変化があるように感じます。その点,戦略の変化があるのでしょうか?

ガン氏:
 Facebookにはキャンバスという概念があります。そのキャンバスにいろいろなゲームが乗っているというスタイルは,引き続き重要であると考えています。また,その重要度にふさわしいリソースを投資し,競争力を高めていこうという試みはこれからも続けてまいります。
 最近,つまりここ1年半くらいを見ますと,Facebookにおいてもギア・チェンジが行われており,Mobile FirstからMobile Bestへと取り組みを変えています。そのためモバイル関係の投資も増やしておりますし,その結果としてFacebook経由でのモバイル・アプリのダウンロードが増大しています。大きな画像を用いた広告も,この一環ですね。
 ただ,こういったイノベーションはあるものの,キャンバス・ベースの展開を軽視しているわけではありません。こちらにも注力を続けていくというのは,一貫した方針です。

――FacebookにはFlashで作られたゲームも多数あります。ですがマルチプラットフォームということを考えた場合,モバイルにおいてFlashの再生環境は,Adobe自身も含め,急激に立場を悪化させているように思えます。今後,モバイル・ベストが進行していくなから,Flashの立場はどうなっていくのでしょうか?

Facebook日高久美子氏:
 基本的に,弊社としてはお客様に対して,ゲームの作り方という部分の定義はさせていただいておりません。Facebookとインテグレーションさせていきたいという開発者様には,SDKのようなものを提供させてもらったり,ピーター・ガンのチームがマーケティングやキャンペーンに関するアドバイスをさせてもらう,という形です。
 開発会社様はそれぞれ独自の開発方式をお持ちですので,具体的にどのようにゲームを作るのか,というところまでは踏み込ませていただいていないというのが実情です。

ガン氏:
 我々としては,プラットフォームに依存しない形でサービスを提供していこうと思っておりますので,
でもAndroidでも使えるようなものを提供していこうと考えています。ですので,「別のプラットフォームでも自分達のゲームを稼働させたい」というご要望がある場合はその支援を行うということになります。誰でも,どこでも,Facebookが使える。これが目標ですね。

――日本ではDeNAやGREEが自分達でゲームエンジンを作ってデベロッパに提供したり,あるいはデベロッパと一緒にゲームを作るというところまで踏み込んでいます。が,そういった取り組みとは一線を画するという理解でよろしいでしょうか?

ガン氏:
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 我々の取り組みには,二つの切り口があると考えてください。
 一つは,キャンバスを用いて開発している開発者には引き続きさまざまな支援を行っていきます。場合によってはエンジニアリングチームと一緒に最適化を図り,Facebook上でも使えるようにするといったことをやっています。
 もう一つ,モバイル向けという点ですが,かなり密にiOSやAndroid向けのサポートをしています。ですのでiOSとAndroidであれば,Facebookとスムーズに統合できる形になっております。もちろん,SDKのバージョンアップも迅速に行っています。
 Facebook上には8億7千万ユーザーがおります。日本の開発者ないしパブリッシャの方々がFacebookを利用することで,国内だけでなく国際的に大きな成功を収める機会があるということです。そこのお手伝いをしていきたいですね。

――チームで行われているサポートとしては,具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?

ガン氏:
 あくまで一部分の紹介ということになりますが,概略だけご説明します。
 まずはデベロッパやパブリッシャに対し,私達のプラットフォームがどのようなメリットをもたらすのか,啓蒙・教育活動を展開するというのが一つあります。
 製品的にもモバイル向けの広告やターゲティング広告などありますが,基調講演でも話したように弊社のターゲティング広告の精度は90%以上となっています。こういったメリットをぜひ,知っていただきたいと思っています。今日のカンファレンスも,そういった活動の一つといえます。
 また,チームを組んで,お客様との1対1での支援も行っています。これによって,お客様の日本における競争力だけでなく,国際的な競争力も高めていきたいと思います。
 海外にも優れたゲームはたくさんあり,市場ごとに成功する要素のニュアンスは異なっていますので,例えばドイツ市場で,アメリカ市場で,メキシコ市場で,それぞれ成功していくためのアドバイスや戦略の提案を行っています。

――成功事例として紹介できるものはありますか?

ガン氏:
 家庭用ゲームにおいては,ActivisionのCall of Duty: Ghostsの広告を扱っています。訴求しようと考えている顧客層が,18〜24歳の男性ということで,このグループに対する認知度を高めていきたいというご要望がありました。実際にFacebookで,企業様のページに投稿してもらった写真の広告を拡散していく,という広告システムを利用したところ,対象としているグループのうちアメリカ在住の55%に対し3日でリーチできた,という成果が上がりました。また,こういったキャンペーンを続けていくなかで,24〜34歳のグループに対する認知度も24%向上しました。

 また,Fun Plusさんは中国の会社なのですが,Facebookは中国では使えません。ですがFun Plusとしては自社のゲームを海外に輸出したいということで,そのための広告媒体としてFacebookを使っているという状況です。
 Fun Plusのゲームをドイツ語圏・英語圏・フランス語圏に対して販売していこうという案件では,Facebookを使うことでインストールコストを28%削減できることが分かりました。また広告からのコンバージョン率も,どの媒体と比較しても高くなっています。これがモバイルゲームにおける成功事例としてご紹介できますね。
 このように,アジアのゲーム開発会社が世界に向けて事業を拡大していこうとしていることに,我々は大変誇りを持っていますし,そういった企業が実際に欧米で成功しているというのは素晴らしいことだと思います。
 しかも,この成功は,各開発社が海外に独自の拠点を開くことなく達成できています。ですので経費的にもかなり小さくできますし,それでいながら競争力は高い,ということになります。

――Facebookは世界中にユーザーがいますが,ガン氏から見て興味深い市場はどこでしょうか?

ガン氏:
 個人的には,もともと自分がオーストラリア出身ということもあって,オーストラリア市場には興味があります(笑)。オーストラリアで市場が立ち上がり,ダイナミズムが生まれ始めているというのは,とても嬉しいですね。
 それ以外ですと,新興市場に大きな魅力を感じています。ブラジル・インド・インドネシアといった国家では,1日あたりのユーザー数増加が何十万という単位で,Facebookが浸透していっています。統計的に見ても,ここには大きな魅力がありますね。
 こういった国々においては,Facebookを使うことでコミュニケーションが活性化し,一体感が増す,そういう要因として機能しているのではないかと思いますし,それは我々にとって大変嬉しいことです。
 まとめますと,心情としてはオーストラリアということになりますが,同じように新興市場における伸びには注目しています。ゲーム開発者にとってもこういった新興市場の伸びには大きな未来があると思いますので,開発者自身が新興市場の状況を理解し,そこでの競争に乗って行くことができれば,それがまさに将来像になるのではないかと思います。
 ですので我々としても,クライアントの方々が新興市場における独特のニュアンスを理解し,そこで成功していくお手伝いをしていきたいとも思います。

――ゲームの世界展開ということを考えたとき,一般的に「キャラクターなどが独特すぎて,日本のゲームは世界では売れない」という意見があります。またオンラインゲームにおいてはイベントが非常に重要ですが,イベントは世界のさまざまな現地文化と結びついています。そういったカルチャライゼーションという点についての助言はもらえるのでしょうか?

ガン氏:
 私達のチームにおいては,市場の機会としては,アジアの外にあるチャンスが大きいと考えています。そこで我々とお客様がどのようにやり取りしていくかは,お客様の意向次第ということになります。お客様によっては週1回や月1回ということもありますし,毎日ということもあります。またどれくらい深いやり取りをするかも,お客様次第となります。
 日本のゲームに関しましては,日本の開発会社は,基本的に日本市場に向けたゲームを開発しているということで,言語的な部分も含めて特殊な作品が多く見られます。そういった各社に対し,いわゆる教育・啓蒙活動を通じまして,海外で成功するためにはどうしたらいいかというアドバイスを行っています。例えばドイツ市場向けであれば,ドイツではどういうゲームが受けるのか,どういう広告がいいのか,ドイツのゲームにはどういう特性があるのかといったことをお伝えしています。

日高氏:
 ゲームの開発という点でのアドバイスよりも,すでに完成しているゲームをどう売るのか,というところが主眼になります。例えば,あるゲームをドイツ市場で売るには,ゲームの中身をどうするかというよりも,それをどうドイツ市場で広告宣伝していくか,という点ですね。日本だと広告宣伝の中心はモバイルになりますが,ドイツだとデスクトップも攻めていったほうがいいかもしれない。例えばそういった点のアドバイスです。
 弊社としては「ゲーム開発には立ち入らない」という方針がありますので,お客様のビジネス用途に応じたキャンペーンの打ち方であるとか,それをどうFacebookと融合させるかといったお客様に,そのアドバイスをしていく,そこが主体となります。

ガン氏:
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 アジアにおけるFacebookのゲーム担当チームとしては二つあります。一つは私が率いるセールス担当のチームで,私のチームではゲーム会社に「海外ではどのようなチャンスがあるのか」という情報を展開しつつ,海外市場においてどのようなカスタム化や広告戦略が効果的なのか,そういった「広告宣伝活動のローカライズ」という視点でのアドバイスを提供しています。この「対象市場」としては,もちろん日本市場も含まれます。
 それとは別にもう一つ,プラットフォーム・チームというのがあります。ジェシカ・リーが率いるチームですが,こちらではより深く掘り下げた話を行います。つまり開発者との話をしながら,ゲームの製品・開発に踏み込んだ相談をさせていただいております。ゲーム開発において,世界市場に売り出していくには欠かせないグローバルな視点を,開発段階から盛り込むことが可能となるような情報提供をする形ですね。

――現在,プレイステーションでもXboxでも,インディーズゲームに対する注力が高まってきています。インディーズゲームに対して,Facebookの門は開かれているのでしょうか?

ガン氏:
 もちろんです。Facebookの持つ強みの一つは,そういった独立開発会社にも手軽にご利用いただけることです。大きな資本も,海外拠点も,そこでの人材雇用の必要もなく,ユーザーベースを広げたり,事業を拡大することが可能なのですから。ですので,インディーズゲームに向けたサポートも行って行きます。
 やはりインディーズゲームと呼ばれるゲームは,世界的に見ても,最も革新的なゲームがあると思っていますし,優れたゲームにもこと欠きません。私自身,インディーズゲームは大好きですので(笑)。


 「良いゲーム」そのものの数が急激に増大するなか,「どうやってその良いゲーム(ないしその情報)をゲーマーのもとに届けるか」という部分が占める重要性は急激に拡大している。しかしそれは,広告宣伝費の拡大という点で,開発会社にとっての負担増大も意味している(この後に行われたA-teamによるFacebook広告の運用レポートでは,この点が強調されていた)。
 一方,筆者が個人的に耳にする範囲では,負のスパイラルとしか言いようのない悪循環がモバイルゲーム広告の世界で発生しているという事例も,少なからずあるようだ。
 A-teamの発表を見ても,Facebookによる広告は「オンリーワンかつベスト」ということはできないとされ,広告媒体というものの性質を考えた場合,そのような広告媒体は存在し得ないだろう。が,「非常に効果的なメディアの一つ」であることには,異論はないようだ。
 結局のところ,ゲーマーとしては,自分が面白いゲームを遊べるかどうかが,論点のすべてである。翻って言えば「自分が楽しめるゲームの存在を知ることができない」というのが最も避けたい状況でもあるわけで,どんどんゲームの数が増えていく昨今,広告を含めたゲーム情報流通がどう変化していくのか,改めて考えさせられるセミナーだった。
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