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スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性
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印刷2016/07/23 00:00

インタビュー

スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

 「スマートフォンに差し込んで使うスマホ専用ゲームカセット」として東京ゲームショウ2015でも話題となった製品「ピコカセット」が,クラウドファンディングサイト「Makuake」該当ページ)に掲載され,1000万円を目標額として出資者の募集が行われている。

 「こちら」の記事でも紹介しているが,本製品は,専用アプリをインストールしたスマートフォンのイヤフォンジャックにプラグを差し込むことで,ゲームを遊べるというアイテム。2016年5月には,「忍者じゃじゃ丸くん(MSX版)」がその第1弾となることが発表されている(関連記事)。

3Dプリンタで出力したピコカセットのサンプル。製品版は樹脂の一体成形となる
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

 出資者の募集期間は7月いっぱいに設定されており,そろそろ締め切られる時期である。そんな中,ピコカセットを企画したビートロボの代表取締役社長 CEOの浅枝大志氏に,この企画における立ち上げの経緯や将来的な展望などを聞いてみた。出資を考えていたり,ピコカセットという製品に興味を持っていたりする人は,ぜひご一読を。

ビートロボ 代表取締役社長 CEO 浅枝大志氏は,これまでメイド美容室や「Second Life」のコンサルなど,数々のベンチャービジネスを手がけてきた人物。現在はピコカセットの前身である「PlugAir」の事業を展開している

「ピコカセット」公式サイト

「ピコカセット」出資者募集ページ(Makuake)



「ゲームを大事にしたい」という気持ちが,

ピコカセットの企画につながった


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。さっそくですが,まずはピコカセットの企画を立ち上げることになった経緯からお聞かせください。

浅枝氏:
 音楽やゲームがデジタル化され,VRが実現する時代がついにやってきたところに,あえて“モノ”に回帰するというのが最初のテーマでした。音楽やゲームのダウンロード,ストリーミング配信が当たり前になった現代ですが,その一方でレコードやゲームカセットを集めたいという気持ちが一部のファンにありますよね。そこに訴える製品を何か生み出せないかと考えたのがきっかけです。
 弊社ではもともと「PlugAir(プラグエア)」という,スマートフォンのイヤフォン用プラグに差し込むと,アプリと連動してアルバムがまるごと手に入るという音楽ガジェットを提供していまして,それをゲームに応用できないかと考えたんです。

4Gamer:
 とはいえ,アーティストの音楽やPVを扱うのとは大きく勝手が違いますよね。

浅枝氏:
 ピコカセットの企画にあたって最初に考えてたのは,Wii UのバーチャルコンソールやPS3のゲームアーカイブスのように,たくさんのゲームが詰まったアプリを作るということでした。その中のゲームを遊ぶために必要となるピコカセットを,物理的に販売するという仕組みにしたかったんです。

スマートフォンで専用アプリを起動し,イヤフォンジャックにピコカセットの端子を差し込むとゲームが起動する。ピコカセットはアンロック用キーの役割を持ち,ゲームの起動後は抜いても遊べるという仕様を考えているそうだ
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

4Gamer:
 それは新しいですね。

浅枝氏:
 ありがとうございます。僕らとしてはスマホのゲームをピコカセットというモノとして販売する仕組みを提供して,売上ランキングで見たからゲームを買うのではなく,スマホのゲーム専用コーナーに並んでいるピコカセットのパッケージを手にとってもらって,2000円を出すとゲームが手に入ったり,料金分のゲームコインが手に入ったりといった流通を実現させたいんですよね。

 コンシューマゲームはパッケージ版を店頭で買えるだけでなく,ネットでダウンロード版も買えますよね。それとは逆に,ダウンロード販売されているものを,店頭でも売ることでプラスになることはあると思うんです。
 その参考にさせてもらったアイデアが「初音ミク」なんです。初音ミクの著名なPが作った楽曲は,基本的に無料で聞けるものですが,それをレーベルがピックアップしてCDにすることでも売れていますよね。ファンアイテムでありながらも,それほどコア寄りではない一般のファンが店頭で知るきっかけになっているわけです。

4Gamer:
 確かにこのピコカセットが,懐かしいゲームパッケージで店頭に並んでいたら,30代以上のゲームファンは反応すると思います。

浅枝氏:
 僕自身がまさにその世代なんですよね。しかも僕は「ゲームは中古で買わない」派でして(笑)。同じ世代の中にはゲームを後生大事に取っておくという人が少なからず存在していると思うんです。今はダウンロードが全盛の時代ですが,かつてのゲームカセットと同じように,ゲームをモノとして大事にしてもらいたいんですよね。

4Gamer:
 商品として発売されることになったとき,ピコカセットはどこで販売されるんでしょうか?

浅枝氏:
 スマホ周辺機器の売場ですね。販売に関しては,任天堂さんの流通のモデルを参考にしているんです。任天堂さんはかつて花札やトランプなどをおもちゃ流通で売っていた実績があるところに,ゲームであるファミコンを卸すようになりましたよね。ソフトメーカーがゲームを発売するときは,任天堂さんが製造委託を受けてカセットを生産して,それをメーカーに買い上げてもらって任天堂さんに販売委託することで,おもちゃ屋のファミコンの横で販売できるというサポートをされていました。
 僕らはそれを見習って,このピコカセットをスマホのケースやストラップなどの周辺機器として流通させられないかと考えているんです。

4Gamer:
 どういったメリットを考えているんでしょうか。

浅枝氏:
 一番大きなメリットは,店頭でお客さんの目を引くというところですね。僕らはこのピコカセットで,より多くの人にスマホゲームが目に止まる仕組みを作りたいんです。
 今スマホゲームの特定のタイトルに注目を集めるには,広告ブーストを利用したりランキング上位に入ったり必要がある。あとはメディアに記事を書いてもらうとか,CMを打つとか,そのぐらいしか手段がないんです。
 そんな時代でも,店頭でパッケージ販売して,なおかつ現金でやりとりできる仕組みが作れたら,新しい市場を開拓できるのではないかと思ったんです。

本体はここまで小さく,ガワ部分は金型次第でさまざまなものが作れるという。「PlugAir」用に作られたものもある
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

ピコカセットの第1弾「忍者じゃじゃ丸くん」。オリジナル作品やレトロなシューティングゲームなども次のプランとして用意しているという
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

4Gamer:
 第1弾として「忍者じゃじゃ丸くん」を選んだ理由も教えてください。

浅枝氏:
 このピコカセットをコレクションしてもらうことを考えるにあたって,その第1弾には名作を選びたかったんです。
 ラインナップを決めるときに,過去の歴代ファミコンソフト売上ランキングを参考にしていたんですが,その上位には任天堂さんや当時のエニックスさん,スクウェアさん,ナムコさんなどのソフトが並ぶ中,ジャレコさんの「忍者じゃじゃ丸くん」は当時100万本以上の売上を記録していて,50位以内にランクインし,ゲームファンに対する知名度も高いと考えたんです。
 「忍者じゃじゃ丸くん」の権利は,シティコネクションという会社が持っており,昨年のTGSで交渉させていただきました。

4Gamer:
 ファミコン版ではなく,MSX版の内容である理由についてもお聞かせください。

浅枝氏:
 版権の問題ですね。昨今は,ゲームに登場するキャラクターの権利などが比較的かんたんに許諾されてグッズが販売されたりしますが,ゲームそのものを発売する権利となると,許諾をもらうハードルは高くなるんです。
 そこで今回,開発のパートナーとしてD4エンタープライズ(D4E)さんと提携し,「忍者じゃじゃ丸くん」を動かすエミュレータ開発とスマホへのコンバートを引き受けていただいて,実現に至ったんです。

 D4Eには開発面だけではなく,「プロジェクトEGG」で培われたゲーム業界とのつながりに頼れる面もありました。ソフトウェアの開発はシロクさん,ハードウェアの製造と流通は弊社が担当するという,3社による共同プロジェクトとなっています。

開発中の「忍者じゃじゃ丸くん」を映像で見せてもらった
スマホに差し込むゲームカセット「ピコカセット」企画者に聞く,スマホ用ゲームをモノとして販売する狙いと可能性

4Gamer:
 「忍者じゃじゃ丸くん」の移植にあたって何かオリジナル要素などの搭載は予定されていますか?

浅枝氏:
 ゲームは昔のままの絵柄だけど,片手でもプレイできるといったように,スマホへの最適化は実現したいと思っています。

4Gamer:
 ところでピコカセットの形状は,MSXのカセットの形というわけではないんですね。

浅枝氏:
 初めのうちは発売されたハードごとにカセットの形状を変えることも考えていましたが,まずはピコカセットのブランドイメージとして「スマホでゲームを遊ぶ機器はこういう形」という印象を広めるために,統一することにしました。

4Gamer:
 同じ形ならコレクションがしやすいかもしれません。

浅枝氏:
 そうなんです。シリーズが続くようなら,専用のケースを作ってみるのも面白そうですよね。

4Gamer:
 第2弾以降のタイトルについてはもう準備されているんでしょうか。

浅枝氏:
 交渉中なので具体的なタイトルは明かせませんが,第2弾は完全新作のアクションRPGで,第3弾はレトロ作品の移植タイトルとしてシューティングゲームを出したいと考えています。

4Gamer:
 そう聞くと,レトロゲームファンは夢が広がりますね。

浅枝氏:
 僕個人としては,やっぱり「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」を,このピコカセットを通じて販売してみたいんですよ。

4Gamer:
 それはあくまで願望としてですか?

浅枝氏:
 願望で終わらせたくありません。発売元のスクウェア・エニックスさんは,モバイルでドラクエ・FFシリーズを定期的にリバイバルして出されていたり,「ドラゴンクエストI」をポータルアプリのリリース時に無料配布されたりしたりしていて,ブランドをプラットフォーム化している動きもありますので,僕らにも十分にチャンスはあるかなと思っているんです。
 今回の「忍者じゃじゃ丸くん」がMSX版ですけど,例えばもしあのMSX版「ドラゴンクエストII」が何か別の方法で入手できるようになったとしたら,僕はきっと買うと思いますし(笑)。

4Gamer:
 「あのシーン」のあるMSX版ですね(笑)。ピコカセットの一般的な販売価格帯はどのぐらいを想定されているのでしょうか。先ほどは2000円前後とお話しされていましたが……?

浅枝氏:
 現在のクラウドファンディングの設定とは異なるのですが、市販される際には2000円前後,たとえば1980円といった価格帯にしたいと思っています。あくまで「懐かしいおもちゃ」というイメージで,原価ベースではなく「僕はこの値段だったら欲しい」と思える価格で進めています。


クラウドファンディングで出資をすると

スマホゲームのプラットフォーム作りに参加できる


4Gamer:
 Makuakeで資金を募っていますが,バッカーにはどのような特典があるんでしょうか?

浅枝氏:
 今回の目標金額は,このカセットを生産する金型を作るための資金設定なのですが,もっとも一般的なコースでは,こちらが想定している定価1980円の価格よりも高い金額での支援をお願いしています。実はこれ,ピコカセット本体の代金とそれをいち早く遊ぶ権利だけではなく,ピコカセットというスマホ用のゲームプラットフォームを育てていただくためのコミュニティに参加していただく権利も入っている設定なんです。

4Gamer:
 それはどんなコミュニティなんでしょう?

浅枝氏:
 現在,開発者同士でSlackを使った社内チャットでやりとりをしているんですが,開発がスタートしたあかつきには,対象者となるバッカーの皆さんにSlackを使ったコミュニティに参加していただいて,プロジェクトの最新の進捗状況を確認してもらったり,プロジェクトに直接発言できたりする権利を,ご支援いただく金額によって用意しています。

4Gamer:
 金額によっては,単純にゲームをテストプレイできるだけでなく,意見を直接伝えられるんですか。

浅枝氏:
 そういうことですね。開発者の1人になれるということで,お金を出していただくぶん,可能な範囲で好き勝手なことをやっていただけるというわけです。

4Gamer:
 今は「忍者じゃじゃ丸くん」の話題が先行していますが,タイトルが主軸ではなく,ピコカセットのプラットフォームとしてのブランディングを成立させることが主体のクラウドファンディングなんですね。

浅枝氏:
 おっしゃるとおりですね。ゲームのプラットフォームで一番大変なのは,ハードウェアを開発することなのですが,ピコカセットはすでにハードウェアはできていますので,プロジェクト自体はすぐに開始できる状態で,対応は比較的フレキシブルにできるんですよね。

 経営者の立場として返答をすると,ここまで話題になったプロジェクトですので,ビジネスとしても成立するのではないかと判断し,発売にゴーサインを出してもいいと考えています。もしゴールしなかった場合は,出資金は返金されますので,そちらもご安心ください。


ゲームを大事にしたい皆の気持ちを

ピコカセットという小さな箱に込めたい


4Gamer:
 次世代のiPhoneでは,イヤフォンジャックが削除されるという噂がまことしやかに流れていますよね。それについてはどうお考えでしょうか?

浅枝氏:
 その話題は,各社さんとの打ち合せのときに必ず出てきます(苦笑)。僕らはAppleさんの情報を事前に知ることができるような立場にはないので,まずは現状で発表している対応端末には確実に対応させることに集中して進めています。
 ここからは仮説なのですが,もしiPhoneがLightning端子だけになった場合でも,これまでのイヤホンが使用できるアダプターが発売されることを想定して,それへの対応を検討します。もちろん,将来的に完全にインタフェースが新しくなったときには,弊社でも新しい認証技術の開発が必要になるということは意識しなければなりませんけど……。

 ただ現状は,あくまで噂の域ですので,それに振り回されても仕方がないので,今は現行の仕様で進めるだけですね。

4Gamer:
 イヤフォン自体も普及している機器ですし,すべてが一度に変わるわけではないでしょうからね。

浅枝氏:
 そうなんですよ。僕らとしては,もしイヤホンジャックのない端末に完全移行されるとしても,それが多くのユーザーに行き渡るまで1年程度の猶予はあると考えていて,その間に対応することを目指す予定でいます。

4Gamer:
 それと,このピコカセットを海外で発売する予定はないんですか?

浅枝氏:
 第1弾が「忍者じゃじゃ丸くん」ですので,今のところはまだ構想段階ですが,幸い昨年のTGSでは多くの海外のメディアの方々に取材いただきましたので,検討はしています。僕らが翻訳なしでは読めない諸国のメディアなどでも紹介いただいて,非常にありがたく思っています。
 構想としては,カセットの部分をNESのカセットに変更して,世界中で売れたタイトルに対応したいですよね。
 そこに行き着くためには第1弾を成功させないといけませんから,まずは国内での展開をがんばっていきます。

4Gamer:
 分かりました。それでは最後に,出資いただいているバッカーの方々や,出資を考えていたり,この記事で興味を持ったりしたという読者に向けてメッセージをお願いします。

浅枝氏:
 今回のクラウドファンディングに関しては,資金を募ることよりも,一緒に作る仲間を募集しているようなイメージなんです。「ゲームを大切にしたい」という気持ちを世に伝えたいという思いを一緒に持ってくれる方々に,ぜひ応援していただきたいです。

 出資額に応じて開発者として参加いただけます。新しいプラットフォームを作るスタッフとして,ゲームをモノとして大切にするという世界共通の文化を,皆さんと一緒にピコカセットという小さな箱の中に込めて世に送り出したいんです。
 今のファミコン世代のお父さんお母さん方が,かつて自分が遊んだカセットでお子さんにゲームというものを伝えるように,このピコカセットが,手渡しで誰かにゲームを伝えられるような機器になることが,僕の本当の理想です。

4Gamer:
 プロジェクトの成功を期待しています。本日はありがとうございました。


 ピコカセットは,単純なレトロ趣味の企画ではなく,新旧の作品を織り交ぜたスマホゲームの新たなプラットフォームと,流通経路を確立するという壮大なプロジェクトである。
 浅枝氏自身も子供時代からの熱心なゲームファンであり,ゲーム業界への造詣が深く,現在のプランには,専用コントローラの開発や,ドラクエやFFシリーズ,そして氏が一番好きなゲームだという「クロノ・トリガー」をピコカセットで流通させるという思いも載っており,筆者もその先のプランまでぜひ見てみたいという願いを込めて,今回,個人的に出資することを決めた。

 このインタビューを読んでピコカセットのプロジェクトに興味を持ったという人は,ぜひ出資を検討してみてほしい。

「ピコカセット」公式サイト

「ピコカセット」出資者募集ページ(Makuake)

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