2015年9月29日,ソニーが,今秋発売予定の2chオーディオシステム「
CAS-1」を発表した。CAS-1はUSBおよびBluetooth接続で利用できる,ハイレゾ再生対応のコントロールユニットとスピーカーがセットになった製品で,ソニーは「
音にこだわるゲーマーにもお勧めできる製品」と位置づけている。ブラックとホワイトの2色展開で,
税込の予想実売価格は8万円前後だ。
今回は,新製品の概要を,ざっくりとお伝えしてみたい。
CAS-1はブラックとホワイトの2色展開。ブラックモデルだと,スピーカーユニットはオーク材の木目調仕上げとなっている
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「ディスプレイの両サイドに設置すると絶妙の音場が得られる」とされるCAS-1
本体背面。USBクライアントとホスト機能を持ち,Bluetooth接続にも対応する一方,アナログ入力は省略されている
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冒頭でも紹介したとおり,CAS-1はコントロールユニットと2chスピーカーセットを組み合わせた製品だ。
コントロールユニットはUSB 2.0のクライアント&ホストとBluetooth 3.0対応しており,USBクライアントとしてはUSB Audio Class 2準拠となるため,PCとの接続時には,最大サンプリングレート192kHzのいわゆるハイレゾサウンドを楽しめる。USBホスト側ではUSBストレージに保存した楽曲の再生が可能。一方のBluetooth接続時だと,Bluetoothで標準的なコーデックに対して3倍の情報量を転送できるソニー独自のコーデック「LDAC」に対応しており,対応機器との間をLDAC形式で伝送できるようになっている。
CAS-1において最大の特徴とされるのは,
PC用ディスプレイの両サイドにスピーカーを配置した状態で最適なステレオの音場感が得られる点だ。スピーカーとリスナーの距離が75cmから2m程度の範囲で,かっちりした定位感や音像が得られるようにしているというソニーは,これを「ニアフィールドリスニング設計」と呼んでいる。
CAS-1の利用イメージ。机上に2つのスピーカーを配置した状態でステレオの音場が得られるというのがウリだ
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CAS-1ではソニーのハイエンドオーディオ製品に携わる開発者が設計にあたっているそうで,細部にこだわった作りも特徴とされている。
その最たるものがコントロールユニットの内部構成であり,CAS-1ではスピーカー用とヘッドフォン用がそれぞれ独立している。スピーカー用の回路は,マルチビットをアップサンプリングして1bitデジタルに変換し,新たに開発したというデジタルアンプで増幅するフルデジタル構成。対するヘッドフォン用回路は,定評あるソニー製のポータブルヘッドフォンアンプ「PHA-2」相当のD/Aコンバータとアナログアンプをほぼそのまま組み込んでいるそうだ。
両回路の相互干渉を排除するため,スピーカーを使うときはヘッドフォン用回路,ヘッドフォンを使うときはスピーカー用回路の電源をシャットダウンするという,手の込んだノイズ対策も施されている。
コントロール用ユニットにはスピーカー用とヘッドフォン用の回路基板が向かい合わせのような格好で搭載される。スピーカー用がフルデジタルで,ヘッドフォン部はD/Aコンバータとアナログアンプという,異なるキャラクターのものを採用しているのはユニークだ
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電源とスピーカー部の回路基板。基板右側が電源部,左側がスピーカー駆動部でフルデジタル構成。デジタルアンプにはソニーが新たに設計したLSIを用いているそうだ。またローパスフィルタには,音質がいいとされるトロイダルコアを用いたインダクタが使われていたりとコストがかかっている
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ヘッドフォン部およびデジタル処理部側の回路基板。基板左側,大型のLSIが載っている側がデジタル処理部で,右がヘッドフォン部である。ヘッドフォンアンプ部では,Texas Instruments製D/Aコンバータ「PCM 1795」を搭載する,PHA-2相当の回路が丸ごと実装されている
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付帯音とは別の話だが,高域担当のスピーカーであるトゥイータには,指向性が弱いドーム型を採用し,ニアフィールドにおけるリスニング範囲に対応しているとのことだった
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組み合わされるスピーカーセットは,ニアフィールド(Near Field)における音場や定位感,自然な低音に力を入れて設計されている。
ソニーによると,スピーカーとリスナーの距離が近いときに定位感を際立たせるには,付帯音,つまり「音に混ざるノイズ」を抑えることが重要だそうだ。その目的で,ウーファのフレームにはあえて樹脂を採用したとのこと。樹脂だと見た目は安っぽくなるが,金属にすると,ボイスコイルの磁気による渦電流が発生して付帯音を生じさせるため,あえて樹脂を使用したという。
また,バスレフポートをスピーカー本体の下に配置することで,ニアフィールドにおける低音の位相差の影響を抑えているだけでなく,バスレフポート内側をエンボス加工することで空気抵抗を減らし,低音に付随するノイズを抑えるといった設計も採用しているとのことである。
スピーカーの内部構造を見る3Dイメージ。バスレフポートは底面にある。バスレフポートは「共振周波数を低くすると同時に,低音を不自然に強調したような音にならない長さ」(ソニー)になっているそうだ
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また,机上に置かれることを考慮し,CAS-1では,スピーカーを設置する机や棚が音質に影響するのを防ぐとされる5mm厚の金属板と,スピーカーの脚となるスパイクが付属する。スパイクは,ユーザー(=リスナー)とスピーカーの配置に合わせて,長さの異なる2種類が用意されるという。
本体色と同系色のリモコンが付属する
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ゲームモード的な何かも,バーチャルサラウンドサウンド機能もあるわけではなく,最後までどのあたりがゲーマーにも向くのかは分からなかったが,机上に置いたスピーカーで,PCゲームをいい音を楽しみたいという場合は,簡単に使えるサウンドシステムとして,一考に値するかもしれない。店頭で見かけたときには,音をチェックしてみるといいのではなかろうか。
●CAS-1の主なスペック
- スピーカー最大出力:24+24W
- スピーカー周波数特性:60Hz〜50kHz
- ヘッドフォン最大出力:250mW+250mW(インピーダンス8Ω時)
- 入力:USB 2.0(クライアント×1,ホスト×1),Bluetooth 3.0
- 出力:ヘッドフォン(3.5mmΦステレオミニ)×1,スピーカー×2(2chステレオ)
- Bluetooth対応プロファイル:A2DP,AVRCP
- Bluetooth対応コーデック:SBC,AAC,LDAC
- USBストレージ接続時の対応ファイルシステム:FAT,FAT32,exFAT
- 対応サンプリングレート:192/176.4/96/88.2/48/44.1kHz(16bit),192/176.4/96/88.2kHz(24bit)
- 対応ハイレゾフォーマット:WAV/AIFF/FLAC/ALAC/DSF(※LPCMに変換して再生)/DSDIFF_DST(※LPCMに変換して再生)
- サイズ:約55(W)×210(D)×178(H)mm(コントロールユニット),約95(W)×172(D)×178(H)mm(スピーカー1本)
- 重量:約1.3kg(コントロールユニット),約1.5kg(スピーカー1本)
- 消費電力:約29W