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CEATEC JAPAN 2014レポート。ウェアラブルデバイスが花盛り,バイタルデータはどこまで取得できるのか
では,今年の出展内容の中から,ゲームに直接関係ないものを含めて技術動向を見ていこう。CEATECは10月11日まで開催されているので,会場に行く人は参考にしてほしい。
ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)で目立った展示を行っていたのは東芝だ。参考出品されていた「東芝グラス」は,「Google Glass」と似た投影型のHMDで,右目の視界内に小さな情報表示エリアを提供するデバイスだ。表示機能以外は持たないようで,非常にシンプルだ。その分,重さも42gと軽く,デザインも豊富に取り揃えられている。
2015年に製品化が予定されているが,当面一般販売の予定はなく,B2Bでの販売になるという。業種的には,工場などでの利用が想定されているという。ウェアラブルとはいっても,ワイヤード接続のみなので用途は限られるが,工場用にしては無駄にデザインも凝っており,将来的には各種機能搭載のうえで民生用に発売されるのではないだろうか。
これも東芝グラスと同様な片目投影型のデバイスだが,カメラを持っており,付加情報表示型ARで,最初から工場などでの使用を考えたものとなっている。ブースで行われていたデモでは,自動車の部品や工具箱や部品にARマーカーを付けて,補足情報を表示するようになっていた。さらに,腕にはウェアラブルキーボードを装着し,さまざまな処理ができるようになっている。
工場内での使用とあって,HMDはヘルメットにマウントされており,重量などの負荷は考えなくても大丈夫そうだ。ゲームに応用するにしても,単なる表示デバイスよりは,AR系のほうが向いているだろう。
見た感じ,あまり垢抜けてはいないのだが,注意が必要な部分にARマーカーを貼り,簡易テキスト以上の情報は,キーボード操作で取り出せるというのは,かなり実用性のある実装ではないだろうか。将来的にはマーカーレスARへの対応も視野に入れているとのことだが,チュートリアル的に使うには情報がある位置が明示されているほうがいいような気もしなくはない。
デバイスコーナーにあったミツミの投影型HMD「レーザーアイウェア」は,レーザー光をMEMSミラー(いわゆるDMD)で制御して投影するというデバイスだ。視野角が広いとのことなのだが,視界に対する映像の投影範囲という意味での視野角はかなり広いものの,装着位置合わせはちょっとシビアだった。投影される大きめな映像が,ちゃんと全部表示されない感じなのだ。デバイスのデモなので,製品としての完成度はまだ問うべきではないのだろうが,少し気になった点だ。
特徴としては,フォーカスフリーで,遠近どこでも焦点が合うとされている。ただ,試用した限りでは,投影像はちょっと近めに感じられた。レーザーということで網膜へのダメージを気にする人もいるかもしれないが,当然ながら出力レベルは安全な範囲に抑えられているとのこと。
HMD以外に出展されていたウェアラブルデバイスの多くは活動量計なのだが,海外ではすでにブームが収まってきたとされているものが,日本でもようやく盛り上がるのだろうか。もっとも,スマートデバイス対応ではない製品であればオムロンもタニタも世界的なトップメーカーであり,日本の活動量計技術が遅れているわけではない。むしろ,最先端を示す展示も数多くあったので紹介してみよう。
しかし,心拍数を計るというのは簡単そうに見えて意外と難しかった。これまでにも心拍数を記録できる製品は存在していたのだが,そういうものをほしがる人は,たいていやたらと動き回ることから,腕時計タイプのデバイスでも心拍数を取るには胸にきっちりバンドを巻いてセンサーを固定しなければならなかったりしたのだ。耳たぶをクリップで挟んだり,特別製のアンダーウェアを着るというのもあるが,昨今の流れからすると,リストバンドだけで済ますというのがスマートなやり方というものである。
最近では,皮膚に光を当てて,その透過光の色の変化から血流量を検出し,脈拍数などを判定する技術が確立されてきており,今回のCEATECでもそういった手法を使った複数のデバイスに使えるセンサーが展示されていた。
ムラタでは,心拍数計測に使用できるLEDライトと光センサーを積んだ小型モジュールほか,各種センサー素子を展示し,それらを組み合わせた腕時計型デバイスを展示していた。心拍数以外に面白いのが気圧計で,腕を上げるだけでグラフに山が描かれるくらいの精度を持っている。バイタルデータではないが,手を上げて/下げてといったモーション判定にも使えそうな感じだ。
アルプス電気の実装では,光の反射(透過)で心拍数を計るだけでなく,色を見てヘモグロビン量や,その酸素飽和度を表示していた。深呼吸などをすると数値が変わってくるのだそうだ。
東芝の胸部貼り付け型測定器Silmeeでは,心拍数の変動から高周波成分と低周波成分を取り出し,その割合で自律神経のバランスをグラフで表示するようになっていた。ストレス量などを判定できるらしい。このように光センサーだけでも,かなりいろんなバイタルデータが取れる。
ちょっと変わったところでは,NTTドコモが,皮膚アセトンガスセンサーについて参考出展していた。皮膚から出るアセトン量は,体脂肪の燃焼の目安となるとのことで,フィットネス関連のアプリと連動すると効果がありそうだ。調べると,糖尿病の人や過度なダイエットを行っている人でもアセトンは増加するらしい。
ちなみに,需要がありそうな血圧については,リストバンドなどでは難しいのか具体的な実装は見られなかった。
詳細なバイタル情報が簡単に取得できるようになれば,それらをゲームにフィードバックするといった動きも当然出てくるだろう。新しいセンサー技術を使ったゲーマー向けデバイスにも期待したいところだ。
ロームの心拍数センサーは,モジュール内にデータ解析機能を内蔵している |
アルプス電気のメガネのつるにまとめたセンサー群。バイタルではないが,加速度センサー,地磁気センサー,光/UVセンサー,温度/湿度センサー,気圧センサーとBlutoothモジュール+電池を収めている |
その他のデバイスと新技術
展示内容では,表示デバイス関連はちょっとさみしかったのだが,全体に4Kから8K化に向けた動きが加速していることが分かる。また,Oculus Riftを使った出展も多く見られた。以下では順不同で目に付いた展示を写真中心に紹介してみたい。
CEATEC JAPAN公式サイト
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