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ゾンビにハンバーガーをふるまうVRゲーム「DEAD HUNGRY」,その開発秘話を聞く! キュー・ゲームスの新オフィスお披露目パーティーの様子もお届け
この日のキュー・ゲームスには,メディアやクリエイターなど,多数の招待客が来訪。「DEAD HUNGRY」のプレイや交流,見学を楽しんでいた。
広々とした新オフィスにはパーティションもなく,自由に行き来できる |
社長室も壁で仕切られているわけではなく,見た目にオープンな雰囲気だ |
壁一面が本棚になっており,参考資料などを閲覧できるようになっているのも印象的 |
プレイの様子をギャラリーが確認できる特別バージョンのDEAD HUNGRYも用意されており,大いに盛り上がっていた |
英語と中国語で書かれた,DEAD HUNGRYのインストラクションカード |
同社には外国から日本に来て働いている社員が多いそうで,この日のパーティーもインターナショナルな雰囲気。「PixelJunk Eden」や「PixelJunk モンスターズ」など,個性的なゲームが生まれた理由が理解できたような気がしたパーティーだった。
VRタイトルにおける移動の課題を逆手に取り
コミカルなテイストを加えた「DEAD HUNGRY」開発秘話
「DEAD HUNGRY」は,イベント会場などで見るようなハンバーガーのキッチンカーのシェフとなって,お腹が空いたゾンビ達にハンバーガーなどを振る舞うというゲームだ。ユニークな題材と,いい意味でのB級感あふれるグラフィックス,そしてVRゲームらしい直感的な操作で,BitSummit会場でも話題を呼んでいた。
筆者もプレイしたのだが,ハンバーグを焼き,レタスやトマトなどと一緒にパンに挟む……という作業が,おままごとのようで面白い。キッチンの中にはハンバーガー以外にもピザやポテトが用意されており,油で揚げたり,オーブンで焼いたりできるあたりも楽しい。
余裕があるうちは,ちゃんとしたハンバーガーを作れるのだが,たくさんのゾンビが迫ってきて忙しくなると,どうしても調理がおろそかになってしまう。焼きすぎて真っ黒になったハンバーグが挟まったハンバーガーや,パンにチーズとレタスだけを挟んだハンバーガー(というよりサンドウィッチ?),しまいには単品のパンやレタス,ケチャップの容器など,とてもお客様にお出しできない感じのブツをゾンビに投げつけてしまうことに。
また,キッチンカーの中にあるものなら何でもパンに挟めてしまうようで,パンに消火器を挟んだ「消火器バーガー」的な新メニューをリリースすることもできるのだが,どんなモノを出してもミスになるわけではない……という懐の深さも印象的だった。
そんな「DEAD HUNGRY」はどのようにして生まれたのか。プログラマーのオルティス・ソト・ホセ・ルイス氏と,デザイナーの大野大樹氏にお話をうかがった。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いできますか?
オルティス・ソト・ホセ・ルイス氏(以下,ルイス氏):
プログラマーのルイスです。
大野大樹氏(以下,大野氏):
グラフィックスを担当した大野です。
4Gamer:
「DEAD HUNGRY」の開発の経緯を教えてください。
ルイス氏:
社内で行われたゲームジャムから生まれたのが「DEAD HUNGRY」です。社外へ発表するためのブラッシュアップも含めて,1か月ほどで開発しました。
4Gamer:
これまでにVRコンテンツを手がけたことはありましたか?
ルイス氏:
今回が初めてです。
大野氏:
僕もこのゲームが初めてですね。
4Gamer:
こうしたユニークなゲーム内容になった理由を教えてください。
ルイス氏:
VRタイトルはプレイヤーが身体を動かすものなので,「移動をどのように扱うか」という課題があります。移動する空間が大きすぎると,設置スペースや動きの検知といったいろいろな問題が出てくるわけです。そこで,ゲームの舞台としては,限られた空間の中で立ち働くキッチンカーがピッタリではないかと思いました。それなら,お客さんが次々とやってくる中,キッチンカーで料理するという手間自体をゲームにしてしまえばいいんじゃないかと。
4Gamer:
キッチンカーだと外には出られないので,移動の問題が解決されるというわけですね。では,一番苦労した点は?
ルイス氏:
やはりVR的なトラッキングの範囲や精度,フレームレートといった部分です。90fpsを下回ると頭を動かした際に違和感が出てしまうので。
4Gamer:
印象に残ったプレイヤーの反応はありますか?
ルイス氏:
普段はゲームを遊ばないような人でも,2分も過ぎればプロのようにてきぱきと動けていたことですね。普通のコントローラではなかなか考えられないことなので,これはVRならではでしょう。
4Gamer:
グラフィックスにおけるテーマや心がけたポイントなどはありますか?
大野氏:
テーマとしては,あえて「B級感」を出すというところを狙っていきました。弊社の作品はカッコ良かったりオシャレだったりするんですが,ほかのスタッフからも好評でしたね。
4Gamer:
では,B級感を狙った理由は?
大野氏:
ルイスからは「昔のポリゴンのレトロなところを,あえて最新のマシンで表現していこう」という話がありました。短い作業時間で3Dモデルを作り,アニメーションまで付けなければならないという条件も影響を与えていますが,結果的に面白い表現になったと思います。モニターを見て,自分で笑ってしまったのは初めてですね。時間がないのは辛いところではあるんですが,だからこそ割り切っていける部分もあったので,そこも良かったのかもしれません。
ルイス氏:
ゲームのコンセプトにマッチした,コミカルなテイストのあるB級感ということです。
4Gamer:
VRコンテンツだと,グラフィックスの作り方も普通のゲームと違ったりするんでしょうか。
大野氏:
作り方自体は普段のゲームと変わりありません。
ルイス氏:
ただ,オブジェクトの裏面などまで作り込まないといけないですし,アップに堪えられるようにテクスチャのクオリティも高くしなければいけません。どういった角度と距離から見られるか,分からないわけですから。
4Gamer:
「DEAD HUNGRY」を一般販売する予定はありますか?
ルイス氏:
今のところはないですね。
4Gamer:
今後もVRタイトルを作っていくのでしょうか。
ルイス氏:
個人的にVRのポテンシャルは計り知れないものがあると思っていますので,いろいろとやってみたいですね。
大野氏:
作りたいですね。今回の制作は楽しかったですし,VRはまだまだ未知の世界ですので,いろいろ実験もしたいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
社内ゲームジャムによる自由な発想と,あえて狙ったB級感によって,直感的で楽しいタイトルとなった「DEAD HUNGRY」。個人的には,キッチンカーの中での“おままごと感”とコミカルさから,年齢を問わずに楽しめるタイトルであると感じられた。さまざまなVRタイトルが出展されたBitSummit 4thにおいて,ユーザー賞を受賞したことからも,評価の高さがうかがえる。現時点では一般販売の予定はないそうだが,今後のさらなるブラッシュアップと発展を期待したいところだ。
キュー・ゲームス公式サイト
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