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「Nexon Developers Conference 2014」の基調講演をレポート。NEXON創業者のKim Jung Joo氏と日韓法人のトップがゲームの未来を語る
当初は33のセッションがあるだけの小規模なものだったが,2011年からは対象が韓国のゲーム業界全体となり,2013年にはセッション数100以上,200人の発表者を含む約1万7000人の業界人が参加するものとなった。
今年のNexon Developers Conference 2014は,「Checkpoint」というスローガンを掲げ,5月27日から29日まで全115のセッションで開催された。本稿ではその基調講演の模様をお届けしよう。
基調講演では,NEXON KOREAの新任CEOであるPark Ji Won氏とNEXON日本法人のCEOであるOwen Mahoney氏が登壇し,「ゲーム会社CEOの役割」というテーマでトークを行うことになっていたが,そこにNEXONの創設者であるKim Jung Joo氏がサプライズで登場。同氏は公の席になかなか姿を現さないことで知られているため,600人の聴衆に驚きを持って迎えられていた。
「ゲーム会社CEOの役割」という少々お堅いテーマではあったが,トーク自体はKim氏が司会を務め,Park氏とOwen氏に意見を聞くという和やかな雰囲気で進んだ。
Owen氏はElectronic Artsで10年間,海外のサービスを統括する副社長を務めた経験がある。Kim氏とは1996年以来の親交があり,ともにゲーム産業の将来について思いを巡らせていたそうだ。
Park氏は「QuizQuiz」や「カートライダー」が大ヒットしていた2003年にNEXONへ入社。日本法人の役員としてグローバル事業とIPO関連業務を担当してきた。
NEXONは「メイプルストーリー」「カートライダー」以降の約10年間,特別なヒット作がない状態で,毎年7%の成長を続けてきたが,これに対してPark氏は「Neople,GameHi,NDOORSなどの実力のある開発会社を買収したため。商業的な成功のみに注力し,事実上,オリジナルゲームの開発ではなく,既存のIPを活用した作品に重点を置いてしまっていた」と反省した。
Kim氏もこの点について「買収ばかりしているようだが,開発はしないのか」と2人に質問。Park氏は「現在の6つのPCオンラインゲームと20以上のモバイルゲームを開発中」と回答した。NEXONがモバイルゲーム市場で遅れをとっているとの指摘については,「(韓国で)2012年の夏以降,モバイルゲーム市場が本格化して,NEXONは既存のヒット作を綿密に分析した結果に沿って開発を進行したが,モバイルゲーム市場のトレンドがほぼ6か月周期で急激に変わることについていけず,ヒット作をリリースできなかった」とした。
今後についてPark氏は「NEXONのDNAを持った新作を2つの方針に基づいて構想している。1つは,市場に存在していないゲーム,もう1つは,すでに市場に存在しているタイプでも,より大きな喜びを与えるゲーム」と語った。
このような構想が反映されたゲームが「メイプルストーリー2」と「野生の地:Durango」とのことだ。
Kim氏は続いて「今後NEXONが変わらなければならない部分は何か」と質問。これに対してOwen氏は「ゲーム産業は5年間の困難な時代を過ごした。北米のコンシューマタイトル開発者はグラフィックスだけに没頭し,Facebookやソーシャルゲーム,モバイルゲームの開発者はヒット作を模倣したゲームだけを作っている。一言で言えば斬新なアイデアによる差別化されたゲームがなかった」と振り返り,「しかし『Minecraft』『EVE Online』のような差別化要因を持つゲームは産業の発展に大きな意味を持っている。NEXONは開発者の直感を信じなければならない」と述べた。
「ゲーム開発において最も重要なことは何か」というKim氏の最後の問いに,Owen氏は,「ゲームこそが最も素晴らしい芸術だと思う。音楽,映画,書籍は一方的なストーリーテリングだが,ゲームはプレイヤーが創造していける。10年経っても人々に記憶されている,優れた芸術作品を世に出せるよう,誇りを持って開発をしなければならない」と回答した。
今年で設立20周年を迎えたNEXONは,世界的なゲーム企業に成長した。最近は彼らの積極的なM&A(合併や買収)がゲーマーを驚かせているが,当然ながらゲーム開発においての努力も変わらず行われているようだ。
Kim氏は今回の講演で,「仕事をしなければならないのに,面白すぎて仕事を忘れてしまうようなものが最高のゲーム」と語った。そんなゲームが生まれることに期待したい。
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