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[GDC 2012]「Minecraft」のノッチ氏と“天才プログラマー”クリス氏が酒を酌み交わし語る。団らんのセッションレポートを掲載
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印刷2012/03/08 19:51

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[GDC 2012]「Minecraft」のノッチ氏と“天才プログラマー”クリス氏が酒を酌み交わし語る。団らんのセッションレポートを掲載

 現在のゲーム業界において,その言動の一つ一つがニュースになるほどホットな人物の一人に「Minecraft」の生みの親である“ノッチ(Notch)”ことマルクス・ペルソン(Markus Persson)氏が挙げられるだろう。
 今回のGDCでも,講演やミーティングなどの予定がそれこそ分刻みで組まれているようで,かなりご多忙な様子。ちょっとでも立ち止まると,すぐにファン(?)に取り囲まれてしまうほどで,まさにインディーズゲームを代表するスーパースターのような存在になっているようだ。

画像集#001のサムネイル/[GDC 2012]「Minecraft」のノッチ氏と“天才プログラマー”クリス氏が酒を酌み交わし語る。団らんのセッションレポートを掲載

 そんな彼から話を聞きだそうと開催されたのが,「Fireside Chat with Markus Persson」(マルクス・ペルソン氏と,暖炉の前で語ろう)というセッションである。暖炉の前といっても,ホストとなったクリス・ヘッカー(Chris Hecker)氏が用意したドット絵のアニメーションを画面に映しただけの会場で,持ち込んだビールを飲みながら語り合うという,なんともフランクなイベントとなっていた。

クリス・ヘッカー氏
画像集#002のサムネイル/[GDC 2012]「Minecraft」のノッチ氏と“天才プログラマー”クリス氏が酒を酌み交わし語る。団らんのセッションレポートを掲載
 ヘッカー氏についても説明しておくと,1990年代前半に,後のDirectXとなる「WinG」の開発に携わり,「Quake」のゲームエンジンをジョン・カーマック(John Carmack)氏と共に作り上げるなど,ゲームの基盤となる技術に貢献してきた人物である。
 現在は,すべてを自身で手がけているという初のゲームタイトル「Spy Party」を制作中(関連記事)のヘッカー氏だが,これまで,経歴という意味では,仮契約のままで業界を渡り歩いてきた一匹狼であり,ゲームデザイナーとしては10歳ほど年の離れたペルソン氏の後輩という立場になる。もちろんプログラミングに関してはペルソン氏もリスペクトする大ベテランで,ゲームとは直接関わりのないプログラマー出身という点でも,共通する点はあったりするのだ。

 まずヘッカー氏は,バーチャル暖炉をダシに使いつつ,Minecraftにおける現実と抽象のバランスについてペルソン氏に尋ねた。Minecraftでは,火はリアルに燃え広がっていく一方で,重力の影響をあまり受けない。またキャラクターの移動速度なども,現実とは違い,かなりゲーム的にアレンジされている。
 これについてペルソン氏は,「Minecraftは,物事をリアルに見せるタイプのゲームではない」と前置きした上で,その開発においては,プレイヤーがスムーズにゲームを体験させるようなデザインを心がけたという。
 まず最終的なゲームの形をビジュアライズしておいて,その後,いかにそこに到達するかをコツコツ積みあげていくのがペルソン氏のスタイルで,根っからのプログラマーではあるものの,その初期段階においては,ゲームシステムとして実現できるかどうかは二の次なのだそうだ。

人気者になった今でも,シャイで優しそうな笑顔のペルソン氏
画像集#006のサムネイル/[GDC 2012]「Minecraft」のノッチ氏と“天才プログラマー”クリス氏が酒を酌み交わし語る。団らんのセッションレポートを掲載
 もっとも,ペルソン氏はまだ5年にも満たない,自身の短いゲーム業界でのキャリアを振り返りつつ,「どちらかというと,私はゲームデザイナーではなくプログラマーとしてのアイデンティティを持っている」とも語っている。
 「たった一人で作り始めたMinecraftを,人に説明したり,バグレポートやサポートをこなしたりしているうちに,どうしても自分が表に出なければならない状態になってしまった。ほとんどアクシデントのようなものです」と,ペルソン氏は笑いながら話していた。

 ただ最近は,ファンであれゲーム業界関係者であれ,人と会って話すことは,自分にとって有益,かつ楽しいことであると考えているそうで,「自分自身の勇気が倍増した」とも感じているという。
 彼が起業したMojangは,今では多くの人員を抱えるほどに成長し,MinecraftのLiveサポートもジェンス・ベルゲンステン(Jens Bergensten)氏に後を任せているそうだ。おかげでペルソン氏自身は以前よりも,プログラミングに勤しむ時間が増えているとのことである。

開発者の数も序々に膨れ上がりつつあるペルソン氏の会社Mojang
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 またMinecraftの成功について聞かれたペルソン氏は,「Minecraftを始めたときは,ブロッキーな世界が広がるだけで,何をして良いのか困惑してしまうことがあったかも知れない」「ただ目の前のオブジェクトをコツコツ叩いて,ブロックがポップアップすると,“おおっ”という驚きが生まれる。この驚きの瞬間が,ゲーマー達の話の種になったのではないか」と自作を分析し,口コミによる広がりがポイントだったと振り返る。
 ヘッカー氏も,MinecraftでMobのスポーンポイントにトラップや迷路を上手く組み立て,水の流れを利用して死んだMobからドロップアイテムを1か所で収集するという遊び「Mob Grinder」を例に挙げ,ゲームのルールを使いながら,こういった規格外の遊びを発明できうるところに,ゲーマー達の興味が引きつけられるのだろうと賛意を示していた。

 ペルソン氏はこれに応え,多くの人が完成してもいないゲームにお金を払ってくれたのは,そうしたゲーム体験について感想をくれるファンやゲーム開発者達と,SNSを通して向き合いながら,ゲームを作り続けられたからだと語る。また彼らと素直に向き合ったことで,開発資金のみならずメンタルの面でも,ペルソン氏は支えられたそうである。

「Mob Grinder」
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 トークセッションの最後には,一時期物議をかもした,ペルソン氏の海賊版擁護の発言について,改めて質問が行われた。
 より責任ある立場となったペルソン氏だが,この質問にこれまでの発言を撤回することなく,「海賊版がゲームのセールスに直接つながると言っているわけではない」としたうえで,「海賊版をプレイした結果,おかしなバグが起きない製品版に転じるプレイヤーだっているはず」と回答。「Minecraftのようなビジネスモデルなら,海賊版ユーザーを正規のユーザーに変えるチャンスはいくらでもある」とし,「海賊版を利用することが正しいとは思っていないが,何か悪さをした友人にイチイチ説教などしない。海賊版なんて,そのくらいの小さな問題にしか思えません」と述べ,ゲーム業界がビジネスモデルを変えていく方が建設的であるという自身の考えを示した。

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