2018年11月23日,幕張メッセにて,国内最大級のeスポーツイベント
「RAGE 2018 Winter」が開催された。会場内では,
「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」のハイクラス部門のトライアウトが行われたほか,「
リーグ・オブ・レジェンド」(以下,LoL)のオフラインイベント
「RAGE League of Legends SUMMONER’s FEVER」などが行われており,大きな賑わいを見せていた。以下,その模様を写真とともにレポートしていく。
「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」は,プロ選手6名(
ウメハラ選手,
板橋ザンギエフ選手,
ネモ選手,
ときど選手,
マゴ選手,
ふ〜ど選手)をリーダーとして,3名1組のチームで戦う
「ストリートファイターV アーケードエディション」(
PC /
PS4)の公式リーグ戦だ。
チーム内の3名はエクストリームクラス(プロ選手),ハイクラス(プロライセンス非所持者),ビギナークラス(初心者)とカテゴリ分けされており,実力のまったく違う3名が協力して戦っていく変則的なルールとなっている。
本会場で行われていたのは,その「ハイクラス」部門のトライアウト。ここで10名まで絞られた選手達は,のちに行われる最終選考のステージへと進むことになる。
実況解説を務めていた大和さん(写真左)とマゴさん(写真右)
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会場には練習スペースが設けられており,試合前の選手たちが練習試合に取り組んでいた
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完全実力勝負のトーナメント式大会によって行われたトライアウト。通常の大会とは異なる独特の緊張感が辺りを包んでいた
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トーナメントを勝ち上がり,最終選考へ駒を進めたのは以下の10名となる。
オニキ(かりん),さかがみ(バイソン),こばやん(アビゲイル),もっちゃん(ファン),あんまん(ユリアン),ひびき(リュウ),きのこボクサー(バイソン),いかはら(キャミィ),かわの(コーリン),makinomaki(バイソン)
最終選考に駒を進めた10名の選手達。最終選考は,テレビ朝日の番組「お願い!ランキング」の放送内で行われる予定だ
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一方,会場の奥ではLoLのオフラインイベント
「RAGE League of Legends SUMMONER’s FEVER」が開催されていた。タレントの
ケイン・コスギさんや日本のプロ選手など,数多くのゲストが参加していた本イベントだが,目玉となっていたのは,韓国からのゲストである
Faker選手,
Bang選手の両名だ。ともに世界的なスター選手だが,スケジュールの都合上,海外のこういったオフラインイベントに参加することは滅多にない。そんな二人の姿を一目見ようと,会場には多くのファンたちが詰めかけていた。
Faker選手:2013年から韓国のチーム「SKT T1」に在籍。世界大会2013,2015,2016年度優勝,2017年度準優勝。プロ同士の試合の中でも異彩を放つプレイスキルの高さと,アグレッシブなプレイスタイルが持ち味。2017年にはTwitchで初めての配信を行い,同時視聴者数24万5000人を達成。個人配信者による視聴記録を塗り替え,話題を呼んだ
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Bang選手:Faker選手から約1年遅れでSKT T1に加入。世界大会2015,2016年度優勝,2017年度準優勝という実績を残している世界最高峰のADCプレイヤー。得意チャンピオンはエズリアル,ルシアン,カリスタなど。先日,北アメリカのチーム「100 Thieves」への電撃移籍が発表され,世界中のファンを驚かせた
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また,会場内には抽選に当たった人がプロ選手と1vs1モードで対戦できるコーナーや,専属コーチにレッスンしてもらえるコーナーなどが設けられており,こちらもたくさんのファンたちで賑わっていた。
プロ選手によるマンツーマンのレッスン。ファンにとっては最高のひとときになっただろう
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DNGの物販コーナーでは,商品を買うと選手たちのサインが貰え,記念撮影まで行えるという「チェキ会」が行われていた。試合中には見せない,Ceros選手(写真右)の笑顔が印象的
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14:30から特設ステージで開催された「ケイン・コスギのパーフェクトマッチ」では,タレントのケイン・コスギさんを中心とするストリーマーチーム vs プロ・アマ混合チームの対決が行われた。
ストリーマーチームは,ケイン・コスギさん(ボット),
スタンミさん(ジャングル),
象先輩(サポート),
JACKPOT TEEMOさん(トップ)の4名に,ゲストのFaker選手(ミッド)を加えた5名。
Faker選手が登場する前に,「Fakerセンパイが味方にいて……」とネタバラシしてしまい,慌てるスタンミ選手
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ストリーマーチームの中心に座る,LoL界のレジェンド,Faker選手。なんとも不思議な光景だ
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対するプロ・アマ混合チームは,
Ceros選手(ミッド),
hachamecha選手(ジャングル)というプロ2名に,会場から抽選で選ばれたファン3名を加えた5名,という体制で戦いに臨む。
会場には2枚の大型モニターが設置され,たくさんのファン達が試合の行方を見守っていた
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この日の実況・解説を務めたeyes氏(写真左)とRevol氏(写真右)。LoLの実況解説といえばこの2人
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各プレイヤーの腕前にばらつきがあるため,どんな展開になるかまったく予想がつかなかった本イベントだが,ストリーマーチームの立てていた作戦は
「相手チームの中心となるであろうCeros選手を徹底的に潰す」というものだった。
「混合チームの中心となるのは,Ceros選手,hachamecha選手の両名になるのは明白。ならば,ジャングラーであるhachamecha選手と違い,常にレーンに姿を見せているCeros選手を狙っていこう」ということだろう。そして用意されたのが「Faker選手のルブランによるオールイン + スタンミ選手のノクターンのパラノイア(R) + 象先輩のカーサスの鎮魂歌(R)」というあまりにも無慈悲な即死コンボ。序盤にFaker選手をソロキルするなどして見せ場を作っていたCeros選手だが,3人がかりで襲いかかられてはお手上げ状態だ。
キルを重ね,強力な装備をそろえたFaker選手のルブランが暴れまわり,誰にも止められなくなったところで試合が決まり,見事,ストリーマーチームが勝利を収めた。
「こんなの絶対回避できないでしょ……」というCeros選手の心の声が聞こえてきそうだった。しかし,1対1の場面ではFaker選手をキルするなどして会場を沸かせていた
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スタンミ選手にうながされ,グータッチをするFakerセンパイ。LCK(韓国プロリーグ)では見られない貴重なシーンだ
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タレントのケイン・コスギさんは,プライベートでもLoLをプレイしており,配信や公式イベントへの参加も積極的に行っている。試合中の表情は真剣そのものだった
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試合後のインタビューで「チーム内のコミュニケーションはどうでしたか?」と聞かれ,「パーフェクトでした!」と答えるケイン・コスギさん
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試合後には重大発表があるとして,株式会社CyberZ 取締役の
青村陽介氏と,Riot Games Korea eSports 統括責任者の
オ・サンホン氏が登壇。2019年1月より,Abema TVとOPENREC.TVにて,
韓国のLoLプロリーグ「LCK」のオリジナル日本語実況解説つき公式放送が放映されることが発表された。
世界最高レベルの試合が行われているLCKだけに,試合の詳細な解説を聞きたかった日本のファンは多いはず。また,LCKとAbema TV,OPENREC.TVに関するさらなる取り組みについても現在話が進められているそうで,続報に注目しておきたい。
株式会社CyberZ 取締役:青村陽介氏
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Riot Games Korea eSports統括責任者:オ・サンホン氏
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また,同会場では17:30からスペシャルエキシビションマッチが開催され,Faker選手,Bang選手のほか,ファン投票によって選ばれたプレイヤー8名を交えたチーム戦が行われた。
Fakerチーム,Bangチームにそれぞれ分かれて戦った10名(写真左端はMCのkatsudion氏)。その大半がプロとして活躍するプレイヤー達だ。(写真右から,Evi選手,しゃるる選手,Ceros選手,Enty選手,Bang選手,Faker選手,かずーた選手,Yutapon選手,hachamecha選手,Raizin選手)
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こちらの試合はその大半がプロの選手ということもあり,2試合先取形式でスクリム(プロの練習試合)さながらのハイレベルな戦いが繰り広げられた。
この日,最高潮の盛り上がりを見せたのは2試合目。集団戦でFaker選手のゾーイがクアドラキル(一人で4人をキル)を達成し,さらにCeros選手をキルしてペンタキル達成……という場面で,味方であるhachamecha選手がそれを阻止してしまったのだ。
Bangチームの選手達を4人葬り,残るのは瀕死状態のCeros選手のみ。会場の誰もがFaker選手のペンタキルを期待したが……
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キルをFaker選手に譲れず(譲らず?),取ってしまったhachamecha選手
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そのあと,しゃるる選手の好プレイによって逆転負けを喫してしまったFakerチーム。しかし,Faker選手は試合後のインタビューで「あそこで僕がペンタキルを取っていれば勝てていたと思います」とジョークを飛ばす余裕を見せていた
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普段は強気な発言で知られるhachamecha選手だが,Faker選手にこう言われては返す言葉がない
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プロ同士ならではのハイレベルな攻防の応酬となり,1勝1敗でもつれ込んだ最終戦。この試合では,カイ=サをピックしたBang選手がスーパープレイを連発してチームを勝利へと導き,2勝1敗にてBangチームの勝利となった。
試合後のインタビューで「コミュニケーションがスムーズに取れたことに驚きました。まるでスクリムをやっているかのようでとても楽しかったです」と述べたBang選手。これからは新天地,北アメリカのチームで活動することになるが,言葉の壁を乗り越えた活躍に期待したい
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こうして大盛況のうちに幕を閉じた「RAGE League of Legends SUMMONER’s FEVER」。印象に残ったのは,ゲストであるFaker選手,Bang選手をはじめとするゲストたち全員が,とにかく楽しそうにLoLをプレイしていたことだ。
大会の合間に行われたインタビューで,「LoLというゲームの魅力は何ですか?」と問われたFaker選手とBang選手は,「プレイしていて面白いところ」と答えていた。LCKや国際大会などの試合では,試合に勝っても表情を動かさず,淡々としているイメージの強い両名だが,本日のイベントで見せていたのは,無邪気な少年のようにゲームを楽しむ姿だった。「さっきのインタビューで答えていたのは,本心から出た言葉だったんだな……」としみじみと思わされた次第である。
そして……同じチームで約5年間をともにしてきたFaker選手とBang選手だが,来シーズンは別々のチームで道を歩み始めることになる。――彼らの挑戦は,まだ終わらない。