業界動向
Access Accepted第463回:開幕間近のE3 2015では,どんな作品が我々を待っているのか
1995年以来,今年で21回を迎えるE3 2015の開催が来週に迫ってきた。PlayStation 4とXbox Oneという2つの新世代コンシューマ機は北米ゲーム市場にすっかり浸透し,それらが持つ高い能力を使った,美しいグラフィックスの新作が各パブリッシャからリリースされそうだ。今週は,来るべきE3 2015に備え,欧米各社の動きをまとめてみた。
まず気になるのは,やはりプラットフォームホルダー
北米ゲーム業界最大のイベントであるE3 2015が,ロサンゼルスのコンベンションセンターで開催される。期日は北米時間の6月16日〜18日だが,ご存じのように,開催前には各プラットフォームホルダーや大手パブリッシャのプレスカンファレンスが実施される。今年は新たにBethesda Softworksが名を連ねており,同社のカンファレンスはE3開催の前々日が予定されているため,一大イベントの幕は現地時間の6月14日に切って落とされることになる。
2013年末に北米で発売されたSony Computer Entertainment(以下,SCE)のPlayStation 4と,MicrosoftのXbox Oneは,約1年半の時間を経て欧米ゲーム市場にすっかり浸透した。普及については,ヨーロッパでも人気の高いPlayStation 4の優位が確実なのだが,今年のMicrosoftは,Windows 10およびDirectX 12という旬の話題をひっさげてE3 2015に乗り込んでくるはずだ。
DirectX 12がXbox Oneに導入されることに加え,Windows 10を搭載したPCとXbox OneがXbox Liveを介して結びつくことにより,これまでになかったゲーム環境が構築できるとMicrosoftはアピールする。巻き返しを図るMicrosoftのXbox One専用タイトル,先陣を切るのは,2015年内にリリースされる「Fable Legends」だ。クロスプラットフォーム環境でのマルチプレイや,PC向けのFree-to-Play版など,さまざまな新フィーチャーがE3会場でも注目されるだろう。
Microsoftの攻勢を受けて立つSCEだが,こちらは同社幹部が,「ファーストパーティーのタイトルは,昨年ほどのラインナップにはならない」と述べるなど,スタートダッシュの成功のあと,当然来るはずのペースダウンを迎えている雰囲気がある。それでも,後述するように「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」を始めとする大作の続編が発売を控えているほか,SCEが「ファーストパーティタイトルとして扱う」とした「No Man's Sky」など,大化けしそうなインディーズタイトルも相変わらず豊富だ。
ゲーム向けのデバイスについても,この2社が注目を集めることになるだろう。Virtual Reality(仮想現実)の「Project Morpheus」を開発するSCEと,Alternative Reality(代替現実)の「HoloLens」を開発するMicrosoft。似て非なるコンセプトを持つ2種類のヘッドマウントディスプレイは,新たなゲーム環境としてE3 2015で大きく取り上げられるはずだ。
もちろん,時間をかけて新世代コンシューマ機に慣れてきた各デベロッパも,昨年より手の込んだ新作を投入してくるはず。というわけで,今週はSCEとMicrosoftを含む欧米大手パブリッシャ10社が「E3 2015で何を見せてくれるのか」について,さまざまな情報をもとに予想してみた。来週に迫ったE3 2015に備えて,ぜひチェックしてほしい。
■Activision Blizzard
規模や知名度に比べて,年間にリリースされるタイトルの数が非常に少ないのがActivision Blizzardの特徴だ。シリーズ最新作「Call of Duty: Black Ops III」については,シアター展示だけでなくプレイアブル公開も行われるという情報がある。
好調な「Destiny」は当然として,新作タイトルであるリズムゲーム「Guitar Hero Live」と,ファミリー向けのアドベンチャー「Skylanders: SuperChargers」がショーフロアを賑わせそうだ。さらに,スケートボードゲーム「Tony Hawk's Pro Skater 5」が2015年内にリリースされる予定なので,今年は例年以上に充実したブースになりそうな気がする。
■Bethesda Softworks/Zenimax Media
最初に触れたとおり,E3 2015開催前に自社のプレスカンファレンスを行うBethesda Softworksは,「The Elder Scrolls Online」のPlayStation 4版とXbox One版の発売を控えている。E3 2015開催の段階ではすでにサービスインしているはずなので,会場でのプレイアブル展示は間違いないところだ。
とはいえ,本命はやはり2015年内にもリリースされるという噂もある「Fallout 4」だろう。発表と同時に大きな話題となった「Fallout 4」は,すでに「Steam」などで予約受付が始まるなど,順調な開発ぶりが窺える。SCE,またはMicrosoftのプレスカンファレンスでも大きく扱われそうで,今年のE3ではBethesdaが,イベント全体の話題をかっさらう存在,いわゆる「ショー・スティーラー」になる可能性が高い。
このほかid Softwareが仕切り直した「DOOM」や,チーム対戦専用のオンラインFPS「BATTLECRY」などが登場するはずだ。
■Deep Silver
「Dead Island」シリーズに「Saint's Row」シリーズ,そして「Metro」シリーズと,コアなゲームファンに注目されるラインナップで躍進するDeep Silverだが,これまで発表された「Dead Island 2」と「Homefront: The Revolution」は,どちらも発売が2016年に延期されている。
そんな中,気になるのが,稲船敬二氏率いるComceptが開発を進める「Mighty No.9」だ。欧米でのパブリッシングを担当するDeep Silverが同作をE3 2015でどのように盛り上げてくれのるか,大いに期待したい。
■Electronic Arts
毎年,展示される作品数の多いElectronic Artsだが,文句なしに今年の目玉と呼べるのは,Lucas Filmとコラボした「Star Wars: Battlefront」だろう。2015年11月発売ということで,プレイアブルデモも存在しそう。「バトルフィールド」シリーズのコアなファンと,FPSなどプレイしたこともない「スター・ウォーズ」ファン,どちらに力点を置いているのか? どのようなプレイフィールなのか? など,非常に興味深い。
このほか「FIFA」「Need for Speed」シリーズの新作や,発表済みの「Mirror's Edge」最新作にも期待できるし,BioWareやRespawn Entertainmentから何かの発表があってもおかしくはないタイミングでもある。
■Microsoft Games
「Halo 5:Guardians」の発売を控えるMicrosoft Games。上記の「Fable Legends」のほか「Forza Motorsport 6」などのファーストパーティタイトルも充実しており,さらにサードパーティのXbox One専用タイトル「Rise of the Tomb Raider」にも注目が集まる。
昨年のプレスカンファレンスで公表されながら,この1年,ほとんど続報がなかったプラチナゲームズの「SCALEBOUND」,そしてシリーズ3作めとなるクライムアクション「Crackdown」といったゲームも気になるが,噂の「Gears of War」最新作や,人気の衰えない「Minecraft」の新展開もあるかもしれない。
■Sony Computer Entertainment
2014年12月にトレイラーが公開され,2016年の発売に向けてようやく動き出した感のある「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」は,やはりPlayStation 4専用タイトルにおける最大の注目作だろう。
「God of War IV」については,どれだけの情報が新たに公開されるのかが気になるところ。ロボット恐竜が登場するアートワークがリークされたGuerrilla Gamesの新作は,果たして出てくるだろうか。
もちろん,インディーズゲームも楽しみで,Hella Gamesの「No Man's Sky」を始め,Media Moleculeの「Tearaway Unfolded」,Eat Sleep Playの「Drawn to Death」,そしてQgamesの「The Tomorrow Children」など,圧巻と言っていいタイトル群になっているようだ。
■スクウェア・エニックス/Eidos Interactive
「シンラ・テクノロジー」を核にした新しい展開(関連記事)を発表したスクウェア・エニックス。E3 2015では,Eidos Interactiveの注目タイトルが目白押しだ。中でも,2014年1月に新作の存在が公式にアナウンスされながら,続報がまったくないまま1年半が経過した「Hitman」シリーズ最新作に,いよいよ動きがありそう。
また,前作「Deus Ex: Human Evolution」と,オリジナルの「Deus Ex」(2000年)をつなぐ作品になると思われる「Deus Ex: Mankind Divided」の詳細も発表されるはず。もちろん,あり得ないようなド派手なアクションが魅力の「Just Cause 3」も忘れてはならない。
■Take-Two Interactive/2K Games
「Borderlands 3」の開発が噂される2K Gamesだが,今のところは目立った動きはなく,E3 2015では,チームベースのオンライン対戦ゲーム「Battleborn」と,つい先日,制作が発表された「XCOM 2」の2本をプッシュしてきそうだ。
Gearbox Softwareが開発する「Battleborn」は,個性的なキャラクターを組み合わせてチームを作ることにより,さまざまなプレイスタイルに対応。Firaxis Gamesの「XCOM 2」はエイリアンに支配されていることを一般市民が気付いていないという,その世界観がユニークだ。どちらも優秀なデベロッパが開発を担っているので,ゲームの出来には十分期待できるところ。
■Ubisoft Entertainment
Ubisoft Entertainmentの看板である「Assassin's Creed」シリーズの最新作は,舞台を19世紀のイギリスに移した「Assassin's Creed Syndicate」だ。開発は,従来作を手がけてきたモントリオールではなく,ケベックのスタジオが担当しており,長く続いてきたシリーズの再出発を狙っているようだ。ギャング同士の大規模な抗争や,高低差の大きい市街地でのパルクールといった要素に期待できそう。
トム・クランシーの名を冠したタイトルとしては「Rainbow Six Siege」と「The Division」の2作があるが,「The Division」の発売は2016年に延期されてしまったので,今年は姿を見せないかもしれない。
Ubisoftを代表するゲーム開発者だったミシェル・アンセル(Michel Ancel)氏が独立して手がける初の作品「WiLD」や,長らく情報のない「Beyond Good&Evil 2」などの動きも気になるところだ。
■Warner Bros. Interactive Entertainment
ワーナー・ブラザーズ映画が配給するタイトルのIPを武器に,次々とヒットを生み出しているという印象の強いWarner Bros. Interactive Entertainmentだが,E3 2015会場では,発売間近の「Batman: Arkham Knight」を前面に押し出したブースを用意してくるはずだ。
また,「Mad Max」も忘れてはならない同社タイトルで,長らく沈黙を保ってきた本作についても,今回は大きくアピールされることを期待している。また,レゴシリーズも活発で,「Lego Batman 3: Beyond Gotham」「Lego Marvel's Avengers」,さらに「ザ・シンプソンズ」や「Portal」などの世界が混在したユニークな「Lego Dimentions」も気になるところ。
「Middle-earth: Shadow of Mordor」を一段落させた傘下のMonolith Productionsも,そろそろ新作に向けて動きだす頃だ。
著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
来週,来々週の「奥谷海人のAccess Accepted」は,著者取材のため休載いたします。次回掲載は,6月29日を予定しています。
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