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Access Accepted第398回:ValveはPCゲーム業界の救世主になるか
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印刷2013/10/21 12:00

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Access Accepted第398回:ValveはPCゲーム業界の救世主になるか

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 「SteamOS」「Steam Machine」,そして「Steam Controller」など,ゲームソフトのメーカーという枠を大きく超える新発表を次々に行うValve。2002年の発表当時,ほとんど注目されなかった「Steam」を,10年以上の歳月をかけて世界最大規模のサービスに成長させてきた実績を持つ同社が狙う,「リビングルームへの進出」「脱Windows」という2つの夢は実現するだろうか。


5400万の巨大市場を抱えるオンライン配信サービス
「Steam」


 2002年3月,サンフランシスコで開催されたGame Developers Conference 2002において,Valveのゲイブ・ニューウェル(Gabe Newell)氏が,開発中の新たなオンライン配信サービス「Steam」のレクチャーを行った。この講演には筆者も参加しており,その様子は2002年3月23日に掲載した記事でもお伝えしたとおりだ。
 筆者の印象だが,この発表に立ち会った欧米ゲームメディアの多くは発表内容が「Half-Life 2」「Team Fortress 2」などではなかったことに失望し,さらにニューウェル氏の語る「Steam」のビジョンが正確に理解できていないようだった。それは筆者も同じだが,メディアだけでなくプレスリリースや発表記事を読んだ多くのゲーマーも同じ感想を持ったらしく,北米ゲームメディアのGameSpotに掲載された「Steam」の記事には,わずか3つの読者コメントが付いただけだった。

2002年の発表当初は,「Counter-Strike」専用のサービスなどと思われていた「Steam」だが,2004年にはいち早くインディーズゲームに裾野を広げ,さらにはMac版やLinux版を発表。「Steam Workshop」や「Steam Greenlight」「Steam Trading Cards」といったユニークなサービスを繰り出し,今やPCゲーム市場最大クラスのコミュニティを抱えるまでになった
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 2001年にWindows XPがリリースされ,2002年には「Battlefield 1942」「Medieval: Total War」「The Elder Scrolls III: Morrowind」,そしてPC版の「Grand Theft Auto III」が登場するなど,時代としてはPCゲーム市場もそれなりに盛り上がっていた頃だ。しかし,2000年にPlayStation 2,2001年にニンテンドーゲームキューブXbox,さらにゲームボーイアドバンスが登場したことで,多くのゲーマーの目が新しいコンシューマー機向けの新作ゲームに向けられつつあったのも事実だろう。
 とりわけ,最新のDirectXを採用したXboxはPCゲーム並みのリッチな3Dグラフィックスを実現し,それを使い切った「Halo: Combat Evolved」は大ヒットを記録。「PCゲームは死んだ」という言説が聞かれるようになったのもこの頃だったと記憶している。

 ともあれ,そんな海のものとも山のものともつかなかった「Steam」の10年以上にわたる成長ぶりは,読者もよくご存じのはずだ。現在,5400万以上の登録アカウント数を誇り,ゲームライブラリは2000作品以上,1日あたり660万人ものユーザーが利用するという,巨大なプラットフォームになった。
 Valveは株式を上場していないため正確な数字は分からないものの,PCゲーム販売におけるシェアは70%に達するとされている。
 人気の高い自社タイトルを擁するElectronic Artsの「Origin」や,Ubisoft Entertainmentの「Uplay」はライバルとして健闘しているものの,2012年7月に大きなアップデートを行ったMicrosoftの「Games for Windows LIVE」はSteamの鉄の壁を崩すことができず,2014年中に閉鎖されることが発表された。

Steam Controller
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OSやハードウェアにおよぶ,Valveの新戦略


 そんなValveが2013年10月に発表したのが,Linuxをゲーム向けに最適化したオペレーティングシステム「SteamOS」,そしてValveのパートナーとなるハードメーカーから発売されるSteamOS搭載PC「Steam Machine」,さらに,マウスとキーボード入力を前提に作られたPCゲームをプレイするために考えられたコントローラ「Steam Controller」だ。

 もっとも,Valveは「Steam for Linux」を2012年7月に発表しており,また「Steam Machine」は「Steam Box」としてファンやメディアに知られていたプロジェクトだ。そのため「電撃的発表」と言うのはちょっと無理があるが,PlayStation 4やXbox Oneの登場にゲーム市場が沸騰するこの時期に,わざわざぶつけてきたことが興味深い。
 10年あまり前,「Steam」の発表は(当時の)次世代コンシューマ機の前にほとんど話題にならなかった。今回,同じような状況下でどういう展開になるのか? Valveは10年間の雪辱を狙っているのかもしれない。

 「SteamOS」のベースになっているのは,上記のようにUNIXの互換OSであるLinuxだ。Linuxは組み込み機器からサーバー,そしてスーパーコンピュータまで広く使われているが,それなりの知識がないと理解できないところも多く,一般ユーザー向けとはいえなかった。現在のシェアは,Windowsの72%,Macの22%に比べて,Linuxは6%に留まる。またSteamでは,全ユーザーのうちわずか1.7%がLinuxの使用者だという。

ハイクオリティのグラフィックスをセールスポイントにする次世代コンシューマ機だが,すでに4年近くDirectX 11ベースのゲーム画面に親しんでいるPCゲーマーには,それほど驚きはないかもしれない。写真は,Remedy EntertainmentのXbox One専用タイトル「Quantum Break」
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 しかし今,PCゲームのデベロッパにはMicrosoftに対する不満が広がっている。Xbox 360の発売と同時期に公開されたDirectX 9.0c以降,DirectXのアップデートは停滞気味になり,最新技術に対応したDirectX 11までに実に6年の歳月がかかっている。
 10月にリリースされたWindows 8.1,そして発売予定のXbox Oneでは,DirectX 11.2が搭載されるものの,多くの開発者を不安にさせるのは,DirectXについてのロードマップが発表されていないことだ。
 このフラストレーションはゲーム開発者だけでなく,NVIDIAなどのハードウェアベンダーにも共通しているという。グラフィックスチップはDirectXのアップデートに歩調を合わせて進歩してきたが,このままの状況が続けば,ユーザーにアピールできるだけの新しい製品が作れなくなり,世代交代が進まないからだ。

 2013年8月にシアトルで開催されたPAX Prime 2013でも,そういったPCゲーム開発者の不満が爆発した。PCゲーム業界の著名な開発者達が「PCゲームの未来は,WindowsとDirectXがない世界」とし,集まった600人の聴衆から大喝采を浴びたことは,8月31日に掲載したレポート記事でもお伝えしたとおりだが,脱Windows,脱DirectXは,多くのPCゲーム開発者が待望するところなのかもしれない。
 「Torment: Tides of Numenera」「Project Eternity」,そして稲船氏の「Mighty No.9」など,Kickstarterの調達資金額上位を占めるプロジェクトのほとんどがLinuxに対応していることも,その現れと言えそうだ。


WindowsとDirectXのないPCゲームの未来は
やってくるのか?


 Linuxベースの「SteamOS」は,グラフィックスAPIとして「OpenGL」をサポートすると思われるが,Valveは2012年8月,公式ブログにおいて,同じスペックのPCで「Left 4 Dead 2」のベンチマークテストを行い,Windows 7(DirectX 11)に比べてLinux(OpenGL 4.x)のほうが20%ほど,フレームレートが向上したことをアピールしている

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 Valveは,βテスターに向けて300台の「Steam Machine」を提供すると発表しているが,それらは,CPUとしてIntelのi7-4770,i5-4570,i3のいずれか,またGPUとしてはNVIDIAのGeForce GTX TITAN,GeForce GTX 780,GeForce GTX 760,GeForce GTX 660のいずれかという,幅のあるものになっている。メインメモリが16GBのDDR3-1600,グラフィックスメモリが3GBのGDDR5であること以外,スペックは統一されておらず,同じ「Steam Machine」でも,パートナーとなるベンダーから,異なるスペックやデザインのものが発売されるはずだ。また,Valveがハードウェアを制作/販売するという話は発表されていない。

 「Steam Machine」は最低で500ドルほどになると見積もられているが,スペックが合っているのなら,手持ちのPCに無料の「SteamOS」と「Steam」を導入してSteam Machine化することもできる。また,購入した「Steam Machine」のCPUやメモリを交換することも可能であり,さらに「OpenGL」については,IntelやNVIDIAが参加する業界団体Khronos Groupにより定期的に仕様策定が行われる。こうしたオープンな環境が,クローズドなコンシューマ機に対する,一つのアドバンテージだといえるだろう。

 βテスト期間中は,約3000のタイトルがプレイでき,そのうち数百がネイティブ化されているとのこと。さらに,詳細は今のところ不明だが「SteamOS」以外のプラットフォーム向けのタイトルも,Valveの提供するHome Streaming機能で楽しむことができるという。
 また,現在テストが進められている「Steam Family Sharing」は,最大10人の家族や友人とローカルやオンラインでゲームをシェアできるという,なんとも寛大なサービスになる予定だ。

各ハードウェアベンダーからさまざまな種類の「Steam Machine」がリリースされることを示す公式アート。「Steam for Linux」や「Steam Big Picture」など,いくつかの伏線を用意していたValveだが,果たしてPCゲーム市場に大きな変化をもたらせるだろうか
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 このように書くと「Steam Machine」はまさにPCゲームの救世主のように思えてくるが,実際どれほどのゲーマーが「Steam Machine」に乗り換えるのかは分からない。筆者としては,当初はやはり,エンスージアストのおもちゃというレベルに留まるのではないかと思っている。高価な専用マウスを購入するコアなFPSプレイヤーが,コントローラを片手にソファに座ってプレイする構図はちょっと見えづらく,コンシューマ機が築いてきたリビングルームの牙城を突き崩すのは容易ではなさそうだ。PCは生産のための道具でもあり,「Steam」専用機では魅力に乏しい。ゲーム以外の部分で何が提供できるのかも,重要になるだろう。

 「Steam Machine」「SteamOS」のテスト用機材は2013年内に配布され,順調に行けば2014年第1四半期に正式にローンチされる予定だ。Valveの戦略は,果たして目論見どおりに進むのか。次世代コンシューマ機の登場に合わせるように登場したこの新たな動きには,今後も注目していきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
  • 関連タイトル:

    Steam

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