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Access Accepted第328回:メジャーになりたい欧米ゲーム業界
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印刷2011/12/19 17:40

業界動向

Access Accepted第328回:メジャーになりたい欧米ゲーム業界

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第328回:メジャーになりたい欧米ゲーム業界

 規模で映画や音楽を超え,一大娯楽産業へ成長したはずの欧米ゲーム業界だが,いまだにメインストリームとは言い難い。老若男女,誰にでも知られ,親しまれるエンターテイメントとは考えづらいところがあるからだ。北米で2011年12月10日に放映された「Spike TV Video Game Awards」では,さまざまなゲームの新作発表が相次いだものの,番組(およびイベント)の内容はゲーム業界の規模感やゲームの面白さを伝えるにはお粗末で,多くの人々をテレビの前に釘付けにさせるほどのものではなかった。むしろ,欧米ゲーム業界の持つ,ある種のコンプレックスのようなものさえ垣間見えたのだ。


欧米ゲーム業界で重要性を増す,「Spike TV Video Game Awards」


 アメリカ時間の2011年12月10日,第9回となる「Spike TV Video Game Awards」が放映された。全米規模のケーブルテレビ局であるSpikeは,「MTV」などと同じViacom系列の企業で,テレビシリーズ「CSI」など,シリアスなドラマを多く放映しており,平均視聴者年齢は42歳とそこそこに高めだ。そのためか,プロレス中継などを中心に若者をターゲットにした番組にも力を入れており,この「Spike TV Video Game Awards」(以下,Spike VGA)も,20代〜30代のゲーマー層にアピールする目的で開始されたといわれている。

今年で第9回となり,欧米ゲーム業界での立ち位置を次第に強固にしている「Spike TV Video Game Awards」。ゲームムービーの配信サービスで知られるGameTrailers.comと提携しているためか,イベントでは,GameTrailers.comのエクスクルーシブという形で新作ムービーが公開されていた。番組では新作発表が次々に行われたが,実際の受賞セレモニーの様子は極端なほど省かれていた
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第328回:メジャーになりたい欧米ゲーム業界

 全米の9600万世帯にアプローチできるため,欧米ゲーム業界にとってのSpike VGAに対する重要性は年々増しているようだ。ショッピングシーズン真っ只中で忙しい時期にもかかわらず,翌年の新作をSpike VGAで公開するというあたりに,それが見て取れる。
 今年は,Naughty Dogのゾンビアクション「The Last of Us」,有名なRTSシリーズの最新作「Command & Conquer Generals 2」,Xbox 360専用ホラーアドベンチャー「Alan Wake: American Nightmare」,そしてEpic Gamesの新IP「Fortnite」など,2012年から2013年にリリースされる予定のタイトルの初めてのムービーが次々に公開された。
 しかし,欧米ゲーム業界をウォッチするジャーナリスト,あるいはゲーマー的視点からこのイベントを見ると,開催の意義はなんなのか,業界はこの番組を通して何をしようとしているのかよく分からない,というのが正直なところだ。

 ときには3〜4時間におよぶ音楽や映画の受賞イベントと比較して,1時間30分と短いこの番組で,受賞シーンが流れたのは,「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」「キャラクター・オブ・ザ・イヤー」「ベストシューティングゲーム」,そして「ベストスタジオ」の4つだけ。ほかの20部門あまりの受賞の模様は,テレビ中継が始まる前に行われていた模様で,会場に招待されたゲストの中にも,番組の放映開始時刻に合わせて来たために受賞場面を見逃した人もいたようだ。
 「キャラクター・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた「Batman: Arkham City」のジョーカー(の声)を担当したマーク・ハミル氏は,「声優賞」部門では「Portal 2」のウィートリーに敗れたが,そのことについて,番組内でチラっと話が出るまでハミル氏は知らなかったらしい。このことについてハミル氏は,Twitterに「なんて妙な受賞式なんだ。賞を逃すのは仕方ないけど,イベントに参加しているのに,誰が賞を取ったのかさえ分からない。それにしても,なんでこんな後ろに座らされているんだろう」と不満を書き込んでいた


メインストリームになり切れない,
欧米ゲーム業界のコンプレックス


 Spike VGAでは,新発表のタイトルと,すでに制作が発表された作品のエクスクルーシブムービーを合わせて,新作13本が発表されたが,“Game Awards”という名前にもかかわらず,受賞セレモニーが4部門しか放映されなかったのは,おかしな話だろうと誰もが思うだろう。ゲームメーカーにしても,2011年にリリースされた作品をみっちり紹介してもらい,ショッピングシーズンの援護射撃をしてほしかったというのが本音ではないだろうか。
 その受賞作品にしても,ゲーム・オブ・ザ・イヤーを取った「The Elder Scrolls V: Skyrim」をはじめ,「Batman: Arkham City」や「Portal 2」「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」「Uncharted 3: Drake's Deception」「Call of Duty: Modern Warfare 3」など,おなじみのタイトルが並ぶ。もちろん,ラインナップに異論があるわけではないが,どんなアワードにも当然ある「そのメディアならではの視点」には欠けているようで,たとえ売れなかったにせよ,良いゲームや隠れた佳作,といった作品はまったく登場しない。
 ゲームにそれほど詳しくない人には,上記の数タイトルが「欧米ゲーム業界のすべて」であるように見え,ゲームの持つ多様性やゲーム業界のスケールなどはまるで感じられないだろう。

1時間半という短い番組枠で,さまざまな新作が発表されていたが,その中で多くのファンを魅了したのがNaughty Dogが開発するゾンビアクション「The Last of Us」だろう。もっとも,欧米ゲーム業界には毎年6月に開催されるE3があり,今のところ,公開されたムービーからゲームの内容の詳しいことは分からない
画像集#004のサムネイル/Access Accepted第328回:メジャーになりたい欧米ゲーム業界

 最近のSpike VGAは,2012年以降の作品の紹介に重きを置き,マーケティング重視になったという印象がある。プロレスラーのハルク・ホーガン氏や,素行の悪さでお茶の間を騒がせているだけという感じのチャーリー・シーン氏など,ゲームとあまり関係ない人達がプレゼンターになっていたのも気になるし,ケーキの早食い競争など,笑うに笑えないミニゲームや寸劇,さらにはギーク(オタク)っぽさを強調したコメントを何度も聞かせられれば,ハミル氏でなくとも「なんて妙な受賞式なんだ」という感想を持ってしまうはずだ。

 ゲーム業界は,1970年代にその基盤が作られた若い産業だが,今やその規模は音楽業界やハリウッド映画産業をしのぐまでになっている。ところが,映画や音楽の新作が全国紙やテレビでレビューされることはあっても,ゲームが特集されることはまずない。
 たまに紹介されてもテレビの深夜枠などであり,さらには,ゲームは教育に悪いとか,犯罪を助長するといったネガティブな報道も――事の真偽はともかく,多い。「Call of Duty: Modern Warfare 3」がギネス級に売れようとも,社会的に認められているとはとても言い難いわけだ。
 こうした状況から,欧米ゲーム業界はどこかに,音楽や映画のようなメジャーな娯楽になりたいのになりきれないというコンプレックスを抱いているように思える。Activisionが,「(Modern Warfare 3が)ハリウッド映画の『アバター』を販売実績で抜いた」などと発表するのも,こうした意識の現われだろう。

 Spike VGAが,欧米ゲーム業界にとってのアカデミー賞やグラミー賞に成長するという期待を持つ人もゲーム業界には少なくないはずだが,一人の視聴者として番組を見る限り,ゲーム開発者達の苦労を讃え,それを顕彰するような内容とはとても言えず,アカデミー賞やグラミー賞授賞式のあまり上手ではないイミテーションのように思えた。

 ゲーム開発者達が,生みの苦しみや成功の喜びを真摯に伝えるだけでも,大衆の心に届くはずだし,それまでゲームを単純な娯楽だと思っていた人々の興味もひくだろう。ゲーム業界が,ほかのエンタテイメント産業の真似をする必要はないはずなので,大手メディアに頼らない,ゲーム業界らしい独自性を追求していくべきだと思う。

25周年を迎えた「ゼルダの伝説」が「ビデオゲームの殿堂」に選ばれた宮本茂氏。しかし,Spike VGAは,どこか音楽産業や映画産業の,あまりうまくないイミテーションのように思えた
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著者紹介:奥谷海人
 本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。
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