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印刷2010/07/26 11:41

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第271回:逆風の中に帆を上げた新興ゲーム会社

奥谷海人のAccess Accepted

 ActivisionとInfinity Wardの確執など,デベロッパ関連のニュースが目立った欧米ゲーム業界。アメリカのリサーチ会社であるNPD Groupによれば,2010年上期のセールスは前年同期比で5%も下落したというから,アメリカのゲーム業界も苦しんでいる様子だ。しかし,そんな中でも,新しい会社を興して一旗あげようというゲーム開発者も少なくないのだ。

第271回:逆風の中に帆を上げた新興ゲーム会社

 

ActivisionとInfinity Wardの確執から始まった2010年上期を振り返る
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臨場感のあるドラマチックなプレイ感覚によってFPSの新時代を作り出したInfinity Ward。だが,「Call of Duty: Modern Warfare 2」を最後に同シリーズからは離れることになりそうだ。Respawn Entertainmentの作品はElectronic Artsからリリースされることになったが,果たしてどのようなゲームになるのだろうか

 北米のリサーチ会社 NPD Groupによれば,2010年上期の北米のハード,ソフトを含めたゲーム市場の規模は,ハードウェア販売の下落が大きく影響し,前年同期比で5%の落ち込みを記録したという。
 「Mass Effect 2」(約180万本),「BioShock 2」(約200万本),「Splinter Cell: Conviction」(約190万本),そして「Red Dead Redemption」(約500万本)など,好調なセールスを記録したタイトルも多かったが,ハードウェアの不振をカバーするには至らず,右肩上がりの成長を続けてきたゲーム市場は,今や2007年の水準にまで縮小したという。
 もっとも,これからニンテンドー3DSやMicrosoft Kinectなど,販売が見込める新型ハードが次々に市場に投入され,また「Halo: Reach」や「Call of Duty: Black Ops」といった,ヒットの可能性が高い作品も控えている。「トータルで見て,2010年は史上最高のセールスを記録する」と予想する関係者もいるほどで,北米ゲーム市場はそれほど悲観的なムードにあるわけではない。

 さて,新作ソフトやハードの発表以外で,2010年上期最大のニュースといえば,「Call of Duty」シリーズのInfinity Wardと,パブリッシャのActivisionが演じたイザコザだろう。経緯に関しては,本連載の第259回「歴史的作品『Call of Duty』シリーズの舞台裏」に詳しく書いたので,興味があれば参考にしていただきたい。その後の経過を書けば,ジェイソン・ウェスト (Jason West)氏とヴィンス・ザンペラ (Vince Zampella)氏は,Respawn Entertainmentという新しい会社を設立したが,これに対して,Activisionも,すぐさまCall of Dutyシリーズ専門の部門を新設し,開発チームとしてSledgehammer Gamesを立ち上げるといった反応を見せている。

 ActivisionとInfinity Wardの場合は,「世界最大のパブリッシャ」と「世界的なゲーム開発者」の両者の問題であるからこそ話題になっている面もあり,当然ながら,こうしたパブリッシャとデベロッパの間で問題が起きるのは今回が初めてというわけでない。リストラや資金繰りの悪化,パブリッシャの倒産,効率アップのための分社,あるいは自分の夢に向かっての独立など,開発者達はさまざまな理由で新たな旅立ちを迎える。
 例えば,Age of Empireシリーズで知られるEnsemble Studiosは,2009年3月にMicrosoftによって閉鎖されたが,その後,在籍していた社員の手によって,Robot EntertainmentやBonfire Studios,Windstorm Studiosといった多くの会社が立ち上げられることになった。

 というわけで,今週は2010年上期に誕生した,新しい開発会社をいくつか紹介したい。中には途中で挫折してしまうメーカーもあるだろうが,こうした活発な新陳代謝が欧米ゲーム業界を常に若々しく保つ要素の一つであることも,また事実なのだ。

 

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Haunted Temple Studios
ロケーション:カリフォルニア州ロサンゼルス

 Electronic Artsのロサンゼルススタジオ(EALA)で,「Command & Conquer 4」などのプロジェクトにたずさわった経験のあるメンバー4人を中心に設立されたメーカー。設立者の一人であるJake Kazdal(ジェイク・カズダル)氏は,セガの「Rez」や「スペースチャンネル 5」などのコンセプトアートを手がけていたという。
 現在,彼らが開発中なのはターン制のストラテジー「Skull of the Shogun」だ。歩兵,騎兵,弓兵に分かれた“サムライ”ユニットを操り,相手の“ショーグン”を倒すことが目的だという。2010年末〜2011年初めに,PCおよびXbox 360向けにダウンロード販売される予定だ。

 

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Globex Studios LA
ロケーション:カリフォルニア州ウェストレイクビレッジ

 総計1200人近い人員が削減される大規模なリストラがEALAで行われたとき,200人のメンバーを抱えていた老舗デベロッパのPandemic Studiosもあっさり閉鎖されてしまった。
 その後,Pandemicでアートディレクターを務めていたCarey Chico(キャリー・チコ)氏らが参加したのが,Globex Studios LAだ。
 親会社のGlobex Studiosは中国に本拠を置くMMORPGのパブリッシャで,日本や欧米での知名度こそ低いが,「Secret Kingdom Online」というタイトルを運営して,それなりの成果を上げているという。中国でリリースするタイトルの技術開発をアメリカで行い,新しい技術を積極的に利用しようというのが,LAスタジオを設立した目的であり,またそのためにChico氏らを雇い入れたというわけだ。

 

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WB Games Montreal
ロケーション:カナダ モントリオール

 現在,ゲーム開発における最もホットな場所といえるカナダのモントリオール。そのモントリオールで設立されたWB Games Montrealは,これまでもっぱらパブリッシング業務を行ってきたWarner Brothers Interactiveが,主力となる開発チームを育成するために立ち上げたスタジオだ。
 チームを率いるのは,現在Warner Brothers InteractiveのCEOでもあるMartin Tremblay(マーティン・トレンブレイ)氏。Ubisoft Montrealの社長を務めた経歴を持ち,現在モントリオール市商工会議所の役員でもあるというから,街とのつながりは深い。
 WB Games Montrealは,最終的に300人まで人員を増やしていく予定で,同社の持つDC Comicsのライセンス作品を中心に,トリプルAのタイトルを開発していくという。

 

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CCP Newcastle Studios
ロケーション:イギリス ニューカッスル

 「EVE Online」をサービスするアイスランドのCCPは,以前から中国の上海に開発拠点を持っているが,このたびイギリスにも新たなスタジオを開設することになった。本国の危機的な経済不況など,ものともしない雰囲気だ。
 Newcastle Studiosには,2009年に倒産したMidway Gamesのニューカッスルスタジオに在籍していた開発者が多数参加しており,スタジオを率いるのも,Midwayでテクニカルディレクターを務めていたRichard Smith(リチャード・スミス)氏だ。
 最初のプロジェクトは,コンシューマ機向けのオンラインFPS「Dust 514」で,このゲームは「Unreal Engine 3」のライセンスを受けている。そういえば,MidwayもニューカッスルスタジオでUnreal Engineを使ったアクションゲーム「Wheelman」を制作しており,その開発経験が,集団雇用の理由なのだろう。

 

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Pitbull Studio
ロケーション:イギリス ニューカッスル

 Midway Gamesのニューカッスルスタジオ解体後に誕生したのが,Pitbull Studioだ。CCP Newcastle Studios同様,ニューカッスルスタジオに在籍していた開発者が参加している。
 Midwayは,2005年にPitbull Syndicateというイギリスの中堅デベロッパを買収しており,こちらはそのチームが再結集したという感じだろう。Pitbull Syndicateは,Test Driveシリーズや「L.A. Rush」といったアーケードライクなレーシングゲームの開発を得意としており,そのノウハウは前述した「Wheelman」のようなタイトルに活かされていた。
 設立者となったRobert Troughton(ロバート・トラウトン)氏は,「再びイギリス北東部のレースゲーム開発会社として名を轟かせたい」と,設立に際して抱負を語っている。いずれ発表されるであろう処女作がレースゲームになることは,間違いなさそうだ。

 

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Tomorrow Corporation
ロケーション:カリフォルニア州レッドウッドシティ

 「World of Goo」のKyle Gabler(カイル・ガブラー)氏とAllan Blomquist(アラン・ブロムクイスト)氏,そして「Henry Hatsworth」のKyle Gray(カイル・グレイ)氏の3人が設立した会社で,メーカーというよりもプロジェクトチームに近い。
 「独立系デベロッパの開発者達の余暇を利用し,ゲームを開発する実験的作業」という説明が行なわれており,今後どのようにゲームが開発されていくのかは公式サイトで細かくドキュメント化される予定になっている。
 3人とも,カーネギーメロン大学の学友であり,「実験的ゲームプレイプロジェクト」という活動に携わっていたという。社名も「大企業に未来はなく,今後は独立系ゲーム開発者達が主役である」という意味を込めて付けられたものだそうだ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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