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印刷2008/01/07 18:46

連載

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第68回:ドラゴン(Dragon)
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 剣と魔法の世界で,モンスターの頂点に君臨する存在といえば,ドラゴン(Dragon)をおいてほかにないだろう。古今東西の神話や民間伝承を見ても,数々のモンスターの中でドラゴンだけが別格であることは,容易に理解できる。ゲームや創作の世界においても,戦士達が世界の平和を守るためにドラゴンと戦い,それを成し遂げた一握りの強者は「英雄」の称号を手に入れる。ドラゴンを倒すことは,冒険者のきわめて大きな目的であり,英雄になるための試練でもあるのだ。

 ドラゴンの特徴については,わざわざ説明するまでもない気がするが,簡単に紹介しておこう。一般的にドラゴンは,大きな洞窟や険しい岩山などに棲息している。巨大なトカゲのような体は硬い鱗に覆われ,背中にはコウモリに似た翼を備えている。その巨体と比較するとやや小ぶりな翼であることが多いが,基本的に飛行が可能だ。
 ドラゴンは高い知能を持っており,ほかの種族と意思の疎通をはかれるほか,ドラゴン種族固有の言語体系を有していることがある。剣と魔法の世界を代表する高等生物といってもいいだろう。

 戦闘能力としては,爪によるひっかき,尾による広範囲のなぎ払いのほか,年を重ねたドラゴンは魔法を使う場合もある。またドラゴンの最大の攻撃手段ともいえる,ドラゴンブレスもある。
 最も基本的なドラゴンブレスは炎のブレスだが,ドラゴンの種類によっては電光,酸,毒ガス,冷気などなど,さまざまなブレスを吐く。ドラゴンの口腔から放射されるブレス(息)は,逃げ場の少ない洞窟などでは恐るべき威力を発揮する。

 ドラゴンはほかにも,多種多様な特徴を持っている。例えばゲームによっては,ドラゴンの咆吼には魔法を打ち消したり,それを耳にした者を恐慌状態に陥らせる力が秘められていることもある。
 面白いところでは,ドラゴンは腹部が弱点であり,財宝の上に眠ることで金貨などを腹に付着させ,腹部の防御力を高めているという説もある。

 なお,ドラゴンは成長と共にさまざまな能力を獲得していくが,このあたりの分類に関しては各種の設定が見られる。孵化したばかりのものは「Dragon Hatchling」,幼少から幼年を「Dragon Baby/Dragon Puppy」,若年期は「Young Dragon/Dragon Youth」,大人になると「Adult Dragon」(Dragonのみの表記である場合は,ここに相当する場合が多い),壮年では「Elder Dragon」,そして太古から生き続けるドラゴンを「Ancient Dragon」などと呼ぶことがある。もちろん年齢を重ねるほど強力で知性が高く,邪悪である場合は狡猾であり,そうではない場合は人間と共存する意味をよく理解している。
 なお幼少/幼年期のドラゴンは非力であるが,危害を加えて泣かせるようなまねをすると,どこからともなく怒り狂った親のドラゴンが飛んでくることがある。幼いドラゴンなら相手になりそうだと油断していると,痛い目に遭うかもしれないので注意が必要だ。

 また,前述したような成長の度合いとは別に,体色で属性が分かれているという説もある。レッド,ブルー,ホワイトといった色のドラゴンは悪に属し,ゴールド,シルバー,カッパー,ブロンズといった色の場合は,善であるとするものだ。
 といっても,レッドドラゴンなので必ず人間に敵対的かというと,そうではなく,興味があれば人間に味方することもある。剣と魔法の世界では,悪というのは利己主義的で,善というのは献身的と大別されることが多いが,ドラゴンにもそうした属性が設定されているのは大変興味深い。

 

 古代の人々は脱皮する蛇を見て,手足のないは虫類の姿に恐れを抱くと同時に,そこから生まれ変わりや不死性を連想していたのだろう。蛇を崇める信仰は,古くから世界各国に存在していた。
 初期の蛇信仰は,その地域に棲息する蛇を神格化して崇めていたが,信仰の課程で,神体である蛇は知性を獲得し,足を獲得して自由に歩き回れるようになり,翼を獲得して空を飛べるようになるなど,さまざまな能力を得ていった。

 ところが,他宗教の神を認めない一神教が世界中に広まっていくにつれ,蛇神たちは神の座を追われ,モンスターに貶められていった。しかし,モンスターになったとはいえ,その力は完全には失われておらず,神の敵対者として君臨したり,強さの象徴として王族の紋章にその姿を残したりして,結果として現在のドラゴン像が生まれたのかもしれない。

 そういった流れは,モンスターとしてのドラゴンにもよく反映されている。古い時代のドラゴンには四肢がなく,また翼も足も持たないウォームや,翼を持つが足はないワイアームがドラゴンとして活躍していた時代もあった。事実,昔の神話の挿絵を見ると,ドラゴンとは名ばかりで,蛇のようなモンスターが描かれていることが多い。ところが,時代が進むに従って強さのインフレ化が進み,炎を吐くようになったり,魔法を使ったり,立派な四肢を持つようになっていったのである。
 現在ではドラゴンの眷属は細分化が進み,先に挙げた2種類以外にも,翼と一対の足を持つワイバーン(Wyvern)や,複数の頭を持ち毒を吐くヒュドラ(Hydra)など,多種多様なドラゴンの仲間が存在している。

 種族としてではなく,特別な名を持つドラゴンも,神話やゲームなどに多く登場する。神話上の有名なドラゴンといえば,イスラム教に登場するバハムート(Bahamut),メソポタミア神話の女神ティアマトが変身した姿だとされる5頭竜のクロマティックドラゴン(Chromatic Dragon),シグルド/ジークフリートが倒したファフニール(Fefnir),北欧神話で地下世界に潜み,最後の日には死者を乗せて空をかけるという黒竜ニーズヘグ(Nidhoggr),聖書に登場する海竜リバイアサン(Leviathan)といったところだろうか。

 著作物では,「ホビットの冒険」に登場した火竜スマウグ(Smoug),「エルリック・サーガ」の竜の長にしてエルリックの騎竜であるフレームファング(Flame Fang)と,その相棒スイートクロウ(Sweet Craw)などが有名。変わり種として,鏡の国のアリスに登場するジャバウォック(Jabberwock)を,ドラゴンの亜種として考えてみるのも面白い。
 また国産のファンタジー小説「ロードス島戦記」には,五色の魔竜と称される,火竜山の魔竜シューティングスター(ShootingStar),金鱗の竜王マイセン(Mycen),氷竜ブラムド(Bramd),水竜エイブラ(Eibra),邪竜ナース(Narse)が登場し,物語を盛り上げていた。

 強さのインフレ化が進む剣と魔法の世界においては,邪神や魔王などが敵として登場するようになり,「ドラゴン=最強の敵」というケースは少なくなってきた。しかしそうなった今でも,ドラゴンスレイヤーの称号を夢見て,さまざまな困難を乗り越えていく冒険者の姿に,我々は心を躍らせてしまう。ファンタジー世界のパワーバランスがどう変化しようとも,ドラゴンという存在の偉大さは変わらない。冒険者視点でファンタジー世界を生きてみれば,やはりドラゴンこそが,キングオブモンスターといえるのかもしれない。

 

次回予告:エルフ

 

■■Murayama(ライター)■■
2007年は12月31日まで仕事をしていたうえ,年が明ける直前に風邪をひいてしまい,高熱を出してダウンしてしまったというMurayama。そんな最悪の体調で実家に帰ったところ,父親に「薬を飲んでおけ!」と言われて,ビタミンCたっぷりのグレープフルーツハイをたっぷり飲まされたそうだ。おかげで(?)風邪はすっかり良くなり,今回の連載原稿も無事掲載できたわけである。
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