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5000円で買えるゲーマー向けキーボード「OWL-KB119GM(B)」レビュー
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印刷2010/02/20 09:50

レビュー

5000円で買える多機能キーボードは使えるか

OWL-KB119GM(B)

Text by 米田 聡


OWL-KB119GM(B)
メーカー:オウルテック
問い合わせ先:オウルテック サポートセンター 046-236-3522(平日10:00〜12:00,13:00〜18:00)
実勢価格:5000円前後(※2010年2月20日現在)
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 ゲーマー向けキーボードは,安価なものでも4桁円台後半が当たり前。キーボードとしての基本性能が高いものや,多機能なものだと,1万円超級の製品も珍しくない。そんななか,FPSでよく使われる一部のキーに限定して複数キーの同時押しをサポートしつつ,価格を1600〜3000円程度(※2010年2月20日現在)に抑えたシグマA・P・Oシステム販売の「GMKB109」シリーズが一定の地位を築いているが,PC向け周辺機器や内蔵デバイスの販社として知られるオウルテックはそこに,同じコンセプトで,より多機能な「OWL-KB119GM(B)」を投入してきた。

 10個のマクロキーを備え,さらにメディアボタンなどを搭載し,実勢価格は5000円前後(※2010年2月20日現在)。公式ライセンス品ではないものの,PlayStation 3とWiiへの対応も謳われるゲーマー向けキーボードは,ゲーム用途で新たな選択肢となり得るのか。使い勝手を中心にチェックしていきたい。


若干変則的な日本語119キー配列を採用

それをマクロキーとホットキーが左右から囲む


 さっそく,OWL-KB119GM(B)の全体を俯瞰してみよう。下に写真で示したとおり,本機は,日本語フルキーボードを,左右から特殊キーやボタンが囲むようなレイアウトになっている。

OWL-KB119GM(B)を正面から撮影したカット。ファンクションキーの上に,ブラックとグレーによる編み目模様と,「GamingX」というロゴがプリントされ,ゲーマー向けモデルらしさを演出してはいるものの,全体的な質感は価格なりといったところだ。この価格帯の製品に高級感を求めるのは無理があるのだが,それでも,この編み目とロゴはなんとかならなかったのか,とは思う
画像集#003のサムネイル/5000円で買えるゲーマー向けキーボード「OWL-KB119GM(B)」レビュー

裏面には手前2か所,奥側2か所の滑り止めゴムを装備。ただ,チルトスタンドにはゴムが貼られておらず,スタンドを立てた場合は,2か所のゴムだけで軽い本体を支えることになる。やや頼りなく感じるのも,これではやむを得まい
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 本体サイズは実測508(W)×200(D)mmで,公称値と同じ。占有スペースは。一般的な日本語フルキーボードと比べて,横幅は50〜70mmほど長い計算だ。
 一方,大きさの割りに,本体は大変軽く,本体重量はケーブル込みで790g,ケーブルを重量計からどかした参考値では520gしかない。底面に滑り止めのゴムが用意されているので,設置感はそれなりにあるのだが,傾斜を調整するためのチルトスタンドには滑り止めが用意されていないので,チルトスタンドを建てると,やや頼りなさを感じることになる。

 また,チルトスタンドに関連したところだと,キーボード面の傾斜がほとんどない点は少々気になった。奥側の高さはキートップを含まず24mm程度。対して,最も手前部分だと同21mmだから,キーボード面の手前と億には3mmしか高さの違いがないことになる。パームレストが盛り上がっていることもあって,体感ではさらに“傾斜感”は薄れる印象だ。
 傾斜を好むユーザー向けにチルトスタンドは用意されているものの,立てても奥側が5mm高くなるだけで,全体的に傾斜は緩やかな点は,好みが分かれるだろう。

本体を横から見たところ。傾斜はほとんどなく,チルトスタンドを立てても傾斜は浅めだ
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一般的なPC用キーボードだとあるべき場所に[Windows]キーがなく,右[Alt]キーの右に“追いやられて”いる
画像集#008のサムネイル/5000円で買えるゲーマー向けキーボード「OWL-KB119GM(B)」レビュー
Razer Tarantula。詳細はレビュー記事を参照してほしい
 メインのキー配列は一見標準的だが,よく見ると,左[Ctrl]と左[Alt]の両キーに挟まれているはずの[Windows]キーが,右[Alt]キーの右隣へ移されていた。FPSなどでは[Windows]キーが邪魔になりやすいので,この配慮はなかなか気が利いている。

 ただ,そのほかのポイントに個性を見い出すのはちょっと難しいかもしれない。というのも,OWL-KB119GM(B)の全体的なデザインは,Razerブランド初のキーボード製品で,2006年発売の「Razer Tarantula」とそっくりのキー配列設計だからだ。
 メインのキーボード部を,左右5個ずつ,計10個並んだ「マクロキー」が囲み,さらにその外を,特定のアプリケーションに対応した計14個のショートカットボタン「ホットキー」が囲むという仕様は,キーやボタンの名称,そしてボタンの機能こそ異なるものの,Razer Tarantulaと完全に同じ。
 この配列だと,どうしてもキーボードの横幅を広く取らざるを得ないのだが,それを少しでも短くすべく,[Delete][End]キーなどのブロックを,コンパクトキーボードなどでよく見られる縦長の配置にしているのもRazer Tarantulaと同じである。

ドライバソフトウェアをインストールすると,タスクトレイに「Keyboard Config」というプログラムが常駐する。プログラムは設定ツール「ドライバコントロール」を呼び出すためのランチャーで,この常駐プログラムを閉じても,「ドライバコントロール」から設定した内容は有効のままだ
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 赤色で存在を主張するマクロキーについては,最も重要な事実から先に述べておくと,完全なるソフトウェアベース。付属のCD-ROMからドライバソフトウェアをインストールして使うことになる。また,この価格帯のキーボードでは珍しく,全キーのカスタマイズ(=キー割り当て変更)機能も搭載しているのだが,こちらもドライバソフトウェアベースの機能である。

 一方,大多数のオンラインゲームでは,ソフトウェアベースの外部ツールを利用することが禁じられている。一部には,アンチチートツールが機能し,ドライバが動作しているだけで弾かれる場合もあるため,少なくとも国内で,オンラインゲーム用に使うのはまず無理だ。
 ならばFPSなどのアクションゲームならどうかというと,今度はマクロに使い道がないうえ,キーのカスタマイズ機能はたいていゲーム側に用意されているため,実質的に,これらを使う機会はまずないだろう。

こちらが「ドライバコントロール」のメインウインドウ。規定のメディアプレイヤーを選択するプルダウンメニューのタイトルが「メディアプレイヤー光学」になっているのはご愛敬だが,ほぼ破綻のないレベルで日本語化が実現されている。下にある「モード選択」では,「Profile1」〜「Profile3」というモードそれぞれにアプリケーションを登録し,アプリケーションが起動すると,自動的にマクロやキー割り当て設定が切り替わるようにも指定可能だ
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マクロ登録ウインドウ(左)。「押しっぱなし」は非対応だが,ディレイも編集できるなど,一通りの機能は用意されている。右はキー単位の割り当て変更用ダイアログ。いずれも,価格を考えると完成度は高いのだが,残念ながら,ゲーム用途ではまず使えないだろう
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 続いてはショートカットボタンとして用意されるホットキーだが,利用できる機能は下記のとおりだ。

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(1)マクロ機能のオン/オフ切り替え
(2)マイコンピュータ展開
(3)規定のメールソフト起動
(4)規定のWebブラウザ起動
(5)規定のWebブラウザでブックマーク展開
(6)Webブラウザの進む/戻る指示
(7)Webブラウザのぺージ更新
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(8)規定のメディアプレイヤー起動
(9)規定の再生の開始/一時停止
(10)規定のメディアプレイヤーで停止
(11)規定のメディアプレイヤーで曲送り
(12)規定のメディアプレイヤーで曲戻し
(13)ボリューム大/小指示
(14)再生ボリュームミュート

 ご覧のとおり,ほぼゲームとは無関係。基本的には,多機能キーボードにありがちな,そして,まずもって使うことのなさそうなボタンが並んでいるという理解でいい。
 使い道がありそうなのは,ボリュームコントロールとミュートなので,今回は
筆者が普段のゲーム用に用いている32bit版Windows 7ベースの自作PCと,テストのために32bit版Windows 7をクリーンインストールした自作PCの両方で試したが,残念ながらどちらも利用できなかった。対応OSはWindows XP/Vista/7となるOWL-KB119GM(B)だが,マニュアルに「OSだけでなくマザーボードの機能にも依存しますので、対応OSでもご利用いただけない場合があります」(※原文ママ)と書かれているので,この影響かもしれない。
 ただ,いずれにせよ,ホットキーには,「メインキーやマクロキーよりも一段低い位置に置かれているので,ゲーム中に“誤爆”してしまう可能性が低い」という点を除けば,あまりメリットはなさそうな気配である。


押下圧30gで軽快な打鍵感を実現

「最大6キー同時押し対応」は効果ありだが弱点も


メンブレン式のキースイッチにゴムキャップ式のバネという,普及価格帯のキーボードで広く採用されているキーを採用しつつ,30gという非常に軽い押下圧を実現しているのがOWL-KB119GM(B)の特徴だ
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 気を取り直して,メインキーボード部をもう少し深く掘り下げてみよう。
 メインキーボード部のキーストロークは6mmで,キースイッチが反応する深さは3mm程度となっている。一般的なPC用キーボードと比べるとやや浅めだが,特別に浅いというほどではない。
 それに対して,キーの押下圧は,錘(おもり)を使った実測で30g前後。一般的なPC用キーボードだと40〜50g程度に設定されていることがほとんどなので,かなり軽い。OWL-KB119GM(B)に触れれば,ほとんどの人は「軽いな」と感じるだろう。

 キーのバネは,メンブレン式キーボードで広く利用されているゴムキャップ。ゴムの材質や厚さを工夫して,30g荷重という,軽いキータッチを実現しているのだろうが,押し下げ始めに,(言葉にするのは難しいのだが)「ぽこっ」という感覚の,わずかな抵抗があるのが特徴といえる。
 ゴムキャップだけに底突きはなく,力強くキーを叩くタイプの人でも,指を痛める心配はなさそうだ。

 実際にゲームで使ってみての反応も上々である。
 ごくごく一般的な19mmキーピッチを採用し,かつキーがグラついてしまうような不体裁もないため,いい意味で,何も言うことがない。軽いタッチのゴムキャップを採用している以上,長期的にはメンブレンスイッチの耐久性に懸念は残るが,こればかりは長く使ってみなければ分からない。メンブレンスイッチを採用するキーボードは,どれも似たような懸念を抱えているのも事実なので,このあたりはユーザーの考え方次第だろう。

オウルテックが発表している同時押し対応キーの上に,半透明で赤を重ねてみた。この枠内にあるキーは,最大6キー同時押しに対応する。GMKB109シリーズとの大きな違いは,同シリーズで対応する[R][F][V]キーがサポートされない一方,[1]〜[5]キーへの対応が行われているところ
画像集#017のサムネイル/5000円で買えるゲーマー向けキーボード「OWL-KB119GM(B)」レビュー
 続いては,OWL-KB119GM(B)において,最大の特徴となっている,複数キーの同時押し対応についてチェックしてみよう。
 例えば「しゃがみ斜め移動中の武器変更」など,とくにFPSでは,3〜4程度のキーを同時押しするケースが頻発するため,ゲーマー向けキーボードでは,「キー何個の同時押しに対応できるか」が大変重要なポイントになる。一般的なPCユーザー向けキーボードでは最大3キーの同時押し対応がせいぜいになるが,ゲーマー向け製品では,高級モデルだと,全キー同時押し対応を謳うものさえ存在する状況だ。
 そういった状況におけるOWL-KB119GM(B)の立ち位置はどうかというと,公式に,[W/A/S/D]を中心とした16キーにおいて,最大6キーの同時押しが可能だとアナウンスされている。

 同時押しに対応可能なキーの範囲に制限がある製品としては,冒頭でその名を挙げたGMKB109シリーズがあり,あちらは21キー。ただ,GMKB109シリーズでは,[Shift][Ctrl][Alt]キーが同時押し対応としてカウントされているので,実質的な違いは2キー分というわけだ。

 では,実際の使い勝手はどうなのか。今回は「Enemy Territory: Quake Wars」(以下,ETQW)「Left 4 Dead」「Quake Live」といったFPSをプレイしてみたが,[W/A/S/D]キーと[Space]キーを組み合わせたジャンプ移動や,[Shift]キーを組み合わせた加速といった操作は,同時押し対応周りのサポートがない一般PCユーザー向けキーボードと比べて,確かにスムーズだ。また,筆者はETQWとQuake Liveで,数字キーに武器変更を割り当てているのだが,この操作感も,一般的なキーボードと比べて反応がいいことを体感できる。

 しかし,全体として,どうもしっくりこない。その原因は何かといろいろ試行錯誤してみたのだが,答えは,ETQWやLeft 4 Deadでリロードに割り当てられる[R]キーや,Useコマンドに割り当てられる[F]キーといった,比較的頻繁に使うキーを操作するとき,引っかかりが感じられる点にあるようだ。

上は,同時押し対応キー×6と左[Shift]キーを押しているところ。見事にすべて認識している。一方,下はワーストケース。ここでは同時押し対応の[Q][X]キーとは別に,[R]キーも押しているが,[X]キーしか認識されなかった
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 キーボードの同時押し対応をチェックする「4Gamer Keyboard Checker」(Version 1.0 Beta)で調べてみると,確かに対応キーでは最大6キー同時押し対応を実現している。だが,範囲外のキーが一つでも混ざると,OWL-KB119GM(B)は,一般的なPC向けキーボードと同じように,キーの組み合わせによって1〜3キー程度の同時入力しか受け付けなくなってしまう。しかも,この制限はかなりシビアで,組み合わせによっては,同時押しした複数キーのうち,一つしか反応しないものもあり,これが,複数キーの同時押し対応を実現していながら,引っかかりを感じた主因だと述べていいだろう。
 [R][F][V]キーの列,せめて[R]キーだけでも同時押し対応してくれていれば,印象はかなり変わったはずで,この仕様はやや残念である。

 同時押し対応を実現するには,キースイッチ基板上にあるキーボードマトリクスを,通常のキーとは異なる組み方にしなければならないなど,相応のコストがかかる。低価格で,同時入力対応を可能にしようとすれば,ある程度の制限を持たせながら実現するのが現実的な解となるわけで,OWL-KB119GM(B)で実現されていることは,少なくとも間違いでは決してない。先ほど述べたとおり,同時入力が可能な範囲での使い勝手は良好なので,自分のプレイスタイルと合致するかどうかで,ゲーム用途における本機の評価は大きく変わるはずだ。


“多機能キーボード”としての用途は見いだせないが

この価格でキーの軽さと複数キー同時押し対応は魅力


 以上,OWL-KB119GM(B)の使い勝手を中心にチェックしてきた。ゲーム用キーボードとしては,GMKB109シリーズの価格的なインパクトが大きいこともあって,実勢価格5000円前後の本機を「エントリー向けとしてコストパフォーマンスが高い製品」と,定型の表現で片付けるわけにはいかない。また,ウリの一つであるマクロキーやホットキー,メインキーのカスタマイズ機能といったあたりが,ゲーム用途ではほとんど使い物にならない点も,評価を下げる一因になってしまっている点は否めない。

製品ボックス
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 だが,5000円以下で,制限付きながら複数キーの同時押し対応を実現し,かつ,素早い動作に対応できる軽めのキースイッチを搭載している点が大いに意義深いのも,また事実だ。[R][F][V]キーが同時押し対応の範囲に含まれていないのが,個人的には返す返すも残念だが,頻繁に使うキーは,同時押し対応の範囲内にゲーム側からバインドするなどの対策を講じれば,なんとかなる可能性はある。
 一般的には軽いキータッチのほうが素早く押下できるので,アクション性の高いゲームをプレイするなら,キータッチは軽いほうがいい。この一点に,GMKB109シリーズにはない魅力を感じる人で,かつ,導入コストはできる限り低く抑えたいという場合に,OWL-KB119GM(B)は選択肢となるだろう。

 店頭価格が4000円を切るようなら,より面白い存在になれると思うのだが……。
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