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シグナルトーク,脳の認知機能をチェック&管理できるWebサービス「脳測」を発表
脳測は,近年社会問題ともなっている認知症の早期発見に役立つテストをWeb上で実行し,結果を累積していけるというサービスだ。「なぜ,シグナルトークがこんなものを?」と訝しく思う人もいるかもしれない。シグナルトーク代表取締役の栢 孝文氏によると,同社は10年ほどオンライン麻雀ゲーム「Marujan」などサービスしており,「麻雀が認知症によい」という風説の検証を数年前から行っていたとのこと(関連記事)。しかし,そういった事項を判断するに足る基礎データが存在せず,計測も非常に難しい。であれば,きちんとしたデータを取れるツールから作ろうということで脳測のプロジェクトが開始されたわけだ。
それを,MMSEの結果に相関度の高い4つのテストにまとめたのがレデックス認知研究所で,今回の脳測はレデックス認知研究所のテストをWebサービスとして実装する形で実現されている。同研究所の五藤博義所長によれば,この4つのテストでMMSEの11のテストと完全に相関のあるデータが取得できるとのことで,実際にレデックス認知研究所のプログラムは病院などでも診断に用いられている。
テストは,ワーキングメモリをチェックする「フラッシュライト」,注意力をチェックする「視覚探索」,エピソード記憶をチェックする「ストーリー」,遂行能力をチェックする「ルート99」の4つのテストから構成される。
ワーキングメモリとは,脳の短期記憶を担うもの。フラッシュライトのテストは画面に表示された4色の円がどの順番で点灯したかを答えていく。最初は2回点灯,次いで3回点灯とだんだん複雑になっていく。
視覚探索のテストは,画面に散らばった数字や文字を順にクリックしていくという単純なテストだ。最初は1,2,3……といった具合だが,これも,あ,1,い,2,う,3……といった感じで複雑になっていく。
ストーリーのテストは,短文を読んで内容を記憶し,内容について正しい選択肢を選ぶというもの。自分がご飯を食べたかどうかも忘れてしまうような症状は,こういった記憶力のテストで判定できる。
ルート99のテストは,スタートからゴールまで数字を追いつつ,最短経路でつないでいくというもの。簡単なようだが,認知能力が下がると計画を立てて実行することが困難になるので,このようなテストが難しくなるとのこと。
テスト結果は,600点満点のスコアとして出力される。400点が目標点とのことだが,単に点の高い低いよりも,スコアが急に落ち込むような事態が危ないとのこと。集計された結果は,推移を示すグラフで表示されるので前回のスコアとの比較は簡単にできる。このあたりはWebサービスとして実装されていることの強みと言えるだろう。
認知症は,初期段階に適切な治療を行えば進行を抑えることは可能だという。ただ,脳測自体のスコアだけでは認知症を「判定」することはできず,別途医師の診断は必要となる。脳測はあくまでも体温計のような計測ツールであると栢氏は強調していた。認知症は,脳の器質的な病気であるため,CTスキャンなどで脳の萎縮を確認する必要がある。脳測は,その兆候をいち早く知るためのツールという理解でいいだろう。
面白いのは,家族ぐるみのケアが重要ということで,脳測の1アカウントで家族5人までの利用が可能なことだ。認知症の始まりが40代50代と若年化していることもあり,おじいちゃんおばあちゃんだけでなく家族みんなで取り組むことは重要かもしれない。
学術的な意味では,レデックス認知研究所の五藤氏は脳測に関して,
- 医師や専門家が不要であること
- 継続的なデータが取得でき,危険を察知しやすいこと
- 日常生活の中で気軽にデータが取れること
の3点をとくに高く評価していた。
ちなみに,コンシューマゲームなどで脳年齢を出したり,脳を鍛えるようなゲームは一時かなり流行していたのだが,それらが出す数値は医学的な根拠を持った指標ではなく,認知機能との相関もない。しかし,今後の研究が進んでいけば,MMSEと相関を保ったエンタテインメント性のあるコンテンツ開発などもできるのかもしれない。
脳測は,7月12日から無料テストが開始され,8月15日に正式サービスに移行する予定。利用料金は月額1050円(税込)となっている。脳測のテスト自体は非常に簡単なものなので,無料テスト期間中にデータ提供に協力してみるのもよいだろう。
シグナルトークでは,今後も認知症の早期発見につながるようなエンターテインメント作りに取り組んでいくほか,医療や各種産業とも協業した展開を目指していくという。今後のデータで,認知症に効果のあると思われる食品や運動などが見つかってくれば,その効果を付加価値としてアピールできるようになる。栢氏は,高齢化社会問題は日本だけの問題ではないとし,認知症の早期発見と予防などが日本発の新たな産業となる可能性まで視野に入れているという。
オンラインゲーム業界からこのような社会貢献度の高い取り組みが生まれることで,これまでとは違った観点でのゲームの価値が確立されてくるのかもしれない。
「脳測」公式サイト
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