ワイルドライフ パークText by UHAUHA ■リアル性を重視した動物園経営シミュレータ「ワイルドライフ パーク」
プレイヤーは動物園の経営者となり,世界中の土地にオリジナルの動物園を開園し,マネージメントしていく。単に動物園を作るだけではなく,繁殖プログラムや危機管理に対応するさまざまなミッションも用意されている。 WLPの大きな特徴は,動物飼育の専門家のアドバイスにより,動物達の生態系,社会性,出産,老化など動物の行動などを可能な限りリアルに再現していること。動物のみならず,季節の変化などにより植物が枯れるなど,さまざまな部分に現実味を持たせているのだ。 ゲームモードは"練習とキャンペーン" "フリープレイ"の二つ。練習とキャンペーンは,目標クリアを目指して,さまざまなキャンペーン(ミッション)に挑戦するモード。 "練習"とあるように最初はチュートリアルから始まり,徐々に難度が上がっていく。"トラのshirkanを救え!" "繁殖計画" "ジャイアントパンダを救おう!"といった20種類のミッションを順にクリアしていくことで,動物園経営に必要な事項を覚えられる。 "フリープレイ"は,気候や景観の違う世界20か国の環境を選択し,自由に動物園を作り上げていくモード。初期資金や難易度も選択可能なため,自由気ままに動物園経営を楽しめる。 しかしフリープレイとはいえ適当にプレイしていては資金はいくらあっても足りなくなる。前述したとおり自然環境のすべてに現実味を持たせてあるため,その地域の環境に合わせた動物園を作っていかなければならないのだ。目標が決められている練習とキャンペーンとは違い,動物園をゼロから作り上げて軌道に乗せなければならず,フリープレイのほうが難度は高い印象だ。
■動物達が快適に過ごせるかどうかは飼育環境次第だ
まずは飼育したい動物のアニマルハウスを設置して,詳細をチェックしつつ好みのフェンスや壁,地面などを見ながら展示スペースを作る。囲いを作らずに"放し飼い"も可能だ。また,ウォーターポンプを設置すれば水が溜まって水槽になる。 動物には魅力を示す"アピール度"があり,アピール度が高いほど入場者の気を惹く。また動物にはオスとメスがあり,オスはメスを,メスはオスを求める。つまりオスだけ飼育していると「交尾がしたい」など要求が出てくるわけだ。 こういった要求や飼育状況は,動物達に用意されたパラメータでチェックできる。何を要求しているのか,健康状態はどうか,生活環境はどうかなどを知ることができるので,一つずつ解決していくのだ。 飼育に必要な水,干し草,肉,魚などは専用の供給装置を設置し,飼育係を雇って補給させる必要がある。動物達は囲いの中に植えた樹木を食べて水分や食糧を摂ることもできるが,できれば各供給装置を設置しておいたほうがいいだろう。 囲いの中に水場が必要であれば,地面を掘り下げてウォーターポンプを置いて水場を作り,丘が必要ならば地面を持ち上げて高低差のある地形にするなど,動物が求める地形を作っていく。ジャンプ台やトランポリンなどの動物用おもちゃ,気候に合っていない動物のための暖房装置や人工降雪機,ジャイアントパンダなど生殖機能が低下しがちな動物達のための性教育パネルなど,ちょっと変わったアイテムまで用意されているので,動物の要求を見ながら設置してあげよう。 動物達は,満足できない環境にいると,ゴロゴロするだけだったり,凶暴化したりしてしまう。このへんはゲーム中の動物達の動きを見るとよく分かる。というのも,動物の動きがかなり細かいところまで再現されているのだ。 さすが動物飼育の専門家の意見を取り入れていると謳うだけのことはあり,良い環境が整えば,動物達が楽しそうに走り回ったり,崖の上から水の中にダイブしたり,ひっかき棒に体をこすったり,仲間とじゃれ合ったり,交尾したりと,生き生きと暮らす姿が見られるのだ。
■自分がお客ならばどう思うかを考えて園内設計しよう
また雨や雪が降っても楽しめるように昆虫館や水族館などもあったほうがいいだろう(メリーゴーランドなどのアトラクション系がいっさいないのが悲しいところ)。これらは適当に配置すると「もう家に帰ろう」「この歩道は好きじゃない」「花壇が少ない」という苦情が出てきてしまうため,一人一人の入場者がどう思っているのか把握し,手直ししていく必要がある。 どこに不満があるのかは"満足バー"を見ればある程度は判断でき,さらに詳細情報を見れば解決の糸口が得られる。 入場者一人一人には,空腹,喉の渇き,トイレなどさまざまなパラメータが設定されている。変わったところでは"環境"というパラメータがあり,これは珍しい動物やショーのできる動物がいるか(動物の魅力),歩きやすい歩道になっているか(歩道の設計),橋や滝など景観はどうか(眺め),植物の手入れは行き届いているか(植物),囲いの中や園内は綺麗になっているか(清掃)などを示すもの。多くの入場者が満足できる動物園に仕上げるのは,かなり大変なのだ。
■スタッフの働きがキモ,それぞれのスタッフをうまく使え
例えば飼育係は待機所となっている貯蔵庫からエサを運んで供給装置に補充するのだが,貯蔵庫の貯蔵量がゼロになればエサを補充できなくなる。こうなると,飼料センターから補充する必要があるのだ。補充要請は自動(手動も可)で行われるので心配ないが,飼料センターのスタッフが運搬車を押して運んでくるため,飼料センターから貯蔵庫へのルートも考えて園内を作っておかないと,補充までに時間がかかってしまう。 また"園内にあるすべての植物"は,手入れが不十分だったりすると枯れてしまうため,ガーデナーの手入れが必要だ。猟師は逃げ出した動物を捕獲して入場者を危険から守ったり,暇なときは太り気味の動物の運動をさせたりできるし,調教師は動物達に芸を教えて動物のアピール度を上げたり,ちょっとしたショーを行って入場者を楽しませたりできる。……と,それぞれのスタッフが動物園経営には欠かせない存在になっている。 スタッフは,配置すれば担当範囲の中で勝手に行動してくれる。もちろん手動で指示を出して,問題が発生しそうな部分を先に解決させることも可能だ。 またスタッフには熟練度というパラメータがあり,最初は不慣れで手際が悪かった仕事も,慣れてくれば効率良く作業できる。しばらくは担当範囲を狭くして,慣れてきたら担当範囲を広げると,うまく動いてくれるだろう。
■これこそ現実の動物園経営をシミュレートしているのかも
しかし実際にプレイしてみると,WLPにしかない面も見えてくる。 橋を作って高い位置から動物や景観を楽しめるようにできる,複雑に高さを変えて滝を作る,各スタッフの働きがズータイクーン以上に重要などなど。ただこれらは,それほど強みとは言い難い。 この2作が決定的に違うのは,WLPが,動物達の生態系や行動,老化,自然環境の違いといった面で,とことんリアルさを追求した点だ。また動物園でもときどき見かけてしまう"交尾"という自然の営み(?)は,動物園の目的の一つでもある繁殖に関係する重要なもので,交尾まで忠実に再現する必要があるのかという疑問はあるものの,おそらくズータイクーン&マイクロソフトでは再現が難しい部分ではないだろうか。 ゲーム性を重視したズータイクーンに対し,リアルさを重視したWLP。確かにズータイクーン経験者がWLPをプレイすると不満な点(アトラクションがないところや,登場動物が少ないなど)もあるかもしれないが,WLPには,ズータイクーンとはまた違う面白さがあるのだ。 本当に生きているように生活する動物達を眺めながら,動物園経営を楽しんでみてはいかがだろうか。興味のある人は,プロモーションムービー「こちら」(3分1秒:25.4MB)で,どんな感じなのかチェックしてみてほしい。野生の王国っぽいテーマソングが頭から離れなくなるぞ!
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