ベトコン(Vietcong)

Text by キーオ林
1st Mar. 2004

■ついにベトナムの時代がやってくる!?

バンカーのラジオでは人気のDJジョナ・ジョコウスキーのお喋りや'60年代のヒット曲が聴ける。映画ばかり喩えに出して恐縮だが,やっぱり「グッドモーニング・ベトナム」とか思いだしちゃいますな
 映画では数多く,名作も多々あるベトナム戦争もの。だが戦争ゲームとなると,FPSというジャンルでは「バトルフィールド1942」「メダル オブ オナー」シリーズ,「CALL OF DUTY」などに代表されるように第二次世界大戦ものが多く,ベトナム戦争を扱ったものはまだまだ数少ないというのが現状である。第二次世界大戦ものにはない,ベトナム戦争ならではの戦闘の面白さってのもありそうな気がするのだが……。事実上アメリカが敗北した(少なくとも勝てなかった)戦争ということで,ゲームが作りづらい面があるのかなぁなどと変な邪推をしてみたり。

 しかしそんな"ベトナム戦争FPS不遇の時代"にも,ベトナム戦争終戦30周年の今年,ピリオドが打たれつつある。期待はなんといっても,今年の3月に発売が予定されている「バトルフィールド ベトナム」であろう。今さら説明するまでもなく,「バトルフィールド1942」のベトナム戦争版である。「1942」のほうはマルチプレイが現在に至るまで大きな盛り上がりを見せているが,果たして「ベトナム」のほうは,どんな感じに盛り上がっていくのか。今から楽しみなところだ。アイドス・インタラクティブの「ShellShock:Nam '67」など,楽しみなタイトルはほかにも控えている。
 さて,「バトルフィールド ベトナム」をリリースするエレクトロニック・アーツから昨年の秋に発売されたのが,今回紹介するベトナム戦争FPS「ベトコン 日本語版」だ。これから来る(であろう)ベトナム戦争FPSの先駆けとして,重要度が高いと思われるこのゲームをチェックしておかない手はない。

 というわけで実際にプレイしてみると,またとんでもなく歯ごたえがあり,最初は「バトルフィールド ベトナム」までの"繋ぎ"としてプレイするのにいいかもなぁ,などと考えていたのだが,良い方向に裏切られた。"繋ぎ"などじゃなくて,相当に面白いです,これ。つーか,だったら発売当初からやっとけって声もありましょうが。そこら辺は素直にすんません。

ヘリやボートで移動しながら敵を機関銃でバリバリ掃射していくミッションもある。いち早く敵を見つけて撃たないと,あとで苦労することになる

■ジャングル,トンネル……ベトナム"らしさ"の表現が強烈!

遺跡や基地など,いろんなステージで戦っていくこととなるが,キモはやはりジャングル戦。迂闊に進むと手痛い目に遭うこと必至
 では「ベトコン」のゲーム本編に関して詳しく語っていくことにしよう。
 「ベトコン」はどちらかといえばリアル寄りのFPSで,難度は若干高めのゲームと思って良いだろう。このゲームの開発元は「ヒドゥン&デンジャラス」や「マフィア」でおなじみのIllusion Softworks。「ベトコン」では独自のエンジンを採用してるとのことだが,ぶっちゃけ言ってしまうと,2003年の登場にしては最新FPSと比べると画面,演出は旧世代のものである。昨今,とにもかくにもFPSは"新技術"ばかりが注目され,見た目が古い感がある「ベトコン」はこのあたり,かなり損をしているようにも思える。
 しかし実際にプレイしてみると,実に"ベトナム戦争らしい"ゲームであることが分かる。とにかくジャングルなどの再現具合は,かなり見事なのだ。
 誰でも分かることだと思うが,ポリゴンでジャングル(群生する植物や密林)を表現することは,普通の街や建物や宇宙船などを表現するよりも格段に難しい。だが「ベトコン」では,このジャングルの描写が実によくできている。鬱蒼と生い茂った木々や斜面,岩などがプレイヤーの視界と行動を遮り,迂闊に進むと巧妙に仕掛けられたブービートラップにかかってしまう可能性もある。……そんな中を,いつどの方向から敵が襲ってくるかわからないという恐怖と戦いながら,注意深く行軍しなければならないのである。実際のジャングルであれば蒸し暑さやら鬱陶しい虫やら奇病やら,そのほかいろいろな生理的煩わしさもあるのだろうが,そういった類の問題はとっぱらって(というか再現しようがないが),ジャングルでの対ゲリラ戦の"恐怖"のみを純粋に味わえるのだから,いい時代になったものだなぁなどと思ってみたりして。

 ベトナム戦争といえば,ベトコンの地下トンネルなども欠かせない要素であろう。当然,トンネル内の探索ミッションなどもしっかり存在する。まるで迷宮のように複雑に張り巡らされたトンネル内を延々と進んでいくこのステージは,見た目はこの上なく地味ではあるが,これが予想外に面白く,従来のFPSにはない独特の味わいがある。分岐点で壁や床にナイフで傷をつけたり,ライトスティックを目印に置くなどしなければ,相当に迷うこと必至。そして暗く狭い通路で突如遭遇した敵兵に,素早く拳銃弾を叩き込む緊張感。拳銃やナイフが実際に役に立つFPSというのも,なかなかお目にかかれない。

狭くてやたらと長い,入り組んだトンネルの中に,多数のベトコンが潜んでいる。とにかく心臓に悪く,見た目と裏腹に興奮度の高いステージ 深夜のジャングルを,大勢のベトコンに追われながらたった一人で逃げ回るステージ。あわてるとジャングルを抜けられない 兵器庫にはアメリカ軍のものだけでなく,ベトナム軍が使用する兵器も収納される。戦場に持っていくことももちろん可能だ

■深いジャングルの中に鳴り響く銃声

チュートリアルに登場する教官は,映画「フルメタル・ジャケット」のハートマン教官なみに口が悪い。撃ち殺してみたらゲームオーバーになった。当たり前か
 敵のAIは結構小賢しく,こちらから攻撃を仕掛けると腹這いになって避け,素早く遮蔽物に逃げ込んだりもする。激しい攻撃を仕掛けると,遮蔽物に隠れたままなかなか出てこなくなるし(イライラするほど出てこない),さらには迂回して意外な方向から攻撃を仕掛けてきたりもする。一筋縄ではいかない相手なのだ。
 AIの賢さも当たり前となりつつある最近のFPSの中でも,「ベトコン」の敵AIは,かなり手強い部類に入るだろう。

 銃の射撃は,通常の状態ではいわゆる腰だめ射撃となり,そのまま撃つとリコイルで狙いが大きくぶれることとなる。リコイルを抑えるためには,"構えるボタン"(デフォルトではマウス右ボタン)を押し,武器を構えて肩に押しつければ良い。この撃ち方だと,リコイルを抑えつつ照準を合わせて撃てるため,射撃の精度は格段に上がる。ただしこの方法は,画面中央に表示されるクロスではなく銃の照星を頼りに射撃することになるため,銃の形状によっては画面が見にくくなることもある。このへんが使用武器のチョイスに大きく影響するという人もいるのではなかろうか。

 使える場面は限られているが,マップで座標を指定しての砲兵や航空支援による支援の要請射撃も可能だ。この攻撃により安全に多くの敵を駆逐できるが,迂闊な場所を指定すると,自分や仲間の頭上に砲弾が降り注ぐ可能性があるので注意は必要である。
 敵の攻撃などである程度ダメージを負った場合,メディキットの使用や衛生兵の治療で体力の回復が可能だ。ダメージを回復できるメディキットは1個ずつしか所有できず,使ってしまえば即なくなってしまう。倒した敵兵士から新たなメディキットを得られるが,必ずしも全兵士がメディキットを落としてくれるわけではない。緊急時にメディキットが一つもないという状況を避けるためにも,余裕のあるときは衛生兵に治療してもらったほうが断然良い。ただしイージーモード以外では,体力の最大値がダメージを受けるたびに減少する仕組みになっている。
 また,近くで爆発があると,キーンという耳鳴りでしばらくのあいだ何も聞こえなくなったりもするなど,細かい演出も用意されている。この耳鳴りはオプションでOn/Offが可能だが,より臨場感のある戦場を体感したいならOnにしておくべきだろう。

主人公らが滞在するヌイ・ペク基地。最前線にあるだけあって,たびたび敵の襲撃に遭う。それに備えてか,構造はかなり複雑 この過酷な戦場は,ポイントマンの存在なしで乗り切ることは困難である。いやホント,彼が神様に見えます

■ミッションクリアにはチームプレイが必須

 シングルプレイでは,プレイヤーはグリーンベレーの情報担当軍曹スティーブ・ホーキンスを操作する。チュートリアルの"新兵訓練"では,口の悪い教官に激しく罵られながら操作を覚えていくこととなるのだが,このあたり映画「フルメタル・ジャケット」を観た人なら,ニヤニヤしながら遊べるのではなかろうか。
 そしてキャンペーンでは,ブービートラップだらけのジャングルを進軍していったり,自分の寝床ともなるベースキャンプで敵の襲撃に遭ったり,ほとんど先の見えない深夜のジャングルを,襲い来るベトコンからたった一人で逃げ回ることになったりと,ベトナムならではの過酷さを体験させられることとなる。「プラトーン」「ハンバーガーヒル」といった,ベトナム戦争映画を思い出すような展開も多々ある。


仲間へのコマンドは,場所や状況によって選択できる種類や数が異なる。仲間のAIは優秀なので,特別なとき以外は細かく指定する必要はない ブービーとラップ解除はプレイヤーの役目となる。自分の足にさよならのキスをしたくなければ,とにかく戦場では慎重に進むことだ

■タフで頼りになる5人の仲間

こなしたミッションに関して,主人公ホーキンスはこまめに日記をつける。絵や写真が添えてあることもあり,なかなか味わい深い
 単独でミッションに挑むステージもあるが,基本的にはポイントマン,衛生兵,工兵,通信兵,機関銃兵といった仲間とチームを組んでミッションをこなしていく。この仲間達だが,口の悪い機関銃兵ホーンスターや,生真面目そうな衛生兵クロード,チビの通信兵デフォードなど,それぞれにキャラが立っていて良い戦友達だ。ミッションブリーフィングのたびに凝りもせず毎回同じような罵り合いをするのも,なかなか笑わせてくれる。
 もちろん彼らは愉快なだけでなく,ミッション中にも大いに役立ってくれる。個々の兵士の役割分担がハッキリしているので,呼び出してそれぞれの仕事をさせられるし,チームとして戦術に関する指示出しをすることも可能だ。
 とくに初めてプレイする場合は,ポイントマンであるナット(訓練された現地民。道案内のほか,トラップ,待ち伏せなどの存在を味方に報せる役目を果たす)のナビゲートは必須といってもいい。何せ本作はベトナムのジャングルを見事に再現しているだけあって,どこに向かえばいいのか見当もつかない事態などは頻繁に起こりうる。それでいて,手持ちのマップは広げても必ず真っ当に見られるわけではないのだ(明かりがない場所では見えない)。そんな戦場で,常に進路を把握してチームを先導し,前方の敵やトラップを発見してくれるポイントマンの存在は,大層心強い。彼がいなかったら手も足も出ないだろう。
 衛生兵は,いつでも何度でもプレイヤーキャラのダメージを回復する。工兵は消費した弾薬を手渡しで補給してくれるし,通信兵は本部への連絡や砲撃支援に欠かせない。機関銃兵はどこにでも強力な弾幕を張ってくれる。彼らは5人はどんな激戦のさなかでも,呼べば駆けつけて任務を果たしてくれる頼もしいチームメイトだ。自分が彼らをアゴで使うチームリーダーという立場で,本当に良かった。
 チーム全体への命令も用意されている。先述した通り,敵AIは攻撃を受けると遮蔽物に隠れたままジッと息を潜めることが多い。これを利用して,仲間に"援護射撃"を指示して敵を釘付けにし,自分は敵の側面に回りこむなどの戦術が実際に使える。あるいは"突撃指示"を出せば,味方は果敢に敵に立ち向かっていく。味方は割と血の気が多くズンズン前に出てしまうので,"退却指示"を出して戦線を引き下げる必要が生じる場合もある。
 このように,仲間の助けを最大限に利用していくのがミッションクリアへの近道となるのだ。ちなみに味方AIも先述した敵のAIと同様,銃声がしたら素早く遮蔽物に隠れるなど,実戦向きの行動をとってくれるので,かなり頼りになる。

 キャンペーンでは最初のうちは使用できる銃が限られているが,ストーリーが先に進むにつれ選択できる増えていく。銃は実際にベトナム戦争で使用された物が,約20種類登場する。登場する銃は時代的に,第二次世界大戦で使用されていたものとその後のものがごちゃ混ぜとなってる感。序盤はトンプソンやM1カービンなどしか使えないので,後半M-16が支給されたときは飛び上がって喜びたくなるものだ。これらは射撃場の兵器庫に収納されているが,だんだんと兵器庫が充実していくのを見るのはかなり楽しい。裄獲した東側の銃器も,兵器庫に陳列されていく。

ミッション途中に頻繁に基地と連絡を取り合うことになる。状況によっては,ミッションの内容が変わることも 支援射撃はマップ内を指定して,座標を連絡する仕組み。誤った場所を選択すると,最悪,自分や仲間が味方の砲撃でやられてしまう キャンペーンスタート時のヘリ内での会話が,追加パックである「Fist Alpha」の内容に大きく関わっているのだ

■ゲームモードが豊富なマルチプレイ

ベトコンの基地に乗り込み,捕虜を救出するという,おなじみのスニークのミッション。侵入が発見されると捕虜はあっという間に殺されてしまう
 マルチプレイではデスマッチ(DM),チームデスマッチ(TDM),キャプチャー・ザ・フラッグ(CTF),アサルト・ゲーム(ATG),ラストマン・スタンディング(LMS),リアル・ウォー(RW),コーポレイト(COOP)と7種類もゲームモードがあり,なかなか充実している。人気がある,というか,とりあえず一番多くのサーバーで採用されているのはアメリカ軍とベトナム軍に分かれて旗を奪い合うCTFだが,協力しながら敵兵(AI)を掃討していくCOOPも地味に人気があるようだ。

 プレイヤーは,一般の兵士や狙撃兵,衛生兵,通信兵,機関銃兵などから自分のクラスを選択することになる(やはり多くのFPSと同様,狙撃兵がかなり強い感がある)。特徴的なのは通信兵で,シングルモードと同様に支援射撃を要請でき,これがハマると一気に大量の敵を倒すことができるだろう。ただし,味方を大勢巻き込んでしまう可能性もあるので,慣れないうちはほかのクラスを選択して戦ったほうが良さそうではある。

 マルチプレイはシングルモードに比べると,"ベトナム戦争ならでは"といった感は薄い気もするが,逆にいえばシングルモードとはまた違う感覚で楽しめる。
 シングルプレイには"クイックファイト"という,マップと武器を自由に選んで敵を倒していくという,手軽に遊べるモードがあるが,ここに登場するマップはマルチプレイで多く使われているものもあるので,ゲームに慣れてない人は,ここで練習してからマルチプレイに乗り出すのもいいかもしれない。

 なお,マルチプレイの際にはパッチをVersion1.60まで当て(日本語版は1.30であり,1.60を当てる前には事前に1.41を当てる必要がある),無料の追加マップを入れておくようにしよう。
 現在,当ゲームの拡張パックである「Vietcong Fist Alpha」は,US版とUK版が発売されている。2004年3月1日現在,ベトコン日本語版上でもこの拡張版は稼働するが(公式発表ではないので,購入は自己責任で),当然のことながらゲーム内のメッセージは英語であり,日本語字幕もない。オリジナル版と「Fist Alpha」をパッキングした「Vietcong Purple Haze for WIN」と共に,ぜひ日本語版も発売してほしいところである。

自分で操作できる乗り物は,中途のミッションで出てくるジープのみ。とんでもなく細くておっかない道を延々と走らされることになる マルチプレイを楽しむには,「Vietcong Fist Alpha」のマルチデモを導入したほうが,より多くのマップで遊ぶことができるかもしれない ベトナム側の兵士を操作できるのは,マルチプレイか,シングルプレイの"クイック・ファイト"のみ


Screenshots集

このページを印刷する

■メーカー:エレクトロニック・アーツ
■価格:オープンプライス
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上,メモリ256MB以上 ,空きHDD容量1.8GB以上,32MB以上のVRAMを搭載したビデオカード,DirectX8.1以降
ムービー
デモ版(※追加パック「Vietcong Fist Alpha」)
forGamer内記事一覧

(c) 2003 Illusion Softworks. Vietcong, the Vietcong logo, Illusion Softworks, and the Illusion Softworks logo are trademarks of Illusion Softworks. Developed by Illusion Softworks in association with development team Pterdon, Gathering of Developers, the Gathering of Developers logo, Take Two Interactive Software, Inc. and the A Take-Two Company logo are trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. All rights reserved. All other trademarks and copyrights are properties of their respective owners.