ポップスターアカデミー 日本語版

Text by キーオ林
12th Feb. 2004

 

■世界のトップスターを目指す育成SLG!

ゲーム開始時に歌手の体型や衣装を決定するのだが,体型はともかく,衣装はプレイ中に必要に応じてどんどん替えていくことになる。このあたりで悩んで時間を取っても無駄になるので注意
 世界中に放映され,歌手を目指す者なら誰もがあこがれる人気オーディション番組"ポップ・スター・アカデミー"
 この番組の優勝者のプロデューサーとなって,彼/彼女(育成するキャラクターの性別は選択が可能)をトップスターへと導くのが,「ポップスターアカデミー 日本語版」(以下,PSA)の目的だ。プレイヤーはこの歌手の卵にレッスンの舞台となる部屋を用意し,必要なアイテムを買い与え,講師を選んでレッスンさせ,課題を達成してステージをクリアしていく。

 ステージとステージの合間にムービーが入ることもあるが,基本的なゲーム部分は"ライフモード""コンサートモード"の二つに分かれている。ライフモードでコンサートのための歌やダンス,エフェクトを学び,コンサートモードではそれらを組み合わせてステージクリアに臨むわけだ。
 各ステージの最初に,次に参加するコンサートを選ぶ。最初のうちは選べるコンサートは1種類だけだが,ゲームが進行するにつれ,二つのコンサート依頼から好きなほうを選んでプレイできるようになったりもする。コンサート会場は日本庭園やボクシングのリング,果てはインターネット上でのライブなど,さまざまな種類があり,選んだコンサートによって学ぶべきダンスなどの条件も異なってくる。無論,前のコンサートまでで習得したダンスやエフェクトなどは,その後もずっと使えるが,より高度なものを覚えていかないとステージクリアは不可能である。要求される条件が後半になればなるほどキツいものとなっていくあたりは,ミッションクリア型SLGの王道といってもいいだろう。


■のんびりしているのにテンポがいい! ライフモード

ゲーム開始時とステージ間に挿入されるムービーには,歌手のそのときの服装も反映される。ちなみに男女それぞれキャラを作って試してみたが,少なくとも序盤ではどちらでもストーリー展開は変わらないようだ
 では,二つに分かれたゲームモードを個々に見ていくことにしよう。まずは新しい歌,ダンス,エフェクトを習得していくライフモードから。
 ライフモードでは,プレイヤーはゲーム内のキャラに指示を出して,課題をこなしていく。すべての課題を達成するのが,コンサートモードへ進むための条件なのだ。そのために敷地に部屋を作り,家具(アイテム)を購入して内装を整え,講師に来てもらう。課題の内容は「ジュークボックスの前で踊る」「(望遠鏡を使って)天体観測をする」など,アイテムに依存しているものが圧倒的に多い(中には「誰かをひっぱたく」なんてものもあったりするが……)。
 このライフモードは,見た目やプレイ感覚はエレクトロニック・アーツの「シムピープル」と実によく似ている。家を建てて家具を配置し,リアルタイムで3Dキャラの行動を指定し,アイテムやコミュニケーションを通じて生活していく様子は,そっくりといっても差し支えないだろう。ついでにいうと,キャラが見せるコミカルで愛くるしいモーションも,実に似た雰囲気がある。だが,ここで"単なる二番煎じ"と決めつけてしまうのは早計だ。
 「シムピープル」が,こういったシステムでキャラの生活を観察すること自体が"目的"であるのに対して,PSAはゲーム上の"手段"として扱っている。PSAにはPSA独自の味があるのである。

 このあたりはプレイヤーによって感触の違いはあるかもしれないが,筆者は「シムピープル」と比較して,PSAはかなりまったりしているという印象を受けた。その理由は至って簡単,PSAは金銭感覚と時間感覚がかなり希薄……というか欠如しているのである。要するに,お金と時間では苦労しないのだ。

新しいステージ突入前に,コンサートセレクトが必要になる場合も。ここでコンサートに来る客の属性やコンサートを行うためにクリアすべき条件なども表示される。基本的に好みで選択していっても,とくに差し支えはないだろう
 「シムピープル」は時間とお金との戦いであり,その点ではシビアだ。時間が経つとお腹が減り,手持ちの金額から1回ごとの食費までもがきっちりと引かれていく。
 ところがPSAのキャラは最初から売れっ子アイドルなので,黙っていてもお金がザクザク入ってくる。間接的に"人気度"というパラメータをある程度まで高く保っておくだけでよいのだ。庭にプールを作るのも,スーパーカーやヘリコプターを購入するのも,さほど……どころか,ほとんど全然努力の必要がない。なぜなら人気度を高く保つこと自体が,ちっとも困難でないからである。
 あまりにも資金稼ぎが容易すぎるので,なんだか言い様のない不安にかられ,試しに3段階ある難度の中で一番難しい"Hard"をプレイしてみたが(デフォルトは"Medium"に設定されており,さらに簡単な"Easy"もある),やはり同じようにお金がざくざく入ってきた。羨ましいなあ,こんな生活。
 もっとも,こうした仕様になっているのには理由がある。PSAに登場する衣装やアイテムは,"グラマー" "ストリート" "ロック" "ティーン" "ヒッピー"の計5種の属性に分かれている(五つの属性のどれにもカテゴライズされないナチュラルというものもあるから計6種類か)。これらの属性はダンスやエフェクトにも存在し,講師によって教えてくれる属性が異なっている。
 そしてPSAでは,「さっきまでグラマーのダンスを習っていたのに,今度はストリートのエフェクトを学ばなければならない」といったような事態が頻発する。でもって,そのたびに部屋の内装をどんどん増やすか,替えていく必要があるわけだ。これでお金稼ぎにまで労力を費やさなければならないようになったら,とてつもなく煩雑で手間のかかるゲームになっていただろう。
 また別の言い方をすれば,「シムピープル」が徐々にアイテムを揃えていくこと自体を楽しむ"積み重ねていく楽しさ"を持つのに対し,PSAは欲しいアイテムはただちに購入できるため,楽しさの即効性が高い。どちらが良いとは人それぞれで一概にはいえないだろうが,少なくともPSAはストレスの溜まりにくいゲームであることは確かだ。

 そして"時間"という要素の省略について。ライフモードでは,登場するキャラ個人に対しては"体力"と"楽しさ"という二つのパラメータしか存在しない。つまりキャラがお腹を空かすこともなければ,睡眠不足に陥る心配もなく(体力が減ったら休む必要はあるが),トイレに行く必要もなければ,部屋を掃除する必要も,庭に植えた植物に水をやる必要もない。体力と楽しさの数値のどちらかが0になってしまうとキャラがかんしゃくを起こすが,そうなったところで一定時間,そのキャラが操作不能になるだけで,大きなペナルティはない。
 そしてありがたいことに,「○月○日までにコンサートの準備を整えろ」「何時間以内にレッスンを修了せよ」といった類の制限時間はいっさいないので(ゲームとしては,あってもおかしくないのだが),ゲーム内で急かされるということがほとんどない。PSAはあくまでも歌やダンスなどの習得が目標で,そのほかの要素は極力排除しているようにも感じられる。「それじゃダラダラしてつまらなくないか?」と思う人もいそうだが,先述した金銭面のおかげでスパスパと内装を替えられるし,講師から出される課題のクリアにもそんなに時間がかからない(時間をかけても怒られない)。このため,"まったりしてるクセに妙にテンポがいい"というPSA独特の感触が生まれているのである。


講師を呼ぶために必要となって,ヘリ購入。そしてその後「庭にほかに置かなきゃいけない物ができたから」という理由であっさり売却。最初はとまどいがあったが,ずっとプレイしていると,こういったこともなんの躊躇もなくできるようになってしまう 親密度が上がると,テレパシーで会話して宙に浮くこともできる。逆に仲が悪い場合は,いきなりパイをぶつけたり跳び蹴りしたりすることも可能。この親密度が課題クリアの条件に含まれることも。仲が良ければ万事OKというわけでもない 課題をこなすためにどんどんアイテムを買い替える必要があるので,この手の箱庭的ゲームで通常楽しめる,コンセプチュアルな部屋作りは諦めたほうがいいかも。レイアウトに凝る前に課題をこなすべき


■コンサートモードで特訓の成果を存分に発揮せよ!

講師はみんな,クセのある人ばかり。部屋に彼らを招くためには,いろいろな条件が必要となる。各講師ごとにキャラの衣装や部屋の内装などを激しく替えなければならないということも頻繁に起こる
 ライフモードでステージの課題をすべてクリアすれば,その次に待ち受けているのはコンサートモードである。コンサートモードではライフモードで習得した歌,ダンス,エフェクトを組み合わせて,ステージを作り上げていくのだ。
 ステージで披露する歌を1曲を決め,その1曲の間にダンスのパーツとエフェクトのパーツを八つずつ選択すれば,ステージは完成する。1ステージで使用する歌は1曲だが,ダンスとエフェクトは歌手のほかに,ダンサーの分も決めていく必要がある。つまり,歌手のほかにダンサーが2組いるステージの場合,3組分,24個のダンスとエフェクトのパーツを組み立てる必要があるわけだ。
 コンサートの主旨や開く場所によって,来る観客の属性が異なる。ヒッピー属性の観客には,当然のことながらヒッピーのダンスやエフェクトのほうがウケがいい。
 コンサートでは"熱狂度"というパラメータがあり,これが必要レベルを超えない限りは次のステージに進むことができない。同じ属性のダンスやエフェクトでも難度に差があり,難度の高いダンスやエフェクトのほうが観客の熱狂度は上がる。また,ステージによっては使ってはいけない属性があったり,曲の途中で必ず入れなければならないダンスやエフェクトが存在したりもする。同じダンスやエフェクトを多用すると観客に飽きられてしまうので,そのあたりも配慮が必要だ。
 各ステージの歌,ダンス,エフェクトをプログラミングし終えたら,いよいよ本番! といっても,本番に入ったらプレイヤーはとくにするべきことはない。歌手とダンサーが作り上げる豪奢なステージを,しっかりと見届けよう。ちなみに主題から考えると一番キモの部分であるはずのステージだが,飛ばしてしまってもまったく構わない。
 本番前にリハーサルを行って,実際のステージの様子をチェックすることもできるが,熱中度はプログラミングの時点で分かってしまうので,これはステージの出来にとことんこだわりたいプレイヤー向けの仕様といえるだろう。作り上げたコンサートは保存して,トップメニューから選択して鑑賞することが可能である。このコンサートが結構見ていて楽しいので,これは嬉しい機能といえる。


コンサートのプログラミング自体は至って簡単。ただし,画面の下にある熱狂度のバーには注意を払おう。熱中度が一定のところまで上がらないと,次のステージに進むことができないのだ。新しく習得した歌やダンスなどは出し惜しみなしに使用するべし ボクシングのリングを舞台にしたコンサート。ダンスもエフェクトも派手で,見ていて飽きがこない。ゲーム内で使用される曲は,ドナ・サマーやエリック・クラプトンなどの大御所のものがいっぱい。日本語版ではフィンガー5の「学園天国」も登場する


■「ちょっとだけ次を見てみよう」で,結局徹夜……

最初のステージは歌手と講師のマンツーマンで進行するが,後になればなるほど,一緒にコンサートを盛り上げるバックダンサーも増えてくる。ダンサーもライフモードに登場し,プレイヤーが操作可能。一緒に課題をこなしたりもできるのだ
 というわけで,総論をば。ちょっと書き方は悪いが,"だらだら遊べるゲーム"である。プレイ中に極度に緊張を強いられることはないが,その分あまりストレスも溜まらない。スイスイとゲームは進んでいくが,後になればなるほど使用できるアイテムもキャラの衣装も増えるし,新しいステージでのコンサートがどんな具合になるか見たくなって,ついついプレイを続けてしまう。
 「このステージが終わったら寝よっと」が「最初の講師を招くところまではやっておくかー」になり,「この課題だけクリアしよっかな」って感じで,気がついたら夜が明けてたりもしてしまった。
 キャラの動きも妙で楽しいし,「なんか力抜いてやれるゲームはないかなー」という人に,ぜひおススメしたい。キャラの間の抜けた動きに,別の意味で脱力することもあるけど……それはそれでまた楽し,ってな感じで。


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■メーカー:ナツメ
■価格:6980円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(Pentium4/1GHz以上推奨),メモリ128MB以上(WindowsXPの場合は256MB以上必要) ,空きHDD容量800MB以上,16MB以上のVRAMを搭載したビデオカード(32MB以上必要),DirectX9.0以降
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