ヒドゥン&デンジャラス2 日本語版

Text by キーオ林
1st Apr. 2004

■前作から4年……ついに登場した続編

人数では圧倒的に劣るので,敵兵を効率よく倒していく必要がある。真正面からの撃ち合いはなるべく避けるべき

 2004年3月26日にズーから発売された「ヒドゥン&デンジャラス2 日本語版」(以下,HD2)は,タイトルに“2”がついてることからも分かる通り,「ヒドゥン&デンジャラス」(以下,HD1)の続編だ。

 HD2の開発元は,Illusion Wireless。「ベトコン」「マフィア」といった良作をリリースしているチェコのメーカーである。HD2は「マフィア」の3Dエンジンをベースに開発されたとのことだが,もともと「マフィア」の3DエンジンがHD1の強化版なわけで,要はHD2の3Dエンジンは,実績を積んで正当に進化している由緒正しきものといっていいだろう。しかしさすがに時を経ているだけのことはあって,HD2のグラフィックスをHD1と比べると,断然緻密になっている。
 それもそのはず,HD1の日本語版が最初に発売されたのが,なんと1999年。前世紀だったりするわけだ。途中で拡張パック「ヒドゥン&デンジャラス 〜Fight For Freedom〜」や廉価版が発売されたり(現在は「GREATシリーズ ヒドゥン&デンジャラス DX」を購入すれば,4000円足らずで拡張パックを含めた全32ミッションを遊べる),ちょこちょことHD2の制作中のスクリーンショットなどが雑誌やらWeb上やらで掲載されたりしていたのだが。それにしてもずいぶんかかったモノだなあと,HD1を寝る間も惜しんでプレイしたファンとしては,妙に感慨深くなっちゃいますな。一時期はもう,続編を遊べることはないのかなぁ,なんてあきらめムードになったりもしたけれど,長生きはしてみるモンですわ。

ほとんどのミッションで大活躍できるスナイパー。射撃能力の高い兵士はやはりすこぶる役に立つ マップはミッションによって航空写真風だったり,手描き風だったりいろいろ。細かなところも凝っている

■SASのメンバーを操作し,ミッションをクリアせよ!

ミッション内では敵兵のユニフォームは,拿捕した兵士からしか奪うことができない。死体からは無理
 さて,当サイトにはHD1のレビューがないので(発売当時はforGamer自体がなかったんですな),まずはHD1とHD2で共通部分に関して書いていこう。
 HDシリーズは,イギリス特殊空挺部隊(SAS)の第二次世界大戦での活躍を描いたコンバットアクションゲームである。主な敵はドイツ軍で,1〜6ミッションで構成されるステージを,各ミッション最大4名の兵士で戦っていくこととなる。
 複数の兵士をミッションに参加させられるというこの仕様が,HDシリーズの特徴といってもいいだろう。ミッションに参加する最大4人の兵士全員を,プレイヤーが操作することが可能となっている。もちろん4人全員をいっぺんに操作するわけではなく,アクティブ状態ではない3人の兵士はAIによって行動することになるが,瞬時に操作する兵士を切り替えられる。また行動をプログラミングすることによって,4人に別々のアクションを取らせつつ同時に活動することもできる。「ついてこい」「止まれ」などといった命令によって,AI兵士を簡単に従えることも可能だ。
 この仕様によって,チームプレイが綿密に取れるのがなんとも嬉しいところ。狙撃兵の側に近距離からの敵襲に備えてサブマシンガンを持った兵士を配したり,敵が向こう側に潜んでいるかもしれないドアを開けるために,ほかの兵士にあらかじめ銃を構えさせて備えたりといったことが容易にできる。一人の兵士に敵を引きつけさせ,隠れていたほかの兵士がおびき寄せられた敵を一網打尽にするといった陽動作戦だって,そう難しくはない。なにせ兵を配するのがプレイヤー自身であるからして。
 また,プレイヤーの視点を一人称/三人称に容易に切り替えられるのも当シリーズの特徴の一つ。というか,2でなくならなかったことに感謝。一人称視点では見られない場所にいる敵も,視野が若干広がる三人称視点では見える場合もあったりして,ちょっとズルしてる感じにもなるが,周囲の状況を把握しやすい三人称視点はやはり重宝する。しかし攻撃を的確にヒットさせたい場合はやはり一人称視点が便利。この二つの視点を上手く切り替えていくことが,HDシリーズをスムースに攻略していくコツとなる。

 とまぁ,このへんの特徴を聞くと,かの有名な「レインボーシックス」シリーズを思い出す人もいるだろう。話だけ聞くと,確かに似ているかもしれない。しかしあちらはシングルミッションの内容は結構淡々としており,黙々とマップ上の敵を狩っていくだけといった色合いが濃く,チームメンバーの個性も実際にプレイしているとあまり感じられない(原作ファンなら違うのかもしれないが)。マルチプレイの人気は高いが,シングルが特別面白い! という人はあまりいないだろう。HDシリーズは,シングルキャンペーンが特別面白いのである。

敵のユニフォームを着ていれば容易に敵に近づける。スニークのミッションは同系のほかのゲームよりかなり楽

 登場する兵士はHD2では30名(HD1で40名,拡張パックが16名)となっている。各人にパラメータが設定されており,狙撃の得意な者,隠密行動の得意な者,体力があり荷物持ちにうってつけの者などの個性がある。挑むミッションの内容を見極め,それに合ったキャラを参加させることがミッション遂行への近道となっていくのだ。
 ミッションの目標は,敵の殲滅から施設の破壊,重要人物の誘拐,人質の救助,敵地からの脱出などバラエティに富んでおり,だいたい一つのミッション内にいくつもの目標が設定されている。どこからどう手をつけるべきか,あれこれ考えながら戦う必要があるのだ。
 各ミッションの物語性が高いのもHDシリーズの特徴だ。各ミッションを遂行している間に,戦場ならではのドラマチックな展開が多々見られるのである。この手のミリタリーアクションのキャンペーンモードは,背景となるストーリーは単なるオマケといった扱いのものが多い感があるが(偏見だろうか?),HDシリーズのキャンペーンは文句なしに面白い。それもムービーやナレーションだけでストーリーを語るといった手法にあまり頼らず,ゲーム内の演出で物語性を感じさせてくれる数少ないゲームなのである。
 ストーリーといっても,始まりから終わりまで一環した物語と特定の登場人物がいて……というわけではなく,あくまで個々のキャンペーンまたはミッション内で展開する。それも,お涙頂戴モノやラブコメなどの余計な話ではないので誤解なきよう(というか心配なきよう)。

敵兵が多数いる列車内を突き進むミッション。敵兵に変装してるかそうでないかで難度がガラリと変わる 今回は海中から敵地に潜入するミッションも存在する。水中戦はさすがにないけど,ちょっと新鮮な気分 クリア条件には含まれないオプション目標。完璧を目指すなら,是が非でも全部見つけだしたいところだが……

■HD2ならではの新要素とは……

敵の最新技術を撮影してくるなんてミッションも。撮影中に敵に見つかってバリバリ撃たれたりしないように

 それではHD2が,前作からどう変化したのかを見ていこう。まずは3Dグラフィックスの描画力など,技術的に現代に通用するよう進化しているのは当たり前。前作では目立った雑な部分(致命的なバグなどが多かった)が今回はほとんどなく,大物としての貫禄を上げた感じ。しかし変な不具合は相変わらずところどころにあり,このメーカーはおっちょこちょいなのかもしれない。
 また舞台となる戦場が,北極の氷山や,アフリカの砂漠,ビルマのジャングルなど,前作とはうって変わって実にバリエーション豊かになっている。アクアラングを使用した水中での行動が加わったのも大きな変化だろう。水中での行動が必要となるのはチュートリアルを含めた全24ミッション中,合計で三つしかないが,やはり基本的にはずっと地上で戦っているだけに,かなり目先が変わる感がある。
 そのほかにも,飛行する爆撃機の銃座に着いて,追いかけてくる敵戦闘機を機銃で撃ち落としながら逃亡するミッションなどは,いかにも変化を狙った試みだ。戦車や装甲車などの乗り物に,通常のミッション中に乗れるのはHD1と変わらない。
 しかし,HD1にあった「クリスタル・ファルコン」のような,約200名の敵兵が押し寄せてくる中をたった4人で戦い抜くといったムチャなミッションがなくなったのはちょっと残念かも。ぶっちゃけHD2は,「これは解けない人も多いだろう」と思わせるようなミッションは,存在しない。前作には,大勢の人が詰まるような激辛難度のミッションがたま〜にあって本作の悪名を高めたが,ファンにはあの難しさすら快感であったのだ。

 また,HD2では体力のほかに持久力とスパイ性を表すゲージが追加されており,手にしている武器と,肩にかけている武器も同時に表示されている。中でもスパイ性を表すゲージはかなり便利。「ヒドゥン&デンジャラス」というタイトルからも分かるとおり,正面からバリバリ撃ち合って勝てばそれだけでOKというゲームではない。ときには敵のユニフォームを奪い,隠密行動に徹する必要もあるのだ。
 ちなみに前作には有名な変装ミッションがあり,これがまた腹立たしいほど難しいことで,ファンの間で愛されている。HD2では「変装」が一般化され,原則的にどのミッションでも可能となっているが,これは前作の変装ミッションの評判に応えたものだろう。
 で,このスパイ性を表すゲージだが,ゲージがなくなってしまうと,変装が見破られて敵が攻撃してくるといった仕組み。HD1ではどのタイミングで敵に変装が見破られるか判別がつかなかったのだが,このゲージによって次に取るべきアクションを選択しやすくなったのは大層ありがたい。

日本軍と激しい戦闘を繰り広げるビルマステージ。当たり前ではあるが,日本兵はちゃんと日本語を喋るのね

 さらに大きく変わったのは,戦術マップ画面。戦術マップとは,兵士の行動をプログラミングし,プレイヤーが操作せずとも自動で動かすための機能である。HD1ではこの戦術マップは専用の2Dマップで表示されていたが,HD2ではゲーム画面と同じ3D表示となった。
 HD1の戦術マップは「この位置まで移動して,これを操作して,この方向をカバー」といった細かい指示が与えられるものの,2Dマップでは戦場の細かな状況が分かりづらく,ハッキリいって使い道のあまりなかった機能だ。せいぜい,4人をバラバラの位置に移動させる必要が生じたときに使うとラク,という程度の使われ方しかしなかった。
 HD2でも,律儀にこの機能は収録されている。しかし今回は前作ほど緻密な設定はできず,ほとんど移動命令にのみ特化している。それこそ「4人をバラバラの位置に移動させる必要が生じたときに使うとラク」機能に専念したといっていい。今回の戦術マップの変更は筆者的には大変ありがたかった。HD1では細い道を走らせたりすると,AI兵士は平気で道を踏み外して死んだりしてたし。

 また,ミッションをこなしていくことによって,活躍した兵士が成長していくのも前作とは違う点。前作ではやはり能力の高い兵士をミッションに登用することが多くなりがちだったが,この仕様により,能力の低い兵士を育てていく楽しみもできた。HD2で操作できる30名の兵士にはパラメータのほかに,それぞれの入隊前の職業や家族構成などを記したプロフィールも設定されているので,単に数値で操作する兵士を選ぶのではなく,プロフィールを見て登用するのも感情移入ができて楽しい。しかしHD2のSAS隊員って,元犯罪者が結構多いような気がしちゃうのは筆者だけだろうか。まあ,犯罪者軍団や隊の不人気者だけでチームを作って育てていくのもまた楽しいモンです。


死体を担いで移動させることも可能。ほったらかしにしといて敵兵に見つかるとマズい場合などに移動させよう 応急処置の能力の高い兵士を必ずメンバーに入れておきたい。応急処置セットの減り方が全然違うのだ 硬派なHDシリーズになんと女性キャラが! 残念ながら,プレイヤーが操作することはできないのだが

■マルチプレイは現在,対人戦のみだが……

ミッションをこなすことによって能力が伸びていくほか,働きによっては勲章を貰えたり昇進したりもする

 HD2の最大の特徴といえば,マルチプレイ機能が大幅に充実したことだろう。「デスマッチ」「HD2目標」「占領」という3種類のゲームモードを収録している。「HD2目標」は,よくあるオブジェクティブモード,「占領」はマップ上のいくつかの拠点(リスポーンポイント)を奪い合うという「バトルフィールド1942」のコンクエストのようなモード。三つとは少ない気もするが,これでもCOOP(4人の隊員を4人のプレイヤーで操作できる以外はシングルモードと同じ)しかなかった前作から比較すると,大変な進化といえる。
 HDシリーズといったら隠密行動に徹するミッションが多いだけに,マルチプレイで行われている戦闘は相当に派手に感じる。マップにもよるが,戦車なども操作可能なので,まさにドッカンドッカン撃ち合っている感。この手のマルチプレイではスナイパーが強いというのがもはや定番であるが,相手に戦車に乗ってこられたらさすがにスナイパーだけじゃ歯が立ちませんな。
 シングルプレイで可能な一人称/三人称視点の切り替えは,マルチプレイではサーバーの管理者に使用の可否が委ねられている。とりあえずいくつかのサーバーで遊んでみたが,三人称視点を使用可能としているサーバーは見当たらなかった。まあ,全部のサーバーで遊んだわけではないので,探してみれば普通にあるのかもしれない。
 マルチプレイには,シングルでは出てこないマップも用意されている。普段はシングルでミッションをこなしてるだけで満足といったプレイヤーにも,ぜひ遊んでみてほしいところだ。

 しかし,せっかく充実したマルチプレイモードを用意したにも関わらず,HD2はマルチに関してはファンからかなり叩かれている。というのも,COOPモードが今回は収録されていないのが原因。前作のファンは,それしかないから仕方なくCOOPモードで遊んでいたのではなく,実はかなりCOOPに熱中していたというわけなのだ。これはこれで美談ではあるが,叩かれているのは問題だ。まあ,COOPはパッチや拡張パック等でフォローされるというウワサもあるので,ここはおとなしく待つべきであろう。



マルチプレイでの戦車は強力だが,逆をいえば標的にされやすいということ。みんな真っ先に殺りに行くよねー マルチにもマップ画面があり,味方のいる場所が表示される。狭いステージだと見ている余裕なんか全くありませんが ロシア軍の武器はシングルプレイではほとんど使用する機会がないが,マルチプレイだと選択が可能となっている

HD1では手榴弾1個で壊れた戦車が,今回はバズーカでもなかなか壊れない。爆弾を使うのが一番確実か? 敵戦闘機を振り切る迫力の空中ミッション! 戦闘機は引きつけてから撃ったほうがより効果的だ

■"難度高"の評判に臆するな

敵施設破壊のミッションはかなり多い。爆弾は表示される必要個数より多めに持っていった方がいいかも

 HDシリーズはネット上での評判を見てみると,難度の高いゲームと評されているケースが多いように見受けられる。まぁ,このレビュー内でも散々そう書いてしまった気もする。
 ミッション内容の多彩さにより,一筋縄ではいかない感が強いのは確かである。HDシリーズはアクション要素のほかに,プレイヤーの戦略性も要求されるゲームだ。ミッション内の目標の中には謎解きの要素をはらむものもあったりする。フィジカルだけでは生き抜けない,過酷な戦場がHDシリーズでは待ち受けているのである。
 HD2ではミッション中に最低限こなさなければいけない目標のほかに,ほとんどのミッションで"オプション目標"が用意されている。プレイ中にミッションクリアのための目標は確認できるが,オプション目標は達成して初めてその内容が明らかにされるのだ。さらに一人の兵士でミッションをこなさなければならない「単独プレイ」や,ミッションクリアの目標がさらに高く設定された「殺戮プレイ」(名前の通り敵兵を全員殺戮する必要がある)などのモードも用意されており,それらをすべてクリアしようとすると,相当な歯ごたえということになる。敷居の高さを感じる人もいるかもしれないが,戦争アクションゲームが好きな人であれば,相当楽しめることはまず間違いない。シングルプレイでこれだけ遊べ,なおかつマルチプレイも(一般的なFPS並に)充実したのだから,かなりおトクな1本といえるだろう。
 ちなみに,HD1を未プレイだからといって,HD2の楽しさが損なわれる部分は全くない。HD2は独立して一つのゲームとして成り立っているのである。まずは"難しい"という先入観を取っ払って,とにかくプレイしてもらいたい。願わくば,筆者同様,HDシリーズの虜となる人が増えますように。

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■メーカー:ズー
■問い合わせ先:TEL 0268-38-1561
■価格:9240円[税込]
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/2GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 2.4GB以上,メモリ32MB以上搭載したビデオカード(128MB以上推奨),DirectX 9.0以降
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