マイクロソフト ダンジョン シージ 拡張パック:アランナの伝説

Text by 大路政志
5th Feb. 2004

 

 2002年5月に発売された「マイクロソフト ダンジョン シージ」(以下,「DS」)は,当時としてはトップクラスの映像美とシームレスなマップ展開,そして分かりやすいストーリーや魅力的なキャラクター育成等の魅力で,世のRPGファンを魅了にした秀作3D RPG。
 ゲームそのものの面白さもさることながら,「DS」のほぼすべての要素が変更可能な「Siege Editor」の配布により,多種多様なMODが熱心なファンの手により作成/配布され,息の長いタイトルとして多くのプレイヤーに楽しまれている。

 今回レビューする「マイクロソフト ダンジョン シージ 拡張パック:アランナの伝説」(以下,「LoA」)は,「DS」初の公式拡張パックとしてリリースされた「Dungeon Siege Legends of Aranna」の完全日本語版として,2004年1月30日に発売された作品
 パッケージには,拡張パックである「LoA」だけでなく,ゲームエンジンがリニューアルされた「DS」と,リニューアルの施されていない「DS」が収録されていて,価格は6800円。実にお買い得といえる。
 前作をプレイしていない人でも安心して遊べる作品なので,「DS」未体験のプレイヤーも,ぜひこのレビューに目を通してもらいたい。

「DS」未体験者でも違和感なく楽しめるストーリー展開

 「LoA」の物語は,エッブ王国の要衝の村・アーホックから始まる。プレイヤーは,かつてエッブ王国のために戦った勇者の息子(あるいは娘)となり,「天星の杖」というキーアイテムを軸とする壮大な冒険に巻き込まれることとなる。ストーリーの詳細についてはここでは触れないが,物語の展開は「DS」よりもやや理解しやすくなっているように思えた。ストーリー的にも「DS」との関連性は深いが,連続性は薄いので,前作をプレイしていなくても「LoA」という物語にどっぷりと浸ることができる
 また,世界のさまざまな場所で入手できる書物にはゲームの背景設定に関わる文章が記載されており,目を通すことでゲーム世界への理解や愛着をよりいっそう深めわれる。「DS」の熱心なファンなら,すべての書物を発見/精読し,感情移入の度合いを高めたいところだろう。逆に,モンスターとの戦闘やキャラクター育成をメインに楽しみたい人なら,それらの書物を読まなければ(拾わなければ)いい。ゲーム世界の背景設定は深いに越したことはないが,その内容の理解を半ば強制されてしまっては,気軽にRPGを楽しみたいプレイヤーにとっては苦痛かもしれない。そういった意味においても,本作の物語性は多くの人に楽しんでもらえるよう調整されているように思える。

主人公は,「DS」で活躍した勇者夫婦の子供という設定。邪悪な者に奪われた「天星の杖」という秘宝を軸に,ストーリーが展開していく。日本人にもお馴染みのパターンだ NPCとの会話などで,世界設定の押しつけをされることはほとんどない。ゲームの世界観を深く味わいたい人は,各地に散らばる書物を読んで情報収集しよう シングルプレイでは,志を共にするNPCをパーティに加えることができる。彼らとの出会いや冒険も,シングルプレイの大きな楽しみだ

数々の追加・変更要素が,「DS」の魅力を最大限まで引き出す!

 「LoA」で追加されたのは新シナリオ(マップ)だけではない。分かりやすい追加要素を挙げていくだけでも,新しい武器が80以上,防具が100以上,魔法が60以上,モンスターが120以上,登場人物が50人以上と,かなり大がかりな強化が施されている。「DS」を遊び倒し,数々のMODもプレイしてきたプレイヤーでも,十分満足できるレベルだろう。が,「LOA」では上記した以外にも数多くの追加・変更要素が搭載され,RPGとしての魅力だけではなく,プレイアビリティの向上も図られているのだ。以下に紹介するので,「DS」を遊んだことのある人はぜひチェックしてほしい。

ワールドマップの搭載
「LoA」では,ゲーム中いつでもワールドマップを表示できるようになった。新しいエリアに足を踏み入れるとワールドマップが更新され,踏破済みエリアが表示されるようになり,プレイヤーの現在位置も一目で分かるようになっている。広大なゲーム世界を冒険していると,街やダンジョンの位置関係がイマイチ把握しづらい場合があるが,ワールドマップのおかげで世界の地理的なつながりが実に理解しやすくなった。

未踏破エリアは詳細表示されないので,こまめにチェックしていれば世界をくまなく探索できる。世界が広大な「LoA」ではありがたい機能だ


武器設定機能の強化
これはCtrl+フルキーの1〜0で,最大10種類の武器や魔法を登録できる機能。登録した武器や魔法は,対応するフルキーを押すことで瞬時に切り替わるので,状況に応じて魔法を使い分けながら戦うことが容易になった。「DS」では,アクティブになっている2種類の魔法しか素早く切り替えることができず,魅力的な魔法の存在がややくすんでいた感がある。「LoA」では,そんなストレスをまったく感じることなく魔法を使い分けられるはずだ。

範囲限定攻撃
Shiftキーを押しながら地面をクリックすると,その地点に最も近いモンスターを攻撃対象にできる。乱戦状態での対象選択や,クリックしにくいモンスター,壺などを攻撃したい際にはかなり重宝する操作だ。

インビューアイテムの追加
通常のマジックアイテムよりも装備時のエフェクトが派手な,「インビューアイテム」が追加された。効果のほどはそこそこ(ベースアイテムの強さにもよるが)といった感じだが,装備時のエフェクトは一見の価値あり。ルックスにこだわる人ならぜひとも注目しておきたいアイテムだ。なお,インビューアイテムは紫字(所持品パネルでは紫色の背景)で表示される。

ゲーム序盤から比較的多めに入手できるインビューアイテムは,低〜中レベルのキャラクターにオススメの装備。エフェクトも豪華なので一つくらいは装備しておきたい


セットアイテムの追加
3〜5個のアイテムで構成される「セットアイテム」は,同セットのアイテムを同時に装備することで,追加のパラメータ強化が発揮される特殊なアイテム群。単体でももちろん有益なマジックアイテムだが,同セットをコンプリートして装備すれば,戦闘力は大きくアップする(もちろん見た目の統一感も演出できる)。なお,セットアイテムは水色字(装備品パネルでは水色の背景)で表示される。

同セットをコンプリートするのは困難だが,二つ以上組み合わせたときのパワーアップは魅力だ。多少邪魔でも,大事に保管しておいたほうがいいだろう


転異,オーブ,グリフ魔法の追加
前述したとおり,「LoA」では約60種類もの新魔法が追加されたが,その中でもとくに注目したいのが,転異魔法,オーブ魔法,グリフ魔法の三系統だ。転異魔法を使うと,術者は一定時間モンスターに変身できる。モンスターに変身すると通常の魔法や飛び道具などは使用不可能になるが,基本的に高い接近戦闘能力が得られるので,使いどころは意外に多い。オーブ魔法は,術者の周囲に魔力を備える球体を生み出し,さまざまな効果を発揮する。一度唱えてしまえばしばらく効果が持続するので,その間ほかの魔法や飛び道具などを組み合わせて敵と戦うことが可能になる。射出系のオーブと回復系のオーブを使い分ければ,冒険をスムースに進めることができるぞ。最後にグリフ魔法だが,これは地面に設置して罠として活用できる。自分と敵との間にグリフを仕掛け,飛び道具で敵をおびき寄せるなどすれば,予想以上の威力を発揮する。

転異魔法使用後は,変身したモンスターによってパラメータが変化する。変身中にヒットポイントがなくなっても変身が解けるだけなので,決戦用魔法として活用できる 写真はヒーリングオーブ。ダメージを受けても,オーブの魔力によってライフが少しずつ回復していく。重ねがけで効果時間を延ばすことも可能だ これはアシッドグリフを地面に仕掛けたところ。一定時間が経つとグリフが爆発し,酸が噴出される。直接敵陣に投げ込んでも効果的だ


アイテム管理系の機能も充実
所持品・装備パネルのアイテムにカーソルを合わせることで,アイテムの価格や,10秒間に与えられる平均ダメージなどが表示されるようになり,装備品の質を見極めることが容易になった。また4×8マスの収納力を備えるリュックサックが追加され,ラバやトラッグが使用できないマルチプレイ時でも,多くの戦利品を所持できる点は実にありがたい。さらに,アイテムを拾うと自動的に所持品が整理されるようになったので,所持品パネル整理の煩わしさからも解放される。やや地味な機能かもしれないが,レアアイテムコレクターにとって,これらは非常に嬉しい新機能だろう。

リュックサックは4×4の大きさだが,収納力は8×4もある。書物やセットアイテム,現状では装備できないアイテムなどをしまっておくのにちょうどいい


シングルプレイならではの新要素
シングルプレイ限定の新要素では,トラッグの登場と,ポーション振り分け機能が面白い。トラッグは,「DS」でもお馴染みだったラバの発展系。恐竜のような姿の荷運び動物なのだが,戦闘能力も有しているので,冒険のお供にぜひ1頭手に入れたいところ。ポーション振り分け機能は,所持しているライフ・マナポーションをボタン一つで自動配分する機能。前衛タイプにはライフポーションを,魔法タイプのキャラにはマナポーションを多く配分するよう調整されているので,使い勝手はバツグンだ。

これが,ラバに変わる新しい荷運び動物・トラッグ。筆者はマルチプレイでゲームを進めていたので連れていけなかった。すさまじく残念である 画面下部の振り分けボタンを押すだけで,ポーションを自動配分してくれる。パーティメンバーが増えてくると,その有り難みもさらに高くなってきそうだ


マルチプレイならではの新要素
前作ではマルチプレイでゲームを中断/再開することはできず,毎回最初のクエストからプレイしなければならなかった。しかし,今回はマルチプレイ中に保存を選ぶことでジャーナル(クエスト一覧)も保存される。後日,友達と続きがプレイできるのでマルチプレイもかなりプレイしやすくなったといえるだろう。

質,ボリューム共に大満足の一本。長くつきあえそうな秀作RPG!

簡略化された俯瞰画面で移動できるメガマップ機能は,「LoA」でも健在。移動や戦闘はこの画面のままでも可能なので,慣れればとても使いやすい

 レビューを書くにあたって一週間ほど「LoA」をプレイしてみたのだが,現時点では素直に「いいゲーム」だと思っている。実のところ筆者は,「DS」を面白いRPGだとは思っていなかった。確かに当時としてはトップクラスのグラフィックスだったし,シームレスに展開する冒険には感動もした。が,広大な世界を移動させられる退屈さや,突き詰めていくと没個性のキャラクターが育ってしまうスキルシステム,魔法の使い分けの不自由さなど,不満な点が目立ちすぎていたのだ。
 しかし「LoA」では,不満だった点がかなり解消されているし,プレイアビリティも大幅に向上している。アイテムや魔法,モンスターも,拡張パックとは思えないほどの数が追加され,純粋にドキドキ感が増している。
 そんな至れり尽くせりの「LoA」を主戦場にしていると,マルチプレイ時に時折出かけるウトラエアン半島やエッブ王国(「DS」のシナリオ)での冒険も,やけに楽しく感じるから不思議だ。ウトラエアン半島とエッブ王国を有効活用し,自分のレベルに適した戦場でレベル上げやアイテム収集をしつつ,「LoA」の世界を攻略していく。そんなスタイルでマルチプレイゲームを楽しんでいけば,キャラクター育成もスムースに行えるし,なにより飽きがこなそうだ。仮に「LoA」に飽きてしまっても,その頃には一般プレイヤーが作成した,より刺激的なMODが登場していることだろう。
 ゲーム自体のクオリティはもとより,そうした拡張性をも考慮してみれば,「LoA」のパッケージがいかにお得な商品かが理解できるというもの。長期間遊べる本格的なRPGが遊びたい,と考えている人は,体験版「こちら」などをダウンロードして,ぜひ本作をチェックしてみてほしい。キャラクターの成長システムや,ややオフビート感漂うゲーム展開に拒否反応を抱かなければ,「LoA」は声を大にしてオススメできるRPGだ。

巨大なモンスターや新モンスターとの戦闘も,「DS」シリーズの魅力の一つ。ボス級のモンスターを倒せば,レアアイテム入手の可能性もあるぞ

グラフィックスには定評のある作品だけに,魔法のエフェクトなども派手なものが多い。銃器の種類も増えたので,戦闘シーンの迫力も格段にアップしている

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■発売元:マイクロソフト
■価格:6800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(Pentium4/1.4GHz以上推奨),メモリ128 MB以上(256MB以上を推奨) ,空きHDD容量 2GB以上,16MB以上のVRAMを搭載しDirectX 8.1以上に対応したビデオカード
■体験版:日本語版
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