カース ザ・アイ・オブ・イシス 日本語版
Text by Murayama
17th Mar. 2004
■呪いをテーマにしたアクションアドベンチャー
時は19世紀,大英博物館では"イシスの目"などを目玉としたエジプト展の準備が着々と行われていた。しかしある晩のこと,大英博物館に忍び込んだ怪盗がイシスの目を手にすると,イシスの目に込められていた呪いの力が開放されてしまい,大英博物館は呪いの渦巻く恐怖の館と化してしまう。時同じくして展覧会の関係者であるヴィクトリアから誘いを受けていたダリエンは,大英博物館がそんな恐ろしいことになっているとも知らずに,博物館の門を叩くのであった……。
「カース ザ・アイ・オブ・イシス 日本語版」は,エジプトの"豊穣の女神"イシスの呪いをテーマにしたアクションアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは前述のダリエンとなって,博物館やエジプトなどを部隊に呪いの謎に迫ってゆく。といってもアドベンチャー色はそれほど強くはなく,モンスターを相手にバイオハザードのような大立ち回りが楽しめ,誰もが手軽に楽しめるゲームに仕上がっているといってもいいだろう。とはいっても,"まんまバイオ"というわけではなく,本作ならではのシステムなどもあるので,そのあたりを押さえつつ,「カース ザ・アイ・オブ・イシス 日本語版」の魅力を紹介しよう。
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序盤は1860年のイギリスを舞台としている。何も知らないダリエン(主人公)は,恐怖の館と化した大英博物館へ足を踏み入れてしまう…… |
イシスの目。この像の謎解きと敵対勢力との奪い合いがゲーム中盤以降の目的となる |
■「ダリエン」「ヴィクトリア」二人の主人公
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第三の主人公ともいえるアブドゥル。操作はできないがアイテムの受け渡しと,セーブポイントとして役立つ |
本作には,「ダリエン」「ヴィクトリア」の二人の主人公がいる。といってもゲームスタート時にどちらかを選んでプレイしたり,プレイ中に任意にキャラクターを切り替えたりするわけではなく,ストーリーの進行に合わせて自動で切り替わる。たとえば(シナリオ上の流れで)ダリエンが呪いで気を失ってしまうとヴィクトリアパートになり,ダリエンを助けるためのアイテム探しがスタート。そしてダリエンを無事助けると今度はヴィクトリアが盗賊団にさらわれてしまい,今度はダリエンがヴィクトリア救出のために冒険をすることになる……。要は常にプレイできるキャラクターは一人で,カットシーンが入るごとに主人公はダリエンとヴィクトリアを交互に繰り返してゆくことになるのだ。
もちろん当然プレイキャラクターが替わると持ち物も変わってしまうので,アイテムの整理が必要になってくる。主人公キャラは武器を4個,アイテムを10種,書類を12枚まで持ち歩けるが,自分に必要のないアイテム(ライフルしか持っていないのにショットガンの弾など)をいつまでも持っていると,荷物がいっぱいになってしまい,ゲームの進行に必要なカギなどが拾えなくなってしまう。そんなときはNPCのアブドゥル(セーブポイント)に不要なアイテムを預けておき,別の主人公の時に受け取るのだ。また,多くの回復剤を拾ったからといって気安く使うのではなく,もう一人のアイテム事情を考慮して使う必要もある。要は二人で一人であることを認識してアイテムの使用や装備を考える必要があるというわけだ。片方は回復薬をたくさん,片方は回復薬がまったくない,などという状況にならないように注意したい。
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物語の進行に応じてプレイキャラが切り替わるようになっている。アイテムの配分は計画的にしたい |
■アクションゲームとしての「カース」
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ザコといえども侮れない。つかみ攻撃はマウスの左クリック連打で回避せよ |
この手のゲームでは,戦闘がオマケ要素であることが多い。が,本作では戦闘も楽しませようという作り手側の気概が感じられる。武器として登場するのはバット,火炎放射器,ショットガンなど7種類。それぞれ攻撃力/射程/弾薬の装填数が異なり,火炎放射器は使い勝手がよいが石像に対して有効ではないなどの特殊要素もあるので,使用武器は戦況や残弾数を考慮したうえで決めなければならない。
射撃はマウスの右ボタンを押し続けることで狙いを定め(四つの点が徐々に集まり,すべてが重なるとターゲット完了したことになり,もっとも命中率が高い),左クリックで射撃を行う。ただし,毎回じっくり狙える状況ではないので,乱戦時などは命中率が下がることを覚悟し,ターゲッティング完了前に撃ってしまってもかまわない。状況によっては手数で勝負することも必要だ。
また敵には部位ダメージなども設定されており,頭部,右手,左手,胴体といった場所が個別に狙える。例えばミイラなどは,先に腕を破壊すればつかまれることはないし,対人間の場合は頭を狙えばより大きなダメージを与えられるという感じだ。リロード中は走れないなどの不満もあるが,戦闘は結構楽しめるものといっていいだろう。
もちろん,シナリオの要所ではボスキャラと呼べるような敵も登場する。あまり書いてしまうとネタバレになってしまうので詳細は省くが,ボスを倒すため一工夫が必要になる点も面白かった。ボスが特定の体勢になったときのみダメージが与えられたり,とあるポイントだけにダメージが与えられたり,武器だけではなく備え付けの○×を使ったり……。ボス戦を"単に体力が多い敵との単純な銃撃戦"にしなかった点は,個人的には評価の高いポイントだ。
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ボスキャラとの戦闘はかなり楽しめた。これ以外にも個性的なボスが登場するので,ぜひとも戦ってほしい |
動く石像は,なかなかの強敵だ。剣を振った瞬間に隙ができるので,敵の攻撃を誘いながら銃弾を撃ち込んでいこう |
■"呪い"をゲームシステム化
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写真のように画面左上の呪いゲージが満タンになると,体力がものすごい勢いで失われてゆく |
ゲームのタイトルにもなっている"カース"(呪い)は,ゲーム中では呪いは黄色い霧として表現されている。プレイキャラクターは呪いの中に身を置いたり,モンスターの吐き出す呪いの息(?)を浴びると,呪いゲージが上昇。そして呪いに侵された状態になると次第に体力が減ってゆく。そして解呪するにはメンソールか,アミュレットを使わなければならない。
……実のところ筆者は,呪いのゲームシステム化については,それほど評価はしていない。というのも,言ってしまえば一般的なRPGにおける毒状態と同じようなものだからである。しかもメンソールやアミュレットは豊富に手に入るので,「呪われちゃったしアミュレットでも使っておくか〜」程度なのである。これは誰もが楽しめるということで考えればOKだが,なんだか緊張感がないような気がする。単純にメンソールやアミュレットの出現数を抑えるだけでも,もっと緊張感が出ただろうし,贅沢をいわせてもらえば,せっかく呪いという人智を超えたモノなのだから,強大でプレイヤーを悩ませるような存在であってほしかった。
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呪いは黄色いもやとして表現される。怪物の吐く呪いの息に触れると呪われてしまうので注意が必要だ |
■アドベンチャーゲームとしての「カース」
本作をアドベンチャーゲームとして見た場合,比較的遊びやすいタイトルだと思う。"イシスの呪いの謎を追う"という分かりやすいテーマの下,19世紀の大英博物館,駅,船上,エジプト遺跡などを冒険することになる。写真を見ても分かるように全体的に色調は暗く,この手のアドベンチャーが得意とするシーンに合わせたカメラアングルも相まって,非常にいい視覚効果を生んでいると思う。
また「アドベンチャー=難度が高い」と思う人もいるかもしれないが,何らかのアクションが起こせるアイテムは光って教えてくれるし,後半の遺跡でのパズルなどは,ゲーム中で手に入る父の日記を読んでおけば,ほぼ間違いなくクリアできる。ほかにも,次にすべきことは会話でフォローしてくれるなど,かなりの親切設計なので,あまり悩まずにゲームを進められるだろう。
なおストーリーはゲーム中の会話だけでは分かりづらく,筆者には少々突飛なものに思えた。が,これは筆者がマニュアルなしのサンプル版でプレイしていたからであったようだ。代理店であるエムスリイエンタテインメントに聞いたところ,製品版のマニュアルには人物紹介のページがあり,あらかじめそれを読んでおくことでストーリーをより深く理解できるとのこと。
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利用できる道具や拾えるアイテムは光って教えてくれる親切設計 |
日本語表示に関してはフォントがちょっと見づらい気も…… |
日記やメモにはゲーム攻略のヒントが書かれている。逃さず拾っておこう |
■総括:よくできたB級タイトル
本作は奇抜さや突き抜けた面白さがあまり見られないのが残念だが,イシスの呪いをテーマに,モンスターたちとの戦い,お使い,ちょっとした謎解き,遺跡でのパズル,要所ではボスキャラといった具合に,この手のゲームの定番ともいえる要素がソツなくまとめられている。そういう意味では,本作を"よくできたB級作品"と評価したい。
どこかで見たような演出,どこかで見たような戦闘,どこかで見たようなシナリオ……しかし,それは決して悪いことではないと思う。問題はいかに上手に定番の要素を料理するかであり,「カース」はその好例だと思う。ホラーアクションが好きなら,決してプレイしても損はしないだろう。
■メーカー:エムスリイエンタテインメント
■問い合わせ先:TEL 03-5786-3562
■価格:9240円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP(※MeではOS固有の不具合により動作しない場合があります),PentiumIII/600MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),メモリ 128MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 700MB以上,メモリ64MB以上搭載したビデオカード,DirectX 9.0以降
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