コマンドス3：デスティネーション ベルリン

Text by 虎武須（Kobs）
4th Mar. 2004

ヤツらが帰ってきた！

　世界中のゲーマー達を悩ませ楽しませた"あの"ゲームが2年ぶりに帰ってきた。
　特殊技能を持ったコマンド達を操り，困難なミッションに立ち向かう……。そう，スニーク系RTSの金字塔ともいえる"コマンドスシリーズ"の最新作が，このたび紹介する「コマンドス3：デスティネーション ベルリン」（以下，コマンドス3）だ。

　コマンドスシリーズの1作めは，ストラテジーとアクションを融合し，さらにパズル的要素を加えたという，まったく新しいタイプのRTSとして1988年にリリースされ，世界的規模での大ヒットとなった。2001年に発売された「コマンドス2」では完全3D化を果たし，前作同様の大ヒットを記録したのは記憶に新しい。
　今や多くのフォロワーが生まれ，それらの紹介記事には大抵「コマンドス風の」という一文が付いているほどで，コマンドスシリーズは一つのジャンルを確立したと言っても過言ではない。
　それほどまでに有名なシリーズの最新作となれば，期待せずにいられない人も多いだろう。

美麗なグラッフィクスを見よ

軍用列車を舞台とするミッションもあるのだ

　コマンドス3を起動してまず驚くのは，緻密に描かれたグラフィックスだ。コマンドス2の時点でもそれなりに美麗だったとはいえ，"目の肥えてしまった"現在のゲーマーから見ても，ため息が出るばかりの美しさだ。
　画面は800×600ドットに固定されているが，そんなことを意識させない精細さ。そのグラフィックスをさらに盛り上げてくれる演出も，感嘆するばかりの完成度だ。例えば空挺部隊が降下/着地するときの落下傘や，爆撃によって倒壊する煙突を見ても，その"質感"を感じ取れるほどの表現がなされているのだ。

　コマンドス3で使用されている3Dエンジンは，前作で使われたエンジンの改良版とのこと。前作と同様に，屋外では4段階，つまり90度ごとに画面を回転できるため，俯瞰視点ならではの"建物の影に入り込んだ敵が見えない"という問題はない。しかしながら屋内では角度に関係なく画面を自由に回転できるし，できれば屋外でも同じシステムにしてほしかったところだ。
　また前作では画面を最大六つに分割できたのが，コマンドス3では最大で3画面に減っている。ちょっと残念にも思えるが，プレイにおける頻雑さを軽減する目的もあるのだろう。

　パッと見ではさほど前作と変わらないように思えるかもしれないが，一つだけ大きく変わったところがある。それは，前作で画面右端にまとめられていたインタフェースが，コマンドス3では画面の上部左コーナーと下部に移動している点だ。
　ほかの一般的なRTSに合わせたのかもしれないが，前作を遊び尽くしたプレイヤーは，わずかに違和感を感じるかもしれない。

ミッションの目的はこうしたムービーで知ることとなる	火炎瓶を投げつけて一網打尽だ

質感が分かるほどの描写は見事	屋内では90度ごとの制限無くグリグリ回して見れる

プレイしがいのある難度

注意を怠りうっかり水面に浮上すれば簡単に見つかってしまう

　ご承知の通り，コマンドスシリーズは難度が高いことで有名だ。前作までは難易度を選択できたわけだが，どういうわけかコマンドス3では難易度の選択ができなくなってしまった。
　2003年のE3の記事「こちら」で，開発スタッフから「難度が高すぎたというこれまでの反省を踏まえ，今回は難度をグッと引き下げた」というコメントをもらえたわけだが，このときは難易度が選択できた。この仕様変更は，ある種のプレイヤーに対する挑戦状なのだろうか……？

　コマンドス3の舞台は，1作め，2作めと同じく第二次世界大戦中のヨーロッパとなっている。シングルプレイヤーモードではチュートリアル・ミッションのほかに，「スターリングラード」「中央ヨーロッパ」「ノルマンディー」という三つのキャンペーンが用意されている。
　これまでの作品と異なり，史実に基づいたキャンペーンとなっているので，その点では初めてコマンドスシリーズに触れるプレイヤーにとっても，やや"小難しさ"が軽減されることだろう。逆に生粋のコマンドスファンには，ノルマンディのような"ありきたり"の題材を持ってきたことに不満が生まれるかもしれないが。

　さて，実際にプレイしていて筆者を悩ませたのは，やはりその難度の高さだ。コマンドス3で"死ぬ"のは実に簡単だ。例えばあるミッションでは，ゲーム開始と同時に立ち上がるだけでいい。あっという間に敵に発見され，いとも簡単に射殺されてしまう。
　つまりちょっとした軽はずみな行動が死に直結するわけで，ゲームそのものを理解したうえで，コマンド一人一人の特殊能力，さらには銃火器や細かなアイテム類（例えばタバコやドッグフードなど）の取り扱いについてあらかじめ熟知しておく必要がある。マップを全体的に見渡し，敵の位置や行動を観察して，作戦を練っていくわけだ。
　キャンペーンの序盤のいくつかのミッションは，運が良ければとくに作戦など立てずとも達成できる場合もある。だがキャンペーンが進行していくにつれて，マゾヒスティックなまでの難度へと変貌するのだ。これは，シリーズ作品をプレイしたことのある人ならご理解いただけるだろう。

キャンペーン開始時のブリーフィングはたったこれだけ	フィンス（ダイバー）の水中活動の様子	これだけの兵士が行進するサマは圧巻

コマンド紹介

　さて，ここでコマンドス3に登場する6人のコマンドを簡単に紹介しておこう。
　本作での新たなコマンドの追加はなく，逆に前作の8人＋犬1匹という構成から，ドライバーと娼婦，そして犬が削除された。

グリーンベレー　ジャック・オハラ　通称"ブッチャー" 　コマンドスチームを率いるリーダー。ずば抜けた身体能力を持ち，得意のナイフと拳を用いた近接戦では驚異的な戦闘能力を発揮する。 　敵からの攻撃で受けるダメージもほかのコマンドより少なく，高いところから飛び降りたり，柱やワイヤーをよじ登るなど高い運動能力も見せる。デコイを使って敵を混乱させることができ，非常時には地中に隠れる能力も持っている。

スナイパー　フランシス・T・ウールリッジ　通称"デューク" 　ミュンヘンオリンピックの射撃競技で金メダルを獲得した経歴を持つ，凄腕の狙撃手。もっぱら狙撃だけが役目だが，冷静沈着で，いかなる緊張下でも正確に目標を打ち抜きチームのサポートに努める。

ダイバー　ジェイムズ・ブラックウッド　通称"フィンス" 　水中での行動におけるスペシャリスト。潜水用具を用いて長時間水中に潜むことができる。また地上でも鉤爪を使って壁をよじ登ったり，得意のナイフ投げで活躍する。

工兵　トーマス・ハンコック 通称 "ファイアーマン" 　かつて消防士として爆発物処理の職務に就いていた経歴を持つ，爆発物のエキスパート。手榴弾，バズーカ砲，火炎放射器などあらゆる火器を扱え，さらに敵が仕掛けた爆弾を無効化できる。また地雷探知機を駆使して，敵の仕掛けた地雷も無効化できる。

スパイ　レニ・デシャン　通称"フレンチー" 　敵の制服を着用することで敵になりすましたり，敵に偽の命令を与えて混乱させたりするなど，個性派の揃ったコマンドチームの中でも，とくに異色的な存在。敵を混乱に陥れることが使命なので戦闘は得意ではないが，注射器で毒を注入して昏睡状態または死に至らせるという技を持つ。

シーフ　ポール・トレド　通称"ルパン" 　小柄な身体を生かした素早い動作が得意。匍匐移動もほかのコマンドの走る動作に近い速さだ。 　壁や柱をよじのぼって縄ばしごを降ろし，ほかのコマンドの進入を手助けするなど，チームのサポート役的存在の隠密行動のスペシャリスト。敵の背後に張り付いてアイテムなどを盗めるし，ドアや箱などの鍵開けができる唯一のコマンドでもある。マーシャルアーツをマスターしているため，素手の一撃で敵を失神させることもできる。

　見て分かるとおり，それぞれのコマンドはなんらかの技術のスペシャリストであり，明確な役割を持っている。またほとんどのコマンドは音を立てずに敵を殺傷する能力を身につけているのだ。そして数多くのアイテムが存在するので，その利用目的や使い方も理解する必要がある。
　実際のところ，コマンドス3で初めてこのシリーズにトライするプレイヤーは，いったい何をしていいやら途方に暮れるかもしれない。ほかの多くのゲームのように，綿密なブリーフィングがあるわけでもなく，ヒントを授けてくれるNPCもいないのだから。
　プレイヤーには，ただミッションの目的が知らされているのみだ。このような状況で，あらゆる情報から綿密な作戦を立てる。この作業はストラテジーならではの要素だが，実際は複雑なパズルに近い難解さがある。

プライベートライ……の画像ではありません	爆撃を受け，街が破壊される

不可能を可能にしてこそコマンドス！

　"難度を下げた"とはいっても，そこはやはり"コマンドス"だ。手応えは充分すぎるほどで，トリッキーで緊迫感に満ちたコマンドス3の戦場では，アクションとストラテジーとパズルの見事なまでの融合を味わうことができるだろう。
　そして何よりも，クリア不可能なんじゃないか？　と思えるほどの困難を潜り抜け，目的を遂げたときの達成感がたまらない。これぞコマンドスならではの楽しみであり，ほかのゲームではなかなか味わえないものだ。難易度設定がなくなった点からも"上級ゲーマー向け"という感は否めないが，"ゲーム"としての完成度は非常に高く，名作シリーズの名に恥じない，チャレンジしがいのある作品に仕上がっている。

　なおforGamer.netでは，今後数回に渡ってコマンドス3の攻略記事を掲載する予定となっている。コマンドスシリーズが初めての人も，それを参考に進めていただければ幸いである。