A列車で行こう 21st Century + パワーアップキット

Text by UHAUHAI
26th Jan. 2004

 

PCで復活を遂げたA列車にパワーアップキットが登場

山形新幹線"つばめ",東海道新幹線"のぞみ",秋田新幹線"こまち"がズラリ。A列車ならではの光景

 箱庭系シミュレーションというと「シムシティ」シリーズが筆頭に挙げられるが,日本では「A列車で行こう」シリーズも負けてはいない。線路を敷設して列車を走らせ,利益を得ながら鉄道会社を経営していく初代「A列車で行こう」がリリースされたのは,1985年のこと。たびたびのバージョンアップの末,1990年にリリースされた「A列車で行こうIII」(A3)で本作は劇的な変化を遂げる。もともと鉄道&線路主体でパズルゲーム的だったA列車が,鉄道運営のほかに建物や施設の建設,税金を納めたり,株の売買などをしながら都市を発展させる"都市開発シミュレーション"へと進化したのである。1993年にリリースされた「A列車で行こうIV」(A4)では,バスや地下鉄などの要素も加わり,さらに環境開発シミュレーション的なタイトルとしての人気と地位を不動のものとしていく。
 その後,現在のA列車の原型ともいえる3D描写の「A列車で行こう5」(A5)を最後にプラットフォームをPCからPlayStation2へ移行。そして約4年の沈黙ののち,2003年6月にPC版として復活したのが「A列車で行こう The 21st Century」(A21C)だ。久々に登場したA列車がPC市場でヒットしたのは記憶に新しいところ。

 PS2版からの移植となる美しい3Dグラフィックス,リアルな車輌,ゲーム性が見直され本来の鉄道経営シミュレーションの姿に戻ったPC版A21Cを,今なおプレイしている人も多いだろう。そのA21Cに"新車輌やマップを追加してほしい"というファンからの要望に応え,車輌とマップデータが追加されるパワーアップキットが2003年12月に発売となった(A21C本体とのセット版も同時発売)。

 余談だが,PC版A列車をプレイしてきた人の多くが「A列車は4作めが最高だ!!」と口を揃えていうように,A列車には都市開発シミュレーションというイメージがある。こと筆者もA4はひたすらプレイしたクチで,A5は触った程度。A21Cにて久しぶりにA列車シリーズと再会することとなったわけだが,3〜4作めのような"都市が主役"といったイメージは薄まっており,どちらかというと本来の鉄道経営シミュレーションに重きが置かれていた。最初はプレイしていて違和感が大きく,筆者以外にもそんな声を多く耳(目)にしたので,そのへんの違いなども交えてA21Cとパワーアップキットを見ていくことにしたい。

目標クリアを目指すか,ゼロから都市を作り上げるかは自由だ

 A21Cには10個のマップが用意されている。それぞれのマップには,産業評定ポイントを3万以上にする,商業評定ポイント3万5000を維持したまま農業評定ポイントを2万以上にするといったクリア目標があり,目標を達成すると次のマップをプレイできるようになる。
 そしてパワーアップキットには,"新幹線計画" "ローカル線の再生"という二つの新マップが収録されている。この二つの追加マップの自然物だけを残した更地マップ,さらには自然物さえ何もない真っ新な"更地"を加えた,合計五つのマップでプレイ可能だ。
 パワーアップキットで追加された二つのマップは,従来のマップをクリアせずにプレイできるが,難度が高いため初心者がいきなり挑戦するのは無理な話。初心者は,序盤にチュートリアルが含まれているA21Cの10マップをクリアしてから挑戦するのがベストだろう。チュートリアルでは,操作方法や誘致システムなどの解説を読みながら基本部分を覚えることができるので,A列車が初めてという人もすんなりA21Cの世界に入っていけるはずだ。

 また,パワーアップキットで登場した更地にはクリア目標がなく,ゼロから都市開発を楽める。ただし資金には注意しておきたい。ちなみにA21Cでも,マップ選択画面で"artdink"と入力するとクリア条件なしの更地でプレイできる

産業誘致により駅周辺を発展させていけば,鉄道利益も自然と上がってくるはずだ 時間帯,天候,季節による景色の変化も再現してあり,同じ風景でもさまざまな顔を覗かせる 最大の駅"高架駅複合型都市大"は8線使えるため,拡張が容易だ。状況に合わせて路線を増やそう

誘致により都市を活性化させ,鉄道利用客を増やせるかが決め手

 どんな目標が設定されているマップでも,まずは都市を拡張して鉄道利用者を増やすのが先決。列車を購入して走らせていると,時間の経過とともに駅前から道路が伸びてゆき,住宅,店舗,工場などが勝手に建設されていくだろう。ただし,この状態では駅周辺の発展はすぐに止まってしまうため,土地を買い取って"誘致"する必要があるのだ。

駅周辺にマンションが建ち並んだ。ここまで発展すれば多くの収入が見込める

 例えばこのエリアは工業地,このエリアは住宅地といった具合に誘致し,その土地に買い手が現れれば不動産収入を得ることができる。そうしてできた工業地と住宅地,商業地と住宅地を鉄道で結び,住民を通勤させれば本業である鉄道収入も増えるというわけだ。
 誘致で気を付けたいのは,1駅につき1産業が原則ということ。同じ駅に工業地と住宅地を同時に誘致しても公害を嫌う住民は寄りつかず,思うように発展することはない。また工業地〜商業地間を鉄道でつないでも通勤する者は少なく,そのへんを考えて誘致していかなくてはならない。また建物を建てるためには資材が必要で,それには工業地で作られた資材を貨物車輌で各地域へ輸送する必要がある。資材が切れると発展が止まってしまうため,資材切れには注意したいところだ。

 鉄道運営には欠かせないダイヤグラム(ダイヤ)の設定については"ピストン輸送" "住宅地向き" "工業地向き"などのテンプレートが用意されているので,一つずつ手作業で時刻設定する必要がない。まずはこのテンプレートで列車を走らせて,あとで細かい調整をするということが可能なため,初心者でも簡単に列車の運行ができるよう配慮されている
 無論,細かくダイヤを調整したいという人のために駅,列車ごとに自由にダイヤを設定することもできる。ただし15分単位と割とアバウトになっているため,同一線路上に複数の列車を走らせる場合には待避線での停車時間や駅間の接続時間など,じっくり考えて調整しなければ渋滞や衝突が頻繁に起きてしまうだろう。
 ともかく鉄道運営はメインの収入源であるだけに,ダイヤ設定は重要だ。通勤時間帯は多く運行し,昼間は本数を減らすなど,列車の利用率を睨みつつ無駄な支出を抑えるダイヤ設定にしていきたい。

 駅/線路の設置,土地の誘致,列車のダイヤ設定と,こんな感じで都市の発展を促していくことになるのだが,A5まであった建物や施設の"建設"は"誘致"に置き換えられ,自由に都市を作り上げるスタイルから変貌を遂げていることに気付いたろうか。A21Cでは自分の望み通りの街並みを作り上げるのは難しく,例えばスタジアムが欲しいと思った場合,以前はスタジアムを直接"建設"すればよかったのだが,A21Cでは"観光誘致"として土地を用意し,買い手が現れて建設されることを祈るしかないわけだ。またバス路線,多層化(地上4層,地下2層),トンネル,株の売買などは排除され,以前よりはハードルがかなり下げられている。筆者が以前との大きなギャップを感じた部分である。

まだまだ利用者が少ないが,列車ごとに乗車率が分かるので頻繁にチェックしておこう 高架を走る路面電車,東京急行電鉄 世田谷線 300系。なんとも不思議な光景だ 厳つい顔つきのJR九州 883系ソニックもごらんの通り。色違いで4種類収録されている

誘致のあと,時間経過と共に建物が建っていく。時間帯による影の違いにも注目すべし!! A21Cの序盤のマップでのチュートリアルにより,基本的なプレイ方法を学ぶことができる

鉄道ファンはニンマリ!? リアルに再現された約140車輌が登場

のどかな農業地。ビルばかりの都市ではなく,こんな風景も残しておきたいところだ

 登場する列車についてはA21Cで約120車輌,パワーアップキットで約20車輌が収録され,合計すると140車輌とかなりの数。どれも全国鉄道各社の承認を受けて設計図から描き起こされているとのことで,マニアも納得の出来映えだ。登場する車輌をいくつか列挙しておくと,A21Cでは"はやて" "ひかりRailStar"などJR東日本,西日本の新幹線,JR東日本"スーパービュー踊り子",JR北海道"おおぞら",広島電鉄"グリーンムーバー",JR四国"しまんと"など。
 パワーアップキットを導入するとJR九州"かもめ",JR西日本"きたぐに",JR貨物"ブルーサンダー",東急電鉄"5000系"(田園都市線)など,身近なものからマニアックなものまで収録されており,眺めているだけで鉄道ファンならずともニンマリできるはず。

 こうなるとすべての列車を走らせたいと思うのが人情……だが,残念なことに同時に使用できるのは20車輌までであるため,使いたい車輌の選別に迷ったりする。ローカル線の車輌のみ,新幹線のみ,JR東日本の車輌のみなど,いろいろとこだわったラインナップでプレイしてみるのもいいだろう。

本来のA列車は都市開発シミュレーションではない!!

 ゲーム中はカメラアングルを回転,拡大縮小,高さ調整など自由に変えることができるため,列車をお気に入りのアングルで眺めたり,車窓モードで都市の景観を眺めたりするだけでも面白い。季節,時間,天候の変化も再現されており,ウィンドウ表示で動かしてデスクトップの片隅で環境ソフトのように使うなど,いろいろな楽しみ方ができるのもA21Cの良いところだ。
 ゲームの部分では,A5までプレイしてきた人には思い通りの都市が作れないなど不満に感じる面もあるが,"やることが多すぎたゲームシステム"を簡素化し,マニアック過ぎた部分を排除し,誘致システムの導入,ゲームバランスの見直しなどで,A列車で最も重視すべき"鉄道"に特化したといえる。筆者がプレイ当初に感じた過去のA列車とのギャップも,プレイしていくうちに「これはこれでA列車の面白さは変わっていない」と感じられた。
 地域と地域を結ぶ路線の施設,緻密なダイヤ調整に力を注ぎ,そのダイヤに沿ってたくさんの車輌が行き交うことで街の活性化を促す。これが本当のA列車の姿,つまり原点に戻ったのではないだろうか……。

線路は直線,カーブ,勾配,複合(接地線,高架線)を組み合わせて敷設する。意外と難しい 序盤のマップではヘルプ機能があり,駅周辺の発展状況が分かるようになっている ダイヤはテンプレートによる簡易設定も可能だ。慣れてきたら手動で細かく調整していこう 列車の利用率が高ければ車輌を増やす,増発する,許容数の多い車輌にするなどで対応しよう

マップをクリアすることで使用可能になる車輌もあるため,全マップクリアを目指して挑戦するべし パワーアップキットではクリア目標のない更地でプレイ可能。A21Cとはページで切り替える 都市情報にて現状がどうなっているのか把握できる。何が必要なのかを判断しよう 同時使用できる20車輌を入れ替えて,好みのラインナップでプレイすることも可能だ

このページを印刷する

■メーカー:サイバーフロント
■問い合わせ先:サイバーフロント TEL 052(779)6549
■価格:2980円(パワーアップキット),8980円(withパワーアップキット)
■動作環境:Windows 9x/2000/Me/XP,PentiumIII・Athlon/450MHz以上(PentiumIII・Athlon/700MHz以上を推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上を推奨),空きHDD容量 1.05GB以上,16MB以上のメモリを搭載したビデオカード,DirectX 8.1以降
forGamer内記事一覧
forGamer内記事一覧(パワーアップキット)

(C)2003 Cyberfront
(C) 2001,2003 ARTDINK. All Rights Reserved.

n>