第弐話 誰これ?

 前回無事に大地に降り立った魔鬼憎が見た光景は……,

 十二畳の部屋に立ちつくした自分と変なおばさん。誰も話し相手がいないにも関わらず,三途の川の石積み並みに,延々とただひたすらに謎の身振りを続けている。

誰これ?

 ひょっとすると,これは母親なんだろうか。うん,そうだな。そういう設定なのかもしれない。そういえば,前に一度試しログインしたときに何か喋っていたような気がしないでもないが,余裕で会話を飛ばしまくったので何一つ覚えちゃいない。しかし,相手もいないのに喋っている様はマジで怖い。早く正気に返ってほしい。なにより,こっちより先にラリられてはヤンキーの立場がない。とりあえず,愛情でできたガンをおざなり気味に飛ばしながら,画面構成をチェックすることにしよう。
 ……誰か止めて。


 さて画面の左上,少し大きめにあるのが「外出」と書かれたボタン。押すと,「外に出ますか」との確認画面がポップアップ。どうやらこれを押さないと部屋から外には出れない仕組みのようだ。いろいろと部屋をうろうろしてみたが,歩いただけでは駄目。さすがヤンキー,いきなり獄中(?)からのスタートなのだ。

 ←その下にあるのが「アクション」ボタン。押すとぴろっと大きめのアクションウインドウが表示される。上部にある矢印キーはキャラクターの向きを変えるボタン。その下には各種のポーズボタンが並ぶ。例えばウンコ座りやら体育座り,大の字寝そべりといった地べた系から,眼タレや服を見せびらかす立ち技系,さらにはジャンケン用のグーチョキパーと三つのボタンが用意されている。
 しかし,デフォでパシリと震えのポーズが揃ってるあたり,早くも心が折れてる感じがしないでもない
 ↑「外出」の右側にある「コマンド」ボタンでは,各種のコマンドを呼び出せる。出来るのだが,これは実行するのに何かいろいろとアイテムが必要なようだ。投獄されたばかりのヤンキーではどうすることも出来ないので,何か入手出来たら改めていじることにしよう。服とかステッカーとか,作るの楽しそうなのだが。一人身だって旗くらい作らせてくれよ,とも思うのだが,我が分身ながら気の利かないやつだ。

 試しにこの中から「ガレージ」を押すとこんな画面が表示された。

チャリかよ!

 胸の奥から,己のヤンキーライフに対する不安がビッグウェーブ気味に押し寄せてくる。ヤンキーだよ? オレ。しかも赤いママチャリだ。特攻服でこのチャリに乗るのは,雪国ゆえにバイクに乗れないという北海道の徒歩暴走族並に嫌すぎる。しかし,この辱めに耐えてこそ立つ瀬があるかもしれないので,ここはじっと我慢することにしよう。

 画面右下には残りXXX日という表示が。某宇宙戦艦がなんちゃらクリーナーを持ってくる期限を表してるわけでもなさそうなので,きっと何か別の意味があるのだろう。まぁ地球滅亡の日まではかなり時間があるようなので,しばらくはほったらかしておくことにしよう。

 次週は,「魔鬼憎,街デビュー!」
 バリバリよろしく!

第三話も夜露死苦!

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