forGamer.netイギリス紀行:独占インタビューシリーズ<2> 1/3

Warrior Kings with Andy Trowers

Text&Photo by 奥谷海人 

 

完全3Dでありながら,マウスさばきだけに頼らないゲーム性を重視したWarrior Kings

 2002年に発売される予定のリアルタイムストラテジーゲーム(RTS)「Warrior Kings」や,それを開発しているBlack Cactus Gamesについて知っている人は,おそらく日本ではほとんどいないだろう。実際,筆者が始めてこのゲームに出会ったのは,2000年度のECTS(ヨーロッパにおけるゲームショー)会場のSierraブース内でのことで,当時はECTS内で数少ない初公開作品の中でもめぼしい新作として,ジャーナリストやファンの間では大いに期待された。
 ところが,その直後にSierraの親元であるVivendi Universalが経営の引き締めを敢行し,Black Castusとの契約は無効になるという事態に至っている。そこへ踊り出たのが,カナダのケベック州を基盤にするMicroidsで,すでに欧米ではWarrior Kingsが2002年2月にリリースされることが決定しているのだ。

 さて,Black Cactusの処女作となるWarrior Kingsは,中世的なファンタジーワールドで無数のユニットを操作するという,「Shogun:Total Wars」や「Age of Empires」の流れを汲む,ユニットに絡んだ戦略性を重視したRTSとなる。しかし,完全3Dによる美しいグラフィックスはもちろんのこと,ネットワークモードも考慮したユニークなゲーム性が加味されており,このところ元気の良いRTSジャンルに,また一つ"大作"が加わろうとしているのだ。

Black Cactusとは?

 ロンドン市内の網羅された地下鉄の中でも,最南端に位置するモーデン駅。都会の喧騒から離れた住宅街だが,その駅ビル最上階(といっても3階建てだが)にあるのが,Black Cactus Gamesである。同社は1999年1月に設立されたばかりで,会長兼クリエイティブ・ディレクターのジェイミー・トンプソン(Jamie Thompson)氏や,元アイドス幹部のイアン・ターンブル(Ian Turnbull)氏らを中心に,現在では20名程度のグループに成長している。

Black Cactusのオフィスの画像。"アテナハウス"と名付けられた駅ビル最上階にある。イギリスは古いビルが多くてエアコン設備が整っていないためか,社内のアチコチに扇風機が立てられていたのが印象的だ


 ターンブル氏によるとBlack Cactusは,設立後1年以上に渡ってゲームエンジンと自社専用開発ツールだけを制作することに専念していたという。欧米のスタンダードでいえば,その開発期間も長いほうではないものの,こういう地味な作業で開発環境の下地を作り上げるという開発理念を持っているからこそ,その後も着実に作業を進行できるのだろう。実際,2000年9月の初公開ではαバージョンレベルだったWarrior Kingsは,この1年余りで非常に洗練されてきているように見える。
 元々は「Age of Empires」や「Total Annihilation」などRTSの中核的なシリーズを意識した作品だったのだが,その後加わった若手の開発者たちの手によりRPGの要素も加わるようになって,Warrior Kingsはより斬新なゲームへと変化していったという。今回デモを見せてくれたのは,そんなゲームデザイナーの1人であるアンディー・トロウワーズ(Andy Trowers)氏だ,彼は,以前はBullfrog Productionsに在籍していたこともあり,その後はBlack Cactusに引き抜かれるまで,Legoシリーズなどを手掛けていた新進気鋭の開発者である。

Black Cactusのチームメンバー。基本的なゲームシステムから,若手の意見をどんどんと取り入れて洗練させているという,柔軟な思考を持った開発会社である

(C) Black Cactus

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