テイルズウィーバー インタビュー

 

コンテンツ事業部の担当取締役
Cho, Young-Gee (チョ・ヨンギ:画面右)
 韓国Konkok University電子工学科卒業後,1994年Softmaxに入社。「西風のラプソディー」(1999年に日本ファルコムから日本語版が発売)が代表作。テイルズウィーバー開発総責任者,及びプロデューサーを務める。

Team Z.O.A/マネージャー
Kim, Do-Hyoung (キム・ドヒョン:画面左)
 2003年Softmaxに入社。1993年,ゲーム業界に足を踏み入れ,各種海外関連業務や開発プロジェクトのマネージメントを務める。今回は翻訳を担当。

 

 SOFTMAX社が開発を行っている「テイルズウィーバー」は,ユニークなシステムで世界的に注目を浴びているタイトル。日本ファルコムから発売された「西風のラプソディ」の開発元といえば,ピンと来る人もいるだろう。
 東京ゲームショウ2003が閉幕した翌日(2003年9月29日),テイルズウィーバーの開発責任者であるCho,Young-Gee(チョウ・ヨンギ)氏にインタビューすることができた。
 当サイトでは,ストーリーとMMORPGという二つの部分についての質問を用意し,どのような秘密が本作の大きな期待に繋がっているのかを聞くことにした。

ストーリー重視のユニークなゲームシステム

forGamer(以下,4G):
 本作の特徴は,なんといってもキャラクターごとに用意されているストーリーだと思いますが,このようなシステムを採用したきっかけを教えてください。

Cho,Young-Gee(チョウ・ヨンギ)氏(以下,Cho):
 我々は,キャラクターとストーリー中心のスタンドアローンゲームを,10年ほど前から開発して来ました。現在のブロードバンドの普及とそれに伴うゲーム市場のオンライン化への移り変わりで,今まで培ってきたスタンドアローンRPGのノウハウと,オンラインRPGとを融合できないかと考えたことが始まりです
 現在のMMORPGでは,ソロで遊んでいるプレイヤーも多く見られます。そのようなプレイヤーにはキャラクター性が希薄になり,ゲームが持つ世界観が分かりづらくなります。そこで,ゲーム側からシステム的に後押しすることで,スタンドアローンRPGと同様に世界観を身近に感じやすくしているというわけなのです。

4G:
 世界観を感じやすくするというのは,具体的にどのようなものでしょうか?

Cho:
 今までの経験から,メリハリのあるドラマティックなストーリーのほうが,感情移入しやすいみたいです。そこで本作でもストーリーをドラマティックに展開させて,遊んでいるうちに自分がそのキャラクターに自然と感情移入できるようにしています
 うーん,そうですね……たとえば,序盤はチュートリアル的にストーリーを進展させて,キャラクターのバックストーリーが分かるようにしてあるといった感じです。

4G:
 今までにはないMMORPGのスタイルとなっているわけですね。そうすると,ストーリーの進展がメインのプレイスタイルとなるのですか?

Cho:
 いいえ,本作はMMORPGという部分を完全には捨てていません。モンスターを倒して数値的にキャラクターが強くなっていく,未知のエリアを冒険していくなどの,MMORPG的な楽しさ・面白さという要素は,そのまま導入してあります。戦闘を楽しくさせるコンボシステムもあります。つまり,ストーリーを中心に進めて楽しむことも,今までのMMORPGスタイルで楽しむことも出来るわけです

4G:
 ストーリーはどのくらいの長さになっていますか?

Cho:
 キャラクターごとに,10〜13のチャプターを用意してあります。一つのチャプターをクリアするには,順調にいっても20時間程度かかるように設定してありますので,比較的長く楽しんでもらえるのではないでしょうか。
 1人のキャラクターのストーリー全体では,スタンドアロンRPG1本分くらいのボリュームになると思います

4G:
 遊んでいるプレイヤーにとっては,非常に嬉しい部分ですね。キャラクターのストーリーは,完全に別となるのでしょうか?

Cho:
 やはり"一つのゲーム"ですから,コアとなる大きなストーリーラインは設定してあります。それを個々のキャラクターが,違うアングルで冒険を進めていくといった感じです
 たとえば,騎士を探すという部分では,あるキャラクターはその騎士と幼馴染という設定で,またほかのキャラクターは事件に関係しているという情報を得て騎士を追うというように,一つの事柄に対して違うアプローチをしていきます。
 ストーリーは,ディレクターを含めて7人程度のシナリオライターで作り上げています。

4G:
 ストーリーという言葉からは,やはり"エンディング"が連想されるのですが,最後まで進めてしまった場合,その後はどうなるのでしょうか

Cho:
 ストーリーが存在する以上,エンディングは必ず用意しなければなりません。しかもMMORPGの要素がある以上,何回も何回も繰り返して遊んだり,育ててきたキャラクターを簡単に消去したりするプレイヤーはほとんどいないでしょう。また,現在のMMORPGは,5年以上サービスを続けていくことは難しく,通常は3年くらいではないでしょうか。
 そこで本作では,サービス開始時にはエンディングまでのストーリーは用意していません。1か月ごとにパッチで1チャプターずつを増やしていく予定になっていて,おおよそ1〜2年でエンディングを迎えられるようにしています。これはユーザーからの反応に,柔軟に対応できるという部分でもあります。連載小説のように,次のチャプター(パッチ)を楽しみにしてもらえるようになると嬉しいですね。


仲間と協力して進めるMMORPG的な部分とは?

4G:
 MMORPGだと,協力して何かをやり遂げるという部分を楽しむプレイヤーも多くいると思います。本作ではどのような場面で協力プレイができるのでしょうか?

Cho:
 そうですね……協力して冒険をしていくという意味では,二つの要素を入れてあります。一つは一般的なMMORPGのスタイルで,レベルアップを目的として協力する部分。これはあまり話さなくてもよいですね。
 もう一つは,ストーリーを進めるために協力する部分です。ストーリーは一つの事柄に対して,キャラクターごとに違うアングルでアプローチしていくので,強いモンスターを倒すという目的でパーティを組んで協力していても,なぜそのモンスターを倒したいのかはキャラクターそれぞれが異なるというわけです。
 また,メインストーリーに関係しない,いわゆるクエストに当たるものは,非常に多く用意してあります。これは,どのキャラクターでも受けることができますので,クエストのクリアで協力することもあるでしょうね。

4G:
 キャラクターのレベルが低くても,協力をしてもらってチャプターのクリアや,ストーリーの進展をするということが考えられるのですが……。

Cho:
 ある程度のレベルがないと,クリアは難しくなるようにしてあります。しかしMMORPGですから,ハイレベルなキャラクターの協力があると,モンスターを簡単に倒して進んでいくということがあります。そこで,あまりやりたくはなかったのですが,ストーリーに関係したダンジョンでは,そこに入るための最低レベルというものを設定しました。逆に最大レベルというものはないので,レベルを上げて強くなってからのほうが楽にストーリーをすすめられるでしょう。
 また,ダンジョンは自動生成システムを導入して,ダンジョンに入るパーティの平均レベルに最適なモンスターを配置するようにしています。極端な場合ですと,1レベルと50レベルのキャラクターがパーティを組んだときには,ダンジョンのレベルは25ほどとなります。まぁ,50レベルのキャラクターが1レベルのキャラクターを守りながら進むという構図にはなってしまいますが,一応は可能です。
 ストーリーだけを進めていくのではなく,MMORPG的な部分も楽しんでもらいたいということから,このようなシステムとなっています。さらに,サービス開始後,時間が経ってから始めた人が,ストーリーを進展させにくいということも少なくなるでしょう。

4G:
 やりこむプレイヤーだと,それぞれのキャラクターのストーリーをすべて楽しみたいということもあると思います。一つのアカウントに対して何人を作成できるのでしょうか?

Cho:
 現在,韓国でのβテストでは一つのアカウントで3人まで作成できます。これは正式サービス時に6人まで増やすことが決まっています。さらに今後,キャラクターを追加したときやプレイヤーからの要望が強ければ,さらに増やしていこうと思っています。

4G:
 テイルズウィーバーはMMORPGの進化系と思える部分がたくさんあるのが分かりました。そこで,今後のMMORPGはどのように発展していくと考えていますでしょうか?

Cho:
 うーん……難しい質問ですね。MMORPGというジャンルは,開発にもサービス提供にも膨大な投資が必要となります。また,現状では先が読みづらいジャンルの一つです。韓国や中国でのゲームタイトルには,ゲームを楽しませるというよりも利益を重要視したものがあります。ビジネスという観点からでは完全に否定はできないけれども,これが一般的になってしまうことに危惧を抱いています。
 今後は,単純にキャラクター成長だけを目的としたMMORPGは少なくなっていくのではないでしょうか。しかし,それを求める(ゲーマーの)コア層は必ずありますし,それを無視することはできません。そこで,登場人物にキャラクター性を持たせたり,映画のような展開を見せたりとジャンルのフュージョンが起こっていくと思います。つまり,アイデア勝負ということです。
 また,台湾では,パッチCDというものが販売されるケースもあり,市場ごとのニーズが異なります。市場ごとに違う展開をしていくことも重要かもしれませんね。

4G:
 本日はありがとうございました。最後に日本のゲーマーに向けてメッセージをお願いします。

Cho:
 日本という国は,本社からは非常に近い場所にあります。我々の開発したゲームには,まだまだ足りない部分があり,それを補っていくという意味での勉強/努力は欠かしていません。
 またゲームというものは,開発側から50%,ユーザーから50%で完成すると思っています。本作はオンラインゲームで,残りの50%はいつでもパッチなどで補えます。まずは楽しんでもらって,それから足りない部分のコメントを寄せてくれれば,どんどん反映させていくつもりです。どうぞテイルズウィーバーを応援してください。

→「テイルズウィーバー」の当サイト内の記事一覧は,「こちら」