リチャード王,かく語りき 1/5
−リチャード・ギャリオット氏のOrigin Systems解任から1年。遂に"ロード・ブリティッシュ"が復帰した!

2001/06/18

文/写真・奥谷海人

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インタビュームービー #1(19.2MB)#2(6.41MB)#3(3.67MB)

 2001年E3の初日である5月17日,PCゲーム界のパイオニアとして君臨するRichard Garriott(リチャード・ギャリオット)氏は,世界中のプレスを召集。Destination Gamesの本格的始動と,韓国の大手メーカーNC Softとの提携を発表し,ゲーム業界に復活を遂げた。
 その翌日forGamer.netは,ギャリオット氏に加え,Lord Blackthornとしても知られるStarr Long(スター・ロン)氏や,「Lineage: The Blood Pledge」の製作者であるJake Song(ジェイク・ソン)氏の3人と,個室での特別インタビュー会見に成功した。突然のOrigin Systems退社以来,日本では初めてとなるギャリオット氏との公式インタビューを,余すところなく掲載しよう。

OSI解雇の真相と,NC Softとの出会い
〜「2か月前は,この3人が同じ環境で働くなんて誰も思っていませんでしたよ」−R. Garriott

Richard Garriott Richard Garriott
"ロード・ブリティッシュ"ことRichard Garriott氏 "ロード・ブラックソーン"ことStarr Long氏
 思い返せば,2000年の3月31日のこと。ギャリオット氏は,彼自身が'83年に設立したOrigin Systemsから突然解雇された。親会社であるElectronic Artsは,製作意識の相違による円満退社としていたが,数十億単位の制作費がかかる彼のプロジェクトを,資金的にサポートできなかったからだというのが業界の定説になっている。
 その後,ギャリオット氏はアフリカやロシアなどへ旅行を重ねており,ゲーム製作の意欲がなくなってしまったとさえ多くの人に考えられていたのだが,実はDestination Gamesは,2000年4月の時点で彼の兄Robert Garriott(ロバート・ギャリオット)氏と共に創設されていた。去年以来、ずっとカムバックの機会を待っていたようなのである。
 実際のところ,ギャリオット氏はNon Competition Agreement(非競合同意書)にサインすることで,この1年間に渡って業界への参入をEAから止められていた。声明文を出したり,各メディアに露出する自由がなかったのもそのためだ。それならば,世界を旅行することなどで英気を養い,"次"の作品のアイデアを蓄積するのが得策だと思ったのだろう。そして,EAとの契約も2001年の3月31日をもって無効となり,彼が業界に復帰することは法的にも許されたわけだ。まずはギャリオット氏が,自らこれまでの経緯を話し始めた。

Richard Gariott(以下Garriott):
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登場が待たれていた "Ultima Worlds Online:ORIGIN"
 まず,これまでの経緯を話さなければいけませんね。皆さんもご承知の通り,私はちょうど1年ほど前に,Origin Systems(以下OSI)から離れることになりました。OSIは,'83年に私と兄のロバートが創設した会社で,'90年には全米トップ10の販売元にまで成長していました。'92年になって,現在でも世界最大規模を誇るElectronic Arts(以下EA)に吸収されるという選択をしたのは,ディストリビューションで優位に立つEAに経営をゆだね,我々はゲーム開発に専念できるのだと判断したからです。
 しかし結局は,自分の成功の被害者になった,といえるのかもしれません。20年近くにも渡って着実に成長してきたOSIも,'98年に「Ultima Online」(以下UO)が登場して以来,雇用者とそれに関わる経費が膨張して,収集がつかなくなってしまいました。そこへ,Ultima Online 2(注:後のUltima Worlds Online:ORIGIN。以下UO2)の企画が立ちあがり,私の新作への予算が取れなくなってしまったのです。会社が大きくなるにつれて経営が優先され,ゲームを作る機会が単純に減ってしまったわけです

forGamer.net:
 非競合同意書,というのはなんだったんですか?

Garriott:
 Ultimaシリーズ――ひいてはOSIやEAに対して,何か口外する権利が一切ない,というものです。企業の立場からは当たり前の書類だと思うのですが,私にとって幸いなことに,この協定の執行期間はたったの1年。ようするに今年4月の1日になった時点で,私の知的財産,つまりUltimaの世界観や名称などは,すべて私の所有物として,ほとんど無料で返してもらえることになったのです。

forGamer.net :
 NC Softとの結びつきは,どのように始まったのでしょう?

Garriott:
 そうですね。ちょうど私の周りでそういういろいろな"事件"が起こっていたころ,興味深いことに,韓国ではネットワークゲームが社会に受け入れられることに成功し,ゲームルームを始めとする固有の文化が成長していました。NC Softの「Lineage:The Blood Pledge」(以下、Lineage)は,ゲームルームでも人気のタイトルとなっており,現行アカウントは,すでに正式公開されている韓国だけでも200万人分というとてつもないゲームです。世界的なβプレイヤー人数を合わせれば,瞬時に18万人がプレイしていることもあります
 軽く"18万人"といいいますが,この18万人という数字は, UOを始めとするアメリカ産オンラインRPGの現行アカウント自体と匹敵する数であり,その人気の高さが窺い知れる数値でしょう。ビジネスチャンスは充分にあると判断したのもそのためです。実際,NC Softと話を進め始めたのはEAとの契約が切れた4月からですが,2か月前はこの3人が同じ環境で働くなんて,誰も思っていませんでしたよ。

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