Homeworld 2

 今回のイベントの目玉の1つでもあったのが「Homeworld 2」である。新しく作り直されたグラフィックスエンジンの秀逸さが際立つ作品で,完全3Dの世界における操作性の難を大きく改良しているようだ。
 ストーリーは,母なる星へと帰還した100年後の世界で,そもそも誰が何の目的で,彼らをこの星から追放させたのかを探る旅となる。A地点からZ地点への移動が直線的だった前作と比べて,今回はより複雑なミッション構成になっているようだ。新しく登場する敵は,ヴェイガー(Vaygr)という異星人で,魚のような形をした艦隊でプレイヤーの行く手を阻む。
 インタフェースは,一見前作と似ているようだが,細かい部分では様々な変更点がある。まず,情報を引き出すのに必要な様々なウィンドウが,すべて半透明になったこと。これで,メイン画面がウィンドウに邪魔されることなく,常時確認できるようになったわけだ。以前は味方のユニットに固定されていたカメラも,一般的なRTSのように,どこにでも自由に移動させることができるようになっている。
 また,センサーマップと呼ばれる世界全体を示すマップでは,キーボードを併用することなく,ユニットのX軸(上下)の移動もできるように改良されたのは好印象だ。センサーマップでは,新たにガス雲やアステロイド,さらには自軍のユニットまでが確認できるようになっているが,これらの3Dオブジェクトがゲーム中でも大きな存在感を示しているのは,これによって自分の位置が確かめやすくなったからだろう。さらには,このガス雲の中では敵のレーダーに探知されないので,待ち伏せなどにも利用できる。ただし,プラズマガンのようなエネルギー系の兵器はガス雲の中で増幅され,それに伴って発生する稲妻が敵や味方を問わずにダメージを与えるので,それなりの覚悟も必要だ。

 「Homeworld 2」では,戦略性を高める手段として,テクノロジーツリーも強化している。前作のような直線的な進化ではなく,マザーシップであれば生産性,リサーチ,防御など様々な面で,プレイヤーが優先順位を立てて進化させることができるようになった。ハーベスターの仕事も簡略化さえ,オリジナル作品の問題点の1つだった,ゲームの重大な局面が終わってからも残骸を収拾して回るというようなことも解消される見込みで,ミッションを上手く完了できるほど,このような部品回収の必要性がなくなるのだと言う。
 戦略面では,戦艦はエンジンや武器,制御装置などの各パーツによって分けられていることも特筆できる。敵のユニットの武器に集中攻撃を加えたり,エンジンを破壊して拿捕することも可能など,どうやって敵のユニットを料理するかは,プレイヤーの好みで左右されるようになった。
 ユニット生産での大きな変化は,ファイターは5機1組で生産されるようになったということだ。ファイターは1つでは使用されることはないからというのが理由である。とはいえ,攻撃は1機ごとに受けるようになっているので,戦闘後には1機だけ残っていることもあるかも知れない。
 新しいユニットとして目を引くのが,ガンプラットフォームというユニットで,移動は非常に遅いが強力な武器を備えた,守りに特化したユニットだ。これによって,マップ上の資源が豊富な地域や,重要な拠点を掌握するという,地域のコントロールがゲームの重要な要素になった。

 最も細心の注意を払って開発されているというのが,ユニットの思考ルーチンである。前作にあったフォーメーションの設定は,"戦闘が始まるとフォーメーションが崩れてしまう"という理由から削除され,代わりにストライクグループという軍団の設定ができるようになった。ストライクグループは,その中で最もスピードの遅いユニットの速度に合わせて移動し,新たに開発された思考ルーチンによって,グループ中のお互いのユニットが,それぞれの存在を意識し合って行動できるようになった。これは,中心の母艦が攻撃を受けたのを察知すれば,ファイターが被弾を阻止しようと動き回るとか,母艦が周囲の巡洋艦のために援護射撃を試みるというようなもので,まるでグループが1つのユニットのように行動するわけだ。RTSでは戦闘が始まった途端に,ただの潰し合いになることが多く,このような新しいAIは興味深い。

 「Homeworld 2」では,オンラインのコミュニティを意識して,武器のタイプや強さ,戦艦のモデル,さらにはユニットに貼り付けるチームタグまでが変更できるモジュールをリリースする予定があるなど,ファンの意向にも耳を傾けているようだ。開発元のRelic Entertainment社では,マイクロソフトからリリースされた「Impossible Creatures」の開発も一息ついたためか,「Homeoworld 2」の制作が急ピッチで行われている。
 ゲームエンジンは新しく作り直され,その美しさで定評だった前作に恥じないデキに仕上がっている。被弾による火花やテクスチャーの細かさ,さらには武器が個々に動いているモデリングの細かさなど,見ているだけでも楽しい作品であるのは変わりない。リリース予定は,今年の第3四半期ということで,アメリカでは9月頃にはお目見えする予定になっている