■第一講
 「海外MODカルチャーとハンマーエディタについて」

ナムコのLANエンターテインメントプロジェクトチーム土屋哲夫氏。氏は,ナムコ・ワンダーエッグなどを始めとしたテーマパークやアトラクションの企画を担当。LEDZONEの仕掛け人である
 最初に,ナムコ土屋氏によるネットゲームの基礎知識についての簡単な解説,そしてネットゲームの持つ問題点についての説明が行われた。
 土屋氏は,まずネットゲームの基本的な仕組みから説明すると共に,現状におけるさまざまな問題点(人付き合いが生まれることによってゲームを自由に止めたりできない,マナーの悪いユーザーによる嫌がらせなど)を指摘。土屋氏は,自身が企画を立ち上げたLEDZONEのコンセプトを語りながら,LEDZONEが,それらネットゲームの問題点を解消するための試みであること,そしてネットゲームがはやるためには,そのような"みんなで楽しめる環境"が必要なのだという点を強調していた。

 続いて中国や台湾,韓国などアジア地域におけるネットカフェ(PC房)の実情を,視察時に撮影したビデオ映像を交えながら紹介し,向こうではエンターテイメント文化の一つとしてPC房が定着していることなどを説明。どういう流れでユーザーがゲームに触れ,そしてのめり込んでいくのかについての分析も披露された。
 土屋氏によれば,ユーザーはまずPC房などで簡単なアクションゲームからゲームの 楽しさを学び,次第にMMORPGなどの"重たい"ゲームへと流れていくのだという。
 この部分の講義は,ほとんどがビデオ映像を中心にした内容で,アジアにおけるPC房が,いわゆるネットカフェという規模のものだけでなく,郊外型のアミューズメント施設規模のものまで出現している様子が,非常に分かりやすい形で解説されていった。土屋氏も「驚異的ですよね」とコメントしていたが,まったく数十台,数百台のPCが立ち並び,多くのユーザーがゲームに熱中する様子には,今さらながらにアジアにおけるPCゲーム(ネットゲーム)の人気の凄さを思い知らされた。

 また土屋氏は,アジア地域におけるゲーム市場の拡大に伴って,アジア各国のゲーム産業が急成長している現状を解説。国際的なゲーム開発競争の中にあって,日本が決して優位な立場にいない(むしろ不利である)との見解を語り,今後の日本におけるゲーム制作は,より"ゲームの本質部分についてのクオリティ"を重視した新たな視点,新たな才能が必要になるだろうとコメントした。

 上記のような日本の実情を説明したところで,そこで注目してほしいのが……といった流れで,世界的ヒット作となった「Half-Life」とそれに付属するハンマーエディタの紹介に入った。
 ハンマーエディタとは,「Half-Life」に付属しているレベルエディタであり,世界的大ヒットとなった「Counter-Strike」(以下,CS)なども,このハンマーエディタを使って作られた作品であると説明。LEDZONEで提供される「カウンターストライク ネオ」も,ハンマーエディタで制作されたものだと話を続けた。


 ここで土屋氏は,

「例えばプレイステーション2(以下,PS2)用ソフトの開発には,ライブラリの作成や新しいツールの習得など,さまざまな課題が要求されます。しかも,やっとPS2の開発のノウハウが溜まってきたところで,今度は"PS3"が発表されたりして,また一から勉強し直すハメになる。いろいろな意味で効率が悪いんです」

と語り,ハンマーエディタならばそういうった困難がなく,非常に効率的にゲームをできると解説。ハンマーエディタおよびPCプラットフォームにおけるゲーム開発の有効性を説明した。

 この講義は,今後日本のゲーム産業が"ゲーム開発のどの部分で勝負していくべきなのか"について非常に考えさせられる内容だったと同時に,筆者とっては国内におけるPCゲーム開発(より国際的な意味で)の可能性について考察する良い材料となった。

>>第二講:ハンマーエディタによるレベルデザイン実演


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