= 開発者インタビュー=
「ラグハイム」

聞き手・韓国特派員Kim Dong Wook


◆Profile
Han Sang Eun(ハン サン ウン)氏 31歳。
ナコインタラクティブ社長にして,ラグハイム開発の総責任者

 1991年 全州ヨンセン高等学校 卒業
 1997年 全北大学コンピュータ工学科 卒業
 1997〜1999年 現代電子 通信システム本部 勤務
 2000年〜現在 ナコインタラクティブ 社長

◆開発作品
・Lost Island2(JAVAベースのテキストMUD)
・CINE MAKER(ブラウザで動くシミュレーションゲーム)
・ラグハイム(フル3D MMORPG)


forGamer.net(以下,4GN):
本日はよろしくお願いします。韓国ばかりか日本でも結構人気のこの「ラグハイム」ですが,開発しようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

Han Sang Eun氏(以下,Han):
 小さいときからゲームに関心があったんですけど,誰でも容易に楽しく遊べるゲームを作りたいと,ずっと思ってきました。大学のころは「Lost Island2」というMUDゲームを作ったこともありましたね。

4GN:
なるほど。ではそういった"熱意"が「ラグハイム」になったきっかけは?

Han:
 そうやってMUDなどを作っていたときにBlizzard社の「Diablo」をプレイして,数千人が同時にこんなゲームを楽しめるとさぞや面白いだろうと思い,自分なりに開発準備を開始させました。
 1999年の2D MMORPGブームのとき,私は3Dオンラインゲーム開発のための勉強を始めました。いまでこそ2Dでも,時代は必ず3Dになる,という確信があったのです。その確信はゆるぎないものだったので,会社も辞め,そのときから本格的「ラグハイム」の開発を開始したのです。そして2年後に,韓国だけではなく世界のプレイヤーに楽しんでもらえる,"グローバルオンラインゲーム"の「ラグハイム」が世に出たというわけです。

4GN:
フル3DオンラインRPGの開発での,難しい点はなんでしたか?

Han:
 開発の初期のころ,私はお金がなかったのでフル3Dの描画エンジンを購入することは想像もできませんでした。スタッフ達と一生懸命,純粋に自分達で作り上げる3Dエンジンを目指して作り上げたのです。あのときは,3Dエンジン自体の汎用性をとるか,速度をとるかで大いに悩んだものです。
 結局のところ,オンラインゲームの最大の特徴の一つである"コミュニテイ"を強化するため,速度を優先することにしました。ユーザーに最大限の自由度を与えるため,多彩な視点変化と画面の拡大・縮小/回転の機能を提供し,ユーザーに欲求を満足させれるゲームを作ろうとしたのです。


4GN:
でも速度優先にすると安定性が厳しくなりませんか?

Han:
 確かにそうですね。ラグハイムは,3Dで数万人のユーザーが同時にプレイするMMORPGなので,サーバーの安定性がなければ,コミュニテイの活性化とか円滑なゲームプレイとか言っている場合ではりません。そこで,我々はクライアントだけでなくサーバー側のプログラムにも重点を置きました。結局は接続される先は"サーバープログラム"なのですし,ここで安定性を持たせておけば,きっと円滑なプレイがなされるだろう,と思ってのことです。

4GN:
既存の3D MMORPGと比べた場合の,ラグハイムの長所はなんでしょう?

Han:
 やはりスピードと迫力感だと思います。フル3Dの画面で広がる世界と,テンポのいいゲームシステムは,初心者でも一瞬で入ってこられることでしょう。
 そしてついいましがた述べたように,サーバーの安定性も自慢です。とくに,大規模なレベルでの同時接続の処理に関してのサーバー技術は世界で十分に通用すると自負しています。それはプレイヤーも感じてくれているに違いありません。

4GN:
先日行われた攻城戦はスゴかったですよね……。

Han:
 フル3Dでの激しい攻城戦は,いままでの3Dオンラインゲームにはなかったことですよね。各サーバー別に行われた攻城戦は,城一つ当たり2000人以上のプレイヤーが参加して,一つの画面に1000人のキャラクターが描画されるという状況になりました。それでも問題を起こさなかったラグハイムは,サーバーの安定性を証明したといえるでしょう。
(編注:かつてforGamerの「ここ」に掲載した「大規模攻城戦」の様子を見てみるといいかも。これが全部プレイヤーなのかと思うと……)。


4GN:
ライバルとなる他社の3D MMORPGと比べると,グラフィックスの部分がちょっと弱いのではないかという意見についてはどうでしょう?

Han:
 それは正しい認識とはいえませんね。制作方法の概念に差があるだけです。
 確かに,ラグハイムの初期Closed βサービスのころは"ちょっと弱いグラフィックスかな"と思っていました。しかし今は,パッチによるアップデートによって,その問題は解消されたといえるでしょう。最近はヨーロッパやアメリカの大手ディストリビューターからも「優れたグラフィックスだし,ぜひここでもサービスインしたい」というオファーが多数きています。

4GN:
しかしプレイヤーがグラフィッククオリティに関して敏感なのはしようがない部分だと思いますが。

Han:
 グラフィッククオリテイは,極論をいえば,どこまででも素晴らしいものが作れます。グラフィックを良くすることは,そう難しいことではないのです。
 しかしオンラインゲームでは,回線の中をいったりきたりするデータの流れが重要です。事実上,ある種の制限がかかっているといえるでしょう。その制限された容量の中で,適当な落としどころを探すのが,重要なポイントだといえるでしょう。グラフィックスのクオリティが高ければ高いほど,サーバーとクライアントの間のデータ送受信は厳しくなります。これが結局サーバーの過負荷になって,クライアント側はLAG(ラグ)という被害にあうことになるのです。
 なのでラグハイムは,初期から回線の環境を考えてコミュニテイを活性化させることができる"ちょうどいい"グラフィックスクオリテイを探したというわけです。

4GN:
日本のラグハイムプレイヤーに対する特別なイベントなどは計画してますか?

Han:
 日本のラグハイムのユーザーの方々,プレイしてくださって本当にありがとうございます。最近では,2002年ワールドカップの成功を願って「オンライン韓・日交流協力団」というプロジェクトを行って,韓国のプレイヤーと日本のプレイヤーが親交を深めるきっかけになったと思います。
 これからも継続的なアップグレードの計画もありますし,多彩で面白いイベントも準備しています。韓国だけでなく日本においても,新しいオンラインゲームの文化を作っていくリーダーとしての役目を果たせるよう努力していきます。

4GN:
forGamer.netの読者に何かコメントはありますか?

Han:
 ラグハイムに注目してインタビューまでしてくれるforGamer.net編集部と,そこを見てラグハイムをプレイしてくれた読者のみなさん,本当にありがとうございます。
 日本は,オンラインゲームにおいてはまだまだ発展途上という感じですが,今後の市場発展の可能性は非常に高いと思います。日本にももうすぐ,オンラインゲームの台風が吹き荒れるのです。PS2やXboxにも"オンライン対戦"の機能が搭載されるのを見れば分かるように,オンラインゲームが持っている独特な魅力と,それを通じて形成されるコミュニティの力がどんなに重要視されています。
 forGamer.netの読者の中で,まだオンラインゲームを体験したことのない人がいたら,ぜひラグハイムで遊んでみてください。オンラインゲームの独特な魅力を味わえることを保障します。