セミファイナル

 トーナメントの第2ラウンド(セミファイナル)では,二つのプールから上位4人ずつが選ばれ,ファイナルに進むことになる。快調とはいえないまでも,なんとか第1ラウンドを通過したSIGUMA選手のいる第2プールは,先ほども同じ組で2位通過したデンマーク代表m\m?m_iCe-選手と,第3プールで2位通過した韓国のBluemondあたりが要注意。しかし,第1ラウンドが強豪揃いで厳しかっただけに,そこを勝ち抜いたSIGUMA選手にも十分チャンスがあるメンバーだ。
 ところが,同選手はゲーム序盤では敵に遭遇するチャンスがほとんどなく,キル数0の再下位からのスタートとなる。しかし開始5分ごろになってワートホグで複数の敵に突っ込んで4位となり,やがて3位へと浮上する。
 1位のアイルランド代表Merachi選手と2位の韓国代表Bluemond選手が飛び抜けていたが,後半になると落ち着いたプレイで差を詰めていき,このマップの要でもあるブリッジのコントロールが良くなっていく。さらに,第1ラウンドで固執しすぎたピストルばかりでなく,ロケットランチャーなどの武器も多用して敵を落とし,最後の3分で1位に躍り出たのだ!
 気になるm\m?m_iCe-選手は5位と低迷している。その後はSIGUMA選手の安定したプレイで1位を保持し,ここで初めて"1位抜け"することができた

チャンピオンシップの群像(3)
Jacob Grubbe Rasmussen (m\m?m_iCe-)
 練習ではボコられてたから,最終戦にまで進めて良かったよ。SIGUMAとは3戦ずっと一緒だけど,結構実力あるプレイヤーだね。正直,予選では意識してなかっただけにビックリしたよ。日本って,競技人口も少ないんでしょう? 大したもんだよ。
 デンマークも同じで,予選は実は40人くらいしか参加してないんだ。僕は決勝に参加できただけでも十分だと思ってるし,それなりのゲームもできたと思う。僕のニックネーム? コンピュータ上の名前だから,発音できなくていいよ(笑)。


 第2マップのBlood Gulchでは,SIGUMA選手は序盤から激しい戦いを制して1位となる。中央のベースのコントロール率が高く,その周囲の岩陰をうまく利用することで,ほかのプレイヤーをベースに寄せ付けないほどだ。7分を経過したあたりでMerachi選手とm\m?m_iCe-選手が追いつきだし,Merachiとの激しい首位攻防戦が繰り広げられた。一度はトップの座を譲ったものの,終わってみれば今回のSIGUMA選手参加のゲームでは最も接戦となり,なんとキル数がMerachi選手と同数に。しかしデス数が20台と少なく,同選手が連続1位となった。
 SIGUMA選手はスタートダッシュが苦手なのか,第3マップの最初はDeath Islandの底で移動するものの,なかなか敵を見つけることができない。しかし徐々にヒートアップしていき,6分ごろで1位に上り詰めた。島の頂上ではロケットランチャーを有効に使い,室内ではショットガンで敵を抹殺していくことで,確実にポイントを増やしていく。中盤,Marachi選手やBluemond選手が追い込みをかけてくるが,SIGUMA選手のプレイは安定しており,島の頂上を確実にコントロールしていた。結局,団子状態の混戦となった2位以下を6ポイント引き離して,ダントツの1位。第2ラウンド1位抜けを確実にした。
 第4マップは,SIGUMA選手の得意なHang'em Highだ。しかし,またまたスタートダッシュが遅く,序盤は下位に甘んじていた。ファイナル出場が決定して安心してしまったようで,思い通りのプレイができないまま,ほかのプレイヤーにポイントを献上しているようだ。それでも除々に順位を上げていき,トップを走るBluemond選手と,ここまで覇気のないプレイだったブラジル代表のPsycho選手に続いて3位に。
 しかし,終盤に入るころには3ポイントずつの開きが変わることはなく,そのまま3位で第2ラウンドを通過した。
 なお第1プールでは,アメリカ代表のChumpp選手とイギリスのBEAST選手による熾烈な戦いが繰り広げられた。この二人に,本選でSIGUMA選手がどこまで食いつくことができるのだろうか。調子を上げて来ているだけに,かなり活躍が期待できそうだ。

ファイナルラウンド

 「ヘイロー」ワールドワイド・チャンピオンシップスの最終戦に勝ち進んだのは,以下の8か国の代表である。

  • スウェーデン :Anders Rudolfsson (Professor)
  • オランダ :Stefan Dammers (forZa_FooKz)
  • US/カナダ :Noah Evans (Chumpp)
  • イギリス :Jonathan Finglass (BEAST)
  • アイルランド :Rick Sundberg (Melachi)
  • 日本 :Teppei Terabe (SIGUMA)
  • デンマーク :Jacob Grubbe Rasmussen (m\m?m_iCe-)
  • 韓国 :Ju Yong Shin (Bluemond)

 イギリス代表のBEAST選手など,セミファイナルの第1プール勢が強力だが,調子を上げてきたSIGUMA選手が,どこまで食らいついていけるかも気になるところ。試合前の練習でも,それほど悪い感触はなさそうだ。ギャラリーには地元のゲーマーたちも大勢集まり,会場は熱気に包まれていた。
 この決勝戦では,五つのマップでFree for Allを行い,勝者が決定する。これまでも15分ずつの4本勝負を2回体験しているだけに,前日に渡米してきたばかりのSIGUMA選手の体力面が気になるところ。休憩中には外で静かに体を休める姿も見られたが,合計で3時間を越えるこの真剣勝負には,ほかの選手たちも相当堪えているはずだ。

決勝に残った8名。世界一のヘイロープレイヤーの栄冠は誰の頭上に輝くのか?

 ファイナルラウンドは,Gephyrophobiaで始まった。これまでスロースタートなプレイが目立ったSIGUMA選手だが,今回は快調に飛ばしていく。しかし,そのうちに通路から上がった出口で刺されるパターンが多くなり,9キルしたあたりで停滞。中盤には6位にまで下がってしまう。そうこうしているうちに,BEAST選手とオランダ代表のforZe_FooKz選手が上位に落ち着き,3位以下の混戦となった。やがてピストルの命中度が上がってきたSIGUMA選手は,3位まで上昇して初戦を飾った
 第2戦はDeath Islandで,SIGUMA選手は序盤から上位争いを繰り広げた。室内でのショットガンが有効で,跳ね上がる敵を次々と倒していくのが心地良い。試合経過7分で,岩陰から狙撃してきたBEAST選手を倒して1位にのし上がり,その後もBEAST選手,Chumpp選手と互角の戦いを見せて,多くの観客が彼の後ろに集まってきた。しかし後半に入るとBEAST選手,Chump選手,そしてSIGUMA選手がそれぞれ3ポイント差ずつで変わらず,このまま15分のゲームオーバー。同選手は,まだまだ安定したプレイを見せていた。
 そして第3戦。Blood Gulchではかなりプレイヤー同士の遭遇率が高く,誰もが思い通りのプレイができない様子。7分あたりまでは,上位7人が2ポイント差で攻めぎ合っていた。
 8分ごろからSIGUMA選手が脱落を初めて7位となり,追い上げもむなしく6位で終了。これまでは混戦を制してポイントを稼ぐ場面が多かった同選手だが,ここでは少ないポイントで勝敗が決した,今から思えば重要なマッチだったように思える。
 第4マップに選ばれたのは,SIGUMA選手の得意なHang'em High。得点を稼いで次に望みをつなげたいところだ。序盤こそは混戦のために低位置にいたものの,中盤でロッドガンを入手して複数の敵を仕留めだし,上位にのぼってくる。今回の同選手は,最初から上位にいるよりも下位から上がってくるパターンが多いようだ。
 ただし1位にはこれまで目立たなかった韓国代表のBluemond選手が息を吹き返して独走しており,追い上げは難しい。最終的には,オランダのforZe_FooKz選手,そしてBluemond選手と同率で2位に。アメリカのChumpp選手は,これまでの強さがなくなり5位となる。
 このマップでは5位に終わったBEAST選手だが,総合ではダントツで1位のまま。同じく大きなミスをしなければ入賞が確実なforZe_FooKz選手のあとは,SIGUMA選手,Bluemond選手,Chumpp選手,そしてスウェーデン代表のProfessor選手の4人が均衡していて,誰が勝ってもおかしくない状態だ。ほかの3人にSIGUMA選手が勝てば,かなりの確率で3位入賞を果たせることになる

 さて,最終マップとなったIce Fieldでは,序盤からSIGUMA選手に相当な"焦り",もしくは"集中力のなさ"が目立つようになった。ブリッジの中央になかなか進めないため,マップ下部でポイントを稼ごうと試みるが,ほかのプレイヤーと出会うことがあまりなく,かえって裏目に出てしまったようだ。
 また,ワートホグに安々と轢かれてしまうといった不運も重なる。ところが,面白いことに6位争いをChumpp選手とBluemond選手との3人で行っていて,この時点ではまだ3位入賞の可能性は残っていたのだ
 ところが,SIGUMA選手の名前が6位で固まり,そろそろ最後かと思われたころになって突然8位にまで落ち,その後1歩も動けないほどの状態でゲームオーバーになる。SIGUMA選手は,これで総合成績5位に。これまで,平均してそつのないゲームをしてきただけに,彼自身納得のいかない様子だったが,これが勝負というものだろう。

優勝 Jonathan Finglass (イギリス代表) BEAST
準優勝 Stefan Dammers (オランダ代表) forZa_FooKz
3位 Ju Yong Shin (韓国代表) Bluemond
4位 Anders Rudolfsson (スウェーデン代表) Professor
5位 Teppei Terabe (日本代表) SIGUMA
5位 Noah Evans (US/カナダ代表) Chumpp
7位 Jacob Grubbe Rasmussen (デンマーク代表) m\m?m_iCe-
8位 Rick Sundberg (アイルランド代表) Melachi

チャンピオンシップの群像(4)
寺部鉄兵(SIGUMA)
 序盤はピストルの命中率が悪かったけど,セミファイナルからは実力が発揮できたと思います。最後で結果が出なかったのは悔しいですけど,正直にいって世界との差はあまり感じなかったですね。乱戦状態でも,よく踏ん張っていたと思います。
 日本では競技人口が少ないかもしれませんが,もっと練習して全体レベルの底上げができれば,日本も弱くはないのが分かってもらえるでしょう。今後? う〜ん。やっぱり,もっとヘイローを練習して極めてみたいですね。

 結果的に,SIGUMA選手はヘイローの世界ランキングが5位になったわけだが,アメリカで2000人の中から勝ち残ったChumpp選手とは同率。もしアメリカ代表戦に出ていれば,42インチのプラズマテレビがもらえたかもしれないわけで,十分に誇れる成績だろう。
 近年の世界レベルのFPS大会で,ここまで勝ち残った日本人は皆無。東アジア戦ではBluemond選手を押さえ込んでいただけに,最後にひっくり返されたことは彼も悔しかったようだが,日本代表SIGUMA選手が世界レベルにあることを知らしめるには,十分な内容だったはずだ

長くつらい大会は終わり,優勝したBEAST選手と記念写真。だが次なる戦いは,いま始まったばかりなのだ……