Text & Photo by 奥谷海人

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■オリジナルのゲームデザインで,夜のひと時を楽しさと恐怖に包み込む!

 ロンドンの北東部に社屋を構えるEmpire Interactive社は,1987年から存在する中堅どころのメーカーで,古くはクイズゲームの「Trivial Pursuit」や,映画「レッド・オクトーバーを追え!」のゲーム版などで知られる会社だ。現在ではPCゲームばかりでなく,プレイステーションやXboxなどにもゲームを提供しており,最近ではセガのゲームタイトルの移植で存在感を増しつつある。
 とくにここ数年にリリースされたソフトには印象深い作品が多く,羊の群れを効率良く追って得点を稼ぐ「Sheep」や,究極のレーシングシミュレーションとしてマニアに名高い「Total Immersion Racing」など,風変わりなソフトを連発するようになった。
 そして"風変わりさ"という意味でこれまでのタイトルに勝るとも劣らないのが,今回紹介する「Ghost Master」だ。

 Ghost Masterは,プレイヤーが"ゴーストマスター"となり,数々のゴースト達を操って舞台となる町の住人を恐怖に陥れるというゲームだ。コンセプトとしては,ピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏が1997年にリリースした不朽の名作「ダンジョンキーパー」に似ている。
 ただGhost Masterは全体的に明るい色調で描かれており,またイギリス的なジョークも満載されているので,「ポルターガイスト」や「さまよう魂たち」のようなホラー映画を,人気の「シムピープル」のようなシステムで明るく楽しく遊ぶゲームと評したほうがより正確かもしれない。

Sick Puppies社で「Ghost Master」のプロデューサーを務めるアンディ・セヴァーン(Andy Severn)氏。業界15年のベテランで,Codemasters社で「Micro Machines」を手掛けたことがある。もうすぐ誕生する子供のために,オックスフォードの郊外に購入したマイホームのアップデートに週末を費やしているという Ghost Masterでは,プレイヤーはゴースト達のマスターとなる。ゴースト達の能力を駆使して建物に住む人間をうまく操り,仲間になる別のゴーストを解放してあげよう

 今回インタビューしたのは,Ghost Masterの開発を担当しているSick Puppies社のアンディ・セヴァーン(Andy Severn)氏だ。長子の出産とGhost Masterのマスターアップが同時期に重なってしまったという多忙な人だが,「まあ人生は楽じゃないけど,振りかかってくる出来事にチャレンジしていくのは楽しいね」と笑って語っていた。
 Ghost Masterは,まだ日本ではほとんど話題になっていない作品ではあるが,forGamer編集部での隠れた注目&期待作だ。以下,この2003年期待の一作といえるGhost Masterの全貌を,セヴァーン氏に惜しげなく語ってもらった。

forGamer.net(以下,4GN):
 まず,セヴァーンさんの経歴をお聞かせください。
Andy Severn (以下,セヴァーン):
 では,私がこの業界に入った経緯からお話ししましょうか。1987年ごろに,ZXスペクトラムやコモドール64といったコンシューマ機用のゲームを作り始めたのが最初ですね。私と弟はイギリスのアマチュアゲーム開発者達の間では"ジャバ"という名前で知られていたのですが,とあるゲームショウに「Anfractuous」というゲームのデモを出したところ,Interceptor Microというゲーム会社に気に入ってもらって,その場で仕事をもらったんです。  その会社で5年,さらに小さい開発チームをいくつか経験したあとにCodemasters社に移って「Micro Machines」と「Micro Maniacs」というゲームを手掛けました。さらにその後Sick Puppies社に参加して,この「Ghost Master」に携わるようになったのです。正直いって,これまでの長いキャリアの中でGhost Masterが一番面白いゲームだと思ってますよ。

4G:
 "Sick Puppies"(病気の子犬達)とはまた奇妙な会社名ですが,どんな意味があるんですか?
セヴァーン:
 Sick Puppies社は,私と同じくプロデューサーを務めるグレッグ・バーネット(Gregg Barnett)を中心に,1999年にEmpire Interactive社がオックスフォード市近郊に設立したばかりの新しいゲーム開発会社です。  Sick Puppiesというのは,ここに集まった開発者達が,業界でも一番"sick"(俗語で"イカした"という意味もある)なメンツだからなんです。またsickには「オリジナルのアイデアで,これまでほとんど行われていなかったことをやっていこう」というモットーも込めています。ちなみに今のところ,全員で18人くらいのメンバーが在籍していますよ。
4G:
 Ghost Masterはどういう経緯で始まったプロジェクトなのでしょう?
セヴァーン:
 元々はお化け屋敷に巣食うモンスター達と戦っていくという他愛のない企画だったんですが,いろいろ試行錯誤して形を整えていき,今のGhost Masterとなりました。最近欧米では"リアリティTV"というジャンルのTV番組(脚本のない,生身の人間が描くドラマを楽しむ番組。「サバイバー」などが有名)がはやっているのですが,それをプレイヤー自身が体験するのではなく,仕掛け人になったら面白いだろうと考えたところから発展していったものなんですよ。すでに3年近く制作を続けていて,2003年の春先にはリリースできるように進めています。
この白いゴーストは"Boo"(ブウ)という名前で,音を出したり,あるオブジェクトに人間達を惹き付けたりする能力を持つ 人間達にはそれぞれ名前が付いていて,何に対して恐怖を感じるか,どんなことができるかも一人一人設定されている

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