Text by トライゼット西川善司

 2002年12月6日に行われたGeForce FXの発表会のあと,別室にてGeForce FXのプロダクトマネージャーであるGeoff Ballew氏への合同インタビューが行われた。少し時間が経ってしまったが,その内容をお届けしよう。

ページ 1/3

▼GeForce FXはどうしてGeForce 5でないのか〜3dfxの技術は何が使われている?

西川善司(以下,善):
 GeForce FXは,どうしてGeForce5という名前にしなかったのですか?

Geoff Ballew(以下,GB):
 我々は,今回の新しいGeForceに魅力的な名前を付けたかったんです。これまでのGeForceアーキテクチャとはまったく異なる3Dエンジンを搭載していますし,これまで見たことがない効果(Effects)をユーザーに提供しますしね。そこで考えたときに,「GeForceの(特殊)効果」すなわち「GeForce Effects」というのがいい響きだと感じたんです。これが「GeForce FX」となった一つの理由です。
 また,今回のGeForce FXプロジェクトには元3dfx社のスタッフ達が(*1)参加したんですよ。それをアピールをする意味でも好都合だと考えたんです。
善:
 今まで何度も「このGPUには3dfx社の技術が入っているんですか?」と聞いても教えてくれなかったですよね(笑)

GB:
 はい(笑)。我々も新GPUが出るたびに,マスコミからはもちろんユーザーからもその質問攻めにあって……。3dfx社のファンというのは本当に今でもすごく熱狂的なんですよね。実際に今回のGeForce FXには3dfx社の技術が入ってますし,このあたりで正直に「入ってる」と言うことにしたんです。
善:
 3dfx社の元社員は何人くらい開発に携わっていたんですか?
GB:
 100人以上です。元3dfxスタッフは,それぞれの専門分野に応じたNVIDIA内の各部署に配属されています。ですから,正確にいえばGeForce 4シリーズの開発にも彼らは参加しているんですよ。ただ,GeForce FXプロジェクトは彼らが入ってきてから立ち上げたものなので,本当の意味で彼らも最初から参加したプロダクトなんです。
善:
 具体的には,3dfxのどんな技術が利用されたんでしょうか。たとえばVoodoo6テクノロジーとか(笑)。
GB:
 それはお答えできない……というか答えようがないんですよ。我々は3dfx社の開発した技術の使用権を獲得しましたが,実際にはその技術を開発した人間達を取り込んだわけです。ですから,そういう意味では随所に3dfxの技術が浸透しているといえます。具体的には,今回のGeForce FXの開発にあたってアーキテクチャ設計やハードウェア設計はもちろん,メモリコントローラ関係,コンパイラやソフトウェア関係部門にも元3dfx社員は配属されています。それに,私の直属の上司も元3dfx社員なんですよ(笑)

   (*1)3dfx社は2000年12月にNVIDIA社に吸収合併された

発表会で使用された意味深なロゴアニメーション


▼CgとHLSLの関係

善:
 マイクロソフトのDirect X9 SDKでサポートされる高級シェーダー言語「HLSL」の開発にあたっては,NVIDIAの高級シェーダー言語「Cg」関連の技術提供があったと聞きましたが,互換性についてはどうなっているんでしょう?
GeForce FXプロダクトマネージャーのGeoff Ballew氏
BG:
 言語自体には100%の相互互換性が存在します。業界に複数の言語仕様というのは迷惑なだけですし,我々も一つの標準仕様があればいいと思っています。そこでマイクロソフトと共同で高級シェーダー言語を発展させていくことにしたのです。
善:
 言語の仕様が一つだとして,CgコンパイラとDX9 HLSLコンパイラにどんな違いがあるんですか?
BG:
 それぞれのコンパイラには特徴があると思います。我々のCgコンパイラはDirect X9コードも生成しますし,OpenGLコードも出せます。我々のCgコンパイラはWindowsだけでなくLinuxやMacintoshのバージョンもありますし。
善:
 Cgを進化させたときに,その仕様はDX9 HLSLに取り込まれると考えていいんでしょうか。
BG:
 マイクロソフト側のやることについて我々はなんともいえないですが,両社共に「業界に複数の言語仕様は必要ない」という見解は一致しているので,協力しあってこのシェーダー言語というものを発展させていくと思いますね。常に我々は開発者主導でなければいけないと考えているんです。だってそうでしょう? コンテンツを作るのは彼らで,コンテンツがなければ我々のGPUは売れないんですから(笑)。
善:
 ATIはシェーダー開発ツールとして「RENDER MONKEY」を出していますが,一つの標準を業界に示したいのであれば,ATIとの共同開発というアイディアもあると思うのですが。
BG:
 業界のすべてのものが同じ考えを示すとは限らないから……なんともいえません(笑)
 一ついえるのは,Cgテクノロジーは我々のGPUの特殊な仕様だけをサポートすることを目的としているのではないということです。Direct X9とOpenGLの双方で我々のGPUが活かせる技術を提供することを目的としているんです。


▼GeForce FXは2画面出力のままだけど?

善:
 GeForce FXは3画面出力をサポートしませんでしたね。
GB:
 MATROXがやったあれですね。我々は技術者やゲームユーザーに対してリサーチを行ったのですが,それほど3画面に対する要求は強くなかったのです。そこで2画面で十分と判断しました。
善:
 3Dゲームをマルチスクリーンでプレイする場合,2画面だとモニターの繋ぎめが中央になってしまうため,つらいんです。
GB:
 3画面出力を実装すると,そのためにロジックの実装が必要になります。現時点では3画面でのゲームプレイというのは一般的ではありませんから,我々はそういった機能を付けるロジックを3D機能強化に使ったほうが良いだろうと判断したんです。言い方を変えれば,もはやクラシックなビジュアルとなったQuakeIIIを複数画面でプレイするよりも,今日我々が見せたデモ映像のようなハイクオリティのビジュアルを1画面で見せたほうがよい……ということでしょうか。
善:
 複数画面はこれ以上サポートしないということですか?
GB:
 1台のPCで複数画面を必要とする人は,一部のプロフェッショナル・ユースで確かに存在します。そのため我々のGPUドライバには「nView」という機能を搭載していて,複数のNVIDIA製GPU搭載のビデオカードを使えば4画面だって6画面だって出力できます。現段階ではこの機能を活用して頂くことになりますね。

GeForceシリーズ用ドライバ(Detonator40以降)をインストールすると,GeForce 2MX/4Ti/4MXシリーズで2画面のビッグデスクトップ機能が利用できるようになり,このようにパノラマゲーミングが楽しめる。ただし画面中心が画面の分かれめに来てしまうのでプレイしにくい

ページ 1/3