2002 Game Developers Conference 概要 1/2

23rd Mar. 2002
Text/Photo by 奥谷 海人

 

ゲーム開発者が所属企業の枠に捕らわれずに集結

サンホセ市の中心部にあるSan Jose John McEneryコンベンション・センター。今年は,周囲のヒルトンやフェアモントホテルでも講義が行われた

 2002年3月19日から23日まで,アメリカのカリフォルニア州,サンホセ市において,第16回Game Developers Conference(以下,GDC)が開催された。

 GDCとは,その名が示すようにゲームの開発者たちによる会合で,PCやコンシューマはもちろん,モバイル,オンライン,アーケードなどのプラットフォームを問わず,世界中から多くの業界人が参加する。GDCにはスポンサー企業によるエクスポ会場もあるのだが,コアとなるのは基調講演から一般講義,円卓会議にまで及ぶ300以上のセッションで,最新のゲーム技術を披露したり,自分の作品から学んだノウハウなど,様々な観点から"ゲーム"について議論されるのだ。
 講義の内容は,製作,プログラミング,ゲームデザイン,オーディオ,ビジネス&法律,ビジュアルアート,レベルデザインに分かれており,1時間枠で20クラス以上が行われる。講師は業界でも名うての実力者や有名人たちで,時にはスライドや紙資料を使いながら,自分の携わっているゲームや技術デモを行ってくれる。
 そのほか,基調講演がアメリカ内外からの招待客によって行われ,今年はソニーエンターテインメントの岡本伸一氏や吉田修平氏,ポリフォニーの山内一典氏,そしてセガの名越稔洋氏らが大勢の観客を前に講演を予定している。7回の基調講演のうち,4回が日本の業界人で占められているというのは,それだけ欧米の開発者たちが日本との対話を求めているということだろう。去年あたりから,コナミやセガを始めとする日本の開発者やプレス陣の一団も会場で頻繁に見かけるようになり,ゲーム業界のグローバル化が感じられる。
 GDCの参加者は,ゲームデザイナーからプログラマ,アーティスト,サウンドエンジニア,ゲームテスターなど,後述するIGDAメンバーを中心にして,販売元の幹部やフリーランスのエージェント,プレス,研究者,学者なども含まれている。これらの講義に参加するには,一人あたり15万円程度の参加費を払う必要がある。値段が非常に高く感じられるが,開発元や業界機関の多くは,チームメンバーの知識拡大への投資として見ているようだ。アメリカでは,プロジェクト単位で会社を渡り歩くフリーランスの開発者も多く,一般企業でも出入りが激しいため,昔の職場仲間の再会の場所として機能しているようでもある。

GDCを運営する団体について

 GDCを主催しているのは,電子機器系の業界紙で有名なCMPメディア社を母体とする,Gama Networkという業界団体。そこで現在ディレクターを務めるアラン・ユウ(Alan Yu)氏が,先頭に立って運営している。いまや映画産業にも追いつかんとするゲーム業界を,21世紀の代表的なエンターテイメント産業とすべく活動している団体なのである
 そもそもGDCは,アメリカのゲーム開発者の有志によって始められたもので,16年前はたった十数人の寄り合いに過ぎなかったという。ゲームというビジネスが膨らみ始め,もはや共に業界を育ててきた友人たちと顔を合すことが少なくなってしまったことから,「たまには会って自分の現状や業界の行方を考えよう」という試みだったのだ。それが,IGDA(International Game Developers Association)という独立した業界団体の発足につながり,現在ではアメリカだけでなく,ヨーロッパやアジアも含めた数千人に及ぶゲーム開発者によって構成されるまでになった。
 そして4年前,IGDAはあまりにも大きくなったGDCの運営につまずき,ゲーム開発者のバイブル的な存在のGame Developer誌の販売元でもあったCMPメディアに運営を委託することで,スポンサーによるエクスポ会場を併設した巨大なイベントへと成長していったのだ。さらには,コンピュータサイエンスを専攻している大学生やゲーム業界に興味を持っている一般人も,ボランティアとして参加者を誘導する仕事と引き換えに,セッションやエキスポ会場への入場を無料で許可されている。形式としては,コンピューターグラフィックスの世界的な学会であるSIGGRAPHのようなものだと考えていいだろう。

真剣に講義に聞き入る受講生たち。中には,大ヒットしたゲームを開発した人も多く混じっているのだ ただの酔っ払いではない。この人こそ,若くしてカンファレンスを纏め上げているアラン・ユウ氏である。パーティーで酔っ払っているのだけど……

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