EA CAMP 2003

Text by 奥谷海人

「Battlefield Vietnam」

 今回が初公開となる「Battlefield Vietnam」は,タイトル名からも分かるように,「Battlefield 1942」の続編となる。「Man of Valor:Vietnam」や「Vietcong」など,最近ではベトナム戦争を題材にした秀作が多く開発されているが,本作も非常に期待できる作品である。
 開発を手がけているのは,スウェーデンのDICEが新しく設立したカナダの支社で,ここでは「Battlefield 1942:Secret Weapons of WWII」も開発されている。

 今回のデモは,オープニングと思われるゲームエンジンを使ったムービーの視聴から始まった。ファントム戦闘ヘリが,連隊になって寺院の廃墟や小屋のあるジャングルを通り過ぎ,浜辺の近くで火炎爆弾を投下。爆音や振動と共に,炎と黒煙の壁が湧き上がってくるのだ。そして,チョッパー輸送ヘリによって空中に吊るされている小型戦車,走行するジープの助手席でマシンガンを掃射する兵士などへのカットへつながっていく……。
 Battlefield Vietnamでは,グラフィックスエンジンやオーディオエンジンは一から作り直されており,今回のエンジンではノーマル・マッピング(Normal Mapping)技術を採用。これは,ノーマルやシェーディングの情報を拡張した,テクスチャマッピングの延長線上にあるテクニックだが,表面ノーマルと表面ジオメトリを分けて捉えることで,これらの情報がピクセル単位でサンプリングできるようになる。つまり,バンプマッピングなどもこれまで以上に簡略的に行えるようになるだけでなく,ポリゴンモデルの少ないオブジェクトでも,よりスムースでディテールに富んだ表面を作り出すことが可能になるのである。
 さて,このノーマル・マッピングによって, Battlefield Vietnamでは前作よりもキャラクター1体に使用されるポリゴン数が減少しているものの,手に持つ銃器や乗り物の光沢具合や細部への描き込みはもちろん,カバンの金具やベルトのバックル,さらには靴ひもまでもが表現されているのだから凄まじい。ノーマルマッピングは,「Far Cry」や「Deus Ex:Invisible War」でも採用されている,グラフィックスエンジンの新しい方向性の一つといえる。

 このようなエンジンが採用されたBattlefield Vietnamでは,鬱蒼としたジャングルが表現されているのかといえば,実はそうでもない。乗り物の移動範囲が制限されることで, Battlefieldシリーズ本来の楽しみであるマルチプレイヤーモードでのバランスが失われないよう配慮したためだ。
 とはいえ,観葉植物のような草木はほとんどの地形を覆っており,ここに腹ばいになれば敵からは発見されにくい。スナイパーとしても活躍できるようになりそうだ。
 イントロムービーでも表現されていたように,ベトナム戦争で多用された戦術では,火炎爆弾(Napalm)と輸送ヘリが重要な位置を占めていたのは疑いない。ゲームのデモでは,実際にチョッパーが鎖を垂らしてゆっくりと下降し,戦車と連結して向こうの島へと移動するような局面も紹介された。ちなみに戦車のような重いものを持ち上げると,ヘリの操縦も相当困難になるとのことだ。さらには,戦車に味方のプレイヤーが搭乗していれば,空飛ぶ大砲としても活用できる。ただし,その比重に従ってブランコのように前後左右に揺れるので,連戦練磨のプレイヤーでも3D酔いになってしまうのではないだろうか。


 敵となるNVA(North Vietnamese Army)の実情も考慮してか, Battlefield Vietnamにはべスパのような単車も登場する。もちろん二人乗りで攻撃を加えることも可能だ。銃撃戦ばかりでなく,岡の上の木材を落として坂下の敵にダメージを与えたり,エンジニアが誰も搭乗していない車両に爆発物を仕掛けるなどの手段もとれるようになった。
 NVA側にどれほどのバラエティが用意されるのかは不明であるものの,アメリカ軍にはアサルトやメディックでも,異なるスキンが複数ずつ用意される。
 ゲームプレイは,前作の軽快さを最大限に継承するとのことだが,まだ完全に仕様が決められていないようだ。いずれにせよ,これまでは不可能だった「移動中の兵器に搭乗しているプレイヤーによる攻撃」が可能になったのは,願ってもない改良部分だろう。発売は2004年の春ということで,これからさらに洗練されていくものと思われる。

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