Mythic Entertainment Dark Age of Camelot

forGamer.net独占インタビューシリーズ
Matt Frior on
「Dark Age of Camelot:Shrouded Isles」

Dark Age of Camelot 「Dark Age of Camelot」(ダーク・エイジ・オブ・キャメロット)で知られるMythic Entertainment社は,オンライン専用ゲームの開発会社として,長い歴史と豊富な経験を持っている。というのも,Mythic Entertainment社の前身となったInterworld Entertainment社は1995年にスタートした会社で,「Magestorm Millennium」「Darkness Falls - The Crusade」のようなオンラインRPGのほか,映画「インディペンデンス・デイ」をモチーフにした「ID4 Online」などのアクションゲームを次々と開発してきた。さらに,同社のコアチームは,InterWorld Entertainment社に所属する以前にもオンラインゲームを制作しており,その開発暦は16年という老練のクリエイター達なのだ。「Ultima Online」のリリースが1997年ということから考えれば,彼らのキャリアが,いかに凄いものであるかを理解できるだろう。
 ちなみに前述した「Magestorm Millennium」などは,オンラインサービスプロバイダのElectronic Entertainment社と提携され,現在でもMythic Realmsにて,全タイトルを月額10ドルでプレイできる。興味のある人は,チェックしてみてはいかがだろうか。

 社名変更する以前の最後の作品が,1998年にリリースされた「Spellbinder」だから,同社はDark Age of Camelotの開発と運営に足掛け5年を費やしていることになる。その5年間で,同社は769%という成長率を達成しており,地元のバージニア州では急成長するハイテク企業に贈られる「Virginia Fast 50」の称号を昨年(2002年)獲得した。現在では「Imperator」という新作の企画や技術開発も始まっており,チームの規模も70名近くにまで膨れ上がっている。最近では,投資会社から40億円近い支援を受けるなど,非常に勢いに乗っている開発チームといえるだろう。
 そのMythic Entertainment社において,エクゼクティブ・プロデューサーとしてDark Age of Camelotの成功を導いたマット・ヒュリオ(Matt Frior)氏に,ショートインタビューを行う機会を持てた。現在の彼は昨年末にリリースされた拡張パック第1弾「Dark Age of Camelot:Shrouded Isles」(以下,Shrouded Isles)を定着させることに努めるだけではなく,次の拡張パックやImperatorの制作にも絡んでいる。実は,このImperatorについて詳しく話を聞きたかったのだが……。

マット・ヒュリオ氏
 Mythic Entertainment社のエクゼクティブ・プロデューサー。「Dark Age of Camelot」 や「Dark Age of Camelot:Shrouded Isles」はもちろん,1996年のInterworld Entertainment社時代から同社のほとんどの作品をプロデュースしてきた。

 

Dark Age of Camelotの今後の展開

昨年末にリリースされたShrouded Islesは,大きな成功を収めているようですね。

マット・ヒュリオ (以下,Frior):
 ええ。サービス開始も非常に円滑に行われてホッとしています。2002年12月だけで10万本以上が販売され,今では90%以上のアカウント保持者(アメリカ国内)に浸透しました。拡張パックなのに「The Sims Online」などの競合作のセールスを出し抜いており, 同時期にリリースされたのオンラインゲームの中では一番売れたタイトルになったんですよ。現在,フランス語,ドイツ語,イタリア語,それから韓国語に翻訳されており,これらの地域も含めると20数万人のアカウントになっていますが,海外での今年に入ってからの結果はまだ聞いてません。韓国でもリリースされたばかりで期待しているんですよ。日本でも,2002年夏にカプコンから「ダーク・エイジ・オブ・キャメロット(日本語マニュアル付き)」がリリースされ,続けて年末には拡張パックの「ダーク・エイジ・オブ・キャメロット拡張版:シュラウデッド・アイルズ(日本語マニュアル付き)」もリリースされています。

素晴らしいですね。Mythicは,オンライン専用ゲームの開発元としても長いのですが,Dark Age of Camelotの成功は,リリース前には予想していたことなんでしょうか?

Frior:
 いやいや。当時も,今とは市場の大きさは変わっていなくて,「Ultima Online」「EverQuest」「Asheron's Call」の3作あれば十分だとかいわれていたじゃないですか。我々は,Dark Age of Camelotの魅力を信じていましたが,結果は期待していた以上だったことは確かです。あと,「Anarchy Online」のようなタイトルが遅れたのも理由ですかね。ちょうどプレイヤー達が新しいゲームを探し始めていた頃で,気が付いたらDark Age of Camelotしかなかった。それで,試した人が定着したのでしょう。そういった意味では,非常にラッキーだったと思います。

Dark Age of Camelot

ラッキーといえば,今回も「Star Wars Galaxies」が遅れて良かったじゃないですか。

Frior:
 はは(笑)。まあ,このジャンルが活性化してほしいのも事実ですし,MMORPGをプレイする多くの人が,複数のソフトを楽しんでいるという現状を考えると,それほど影響ないのではと考えます。「Eve Online」は遅れたみたいだけど,「Shadowbane」とかは予定通りみたいですしね(注:このインタビューは,Shadowbaneが3月末に発売される以前に行われた)。

拡張パックの第1弾になったShrouded Islesは,どういう意図で制作されたのでしょうか?

Frior:
 プレイして,どう思われました?

Aegirではトロールとコボルトが攻めぎあっていたり,AvalonではDrakoranによって征服されていたという過去の影響がゲームのクエストに反映されていますよね。こういった(ゲーム内での)神話性が強調されている点はプラスだと思います。しかし,初期のレベル上げが難しいのは,新規のプレイヤーを獲得しにくいのではないかという気がします。

Frior:
 う〜ん。前からいわれている点ではありますね。今回,我々は三つの意図をもって開発しています。
1)グラフィックスの向上
2)プレイヤーを飽きさせないための工夫
3)新規プレイヤーの獲得
なんです。3つめに関しては,今おっしゃられたような改善をする必要があるのかもしれませんね。,Shrouded Islesでは,新クラスや新種族の追加などによって,レルム対レルムでの大きな対戦が強調されている点が,一番注目できる点だと思います

Dark Age of Camelot:Shrouded Isles

1番めに挙げられた,グラフィックスの向上というのは,DirectX 8.1に対応させたことでしょうか。Shrouded Islesを導入すると,川を流れる水のきらめきなど視覚的なアップグレードも大きな特徴ですよね。すでにDirectX 9.0もリリースされていますが,今後の対応は考慮されていますか?

Frior:
 ええ,もちろん。5月のE3で正式に発表する予定になっている,次の拡張パックでですね。NDL社の「GameBryo」のライセンスを受けていて,ゲームエンジンは常時最新のものを利用できるのがDark Age of Camelotの強みの一つですし,NVIDIA社とも提携して,新しいビデオカードに常に最適化されるようになっているのです

次の拡張パックですか!?

Frior:
 今後,予定としては1年に1度のペースで拡張していくつもりです。MMORPGは,5年も10年もサービスを続けていかなければならないゲームですから,ファンを継続的に楽しませるようなサービスをしていかなければならないのです。次の拡張パックの前にも,プレイヤーが家を建てたりコスチュームをデザインできるようになる大きなパッチを予定しています

ああ,Camelot Herald(Mythic主催のウェブ新聞)にも出ている情報ですね。

Frior:
 これはプレイヤーを飽きさせないようにするための,非戦闘的な部分での強化の一つなんです。もちろん家の建設やコスチュームのカスタマイズなどは,拡張パックを購入したプレイヤーだけでなく,海外も含めたすべてのプレイヤーが楽しめるようにするつもりです。最近では協力プレイ専用サーバーの"Gaheris"も用意していますし,そうやって,さまざまなオプションを次々と出していくのも,ユーザーを満足させる一つの手段だと思います。

 

期待の新作「Imperator」については……

なるほど。では,昨年に制作発表した「Imperator」のこともお聞きしたいのですが。

Frior:
 すみません。まだImperatorについて話せることはないんですよ。ほとんど何も仕上がっていない状況ですから

なんか,妙な歴史観を題材にしているようですが。

Frior:
 ええ。ローマ帝国が近未来まで2千年以上に渡って続いているという仮想史がテーマです。ローマは帝国がニつに分裂したあと,皇帝(Imperator)による強権的な帝政から,共和制の国家になっているという設定です。世界に存在する帝国もローマだけとは限りません。宇宙開拓も始まっていますが,帝国の端から侵略を受けているという点では,実際のローマと似ているのです。

Imperator

"Alternate Earth "(もう1つの地球)という言葉を商標登録されているみたいですね。

Frior:
 まあ,これまでの二千年間に,どんな歴史的なイベントが起こって,もしくは起こらなくてローマ帝国が存在してきたかということですね。こういう時空の変化もゲームに取り入れたいのですけど,それ以上はまだゲームデザインを練っているということもあり,未決定なので詳しく話せないんですよ。

宇宙も舞台にしているということは,太陽系の開拓とか戦闘機での攻防とかもアリ?

Frior:
 ……あるかもしれませんね(笑)。

そんな,つれない。

Frior:
 だって制作を発表したといっても,まだ3年後とか,それくらいの制作期間を予定しているんですよ。今も,フルに開発を始めているという状況ではなく,その時期のグラフィックス技術の予想や研究とか,基本的なゲームデザインとか,数人のメンバーが細々とやっている状態なんです。

あらら,3年後ですか。また出直してくるので,そのときはよろしくお願いしますね!