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Text & Translation by 奥谷海人
帝国建設シミュレーションの金字塔
Firaxis Games社のシド・マイヤー(Sid
Meier)氏といえば,"シミュレーションゲームの父"として,20年に渡って業界に君臨したゲームデザイナーだ。
彼は現在,'80年代後期の名作として名高い「Sid
Meier's Pirates!」の最新作を,実に16年ぶりに開発しているが,同社のフラッグシップとなった「CivilizationIII」(邦題:「シヴィライゼーションIII」)も忘れてはいない。彼の作品としては始めて,拡張パックの第2弾が開発されているのである。
PCゲーマーなら,シド・マイヤー氏やシヴィラィゼーションについて,一度や二度は耳にしたことがあるだろう。Firaxis Games社の前身でもあるMicroprose社時代から,マイヤー氏周辺にはさまざまな人材が割拠し,「Age
of Empires」のブルース・シェリー(Bruce Shelly)氏,「Jane's Combat」シリーズを経て「Ultima X:Oddysey」を統括するアンディ・ホリス(Andy
Hollis)氏,そして「Rise of Nations」のブライアン・レイノルズ(Brian Reynolds)氏などを排出している。
今回紹介するマイケル・フィッターマン(Michael Fitterman)氏は,そのマイヤー氏率いる精鋭開発チームの新しい顔役の一人で,「CivilizationIII」以来,開発チームの中核を担っているプロデューサーだ。
Civilizationシリーズは,まったく何もない状態の大陸に文明を築き,そこからユニットの生産や内政強化,探索,拡張,技術進化,そして他文明との戦闘や外交を重ねて世界制覇していくという,いわゆる帝国建設ゲームの金字塔的存在である。
2001年にリリースされた「CivilizationIII」は,シリーズのゲームプレイはそのままに,文明圏の概念やリーダーの存在,交易可能な贅沢品や資源など,さまざまなシステムがアップデートされており,第1作に負けないほどのヒットとなった。2002年末には拡張パック第1弾の「CivilizationIII:Play
the World」がリリースされ,モンゴルやスペインなどの文明が加えられたほか,待望のマルチプレイヤーモードや,レジサイド(Regicide)という王様ユニットを殺害することが目的のゲームモードを追加した。
時代範囲が狭いほど濃厚なゲームに
そして,拡張パック第2弾「CivilizationIII:Conquests」が,順調に行けば2003年末にも発売される予定だ。この作品の大きな魅力は,これまでのように好きな文明を選んで4000BCから2050ADまでの長い期間をプレイするのではなく,プレイヤー達の興味を惹く歴史の一場面を再現しようというコンセプトで開発されている。
そのため,コンクエストと呼ばれるシナリオごとに異なる時代区分に絞られており,その地域によって選択できる文明も限られているのである。
面白いのは,一つ一つのコンクエストのために,専用のユニットやアート,科学技術などが登場するなど,そのテーマに合わせた仕様が用意されていることだ。特定地域を再現したマップには,あらかじめ実在した都市や多くの資源が設置されていて,文明を拡大していくというよりは,より強固なものへと変貌させていくというイメージだ。
例えばメソポタミア文明の勃興期を描いたマップでは,1ターンで消費する年月が調整されているほか,青銅器時代から鉄器時代までの流れに合わせたテクノロジーツリーや七不思議,さらには文明に合わせたユニットも複数用意されている。
これらのコンクエストは,全部で九つ制作されている。我々にとってとくに興味深いのが日本の戦国時代を描いた"Sengokuコンクエスト"だが,この詳細に関しては次ページでじっくり紹介ことにする。ほかに公表されているのは,同じく日本が登場する太平洋戦争シナリオや,マヤ,アステカ,インカなど古代中南米文明コンクエスト。太平洋戦争シナリオでは,一部の同盟関係がロックされていたり,古代中南米文明シナリオでは敵ユニットをいけにえにすることで文化圏を拡張できたりするなど,それぞれに違った仕様があるのが面白い。
プレイ可能な時代が限られているからといって,Conquestsが内容の薄い拡張パックというわけではない。文明もシュメールやマヤなどが加わって合計で30種類になっているし,これまで五つあった政治体勢には,ファシズム,封建社会,部族制社会,帝国主義の四つが追加されている。文明の性格も農耕志向と航海志向の二つが増えて組み直され,例えばイギリス文明は商業/拡張から商業/航海へと変更されているようだ。内務担当ウインドウで調整するスペシャリスト達も,これまでの3種に加えて都市開発エンジニアと警察官が用意されているので,より細かいコントロールも可能になる。
改良点はまだまだある。タバコ,バナナ,オアシス,塩,砂糖,翡翠など地域に合わせた贅沢品が追加されているし,インタフェースも,一つの都市にほかの都市の食料などを一気に収集したり,メッセージなどのウインドウをワンキーでトグルできたりするなど変更されている。科学技術ごとに,最初に発見した文明にリーダーユニットが登場するというシステムも,ゲームのテンポを上げるのに一役買うはずだ。
次のページでは,その「CivilizationIII:Conquests」の制作事情やゲームの詳細が分かる"ディベロッパーアップデート"を,Firaxis
Games社の好意で翻訳して紹介する。

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