イースVI
Text by 大路政司
1st Oct. 2003
日本ファルコムの代表作として,そしてアクションRPGというジャンルの発展に多大な影響を与えた名作としてPCゲーム史に名を残す「イース」シリーズ。その最新作である「イースVI ナピシュテムの匣」が,9月27日,ついに発売された。初代「イース」が発売されてから16年,スーパーファミコン版「イースV」が発売されてから8年の時を経て復活する「イース」は,果たしてどのようなゲームなのだろうか? 率直な感想を,システム詳解と最新スクリーンショットと共にお届けしよう。
イースVIのストーリー
ゲームの舞台は,「イースI・II」の世界・エレシア大陸から西へ1200クリメライ(1クリメライは約1.2キロメートル)にある絶海の孤島・カナン。これまでにいくつもの冒険を乗り越えてきた赤毛の剣士,アドル・クリスティンは,ひょんなことから海賊船に乗り込むことになったのだが,道中カナンの大渦と呼ばれる魔の海域に呑み込まれ,カナン諸島に漂着してしまう。
そんなアドルを助けたのは,自然と共に生きるレダ族の巫女,オルハとイーシャであった。レダ族は元来,私利私欲のために自然を破壊するエレシア人を好んではおらず,レダ族の長オードは意識を取り戻したアドルに村を出て行くよう告げる。アドルはオルハとイーシャに礼を言い,村を後にするのだが……。
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ムービーによる演出はオープニングシーンだけではなく,ゲームの随所に挿入される。ちなみに,左の女性がレダ族の巫女・オルハで,右の女の子はその妹のイーシャ。アドルの命の恩人であり,今回の冒険のキーパーソンである |
冒険と戦闘を深化させたグラフィックの3D化は,まさに大成功!
従来の「イース」シリーズと本作のもっとも大きな違いは,グラフィックが2Dから3Dにパワーアップしたこと。起伏の激しいフィールドや奥行きのある景観,大気の流れを感じさせる草木のゆれや透明感のある水面など,冒険の舞台は(当然のことながら)シリーズ随一の美しさである。
3D化による恩恵は,グラフィックの美化につながっただけではない。高さの概念が導入されたことにより,主人公アドルはジャンプ動作を行えるようになった。また従来の「体当たりタイプ」の攻撃方法が廃止され,攻撃ボタンを押すことで剣を振るい,敵と戦えるようになったのである(※1)。移動キーや攻撃,ジャンプボタンとの組み合わせで,ジャンプ切りや下突き,ダッシュ斬りなど,バリエーション豊かな攻撃手段を用いることが可能。敵の弱点を見抜く洞察力と,適切な攻撃パターンを具現化するテクニックが試されるわけである。……と書くと,かなり難解なゲームに思えるかもしれないが,効果的に戦うことができればノーダメージで敵を倒すことも可能なので,ある意味「体当たりタイプ」攻撃の「イースI・II」よりも簡単だといえる。アナログレバー付きのゲームパッドを用意できるなら,操作性に関する問題はまったく気にならないはずだ。
※1「イースV」でも攻撃ボタンによる攻撃や,ジャンプ(高さの概念)などのシステムは導入されていた。しかし,敵の攻撃をジャンプでかわせない,ジャンプの距離が一定,上下左右の4方向にしかジャンプ・攻撃ができないなど,システムの未熟さが目立った。
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「イースI」の時代から,グラフィックのクオリティには定評のあった日本ファルコム。ゲームの性格上,映像面でのインパクトは薄いが,グラフィックは丁寧に仕上げられている。地形による足音の変化や音響効果の演出とも相まって,臨場感はなかなかのものだ |
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ジャンプ中上昇している間なら上突き,下降中なら下突きを繰り出すことができる。上突きは高い位置にいる敵に対して不可欠な技。下突きは当たり判定が大きく,多段ヒットするので,固い敵や乱戦時に有効だ |
通常攻撃は,装備している剣に関わらず3連続攻撃が可能。特殊なアクセサリーなどで"運"を高めれば,クリティカル攻撃の発生確率も高まるぞ |
3本の"成長する剣"が,戦術にさらなる深みを与える
ゲームがある程度進むと,"エメラス剣"という特殊な剣が登場して使えるようになる。全部で三本あるエメラス剣には,それぞれ風,炎,雷の魔力が宿っており,剣によって実行可能な攻撃方法,必殺技,魔法が変化する。それら3本のエメラス剣は,戦闘中でも簡単に切り替えることができるので,敵の数や特性,戦っている場所に応じて最適な攻撃を繰り出せるのだ。
またエメラス剣は,敵を倒した時に入手できることがある"エメル"という鉱物を使って強化できる。剣がレベルアップした場合の特典は,単に攻撃力が上がるだけではなく,必殺技や魔法のパワーアップや,魔力ゲージの蓄積スピード向上といった効果が得られることもあるわけで,この剣の成長システムにより,敵との戦闘がより面白く,より重要なものになっているわけだ。
装備できるエメラス剣が3本というのは,やや少ないような気がするかもしれない。しかし,「3種の戦闘スタイルを使い分けて敵と戦える」のだと考えると,決してそんなことはないのだと理解できるだろう。“攻撃力”という数値が増減するだけの武器ならば,いくつ用意されていてもたいした魅力にはならない。そういった意味においても,「イースVI」の戦闘システムは大きな進化を遂げたといえるのである。
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使える必殺技はエメラス剣によって変化。その発動方法も,攻撃キーを一定間隔で押したり,連打したりと様々。うまく使いこなせれば,戦闘が有利になるだけではなく,単調になりがちな戦闘シーンがより楽しくなるだろう |
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縦斬り,横斬り,突きといった通常攻撃のモーションだけではなく,必殺技や剣魔法の特性も,エメラス剣選びのポイント。敵を倒して得たエメルを無駄にしないよう,エメラス剣のレベルアップは計画的に行いたい |
演出,アクション,ストーリーが高いレベルで調和した秀作
“先の展開”が非常に楽しみだ!
ネタバレになるので詳解は避けるが,ストーリー展開は"よくも悪くもイース的"。現時点でダンジョン一つ攻略すれば(おそらく)クリア,という所までゲームを進めているが,ゲームの総プレイ時間と比較して,ストーリーのボリュームが意外とあっさりしている。とはいえ,この感覚は従来のシリーズ作品でも同様に受けた印象だし,長大な物語を延々と押しつけられるのもキツい。ここで書いた「ストーリーがあっさりしている」というのは,無駄のない物語,淀みのないストーリー展開に対するほめ言葉である。
旧作で登場したキャラクターとの再会や,シリーズを通しての謎に対する解答など,シリーズ最新作に必要と思われる要素はすべて詰め込まれていた。最終的な判断はプレイヤーそれぞれが下すものだろうし,筆者自身も完全にクリアするまでは口を慎みたい。ただ現時点でいえることは,敵との戦闘やグラフィック,ストーリー面での不満は,プレイしていてほとんど感じなかった,ということ。PCでこの手のアクションRPGを遊んだのは本当に久しぶりだが,個人的には,コンシューマを含めて,最近で一番のヒット作が「イースVI」である(※2)。冒険の舞台が絶海の孤島であるため,やや世界の広がり(やり込み要素)に欠ける印象は抱いたものの,取り逃したアイテムやサブイベントらしきものもあるので,ぜひ二周目もプレイしたい。また,本作のシステムはそのままで,ストーリーやデータ面を強化した“続編”の登場を,心から願う。
筆者が中学生の頃,ゲーム世界で初めて出会った"名前付きの勇者"アドル。彼との再会が,このようにいい形で果たせたことは非常に喜ばしいことだ。筆者と同年代(20代後半〜30代半ば)で,"赤毛のアドル"と冒険した経験のあるゲーマーならかなり楽しめる作品だと思うので,ぜひプレイしてもらいたいものだ(もちろん,「イースVI」で初めてアドルと冒険することになるゲーマーにも,本作は十分おすすめできるわけだが)。
※2
緑衣の勇者が活躍するGC版「ゼルダの伝説 風のタクト」は,実にレベルの高いゲームだったが,アドベンチャー要素が強すぎて少々ダルく,自力クリアは断念。妻のサポート役としてエンディングを見た。GBA版「ゼルダの伝説 神々のトライフォース&4つの剣」も良かったが,GBAでアクションゲームは辛い。アクションゲームを楽しむには,入力デバイスを含むプレイ環境が非常に重要である。GC版「ファイナルファンタジークロニクル」は,3人以上で遊ばないと(個人的には)ちっとも面白くないので,週に1,2回しかプレイできず,現在放置中……。
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ゲームの舞台はそれほど広大ではないが,その分密度の濃い冒険が楽しめるというもの。「イース」ファンにはおなじみの名脇役たちとの再開や,謎多き黒衣の戦士との出会い,物語の要所に登場する小妖精たちなど,見所は満載。一つの物語として完結しているので,シリーズ作品を遊んだことがない人でも,安心してプレイできるはずだ |
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旧作からの大きな魅力であった対ボス戦は,「イースVI」においても健在。従来作以上の迫力と手強さを,本作のボスキャラは秘めている。単なるパワープレイでは歯が立たず,弱点や特定の攻略法を発見しなければ倒せないものも存在するので,非常に戦いがいがあるといえる。アクションゲーマーを自認するなら,「剣レベル○以下,回復アイテム○個以内」といった縛りを設定し,自虐的なプレイを楽しむのもアリ |
■発売元:日本ファルコム
■価格:DVD-ROM版/CD-ROM版 7980円
■問い合わせ先:日本ファルコム TEL TEL
042-527-6501
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(PentiumIII/1GHz以上推奨),Windows98/Me:メモリ128MB以上,Windows2000/XP:メモリ256MB以上,空きHDD容量
1.1GB以上
■Screenshots集
■先行おひろめムービー高画質版(LZH:43秒:6.2MB),店頭用ムービー(ZIP:2分43秒:30.9MB)
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