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| ドラゴンなどの強力なモンスターを倒せば,それだけ多くの経験値と強いアイテムを手に入れられる。ただ,中途半端な軍隊では返り討ちにあうことも |
過去にあらゆるリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)を遊びまくり,「さすがにこのジャンルも飽きてきたかな……」と感じていた筆者だが,「ウォークラフト III」(以下,WC3)を遊んだ素直な感想がこれである。
さて,今回の記事は製品の"レビュー"となるわけだが,結論からいってしまえば,WC3はかなりの傑作といえる。近年発売されたRTSの中で最も革新的で,また最も完成度の高いゲームなのではないだろうか。今回は,この場を借りて「いかにWC3が面白いか」を伝える記事にしたいと思う。なので,「すでにウォークラフト
IIIがどんなゲームなのかを知っている人」向けの記事になってしまっているが,ご了承いただきたい。
というか,自分が面白いと思う映画を他人に紹介したくて仕方がない……! 読者の中には過去にそんな経験をした記憶がないだろうか? 筆者の心境は,今まさにそのような状態なのだ。
「WC3は,既存のRTSのシステムにRPG要素を融合させた新世代のゲームで……」
これは国内外を問わず,WC3が紹介されるときに使われるフレーズである。
正面切ってこんなコトを言われても,「なに言ってんだか」と思ってしまうのが人の常。正直なところ筆者も,「天下のブリザードも,ついに薄っぺらいウリ文句を言うようになったのか」という印象を拭えないでいた。実際,大して目新しくもないゲームシステムを,いかにも新発明!のようなノリで宣伝している作品は少なくない。
しかし,しかしだ。本作のウリ文句はまさに文字通りなのである。RPG要素との融合が"本当に"素晴らしいのだ。ほかの作品で散見されるようなオマケ的な要素ではなく,システム上の欠かせない重要な要素として,ゲームを面白くさせるための欠かせない要素として,RPG要素が見事な形で盛り込まれているのである。
具体的に説明すると,WC3には"ヒーロー"と呼ばれる特殊ユニットがおり,このヒーローユニットを駆使することが,本作の大きなポイントとなっている。通常のユニットと異なり,ヒーローにはレベルや必殺技(スキル),アイテム所持(装備)などの概念があり,ヒーローを強化させていくことがゲーム中の駆け引きの一つになっているのだ。ヒーローは,初期の状態ではさほど強力なユニットではないが,戦闘を重ね成長していくに従って,圧倒的な存在感を醸し出すユニットへと変貌していくのである。
本作では,マップ中にクリープと呼ばれるモンスターの集団が配置されており,それらを倒すことで経験値やアイテムを手に入れることができる。敵との直接的な戦闘の合間を縫ってより多くのモンスターを仕留め,ヒーローのレベルアップやアイテムの充実を図るという作業が,これまた実に楽しいのだ。
敵を倒すために軍隊を強化していくというファクターが,従来のRTSでは"ユニットの数を増やす"だったのに対して,WC3ではヒーローの成長とアイテムの獲得という要素が付加されているわけだ。
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| シングルキャンペーンの出来の良さもWC3の大きなウリだ。RPG要素がふんだんに盛り込まれており,シナリオ中に存在する"サブクエスト"などを達成することで,強力なアイテムが手に入ることもある | |
WC3が素晴らしい点は,ゲームとして一切の無駄を省き,楽しませるべき要素を徹底的に練り込んでいる部分だろう。つまり,戦闘それ自体を楽しませるさまざまな工夫が随所に盛り込まれているのだ。
例えば上記の"モンスターを狩る"という要素は,敵との戦い以外での駆け引きという意味では,Age of Empiresシリーズなどの内政的な要素に近い位置付けだ。より効率よくモンスターを倒していくことで,相手に対して有利な立場を築いていけるのである。WC3の素晴らしいところは,その2次的な駆け引きの要素すらも,戦闘を楽しませるエッセンスとして盛り込んである部分といえる。戦うこと自体の面白さ,戦いによってレベルアップしていく楽しさ,アイテムを手に入れる楽しさなど,面倒な内政要素を必要最低限に抑えながらも,ゲームの本質部分(WC3の場合は"戦闘"だ)を盛り上げる仕掛けが何重にも絡み合い,それらが見事に調和しているのである。
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| フォトリアリスティックな映像表現が素晴らしいムービーシーン。ゲームの内容に劣らず,ムービーのクオリティも相当なモノだ | ||
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| ヒーローのレベルが上がれば,強力な範囲魔法すらも使えるようになる。敵陣に入り込んでから使えば効果絶大 |
WC3は,通常のRTSとは多少"感覚"が違うゲームである。ごへいを承知でいえば,遊んだときの手応えは,ストラテジーゲームというより,格闘ゲームなどのアクションゲームに近いかもしれない。ストラテジーゲーム風味のアクションゲームといえばよいだろうか。
ユニットを作り,ただそれをぶつけて眺めているだけでは,WC3の本当の面白さは理解できない。ユニットをただの"駒"として見るのではなく,自分の手足のような感覚で操作し,"直接"敵を倒していくような遊び方をして,初めてWC3の面白さが分かってくるといえる。WC3の神髄は,一にも二にも戦闘(戦闘時の操作)の楽しさに尽きるのだ。
例えば,ヒーローや一部の魔法系ユニットには,手動で操作しなければならないスキル(魔法)が用意されている。それを素早く敵に打ち込むことで,敵のヒーローを瞬殺させたり,または敵部隊全体に大ダメージを与えたりといったことが可能なのだ。複数のヒーローの攻撃魔法を瞬間的に発動させて一気に有利な状況を生み出すなどは,さしずめ格闘ゲームでいう連続技のような感覚だろうか。同じユニットの数でも,素早く,的確に部隊をコントロールしたほうが,圧倒的な勝利を収めることができるワケだ。
つまり本作は,資源を集めて施設とユニットを作り……というRTS定番のスタイルを踏襲してはいるが,本質はあくまで戦闘部分。いかに上手に戦うか(ユニットを操作するか)が,ゲームの勝敗を決める一番大きなポイントなのだ。戦闘の面白さ……,いや"ユニットを操作すること自体の面白さ"を,これほどまでに引き出している作品は,恐らくWC3が初めてなのではないだろうか。
WC3は,ユニットの編成をどうするか,いつ攻めるか,どこに移動するか,などの戦術的な判断に加え,戦闘時における瞬間的な"技"を競い合う,非常に奥の深い作品なのである。
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| 使用できる種族は,ヒューマン,オーク,ナイトエルフ,アンデッドの4種類。壮大な物語が展開していくシングルキャンペーンも,それぞれの種族を軸にしたシナリオが用意されている | |
インターネットを介しての対戦プレイは,WC3の最大の魅力の一つといえよう。ゲーム自体の楽しさ,奥の深さも素晴らしいが,Blizzard
Entertainment社が提供するゲームサーバー「Battle.net」の機能もまた格別である。
中でも最も素晴らしいのが,対戦をユーザー同士の事前交渉なしにワンクリックで行える「Anonymous Matchmaking」システムだろう。種族,対戦ルール,マップの三つの項目を選択するだけで,Battle.net上から自動的に対戦相手を捜して出してくれるのだ。さらに,対戦の結果によってプレイヤーのランキングを決定する独自のラダーシステムにより,自分に見合った相手を捜してくれる点も大きな特徴だろう。つまり,初心者ならば初心者プレイヤー同士,上級者は上級者同士で対戦が組まれるのである。これにより,プレイヤー間の格差が激しくてゲームが面白くない……といった問題の解消を図っているのだ。Battle.net上には,少ないときで30000人,多いときでは50000人近い数のWC3プレイヤーが集まっており,対戦相手に困ることもなく,非常に快適なマルチプレイライフを送ることができる。ゲームに慣れない間はなかなか対戦で勝てないかもしれないが,どうか本作の対戦プレイの面白さも味わってほしいところだ。
最後に繰り返すが,本作は,近年発売されたゲーム中でもトップクラスの完成度を誇る作品だ。PCゲーム史上に名を残す傑作といっても,決して言い過ぎではないだろう。なんだかんだで1000ゲーム以上遊び込みながら,今なお飽きていないプレイヤーのたわ言として,どうか信用してほしい。これだけの面白いゲームは,遊ばないとゲーマーの名が廃るというものだ。騙されたと思ってぜひ購入に踏み切ってもらいたい。できれば対戦も楽しんでほしいが,シングルキャンペーンを遊ぶだけでも,絶対に損をしたとは思わないだろう。ちなみに世界観などより詳しい情報が知りたければ,当サイト内にあるプレビューをチェックしておこう。
今日もBattle.netにログインしつつ,日本でWC3がブレイクするといいのになぁ……と心底思う筆者であった。
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