スパイダーマン:ザ・ムービー

Text by UHAUHA
26th Mar. 2003

アメコミ生まれのスーパーヒーロー見参!!

カメラロックを使うと目標を捉えたまま移動が可能

 アメリカンコミック(アメコミ)生まれのヒーローは数多く存在するが,その中でも人気が高いのが「スパイダーマン」だ。
 スパイダーマンの生みの親は,マーヴル・メディア社の名誉会長スタン・リー。マーヴル・メディア社といえばアメコミの大御所で,「超人ハルク」「X-MEN」などスーパーヒーローの多くは同社,つまりスタン・リーが関わっている。

 スパイダーマンは誕生からすでに40年以上経過しているが,さまざまな漫画家に受け継がれ,人気の衰えをまったく感じさせない超人気シリーズである。2002年には実写版映画「Spider-man」(邦題:「スパイダーマン」)が日米同時公開され,大ヒットしたのは記憶に新しいところだ。すでにDVDも発売されており,読者の中にも観た人が多いのではないだろうか。
 2003年2月13日にカプコンから発売された「スパイダーマン:ザ・ムービー」(以下,「スパイダーマン」)は,映画スパイダーマンの名場面とオリジナルストーリーを組み合わせた設定の,アクションゲームとなっている。映画で最後までスパイダーマンを苦しめた"宿敵"グリーンゴブリンとの闘いを,ゲーム内でも楽しむことが出来るのだ。
 それではまず,映画を観ていない人のために簡単にストーリーを紹介しておこう。もちろん,すでに知っているという人は,すぐに次の項をお読みいただいても構わない。

 幼くして両親を失ったピーター・パーカーは,ニューヨーク郊外に暮らす伯父夫妻に引き取られ,ごく普通の高校生に成長する。彼は,隣に住む幼なじみのメリー・ジェーンに想いを寄せながらも,気持ちを伝えることができないでいた。
 そんなある日,遺伝子を組み替えた特殊な蜘蛛に刺されたことから,彼は驚異的な特殊能力を身に付ける。そして彼は,その能力を使い,賭けレスリングに出場しようと決意する。優勝して得た賞金で車を買い,メリー・ジェーンの気を惹こうと企んだのだ。
 その企みをいち早く察したのは,育ての親である叔父ベンだ。ベンは「大いなる力には大いなる責任が伴う」と言ってピーターを諭すが,結局ピーターは試合に出場し,見事優勝する。しかし主催者は,賞金を渡そうとはしなかった。
 その後ピーターは,主催者の事務所に強盗が入るのを目撃する。しかし彼は,賞金をもらえなかった腹いせに,強盗を見逃してしまうのだった。その帰り道,ピーターを迎えに来たベンが何者かに刺され,ピーターに見守られて静かに息を引き取る。怒ったピーターが犯人を追いかけ捉えてみれば,犯人はあの強盗だった……。
 ピーターは,「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉の意味を初めて理解し,特殊能力を正義のために使わなかったことを激しく後悔する。そしてこの能力を,街にはびこる悪を懲らしめるために,愛する人を守るために使うことを決意したのだ。これが,スパイダーマンの誕生である。
 その頃,ピーターの友人ハリーの父親であり,ピーターの良き理解者でもあるノーマン・オズボーンが,自分の体を使った化学実験を行っていた。しかし実験は失敗し,ノーマンは善と悪の心を持つ二重人格者になってしまう。悪の心の時の姿が,スパイダーマンの宿敵となるグリーン・ゴブリンである。

 

スパイダーマンのコスチュームの再現度もバッチリ。筋肉質な体の再現にも注目 グリーン・ゴブリンのモデリングも完璧だ。が,こんなコスチュームは着たくない

己の体をコントロールし,頭を使って戦うべし

 本作ではニューヨークの摩天楼を舞台に,グリーン・ゴブリンはもちろんのこと,原作に登場するショッカーやヴァルチャーなどとも戦うことになる。ゲームはステージ制となっており,随所にムービーが挿入されて映画やアニメを観ているように進んでいく。人を助けたり,敵を倒してアイテムを入手するなど,ゲームを進めるためには戦闘以外の行為も必要で,ゲーム開始から終了まで飽きさせない仕様だ。本作は1ステージのプレイ時間が短めで,また途中でセーブ(8か所まで)できるので,ちょっと時間が空いたときに気軽に遊ぶゲームとしてうってつけといえるだろう
 ステージをクリアすると,ライフ残量やクリアタイムなどに応じてポイントが入る。またシークレットエリアなどを見つけることでボーナスポイントが加算される。このポイントを貯めることで,新しいコスチュームやミニゲームが追加されるといったオマケ要素が追加されていくので,常に高いポイントが得られるように意識してプレイしたい。

スパイダーキック(?)が炸裂!! これはかなり痛そうだ

 ゲーム中,画面上にヘルスゲージウェブゲージが表示されている。このうちヘルスゲージは体力を表しており,0になれば当然ゲームオーバーとなってしまう。一方のウェブゲージはスパイダーマンが使用できるウェブ(蜘蛛の糸)の残量を示し,スパイダーマンならではの攻撃(ウェブアタック)を使うことで消費していく。ウェブゲージは放っておいても徐々に回復するが,ヘルスゲージとウェブゲージは共に"〜スパイダー"と呼ばれる蜘蛛の形をしたアイテムを取ることでも回復可能だ。
 このアイテムは,ヘルスが50%回復するレッド,100%回復するレッド&ブルーと,ウェブが50%回復するブルー,同じくウェブが100%回復するブルー&シルバーの四つが基本で,ほかにコンボ攻撃や強力なウェブアタックを得られるゴールドスパイダーが存在する。ゴールドスパイダーは簡単に入手できる場合もあれば,見つかりにくい場所に隠されていることもあり,これを探すのも楽しみの一つといえる。ゴールドスパイダーがドブの中を流れていく……というシーンも出てくるぞ(笑)。

 もちろん本作では,スパイダーマン独特の動きがしっかりと再現されている
 例えば,スパイダーマンはステージ上の壁だろうが天井だろうが移動可能だ。敵に見つからないように壁を這って進み,天井に移動して敵の頭上から奇襲する,なんてことは朝飯前。このへんはほかのアクションゲームでは味わえない部分だろう。
 攻撃についても,アクションゲーム定番のパンチ,キック,ジャンプを組み合わせたコンビネーション(コンボ)はもちろんのこと,そこにスパイダーマンの特殊能力がスパイスとして加わることにより,ダイナミックかつアクロバティックな動きが繰り広げられる
 ウェブを繰り返し発射し,空中を駆けるように移動する"ウェブスイング"。固めたウェブを発射し敵にダメージを与える"インパクトウェブ"。さらにはウェブスイングやジャンプ中に方向転換し,"ウェブライン"で瞬時に移動し,ついでに移動ライン上の敵を"ウェブラインアタック"で攻撃といったように,さまざまな技を組み合わせた攻撃も可能だ。
 囲まれてしまったときには体をウェブで覆いダメージから身を守る"ウェブドーム"を使い,敵を破裂させて一掃するなど,その場にあった戦闘手段が使えるのは楽しい。ただ適当に戦うのではなく,状況に応じて"頭を使った美しい戦い方"をする。これがスパイダーマンの戦い方だろう。
 上に挙げた以外にもウェブアタックはあり,その数は計10種類。キーボードでプレイする場合,これらの攻撃操作はデフォルトでテンキーに割り当てられているが,一部は左Shiftキーと併用しなければならない。

集団に襲われたらウェブドームが効果的。破裂させればすべての敵が吹き飛ぶ YO-YOスパイディは逆さのまま上下移動ができる。銃を持った敵には注意

 

複雑な操作を直感的に入力するため,ぜひゲームデバイスの使用を

チートコード"JOELSPEANUTS"は,敵がすべて"デカ頭"になる。ちょっとした遊び心だ

 本作ではキーコンフィグも可能だが,10種類あるウェブアタックだけでも,ややこしい操作になることは想像できる。そこに移動系(W,S,A,D),そしてパンチ,キック,ジャンプがあり,さらに視点操作関係もある。こうなるとキーボードでスパイダーマンを軽やかに操作するのは厳しい。
 そこで,ジョイパッドを使ってのプレイをお勧めしたい。もっともジョイパッドでも複雑な操作は要求されるのだが,キーボードよりは直感的な操作ができるはずだ。ピーター・パーカーだって最初は自分の能力を使いこなせず失敗だらけだったわけだし,それだけ熟練が必要だということを味わえる操作システムということなのだろう。うまく操作できるようになるまで,"トレーニング"を繰り返しプレイしてみるのも手だ。

 本作にはゲーム以外のオマケ要素も満載されている。"スペシャル"では,シークレットコードを入力することでほかのキャラでプレイできたり,一人称視点でプレイ可能になる"チート"で楽しめる。コードは「こちら」から入手可能だ。コンシューマ向けサイトだがコードは問題なく使えた。なお,チートとはいえ今のところゲームバランスを崩すようなコードは公開されていないので安心されたし。しかし,できたら一度くらいはクリアしてから試してほしいところだ。
 ほかにもスパイダーマンの操作をミニゲーム形式で遊びながら習得できる"トレーニング",ムービー,絵コンテ,設定資料を鑑賞できる"ギャラリー"などがある。なお,これらのコンテンツはゲーム進行状況に合わせて徐々に使用可能になっていく。

ウェブスイングのトレーニング中。ちょっとしたミニゲームになっているのが楽しい チートコード"UNDERTHEMASK"は一人称視点になる。腕に自信のある人はお試しを

当然ながら全編英語

オズコープ社に侵入するも,監視カメラに見つかり大量の護衛ロボットが現れる……

 本作をプレイしていてかなり気になったのは,"日本語マニュアル付き英語版"だから当然のことだが,英語の理解力がかなり必要であること。英語のヒアリングができないと,まったくストーリーを理解できないままプレイすることになりかねないのだ。
 随所に挿入されるムービーをジックリ観ていればやるべきことは伝わってくるし,次に向かうべきところはゲーム画面のコンパスで判断できるので何とかなるが,これもちょっと頼りない。ストーリーも重要な要素になっている「スパイダーマン」では,流れを理解できないと面白さが半減してしまう。たとえ"日本語マニュアル付き英語版"だとしても,ストーリーを簡単にテキスト化してマニュアルに掲載するなどの配慮は欲しかったところだ。カプコンさん,今からでも遅くないのでWebで公開したりできないでしょうか。

アクションゲーム好きは買い,ファンなら絶対に買い

 本作は,スパイダーマン独特の動作を完璧に再現し,ドラマチックに変化するステージで飛ぶ,殴る蹴る,壁に張りつくといったアクション性の高い作品に仕上がっている。スパイダーマン自体がアクションゲーム向けのキャラだし,それが3Dアクションゲームと合致し,「スパイダーマン」の世界が見事に再現されているのは,ファンにはたまらないところだろう。
 少々操作がややこしい面もあるが,アクションゲームが苦手な人でもトレーニングで十分カバーできる範囲であり,そもそも本作は敵と戦わずに移動しているだけで楽しい。それから,短時間で気軽にプレイできる点を高く評価したい。今までのアクションゲームとはひと味違う「スパイダーマン」,ちょっとでも興味があれば挑戦する価値ありだ。なお,DVDも発売されていることだし,映画を観てからプレイすれば楽しさアップは間違いない(すべて英語という部分も若干カバーできるし)。当サイトに体験版「こちら」があるので,興味を持たれた人はダウンロードして,ほかのアクションゲームでは味わえない動きを体験してほしい。

摩天楼を舞台にした空中戦。高所恐怖症の人は足がすくむかも ウェブラインで高速移動。これを使いこなせるかがポイントだ 投げ技も使えるが,この状況ではタコ殴りにあうのは目に見えている
雨のニューヨークでヴァルチャーとの戦い。雨の降り方が凄いリアルだ ステージ中に市民などを守るイベントも発生する。しっかり守ってやろう ショッカーの振動波発生装置はなかなか手強い。離れてウェブジップで攻撃だ
序盤の難関"地下鉄でのショッカー戦"。ウェブラインを使いこなせるかがポイント メリー・ジェーンを救出するイベント。名場面の一つだが映画とは若干違う展開 スパイダーマンといったらコレ。ウェブスイングで空中を駆け回れ

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■メーカー:カプコン
■価格:6800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(Pentium III/1GHz以上推奨),メモリ:128MB以上(256MB以上を推奨) ,空きHDD容量:800MB以上(1.5GB以上推奨)
体験版
スクリーンショット集
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