サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜

Text by 朝倉 哲也
1st Oct. 2003

 2003年9月18日,セガよりコンシューマ機で大人気の"サクラ大戦シリーズ"の第三作「サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜」(以下,サクラ3)のWindows版が発売された。
 今回発売されたサクラ3は,2001年にドリームキャスト版としてリリースされていたものを新たにWindowsへと移植したもので,前二作と比べCGをふんだんに使ったアニメーションシーンや,フル3Dとなった戦闘に特色がある
 サクラ大戦シリーズは,1996年にセガサターンで第一作めの「サクラ大戦」が発売されるや大人気となり,以後'98年に第二作め「サクラ大戦2 〜君、死にたもうことなかれ〜」が,2001年にはドリームキャストへ移って第三作め「サクラ大戦3 〜巴里は燃えているか〜」が,そして2002年には「サクラ大戦4 〜恋せよ乙女〜」が発売されている。またゲームだけに止まらず,オリジナルビデオアニメ,漫画,テレビアニメーション,舞台へとその人気を広げており,現在もプレイステーション2版最新作「サクラ大戦5」などが開発中となっている。

テレビアニメ番組を見ているようなアドベンチャー・パート

パリの街中に突如現れる虚無僧。その正体は……

 サクラ3は大きくアドベンチャー・パートと戦闘パートの二つに分けられており,8:2くらいの割合でアドベンチャー・パートの比重が大きい
 そのアドベンチャー・パートは,時折発生するイベントでムービーが流れるほかは,(多くの部分で声優による吹き替えがなされてはいるものの)ほとんどが一枚絵をクリックしてめくっていくだけの,言ってみれば紙芝居を見ているようなものだ。
 こう書くと,まるきりつまらなそうだが,これが実は面白い。ストーリーは全11話からなり,各話独立した読み切り形式で見せてくれるので,テレビの30分もののアニメ番組を見ているような感覚で楽しむことができる(もっとも,各話は1時間から1時間30分程度のボリュームがあるが)。開発側でもそれを意識して制作しているようで,各話の最後には次回予告のムービーが流れたりと,一度ゲームを始めると,ついつい続きが気になってプレイし続けてしまう。

 ストーリーは,1920年代のパリに突如現れた謎の怪人達を,プレイヤー率いる巴里華撃団(パリ かげきだん)の女の子達が,戦闘用パワードスーツ"霊子甲冑 光武(りょうし かっちゅう こうぶ)F"で撃破していくというもの。

主人公への恋愛度が高くなるとこんなことも

 そう,プレイヤーとなる隊長以外の隊員は,すべて女の子というのがミソ。アドベンチャーパートでは,彼女達のご機嫌をとったり,プレイヤーが男らしい毅然とした態度や発言をしたりすることで,隊員達の自分への信頼度が上がっていき,やがて恋愛感情へと発展していくようになっている。この信頼度によって,戦闘パートでの彼女達の能力値が上がるので,戦闘を有利に進めるためにも,信頼度はなるべく高くしておきたい。というのは表向きの理由で,実際は彼女達にモテたいがために,あれこれ努力することになり,そこが楽しい
 ちなみに,親密になったからといってHなシーンは一切ない。しかしシャワーシーンを覗こうとしたり(うまくいかないが),胸元をじろじろ眺め回したり(大抵は怒られて信頼度が下がるが)といった,ちょっとドキドキさせてくれるシーンは,適度に入っている。
 隊員には,明るさだけが取り柄のドジで間抜けなシスター,やけに気位の高い貴族の娘,懲役1000年の大悪党,死んだ恋人がいつまでも忘れられない暗い女性,サーカスで働く身寄りのない動物好きなど,個性的な女性(一人は明らかに子供だが)がそろっている。
 彼女達は当然ながら最初はプレイヤーに特別な関心を抱いてはいないので,信頼をどうやって勝ち得ていくかが腕の見せどころだ。プレイヤーは,どの女の子とどうやって親密になっていくかも楽しめるので,例え一度ゲームをクリアしても,今度はあの子とうまくやってみようとか,あの場面で違う選択をしていたらどうなったのかな? などと,再度ゲームをやり直す気にさせるものがある。実際筆者も2度めのプレイを始めたところだ。

ストーリー中に挿入されるムービーシーンでは,思わず見入ってしまうことも
この手のゲームにはお約束のシーン。これ以上は進展しないけど

 ただ気になったのは,サクラ3における敵の存在意義というか,なぜ敵がパリを狙っているかという目的だ。前作までには,日本政府を倒して徳川幕府の復活を図ろうとする敵や,ゆがんだ発展を遂げた東京を破壊して新たに造り直そうとする敵といった,分かりやすい目的を掲げた"敵"がいて,それに対抗する帝国華撃団という図式がはっきりしていた。だからこそ,プレイヤーも単純に「がんばれ帝国華撃団,帝都を守れ!」とのめりこむことができた。
 しかしサクラ3では,怪人達がどうしてパリを襲い始めたのか? いったい彼らは何者なのか? といったことが今一つ分かりにくいように思える。中盤あたりから真の敵が登場することで,なんとなく「ああ,今までの敵はこいつのために踊らされていたのか」とは分かるものの,今一つ制作側の意図が伝わりにくいというか,ストーリーをひねったのは良いが,もう一つ練りこみが足らなかったか,という感じを受けた。
 それを救っているのは,巴里華撃団隊員達の個性の強いユニークなキャラクターなのだが,これも帝国華撃団隊員のキャラクターと比べると,やはりちょっと弱いというか,単純に帝国華撃団のキャラクターを移し変えただけとも受け取れるので,ストーリーの面白さは前作に比べて多少落ちるかな,というのが正直な感想だ
 だが,ストーリーの中でキャラクターごとに違うミニゲームが楽しめたり,パリの街中をプレイヤーが好きに歩き回ってイベントを探したりできるので,途中で飽きて投げ出してしまうということはないだろう。というか,一度ゲームを始めると,なかなか止める踏ん切りがつかないというか……,なんだかんだいって結局面白いのだ。

主人公への恋愛度は,上に行くほど高くなる。主人公のタイプはプレイヤーの行動によって防御型や攻撃型などに変化し,必殺技も応じて変わっていく 劇場内部が主だった前作と違い,パリの街中を歩いてイベントに遭遇するシーンも多々ある この格好のときは巴里"歌劇団"なのだ。巴里"華撃団"とどちらが本職なんだろうか
ミニゲームは,一度ストーリーの中でプレイしてさえいれば,あとはいつでも好きなときにプレイできるようになる

フル3Dへと大きく進化した戦闘パート

プレイヤーの隊長命令によって,隊員ユニットの攻撃力や防御力などを上下できる。意外と大事だ

 各話の最後は,必ずパリを脅かす怪人との戦闘となる。戦闘パートのグラフィックスはフル3Dで描かれており,カメラ視点の回転や拡大なども自由に行える点が,前作までと大きく違ったポイントとなっている
 またユニットの移動に関しても,それまでのスクエアヘックスを廃止し,移動範囲内であればナナメでも自由に移動できるようになったので,敵を取り囲んで攻撃するといった戦法が採りやすくなった。
 グラフィックスは,正直,最近のPCゲームの平均レベルに比べると綺麗とは言い難いものの,各ユニットが備えている必殺技の発動時などは,キャラクターが技の名前を叫ぶ専用のムービーが流れ,派手なエフェクトを楽しめる

各キャラクターには固有の必殺技が設定されている。赤い十字架は必殺技の攻撃範囲

 ただし,総じて戦闘パートの難度はかなり低めだ。自分達に近い敵から順に倒していけば,戦略など必要とせずにまず間違いなくクリアできるし,ボスがいるなら雑魚はすべて無視してボスさえ倒してしまえば戦闘は終了する。敵も,移動範囲にいるユニットに淡々と攻撃を仕掛けてくるだけだ。ボスについても,ヒットポイントが高いというだけで飛び抜けて強くもない。防御を確実に行いながら攻撃していれば,楽に倒せてしまう。
 戦闘でつまづくとすれば,「時限爆弾が爆発する前にボスを倒せ」とか「船が沈む前に人質を救出せよ」といった,時間制限のある戦闘においてだろう。それ以外は苦しむこともないはずだ。

 サクラ大戦にとっては,やはりアドベンチャー・パートこそが,ゲーム本編なのだろう。戦闘パートについては,正直物足りない。ベースとなったゲームがコンシューマ機のものなので,対象年齢を低めに設定したためかもしれないが,PCへの移植に際して,もっと戦略を駆使できるように難度を上げた戦闘パートにしてくれていればな,と残念に思う。
 しかし気楽な戦闘を楽しめるのも事実で,必殺技の発動時には,キャラクターと一緒になって「狼虎滅却 疾風迅雷〜(ろうこめっきゃく しっぷうじんらい)」などと技名を叫んだりして楽しむのが,サクラ大戦の本当の楽しみ方なのかもしれない

このセリフがないと戦闘は始まらない。戦隊モノの特撮テレビ番組みたいだ 攻撃可能範囲がダブっていると,時折ユニット同士で発生する協力攻撃。仲が良いと発生しやすいらしい 画面下のバーは,移動/回復/攻撃のたびに減っていく。移動→攻撃→移動→防御といった一連の行動を,バーがなくなるまで行うことができる


 最初このサクラ3のレビュー記事を書くにあたって,どうせギャルゲーだからと軽く考えていたのだが,案に相違してかなり楽しむことができた。なんといっても肩肘張らずにプレイできるというか,とにかくお手軽なところが良い
 マウスさばきに集中してプレイするFPSや,常に戦略を考えながらプレイするリアルタイムストラテジーといった,ゲームでありながら遊んだあとに疲れが残るようなものと違い,コーヒーを飲みながら,クッキーを頬ばりながらアニメ番組を楽しむような雰囲気で気楽に楽しむ。久々に,娯楽としてPCゲームを楽しむことができたような気がする。
 さあて,今度は誰と仲良くなろうかな。

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■発売元:セガ
■価格:9800円
■問い合わせ先:セガPCユーザーサポートセンター TEL 0570-000-354
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/500MHz以上(866MHz以上推奨),メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 3.5GB以上,メモリ16MB以上搭載したビデオカード(メモリ64MB以上推奨),DirectX 9.0a以降
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