レビューコンテスト

 

4Gレビューコンテスト 佳作作品


刑事・大打撃〜北の挑戦〜

Text by 石敢当未来不
27th Feb. 2004

※レビューコンテストという性質上,forGamer編集部では最低限の校正しか行っていません。ご了承ください。
※一部の画面写真は,不快に感じる人がいると判断したため,加工を施し,サムネイルのみ掲載しています。

ご注意:食前・食事中・食後の方が本レビューをお読みになりますと,多大に気分を害す恐れがあるため,避けられるようお願い致します

 「刑事・大打撃」は,原作/プロデューサーを藤宮幸弘氏が務め,PC-9801やMSX2で人気を博したシリーズ。旧作は最近プロジェクトEGGで復刻され,今なお根強いファンが多い。そのシリーズ最新作「刑事・大打撃〜北の挑戦〜」が,2003年5月末に発売された。
 数年前から告知されながら,いっこうに発売される気配がなく,結局発売されないのではないかと囁かれつつも,満を持して登場した本作。発売に前後して,一部では"ある意味"話題になったようだが,一般的にはあまり知られていない。そこで今回は,少々どころか非常にクセのある,この「刑事・大打撃〜北の挑戦〜」を紹介していこう。


限界ギリギリ!! いやすでに臨界点突破か!? 何でもござれのストーリー!

左が大打撃で右が中森暁子。東大卒の中森はお気楽&おトボケ。デコボココンビの掛け合いが面白い

 なぜか股間にバスケットボールがくくり付けられ,右手にはチ○コを握った変死体が発見された。そして謎のダイイングメッセージ「チ○コ」。主人公・大打撃(だいだげき)と,東大卒のお気楽新人キャリア・中森暁子(なかもりときこ)は,この難事件の捜査を始めるのだが……,おっと,上記注意には該当しないけど,ここで頭痛を覚えたという人は,続きを読むのは控えたほうがいいだろう。恐らくついてこられまい。

 さて,およそそんな感じでスタートする本作。なんとなくお分かり頂けただろうか。そう,この「刑事・大打撃〜北の挑戦〜」は,下ネタ/ヤバネタ満載,空前絶後の超不謹慎ゲームなのである
 「じゃあ,どのへんが?」と問われても,先述した部分以外で具体例を挙げることに筆者自身がためらってしまうほど。
 その不謹慎さたるや凄まじく,某カルト教団を始めとして,挙げ句の果てには地上の楽園の偉大なる指導者様までが,伏字等々いっさい無しの,無修正状態で登場するのだ。
 登場したからにはゲーム画面よろしく,彼らは自身に関係する,あんな発言やこんな発言を連発。対する主人公・大打撃も負けてはいない。下ネタ,漫画,アニメ,映画,小説の有名シーンやらマニアックな知識やらを織り交ぜ,とめどなくしゃべりまくる。それは三島由紀夫の「潮騒」のワンシーンだったり,古い特撮モノの主題歌だったり,日活ポルノネタだったり,とにかくさまざま。
 また,とりわけ声優陣の演技が素晴らしい。文章では伝えづらいけれど,セリフの強弱,間などがしっかりとしていて,概してかなりの高レベル。その妙技で,タブーとされているような事柄を,あっけらかんと言い放つもんだから,なんとも快い。まさに抱腹絶倒。筆者も何度笑い転げたことか。

 さすがにここまでやったためか,本作はあの週刊「Flash」誌でも取り上げられたといういわく付き。記事によると,どうやらほかでもさんざん叩かれたらしい。
 もっとも,発売元のファミリーソフトのWebサイトにはその記事に対して「誉め言葉と受け取りますた」と書かれている。何だかある種の敬意を表したいものである。


特徴的なのは「便意パラメーター」と「言い合いバトル」!
  本当にただのコミカル推理ゲームなのか!?

突然,妄想を始める大打撃。巧みに声色を変える声優の演技が光る

 本作はコミカル推理ゲーム(パッケージより引用)で,大打撃は事件解決のため,あちこち移動し聞き込みをして,捜査していくことになる。
 基礎となるシステムは,いわゆる「コマンド選択式」。最近では知らない人がいるかもしれないから,一応簡単に説明しておこう。ゲーム中,「見る」「調べる」「話す」などのコマンドが表示されるので,一つを選ぶ。次に対象となる「人物」や「建物」を決めると,キャラクターたちがそれに反応するという具合。そしていろいろ行動するに従い,話は進んでいく。これが「コマンド選択式」だ。
 オーソドックなだけに,ゲームにすんなりと入り込みやすい半面,どうしても古臭い感は拭えないだろう。この手のゲームにしては,ほとんど迷うような場面はなく,難度は低い。イライラ感も少ない。だが,それだけではただの旧式で平凡なアドベンチャーにすぎない。そこにスパイスを加えているのが,今から紹介する「便意パラメーター」と「言い合いバトル」だ

 では,まず「便意パラメーター」から紹介しよう。
 ネームからいって,いかにも滅茶苦茶な本作らしいこのシステムは,人間である以上,尿意/便意は不可避……という理由で作られたのだという(ちなみに「尿意パラメーター」はボツになったそうだ)。
 つまり,人間誰しもが便意を催すように,主人公・大打撃にもそれがあって,何か行動するに伴ってだんだんとパラメーター――便意が溜まっていくのである。だから時にはトイレに行かなければならない。で,トイレに行く。すると,ジャーと水を流す音と共にやけに爽やか顔の大打撃が出てきて,パラメーターは再びゼロに戻るという仕組み。
 トイレに行かずにいると,パラメーターはドンドン上昇する。やがて苦しみ出す大打撃。それでもトイレに行かないと,彼の顔は絶望の色を帯びてきて……終いには失禁。いい年してお漏らしとは,もはや人間失格,即刻ゲームオーバーとなる。
 ご覧の通り馬鹿げたシステムなのだが,これが意外や意外で,ゲームに緊張感が出て良い感じ。しかもトイレはときどき使用中で用を足せないなんて場合もある。これはちょっと焦る焦る。そんな変な緊張感が生まれるのだ。
 当然,わざと大打撃をいじめてゲームオーバーにするのもアリ。彼の悲鳴を聞いて笑うのもまた一興なのである。というか,誰だって一度はやってしまうに違いない。

システムはオーソドックスなアドベンチャーだ。で,右下が便意パラメーター。ちなみに見えているのはあの人々…… ついに我慢も限界。悲鳴をあげる大打撃 ……そして,人間失格。地球の片隅でもう駄目だを叫ぶ,大打撃

 続いて「言い合いバトル」について話そう。
 これはいわば「口げんか」で,ちょっとした戦闘システムだ。ゲームを進行中,時折敵が現れ,戦闘突入となる。ルールは簡単。突入と同時に,スロットが回転しだすので,それを止めるだけ。止めると「お前の写真をアイコラにしてばらまくぞ」とか,「お前の生活を24時間ストーキングする!」とか,相変らずな調子の言葉が出る。
 そう,この「言い合いバトル」は,大打撃と敵とが互いにののしりあって,精神力を削り合うのだ。よって,これらの例はまだまだ序の口。何せ,刑事のクセに銃携帯が許可されていない大打撃唯一の武器は,その口と舌。それゆえ実際はもっと言いたい放題。通常シーンで使われなかったネタが数々登場する。
 とくに,いろんな意味で有名な人(教祖的/指導者的人々)が敵として登場したときには,戦闘中にも関らず(当然負ければゲームオーバーだが),ゲラゲラ笑ってしまう。

容赦なく罵詈雑言を浴びせる言い合いバトル! 本当に面白いところはピックアップ不可能級だ! この人まで登場! ちなみに自分も敵も赤色は大ダメージで連続攻撃可能! 敵の洗脳に怯まず立ち向かえ!!

 ほかにも,押すと大変なことが起こるボタンがあったり,ヘルプを押せば,大打撃がただ「助けて〜」と叫ぶだけだったりと,思いもよらぬ仕掛けが用意されており,面白い。BGMもなかなか良い雰囲気を出している。少々CGの質が低いのが気になるが,見るに耐えないというほどのではないし,許容できる範囲だろう。


推理モノと思ってはいけない! バカゲーと思うべし!!

 この「刑事・大打撃〜北の挑戦〜」は,兎にも角にも下ネタの含有率が相当高い。本当にこれ一般販売される作品ですか? 大丈夫なのですか? とプレイ中心配になった。
 が,しかし,何者をも恐れぬ圧倒的で,底抜けにお馬鹿で下品で,強烈で破天荒な力というべき魅力が本作にはある。このパワーを前にしては,欠点/マイナス面さえどこかに消え去ってしまうようだ。
 何より,普段絶対言えないようなことを,ビシバシ毒満載で言ってくれるものだから,一種のカタルシスすら覚えるし,溜飲が下がる場面も多々ある。要するに,過度の下ネタに吐き気がしない人なら,きっと楽しめる。下ネタが「好きだ」という人は言わずもがな
 また,とかくマニアックなネタが頻出するので,「これは○○だな」と分かるとより楽しめる。こういう内輪ネタに近い笑いは,その輪が狭ければ狭いほど,面白味を増す。詳しい人にはたまらないだろう。かといって,分からなくたって構わない。例のパワーで吹き飛ばしてくれるのだから心配は無用。
 そもそも小難しく考えてはいけない。大体,本作は推理モノのゲームと称するべきではないのだ。本作は,未だかつて類のないバカゲーなのである(誉め言葉)。脳が,体が,反応するに任せてゲームをすればよい。たまには頭を空っぽにして,こういうゲームに没頭することをオススメしたい。

 最後に,少し本作オープニングより抜粋しておこう。何だか怖いから。

 この作品はフィクションです。
 作品中に登場する団体・個人等は実在するものとはいっさい関係ありません。
 また本作品はギャグ作品ですので,何らかの政治的意図や,なにものかを中傷する意図はありません。
 あらかじめご了承ください。

ついに登場したあのお方! 副題はやはりこれに掛けたダジャレだったのか? ゲーム中,彼はずっとこんな感じだ。しかし,これはまだ良いほうなのだが ネタバレ回避で説明を伏せておいた海戦モード。謎のミサイルについては,自分でプレイして確かめてほしい

「刑事 大打撃 〜北の挑戦〜」の公式サイトは「こちら」

(C) Family soft 2002

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