ポートロイヤル −カリブ大航海記−

Text by Seal
28th Jul. 2003

 カプコンから発売されている「ポートロイヤル −カリブ大航海記−」(以下,ポートロイヤル)は,カリブ海で交易や港町開発などを行って成功を収めるのが目的の貿易シミュレーションだ。開発は,「パトリシアンII」などで知られるドイツのAscaron Entertainment社。同社のタイトルには自由度の高い貿易シミュレーションが多く見られるが,ポートロイヤルもそれに漏れずにさまざまなスタイルでゲームが楽しめるのが特徴となっている。
 その日本語ローカライズをしたのがカプコンというわけだが,これがほとんど完全に近い仕上がりなのには驚かされる。ポートロイヤルは,自由なプレイスタイルが特徴の一つだが,その反面,ゲームに慣れるまでは何をしたらいいかさっぱり分からないという部分もある。そこをチュートリアルを含み,完全に近い形でのローカライズが行われたことで,初めてこのタイプのゲームをプレイする人でも非常にスムースに入り込めるのが嬉しい。

狙うは貿易王? 海賊王? それとも……?

交易品は19種用意されている。左の列の赤字となっている部分は不足ぎみの品物なので,要チェック

 ポートロイヤルは,16〜17世紀の約100年間のカリブ海を舞台にしている。勢力を伸ばしていたスペインが徐々に衰退し,それに変わってフランス,イギリス,オランダなどが台頭してきた頃。混乱に満ちてはいるが,一攫千金を狙う者にとっては絶好のチャンスとなる時期だ。そのような舞台でプレイヤーは,交易や海賊行為,都市の発展などで,多数のライバルたちを蹴散らしながら成功を収めていく……というのがゲームの目的となる。成功とはなんとも曖昧な表現だが,交易で大富豪になるもよし,海賊家業で一躍有名人になるもよしと,なんでもアリなのだ
 ゲームスタート時は,小さな船といくばくかの資金しか持っていないが,プレイヤーの能力として,経済,砲術,カリスマの3種のスキル,交易,海戦の2種の特技が選べ,これによって,その成功への道が大まかに決まってくる。交易で成功を夢見るならば,スキルは経済,特技は交易を選べばいいし,海賊で成功を夢見るならば,砲術のスキルと海戦の特技を選べばいいといった感じだ。
 ただし,ここで選ばなかったほうで成功できないかというとそうでもなく,スキルと特技でのメリットがなくなるだけで,成功を収めることは可能だ。このあたりの自由さは,プレイしていて非常にわくわくする部分でもある。

 スタート時にはイギリス,フランス,オランダ,スペインの4か国のいずれかを本国としなければならない。開始時期は,1570年,1600年,1630年,1660年の30年刻みの四つがあり,1570年では60ある都市のほとんどがスペイン領だが,1660年では勢力図が変わっていて,ほかの3国の支配下にある都市が多いという違いがある。
 開始時期を早めて,スペインを選んで楽な交易をしてもいいし,開始時期を遅らせて混沌となったカリブ海で交易を楽しんでもいい。さらには,1570年でスペイン以外で開始し,交易品を運搬しているスペイン船から奪って,スペインの弱体化に貢献してみるのも面白いだろう。

 交易や海賊行為などをしていると,プレイヤーの船長としてのランクが上昇する。ランクは"見習い船員"(本当は最初から船長なのだが)から"船長"までの8段階(+α)があり,所有できる船の数や雇える船長の数,後述するミッションなどに影響する。船長の上もあって,特殊なイベントをクリアすることによって総督にまでなれるので,ぜひとも挑戦してみてほしい

カリブ海の港町を駆け巡って,成功を収めるのだ。近くを航行している船は画面上に表示されるので,海賊がいないか目を凝らしてしまう 自分の行動は,ステータスによって記録されている。プレイヤーの交易が,母国として選んだ国が発展するのにも貢献しているのだ 総督の娘を妻にというイベントが起こった。これで一介の船長から貴族の仲間入りだ

地道な努力が成功への第一歩

表では健全な交易を行っておき,裏では海賊を雇って分け前を……というプレイスタイルも可能だ

 交易は,特産品で安価となっている港町で仕入れ,需要が多い港町で高値で売るのが基本。港町は60用意されているので,どの港町が何を特産品としているか,そして人口が多く需要が多い港町はどこかということを把握するのがゲーム序盤の課題となる。
 この交易品には穀物や肉といった食料,織物やレンガなどの原材料,染料やココアなどの生産品,そして陶器やワインといった輸入品の4種類があり,そのトータルは19種となる。これらは,基本的に人口や外との関係によって需要数と供給数のバランスが決まっているが,ゲームが進展するにつれて港町の人口がどんどんと増加していくために,バランスは逐次変化する。また,プレイヤーだけでなく,ほかにコンピュータ操作の交易を生業とする船が多数いるので,1日前は不足していた品が,今日は豊富に在庫があるなどということも起こるのだ。このため,購入/売却時期はこまめにチェックしておかなければ,タイミングを逃してしまいかねなくなる。ほかにも,特産地に専用の施設を建設して,交易品を生産するということも地道だが成功への近道となるだろう。

 不足している資源を供給したり,港町に不足している施設を寄贈したりすると,その街での好感度が上昇していく。好感度が上がると,総督府が設置されている都市では総督に面会でき,彼からミッションを依頼されるようになる。
 ミッションには,まだ発見されていない都市の探索や資源の運搬,人口調整,さらには極秘任務までが用意されているので,中盤からはミッションクリアをメインのプレイスタイルとするのもよい。好感度が最高の状態を保っていると,総督から,娘の婿に……という一介の船乗りから爵位を得るまで出世するというイベントもあるのには驚きだ

海賊船は船員が多数乗り込んでいるので,白兵戦となってしまうと,ほぼ確実に拿捕されてしまう

 一方海賊家業では,海戦を効率良く進めていくのが成功への近道。海戦は,最大20隻もの船で行われ,砲撃で船にダメージを与えたり相手の船に乗り込んで白兵戦を挑んだりと,その方法も複数用意されている
 海戦は,全体マップ上で相手の船にある程度近づくと始まり,手動か自動の2種類が選べる。自動では自分の船団の武装状態によって攻撃的か守備的かが決まっているようで,序盤では中途半端に武装するよりも,無防備なほうが拿捕や沈没といった最悪の事態を免れられる。手動で海戦を行うときは,攻撃や逃亡といった戦術をプレイヤーがその時点で判断して操作できるが,独特のテクニックが必要で少々難しい。資金に余裕が出てきて,海戦の練習を積み,操船になれるまでは自動にしておくのがお勧めだ
 またカリブ海には,交易船だけでなく,獲物を待ちかまえる海賊も多数存在する。アン・ボニーやキャプテン・バルトロメオなど,実在した海賊達が登場するが,無名の弱い海賊とは違って,序盤では手も足も出ないほどの強敵ばかり。航海中に出くわしてしまったら,一目散に逃げたほうがよいだろう。
 ゲーム中は4国間で戦争が勃発することが多く,敵国の交易船に対して海賊行為を合法的に行える私掠許可証が購入できたり,海賊を雇ってその略奪品の何割かを受け取るといった裏家業的なことも可能だ。兎にも角にも,プレイヤーの自由に行動できるのが,ポートロイヤルの楽しい部分なのである。

 ポートロイヤルは,マルチプレイにも対応している。LANやインターネットを介して最大8人までが同時にプレイでき,交易などでクリア目標を最初に達成したプレイヤーが勝利となる。タイムリミットも設定できるので,だらだらと長引いてしまうことも少ない。また,Ascaron Internet Clientという無料のロビークライアントも用意され,これも完全に日本語化されているので,対戦相手を探すときに便利だ。
 貿易シミュレーションという独特のジャンルに属する本作だが,街の規模の把握と,需要と供給のバランスなどが分かってくると,ツボにはまるように面白く感じてくる。シナリオに沿ったゲームに飽きているならば,自由なプレイスタイルができる本作をお勧めしたい。
 なお,日本語版でのいくつかの問題を修正したパッチを「こちら」からダウンロードできるので,プレイするときはアップデートを行っておいたほうがよいだろう。

海戦ということであまり派手さはないが,戦闘結果によっては被害が甚大になるために緊張感がある 海賊行為を行うには,それなりの装備が必要。拿捕した船は売却して資金源としてもよい 賞金首リストに載っていた,名のある海賊をやっと倒すことに成功! これで名声も上がることに

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■発売元:カプコン
■問い合わせ先:カプコンPCサポートセンター TEL 052-760-0335
■価格:6800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/600MHz以上(PentiumIII/1.0GHz以上推奨)メモリ 128MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量 600MB以上
Screenshots集
体験版
パッチ

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